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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  37話:衝突の果てに

 

弾けるように大きくなっていく黒い球体は、ビルの上部とその周辺を包み込む。
それを見た士は、なのはとフェイトに念話を繋ぐ。

[なのは、フェイト!無事か!?]
[士!?]
[つ、士…君…]

士の言葉に返ってきたのは、驚いたようなフェイトの声と、切羽詰まったようななのはの声だった。

[わ、私は大丈夫だけど、なのはが今攻撃防いでて…]
[結構きつい、です…!]

どうやらなのはは、あの黒い球体の魔法攻撃を防いでいるようだ。
黒い球体は次第に小さくなっていき、消失する。

「よそ見してる場合ですか!?」
「っ、くっ!?」

そこへいきなり士を襲うのは、プロトWの剣。士もすぐに反応して防ぎ、鍔迫り合いが始まる。

[闇の書が完成して、はやての姿が変わっちゃって…]
[多分管制人格が表に出てきたんだ]
[うおっ、ユーノか!?]

フェイトの声の後に出てきた声に、士は思わず声を上げる。

[今フェイト達と合流したよ!]
[アルフか?]
[ユーノ君!これからどうすれば!?]
[わからない。無限書庫にもそんな情報ないし、僕だって闇の書の管制人格と出会うのは初めてだから…]

確かにそうだ。無限書庫でも完成後の情報はほとんどなかった。
それを見た人間だって、今この場にはいないのだ。

[俺もまだそっちには行けない!そっちで頑張っててくれ!]
[う、うん!]
[士も気をつけて!]

士はそういって念話を切ると、すぐさまプロトWを押し返す。
若干の距離が生まれ、二人は武器を構え直す。

「闇の書が完成した以上、あなたに構っている暇はありません」
「それはこっちの台詞だ!」

プロトWの言葉に士は数歩後ろへ下がる。そして手を後ろに回し、携帯型ツール“ケータッチ”を取り出す。
そしてライドブッカーからも一枚のカードを取り出し、ケータッチへ挿入する。

「させませんよ!」
「あぶねっ!?」

そこへプロトWの剣が振り下ろされる。士はそれをかいくぐり、プロトWに向き直りながらケータッチへ手を伸ばす。

〈 KUUGA AGITO RYUKI 〉
「フンッ!」
「くっ…!?」

そこへプロトWが振り返りながら横へ一閃。それをまた前転で避ける。

〈 FAIZ BLADE 〉
「そこぉ!」
「くぅ!」
〈Sword mode〉

ファイズとブレイドのマークをタッチすると、プロトWは士の背後から剣を振り下ろす。士は即座にライドブッカーを剣にし、背中に回してプロトWの剣を防ぐ。

「はっ!」
「ぬっ!?」

士はそこから反時計回りに体を回しながら剣をプロトWに振り下ろす。
だがそれはプロトWの盾で防がれ、プロトWはさらに前に繰り出す。

「フン!」
「がはっ!?」

それを食らった士は後転するように転がる。丁度一回転したところで、立ち上がりながら指を伸ばす。

〈 HIBIKI KABUTO 〉
「ハァッ!」
「っ、がっ!?」

二つのアイコンを押したところで、プロトWの剣が飛ぶ。下から振り上げられた剣は士を削り、ケータッチを弾く。
ケータッチは飛んでいき、地面に転がる。その後少しの間があって士も地面に落ちる。
プロトWはすぐに剣を振りかざす。

「げっ!?」
〈 ATACK RIDE・ILLUSION 〉

それを見た士はライドブッカーからカードを抜き出し、バックルへ挿入する。
するとプロトWの両隣に新たに二人のディケイドが現れる。

「くっ!」
「何…!?」

現れた分身体のディケイドの一人が、プロトWの攻撃を剣で止め、そこから押し返す。
もう一人がライドブッカーの銃の引き金を引く。プロトWは弾丸を盾で防ぐ。

「はっ!」
「クッ、ハァッ!」
「だぁあっ!」

「この隙に…!」

分身体の二人が隙を作っている間に、士は地面に転がっているケータットの元へ走る。
それを横目で確認したプロトWは士を阻止しようとするが、剣を持つ分身体に阻まれる。

「行かせねぇよ!」
「邪魔、です!」
「ぐはっ!?」

分身体が振り下ろした剣を盾で受け止め、弾きながら剣を振るう。そこへ銃を持ったもう一人の分身体が引き金を引く。

「ハッ!ハァアッ!」
「ぐあぁっ!?」

プロトWは放たれた弾丸を跳躍して避け、さらに剣を振り下ろす。銃を持つ分身体は火花を散らしながら倒れる。
そしてもう一度士を見て、追いかけようとするプロトW。

「「させねぇっての!」」
「ヌッ!?」

だがプロトWの背後から覆いかぶさるように一人、もう一人が足下にしがみつくようにプロトWの動きを止める。
その間にケータッチの元に到達した士は急いでそれを拾い、再び指を伸ばす。

