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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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08 はるかなる日々 その二

 
前書き
お、終わらない…… 

 
 城塞都市バイロイトは二重都市として有名である。
 中洲の中に立てられ、町の城壁の外に外周城壁を持つ難攻不落の都市。
 その実態は、狂戦士アッシュを餌にした反乱軍を一網打尽にする罠。
 だが、何も知らない住民がこの町を愛し、この事実を知るだけに十分な時間が与えられ、神聖ゼテギネア帝国の失政がどどめとなった。
 私が率いる反乱軍がこの町を開放した時、城壁が崩れて町ごと反乱軍を押しつぶす罠は、ついに発動する事はなかったのである。
 そうなると、強固な城砦都市であるバイロイトは帝国軍にとって無視できない拠点と化す。
 それを理解していたからこそ、開放したアッシュに指揮を任せ、将兵をすべておいて政治活動に勤しんだ訳で。
 デネブから教えてもらったテレポートにて城塞都市バイロイトに帰還した時、私の目に見えていたのは修羅場だった。

「おい!
 何をやっている!
 はやく……姫様!」

 姫様か。
 いつのまにかついたあだ名って消えないのよね。中々。
 にっこりと微笑みながら私は怒鳴ったファイターに尋ねる。

「出迎えご苦労様。
 で、状況は?」

「ちょっと待ってください!
 お偉いさんすぐ呼んで来るんで!
 おーい!
 姫様が帰ってきたぞ!!!」

 あ。
 いまのでなんとなく把握できた。
 あまり良くないらしい。

「将校集まれ!
 姫様が帰ってきたぞ!!
 皆希望を捨てるな!!!」

「アッシュ様は駄目だ。
 城門を突破したデボネア将軍と一騎討ちをやってやがる!」

 外周城壁放棄の上に城門が突破されたか。
 帰ってきたのがぎりぎりだったわね。
 負傷者で動けない守備兵に手を振り、笑顔を見せながら会議室に。
 居たのは後方支援系のオデットとエリナの二人のみ。

「フレディとジドゥが戦死しました。
 フレディは防戦中にデボネア将軍と当たり一撃で。
 ホークマン隊は命令に従って連絡線を維持しようとして集中攻撃を食らって……」

 沈みながらもエリナが感情を抑えて私の不在時に何があったかを報告する。
 死者蘇生呪文があるこの世界においても、死というのは存在する。
 高レベルのプリーストが居ないとその呪文すら使えないからだ。
 各地にあるロシュフォル教会はプリーストの常駐というよりも、教会そのものが死者蘇生の魔術陣を組んでいるから立地条件がその魔法発動場所に限られる制約もある。
 そして、地獄の沙汰も金次第。
 だから、こんな場所で戦死されるとゴーストやスケルトンになって暴れかねないので供養して埋葬せざるを得ない。

「で、逆転の切り札は持ってきたんでしょうね?
 エリー」

 こんな時だからこそ、いつもと変わらない口調で接してくれるオデットの心遣いがうれしい。
 死者への黙祷を数秒で済ませて、私もいつもと変わらない笑顔で微笑み返した。

「もちろん。
 私を誰だと思っているの?」




 城門前に行くと、双方の兵が二人を囲んでいる。
 多分あれがアッシュとデボネア将軍だ。
 その剣戟は音楽となり、飛び散る火花は二人を芸術に押し上げる。

「ハイランドは誇り高き戦士の集団だったはず!
 なのに、どうしたことだ!
 今のおまえたちは、ただの殺し屋ではないかッ!
 武人としての誇りはどうした?」

「黙れッ!
 私はおまえたち、反乱軍を倒すためにここへ来た!
 世の平和を乱す輩を根絶やしにする為にこのゼノビアへやって来たのだ!」

 遠くから見ても分かる太刀筋の違い。
 なるほど。
 これがジェネラルの戦いか。
 そして、それについていけるアッシュすげぇ。

「大体、お前のような将軍が何故このような地にいるのだ?
 おまえはエンドラから遠ざけられたのではないか?
 違うか?
 デボネア!」

「違う!
 私はハイランドの誇りと陛下の高き理想を実現するためにこの地に居るのだ!
 お前らが陛下の理想を理解しようとしないから、人心は荒れ、平和はまだ実現しない!」

 全身鎧ってあんなに早く動けるんだ。
 私知らなかった。
 あれがソニックブレード。
 フレディを一撃で殺した……
 感傷的になるな。私。
 何でデボネア将軍がこの一騎討ちを受けた?

「平和を乱すだと?
 ならば、このゼノビアはどうしたことだ?
 大陸一栄華を誇ったこの町も、いまではただのスラムではないか!
 これがおまえたちのいう理想国家なのか?
 これがエンドラの意志なのか!!」

「これ以上、陛下を愚弄することは許さんッ!
 わからんだろう!
 この帝国を、平和を維持する事の重さが!!」

「わかる訳ないだろうが!
 何年牢に幽閉されたと思っていやがる!!」

 そうか。
 こちらの心を折ろうとしているんだ。
 報告では1000の兵力の内300が戦死し300が負傷。
 隊としては全滅判定を出さざるを得ない。
 だが、こちらも相手に同程度の損失を与えている。
 敵が、城塞都市バイロイトを落とすのならば、これ以上の損失は避けたいのだ。
 なぜならば、反乱軍本拠地のミュルニークには2000以上の兵がいるのだから。
 そしてそれは成功しつつある。
 技量で凌いでいたアッシュの体力がもたなくなっているからだ。
 それを見逃すデボネア将軍ではない。
 もちろん、それを見ている私も。

