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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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呪われた島


次の日。
ギルドに高い叫び声が響いた。

「たいへーん!」

叫んだのはギルドの看板娘、ミラジェーン。

「マスター!2階の依頼書が1枚なくなっています!」

ミラのその言葉にマカロフは盛大に酒を吹き出し、元々ざわついていたギルドがさらにざわつき始める。
すると、2階にいたラクサスが口を開いた。

「オウ・・・それなら昨日の夜、泥棒猫が千切っていったのを見たぞ。羽の生えた・・・な」

それを聞いた一同は更に驚く。
羽の生えた猫・・・自分達の知る限り、そんな猫は1匹だけ。

「ハッピー!?」
「つー事は、ナツとルーシィも一緒か!?」
「何考えてんだ、アイツ等!」
「バカだとは思ってたけど、ここまでとはね・・・」
「S級クエストに勝手に行っちまったのか!?」

そんな騒ぎの中、荒々しくギルドの扉が開いた。
全員の視線がそっちへ向き、扉を開けた張本人・・・アルカは荒く息をしながらカウンターまで走る。

「ミラ!いるか!」
「いるわよ。どうしたの?そんなに慌てて」
「今日も変わらず綺麗だな・・・ってそうじゃなくて!ルー来てねぇか!?」

ルーとアルカはカルディア大聖堂近くの一軒家で同居している。

「ルー?来てないけど・・・どうかした?」
「アイツが起きるの遅い事は知ってるよな?」
「えぇ。起こさないと昼まで寝てるって聞いたけど・・・」
「で、今日も起きてこなかったから部屋に行ったんだ。でもルーはいなくて、リビングのテーブルに書置きがあったんだよ!ほらコレ!」

バン、と叩きつけた紙には丸っこい字で『仕事に行ってきます!』と書かれていた。

「だけどアイツ、仕事に行く時はチームメイトの俺を絶対誘うんだよ。でも今回はそれが無くて・・・ルーはどの仕事に行った!?」
「今日はまだルーは来てないし、仕事を受注した記録もないけど・・・」

ミラの言葉にアルカは力が抜けた様にへなへなと座り込む。
すると、誰かが出し抜けに呟いた。

「まさか、ルーも一緒にS級行ったんじゃ・・・」

それを聞いた瞬間、ギルドにいた全員が『あり得る!』と思った。
ナツとルーはチームを組んでいないが仲が良い。ルーからしたら、ティアとアルカの次に仲のいい人物と言えるだろう。
そしてS級魔導士であるティアを慕い、いつかはその実力に追いつき、追い抜きたいと思っている。
この依頼を達成する事で少しでもティアに認めてもらえる、と思っていたとしたら・・・。

「お、おい。どういう事だよ?アイツぁまだS級にはいけねぇはずだろ?」
「それが、ナツとルーシィとハッピーが勝手にS級に行ったみたいなの」
「はぁっ!?アイツ等バカじゃねぇの!?」

その意見が御尤もだ。

「これは重大なルール違反だ。じじい!奴等は帰り次第破門・・・だよな。つーか、あの程度の実力でS級に挑むたァ・・・帰っちゃ来ねぇだろうがな。ははっ」
「ラクサス!知ってて何で止めなかったの?」
「そうだ!テメェが止めてりゃよかっただろうが!」

楽しげに笑うラクサスにミラとアルカが怒鳴る。

「俺には泥棒猫が紙切れ加えて逃げてった風にしか見えなかったんだよ。まさかあれがハッピーでナツがS級行っちまったなんて思いもよらなかったなァ」

明らかにわざとなその言葉にミラとアルカは顔に怒りを露わにする。
ギルドの空気が一気に熱くなったのは、アルカがキレているからだろう。

「お?アンタのそんな顔久しぶりだなァ・・・アルカンジュ、テメェが俺を睨むたぁ2年ぶりじゃねぇの?『あの件』があってからだなァ」

『あの件』という言葉にアルカはピクッと眉を上げた。

「マズイのぅ・・・消えた紙は?」
「呪われた島、ガルナです」
「悪魔の島か!」

その言葉にギルドが更にざわつく。

「アルカ!連れ戻してくれんか!」
「俺、S級に行く資格ねぇんだけど・・・」
「構わん!お主はS級と同じほどの実力者じゃろう!2年前、辞退さえしなければ・・・」
「とにかく無理。俺、今日はミラとデートなんだよ」