〈 DEN-O KIVA 〉

残りの二つのアイコンを押し、最後の“F”の字のアイコンを押す。

〈 FINAL KAMEN RIDE・DECADE!〉

自らの姿をディケイド・コンプリートフォームへ変え、ベルトのバックル部をケータッチと差し替える。

「ちっ!」

プロトWは小さく舌打ちをすると、覆いかぶさる分身体を無理矢理放し、振り返りながら剣を振るう。そして下で足にしがみついている分身体に剣を突き立てる。
それぞれ攻撃を食らった二体は消えていった。

「………」
「………」

障害がなくなったプロトWはゆっくりと士の方へ向き直り、武器を構え直す。
二人の間に長い静寂が流れる。ゆっくりと、少しずつ早くしながら道路沿いに横へ平行移動していく。

「はぁあっ!」

先に動いたのは士。不意に前に出した左足に力を込め、プロトWの元へ飛び出す。
両手で持つライドブッカー・ソードモードを左から振り下ろす。プロトWはそれを右手に持つ剣で防ぎ、さらに弾く。

「だぁああ!」
「フンッ!」

士は弾かれながらも、持ち替えながら今度は右から振り下ろすが、それも今度は盾で防がれる。
プロトWはそこからさらに剣を振り下ろす。すぐさま士は振り下ろされる剣を左手で受け止める。だが相手は刃物。素手で防ごうとすれば多少の痛みは伴う。

「「はっ!」」

そこから二人同時に右足で蹴りを相手の腹に向けて放つ。お互いにノーガードのまま受け、数歩後退する。

「この…!」
〈 ATACK RIDE・BLAST 〉

士はそこから右足で後ろに飛び、飛んでいる間にカードを挿入する。そして着地と同時に引き金を引き、マゼンダ色の砲撃を放つ。

「ヌッ!?エレメントバースト!」

プロトWは剣を一旦盾に仕舞い、盾にエネルギーを溜め一気に放出する。そこからは四色の砲撃が放たれる。

衝突した二つの砲撃は少し均衡した後、大きな爆煙を伴いながら爆発する。

「くっ…!?」

視界の先は黒い煙だけ。相手の姿はまだ見えない。

(ここで…決める!)
〈 FINAL ATACK RIDE・de de de DECADE!〉

「っ!!」

士はここでライドブッカーから金色のディケイドのマークがあるカードを取り出し、バックル部へ挿入する。
その音声を聞いたプロトWは剣を抜き、さらに先程とは逆の向きに剣と盾をジョイントさせ、剣の先へエネルギーを溜め始める。

〈 Dimension kick 〉
「うおおおおおおおおおおお!!」

目の前に数枚のホログラム状のカードが出現したと同時に、士は前へ飛び出し右足を突き出す。
その間に剣に込められたエネルギーが剣を大きく見せていき、プロトWの剣は光る大剣のようになっていた。

「エレメント・ドラゴニクス!!」

そして士の攻撃がプロトWの元へ到達する直前、プロトWは大剣となった自分の得物を振りかぶり、士の蹴りと衝突させる。

「「うおおおおおおおおおおお!!」」

激しい音と光を発生させ均衡する二人の攻撃。お互い退きまいと雄叫びを上げながら力を込める。
そしてその均衡も、大きな爆発と爆煙で終わりを迎える。

「ぐぁああ!」
「ぐぅぅ!」

その爆煙から二つの姿が転がり出た。その一つである士は、転がる間にディケイドの変身が解けてしまう。かくいうプロトWの方も、怪人体から人間体の姿に戻っていた。

「ぐぁ…ぁぁ…」
「くっ、ぬぅぅ…」

爆煙が晴れていき、そこにあったものが見え始める。道路は爆発によって大きく抉られており、その周囲にクモの巣のようにヒビを走らせている。これだけ見ても、爆発の規模が大きかったことがよくわかる。

そして、一つの人影がゆっくりと立ち上がる。

「ぬぅぅ…ディケイドォ…」

それはプロトWの人間体のものだった。
立ち上がったプロトWは、ゆっくりと士の元へ歩いていく。だがその歩き方はすでによれよれで、千鳥足のようになっていた。

「貴様はやはり……消しておくべきだった…」

口調も丁寧なものから、荒々しいものに変わっていた。
歩きながら、左腕を横へ持ち上げると、その左腕だけが怪人体のものに変わる。

「ぐ…くぅ、ぅぅ…!」

それを見て、士も立ち上がろうと腕に力を込めるが、立ち上がれずまた地面に崩れ落ちる。
その間にも士とプロトWの距離は十数メートルまで短くなっていく。士は地面に突っ伏したまま、奥歯を噛み締める。



