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ハーブ

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第十八章


第十八章

「ケネディやニクソンの様な」
「そしてレーガンやクリントンもですね」
 警部も応える。どれもアメリカの歴代大統領である。
「他にも多くいますよ」
「そうですね。名前でわかりますし」
 マックやオーといったものが姓の先についているならそれがケルト系の証明になる。スコットランドに自分のルーツがあると誇らしげに自伝に書いているマッカーサーもまたケルト系である。正式に発音すると『マックアーサー』になるのである。
「それは」
「今ではアメリカにいるアイルランド系の方が母国より多いかも知れません」
 警部はこうも話した。
「我が国はあれ以来増えないままです」
「過酷ですね」
 それを聞いているアンジェレッタも言葉がなかった。
「それはまた」
「イギリスはそうした国です」
 警部は断言さえした。
「我々にとってはまさに不倶戴天の敵です」
「戦争しなくてもですか」
「そうです。戦争をしなくてもです」
 それでもだというのだ。
「御二人は日本人でしたね」
「はい」
「そうですが」
 今更言うまでもない話だったがそれでも応える二人だった。
「それが今何か」
「あるのでしょうか」
「ありますよ」
 警部は話しながらスモークサーモンを食べそれと一緒にビールも飲む。ビールはお代わりしたものを実に美味そうに飲んでいるのだった。
「これがね」
「我々は別に」
「そこまでの仕打ちを受けたことが」
「ああ、そうですね」
 二人はわからなかったがアンジェレッタは察した様だった。納得した顔になりしきりに頷く。そうしながら彼女もそのジャガイモを食べている。
「日本は言われている立場です」
「韓国という国があるじゃないですか」
 警部はその国を話に出してきたのだ。
「あの国が」
「ああ、あの国ですか」
「それでわかりました」
 日本人の二人もここでやっとわかった。
「あの国はですね」
「まあ何といいますか」
「あの統治なぞまさに慈愛そのものです」
 警部は言う。
「我々の先祖が受けた仕打ちに比べれば」
「そこまでだというのですね」
「つまりは」
「若しあの時韓国でジャガイモ飢饉の様なことが起こればです」
 警部はそうなっていたらと仮定して話すのだった。
「どうなるかです」
「普通に大規模な救済処置かと」
「間違いなく」
 二人もまた述べた。
「それこそ義士も何処からともなく出て来て」
「米を配るかと」
「イギリスはそんなことは一切しません」
 まさに悪魔を語る言葉だった。
「そしてです」
「それだけのことが起こったと」
「そうなのですね」
「はい、これが歴史です」 
 アイルランドの歴史だというのだ。
「今は私達は独立してです」
「そしてですね」
「ジャガイモも食べられると」
「そうなのですね」
「その通りです。それが今です」
 こう話しながら今度はジャガイモを食べる警部だった。
 
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