間の抜けた言葉にマカロフがあんぐり口を開ける。

「は?」
「だから、この間エルザについて行ったからデート無しになっただろ?だから今日」

それに問題ありますか?とでも言いたげな表情にマカロフは溜息をつく。

「ならばラクサス!連れ戻して来い!」
「冗談・・・俺はこれから仕事なんだ。テメェのケツをふけねぇ魔導士はこのギルドにはいねぇ、だろ?」
「今ここにいる中で、お前以外誰がナツを力づくで連れ戻せる!?」

するとその言葉を聞いて、1人の男が立ち上がった。

「じーさん・・・そりゃあ聞き捨てならねぇなァ」

立ち上がった男・・・グレイは静かにそう言ったのだった。











「うわー、懐かしいっ!ここってあたしとナツ達が出会った街よねー」
「懐かしい・・・ってそんな昔の事でもねぇだろ」
「ルーシィ、ばーちゃん。ぷっ」
「お腹すいたなー」

一方こちらはハルジオン。
ナツ達はガルナ島に行くため、ハルジオンの港町にいた。
ギルドでどんな騒ぎになっているかも知らずに。

「いい?まずはガルナ島に行く船を探すの」
「船だと!?無理無理!泳いで行くに決まってんだろ」
「そっちの方が無理だから」
「じゃあルーの魔法で空を飛ぶ!」
「いいよ。途中で海に落ちてもいいならね」

とにかく4人は船を探す。

「ガルナ島?冗談じゃねぇ。近寄りたくもねーよ」
「勘弁してくれ。名前も聞きたくねぇ」
「この辺の船乗りはあの島の話はしねぇ」
「呪いだ・・・何だって縁起が悪ぃったらありゃしねぇ」
「何しに行くか知らねぇが、あそこに行きたがる船乗りはいねぇよ。海賊だって避けて通る」

港に止まっていた船を隈なく当たるが、全員が行きたくないという。
しかもガルナ島行の船すら存在しないのだ。

「そんなぁ~」
「決定だな。泳いで行くぞ」
「それしかないよね」
「あい」
「泳ぐ?それこそ自殺行為だ。巨大ザメが怖くねぇなら別だがな」
「オウ!怖かねぇさ!黒コゲにしてやるよ」
「うん!全員吹き飛ばしちゃうよっ!」
「海じゃ火は使えないし、変に風起こしたら海が荒れるでしょ」

呆れたようにルーシィが呟く。

「はー・・・どうしよぉ」
「だから泳ぐっての」
「どうにかなるよ」

途方に暮れるルーシィとは裏腹に、ナツとルーとハッピーは泳ぐ気満々で準備体操までしている。
すると、ガリ、と砂を踏むような音がして1人の男がナツ達の後ろに立った。

「みーつけた」

突然ポン、と肩に手を置かれ、驚く一同。
振り返るとそこにいたのはグレイだった。

「グレイ!?」
「何でここに!?」
「連れ戻して来いっていうじーさんの命令だよ」
「どわーっ!」
「もうバレたの!?」

まぁ、依頼書の確認は毎日の事だろうし、気づくのは時間の問題だっただろう。

「今ならまだ破門を免れるかもしれねぇ。戻るぞ」
「破門!」
「やなこった!俺はS級クエストやるんだ!」
「そうだそうだ!ティアに認めてもらうんだっ!」
「オメーらの実力じゃ無理な仕事だからS級って言うんだよ!」

グレイは大きく溜息をついた。

「この事がエルザに知られたらオメェ・・・あわわ・・・」
「「「「エルザに知られたらァ・・・!」」」」

その言葉に4人は震えあがる。
あのエルザだ。知られたらどうなる事か・・・。

「グレイ~助けて~。オイラ、この3人に無理矢理・・・」
「裏切り者ォ!」
「まぁ、まだエルザに知られるぐらいはいいが・・・」

そう。
あのギルドにはエルザをも超えるであろう、恐ろしい女がいるのだ。

「今は仕事に出てていねぇが・・・この事がティアに知られたら・・・オメェ等、すぐにあの世逝きだぞ・・・」

今度は4人とも何も言えなかった・・・恐怖で。
あの女・・・ティアにこんなギルドの掟を破るような事が知られてしまったら・・・。

『掟も守れない愚者が、私の視界に入ってこないでくれるかしら?今すぐ消えて。消えないのなら消してあげるわ』

とか何とか言って、魔法で確実に半殺しにされるだろう。
いや、半殺しならまだいい。ヘタをすれば殺される・・・。
何せ相手はギルド最強の女問題児。問題ばかり起こしているが、その実力は本物だ。
相手がギルドの人間だろうがそうでなかろうが、手は抜かないだろう。