「士!なんであんたがこんなところに!?」



そんな時、不意に二人ではない別の声が響く。それが意外すぎたのか、プロトWもその動きを止める。
その声の主は二人の横。大体二人の丁度間の場所を平行移動させたところにいた。金に近い茶髪の髪を揺らし、茶色のコートを着た少女。その横には白いヘアバンドをつけた紫髪の少女。あまりにも見覚えがあるその二人の姿に士は目を大きく見開く。

「アリサ…すずか…」

かすれる声でその二人の名前を呟く士。それが聞こえたのか、二人は走って士の元へやってくる。

「どうしたのよ、こんなボロボロになって!」
「大丈夫!?」

地面に突っ伏していた士の体を起こし、仰向けに向きを変える。二人の表情は見るからに悲しみに染まっている。

「なんで…ここに…?」
「それはこっちの台詞よ!というかどうなってんのよ!?街の人は皆消えるし…」
「なんか街の雰囲気も変だし…ってこんなこと士君に聞いてもどうしようもないよ!とにかく士君を病院に…!」

二人が言い合っている間に、士は少し顔を上げて前方を見る。そこには勿論プロトWが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。その左腕はやはり禍々しく、士を狙おうとしている。

「お、お前ら…逃げろ…」
「え…?」
「士君?」

どうやら二人はまだプロトWの存在に気づいていないようだった。だが、士の視線を追うようにプロトWを見ると、二人の表情が凍り付いた。

「な、何…あれ…」
「………」

士は体を支えてくれているアリサの肩に手を置いて、体を無理矢理起こす。そしてゆっくりと立ち上がり、右手を二人を守るように後ろに回す。

「逃げろ…」
「逃げろって…アンタは、どうすんのよ…」
「いいから早く…行け…」
「士君……」

ふらつきながらアリサとすずかに言う士。その間にも、プロトWは距離を詰めていく。

「逃げるんだったらアンタも一緒よ!アンタ一人置いていける訳―――」

「いいから言う事聞きやがれ!!」

反論するアリサの言葉にかぶせるように叫ぶ。それを聞いた二人は、体をびくつかせる。
だが叫んだのが体に響いたのか、士は膝を地面につけてしまう。アリサとすずかはそれを見て、慌てて士の体を支える。

「……私達が逃げたら、アンタはどうすんのよ…」
「はぁ…はぁ……なんとか、してみせるさ…」
「ふざけないでよ!そんな体で何ができるかぐらいの常識は、持ってるつもりよ!」

アリサはそういうと、士の肩を支える為に士の腕を自分の首の後ろに回す。

「いい加減にしろ…どこまで俺を苛つかせれば気が済むんだ、貴様らは…」

だが、プロトWはすでに間近まで迫っていた。
それを見たアリサは、意を決したような顔をして担いだ士の腕を下ろし、士とすずかの前に出て、両手を広げる。

「……なんのつもりだ、貴様…」
「アリ、サ…逃げろぉ……」
「ふざけんじゃないわよ……友達がこんなにボロボロになってるのに…見捨てられる訳ないでしょ!!」
「…アリサちゃん……」

前に立つアリサの目には、涙が溜まっていた。すずかもアリサの名前を呟くと、士を支える為に肩に添えている手に力を込める。放さないと言わんばかりに。

「…目障りだ……まずは貴様から、始末してやる…」

そう言ってプロトWは左手で手刀を作り、振りかぶる。
その光景を見たアリサは目をつぶり、すずかも顔を背けて目をつぶる。

(また、守れないのか……くそぉ…!)

士は地面につける手を握りしめ、奥歯を軋ませる。
そしてプロトWの手がアリサに向け振り下ろされる瞬間―――

「ディバイィィィン、バスターーー!!」
「プラズマスマッシャーーー!!」

聞こえてきたのはまた別の声。そして視界に入ったのは桃色と黄色の光。

「なっ―――」

二色の光はプロトWを包み込み、その姿をかき消した。
目をつぶっていた二人はゆっくり目を開けて、状況を確認する。士はすぐに二色の光がやってきた方向へ顔を向ける。

そこにはデバイスの先をこちらに向けた白服の少女―――なのはと、手の平をこちらに向けた金髪の少女―――フェイトが佇んでいた。

  
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