「・・・でも俺はエルザを見返してやるんだ!こんな所で引き下がれねぇ!」
「僕だって!ティアに追いつくためにも、引き下がる訳にはいかないよっ!」

だがこの2人の場合、恐怖より信念が勝ったようだ。
でもそんな事で諦めるグレイではない。
何てったってマスター直々に頼まれた事だ。こっちだってこんな所で引き下がる訳にはいかない。

「マスター直命だ!引き摺ってでも連れ戻してやらァッ!怪我しても文句言うなよ!」
「やんのかコラァ!」
「邪魔するのならグレイだろうと容赦しないよ!」
「ちょ、ちょっと3人とも!」

グレイは氷、ナツは火、ルーは風を手に纏い、睨み合う。

「魔法!?アンタ等・・・魔導士だったのか・・・?」

すると、そのやり取りを見ていた船乗りの男が口を開いた。

「ま、まさか島の呪いを解く為に・・・」
「オウ!」
「まぁね!」
「い、一応・・・自信なくなってきたけど」
「行かせねーよ!」

それを聞いた男は少し体を震わせる。

「・・・乗りなさい」
「マジで!」
「おおっ」
「やったぁ!」
「何!?」

先ほどまで拒否していたのが嘘のようだ。
そしてそれと同時にナツの目がキュピンと光る。

「おりゃ」
「ふんごっ!」

その瞬間、ナツの飛び蹴りがグレイの顔面に直撃した。
避ける事の出来なかったグレイは気絶する。
突然の事にルーシィは驚いて目を見開き、ルーはいつも通りニコニコ微笑んでいた。

「乗せろ!」
「ちょっと、グレイも連れてくの!?」
「だってグレイが戻ったら今度はエルザとティアが来るんだよ?」
「ひいいっ!」

エルザとティア、ギルドで1番恐ろしい女が2人も来るなんて怖すぎる。

「S級の島へ出発だ!」










それから数十分後、船は沖の方に出ていた。
そして言うまでもないが、先ほどまで威勢が良かったナツは完全に酔っている。

「今更なんだけどさ・・・ちょっと怖くなってきた」
「てめ・・・人を巻き込んどいて何言ってやがる」
「そーかなぁ。僕は何だかワクワクしてるよ♪」

今更恐怖を覚えるルーシィと縛られながら文句を言うグレイ。
そんな2人に対してルーは遠足にでも行くかのようにご機嫌だ。

「つーかオッサン!何で急に船を出したんだ。いいめーわくだ」

グレイの文句の矛先は船乗りの男の方に向く。

「俺の名は『ボボ』・・・かつてはあの島の人間だった・・・」
(変な名前だな・・・)
「え?」
「逃げだしたんだ。あの忌まわしき呪いの島を」
「ねぇ・・・その呪いって?」

海を眺めていたハッピーがボボの方を向く。
そして一瞬顔を曇らせたのをルーシィは見逃さなかった。
ボボは少し沈黙し、口を開く。

「禍は君達の身にも降りかかる。あの島へ行くとはそういう事だ」
「禍・・・」

ルーが繰り返す様に小さく呟く。

「本当に君達にこの呪いが解けるのかね?」

風が吹く。
ボボのマントが風に揺れる。
ボボはマントでずっと隠れていた左腕を露わにした。
そこにあった腕は。










「悪魔の呪いを」









明らかに人間のモノではない、異形の腕だった。







月明かり照らす呪われた島、ガルナ島。



あたし達の向かうその島の一角で・・・。



不気味な儀式が行われていた事は、この時はまだ知らなかったんだ・・・。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
前回のアンケートに発足したい事があります。
ティアに付け足すであろう力は『物』を装備したり『物』を使って使える力です。
使う力は『魔法少女リリカルなのは』の『ナンバーズ』の『インヒューレントスキル』がいいかなぁ、と思ってます。
その事を一応踏まえて、ご意見下さい。説明不足ですいません。

感想・批評、お待ちしてます。 
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