「旗を掲げよ!」

 私の声に、城門に旗が掲げられる。
 それは、反乱軍が勝手に使っていたゼノビア王国の国旗の他に、トリスタン皇子の旗を堂々と掲げたのがポイントである。
 旗がはためく音は思った以上に大きい。
 翻った旗の上から私は声を絞り上げて叫ぶ。

「聞け!
 神聖ゼテギネア帝国の諸君よ!
 我らは反乱軍ではない!
 神聖ゼテギネア帝国の圧制に対抗し、開放を願うトリスタン皇子の下に集まった解放軍だ!
 我らはここに予言する!!
 トリスタン皇子自らゼノビアを解放する事を!」

「黙れ!」

 デボネア将軍が城壁上の私に向かって吠えるが、アッシュへの警戒をしなければならないのでそれ以上の事ができない。
 誰もが気を緩めたその空白に、伝令の叫び声が周囲に轟いた。

「伝令!
 魔法都市パルマノーバが陥落!
 反乱軍主力がこちらに向かってきます!!」

「何だと!
 ロシュフォル教会に待機させていた兵はどうした!」

 帝国軍将校の叫びに、伝令に化けたコリが負けず劣らずの声で叫び返す。
 帝国軍に動揺が広がりやすいように。

「反乱軍の一隊におびき寄せられて、反乱軍の補足に失敗したとの事!」

 事実である。
 デネブを仲間に引き入れた事で、最上の囮ユニットであるパンプキンヘッドを大量投入する事が可能となったからこその策だ。
 そして、この手の情報戦は嘘を言うのではなく、真実をいかに装飾するかにかかっている。

「援軍だ!援軍が来るぞ!!」
「敵だ!敵が背後から襲ってくるぞ!!」

 沸く味方に動揺する敵。
 デボネア将軍が数歩下がり、部下に指示を出す。

「エルランゲンへ撤退する。
 殿は私がつとめる。
 ひとまず、ここは潔く負けを認め退却するとしよう。
 また戦場で会おう。諸君」 

 整然と隊列を整えながら撤退する帝国軍。
 こっちはそれを追撃する手段も気力もなし。

「負傷者の治療に当たって頂戴。
 ミュルニークと連絡線の確保を急いで。
 ゴヤスから後詰を呼んで来て頂戴。
 トードが集めているはずよ」

 指示を出しながら、私はアッシュの側に駆け寄ってヒーリングを唱える。
 血まみれのその姿は狂戦士の名前に相応しい。

「悪い。
 守れたが一杯死なせちまった」

「いいえ。
 貴方に頼んだのですから、これは私の責任でもあります」

「わかった。
 少し休ませてもらおう」

 そう言って、アッシュは立ったまま気を失った。
 こうして、城塞都市バイロイトをめぐる戦いは解放軍の勝利に終わった。




 翌日、トードが集めた傭兵を主体にした増援500が到着。
 ファイターとバーサーカー主体で城門に入った時に、『人徳って大事だな……』と思ってしまったのは内緒。

「あんたが、この町の反乱軍の大将か?
 俺の名はライアン。
 『獣王』って呼ばれる大陸一の魔獣使いサマだ。
 よろしく頼む」

「エリーと申します。
 歓迎しますわ。
 さっそくですが、この隊の魔獣全てお任せします」

 トードにライアンの事を話していたが、ちゃんと捕まえてくれたようである。
 フレディの後釜が埋まってほっとした私にライアンが獰猛な笑みを浮かべた。

「じゃあ、さっきから窓越しに睨んでいる、あのドラゴンも俺に任せるのか?」

 あ。
 ぽちがめっさ殺気出してやがる。
 こいつ金次第で裏切りかねないからなぁ。
 わからないではないが。

「貴方には無理でしょ。あれ。
 私のペットだから触らなくていいわよ」

 ぴしゃりと言ってやると豪快にライアンが笑い出す。

「こりゃいいや。
 お姫様はドラゴンテイマーだったとか!」

 それに何か答えようとした時に後ろのバーサーカーから声がかけられる。

「オレ。
 デュラン。
 たたかう。
 よろしく」

 後でトードに聞いた話だが、辺境の蛮族達を奴隷としてこき使っていたらしい。
 で、そいつらの開放を条件にこっちに送り出したとの事。
 もちろん、身辺整理の再徹底を厳命したのは言うまでもない。
 現状、私が率いる解放軍別働隊の陣容は後詰を入れて再編されてこんな感じである。


 解放軍 別働隊 総兵力 およそ1200

 総司令官 エリー(プリンセス)
    ぽち(ドラゴン)   
    ポイナ(ワイアーム)

 副司令官 アッシュ(ナイト)
    ナイト・ファイター隊 250

 副指令官 スザンナ(ヴァルキリー)  
    ヴァルキリー・アマゾネス隊 250

   隊長 オデット(ウィッチ)
    魔法隊(ソーサラー・ウィッチ・ウィザード・ドールマスター) 50

   隊長 エリナ(クレリック)
    クレリック隊 50

   隊長 ヴェルディナ(アーチャー)
    アーチャー隊 50   

   隊長 ライアン(ビーストテイマー)
    魔獣隊 ビーストテイマー 50
        ヘルハウンド・オクトパス・グリフォン 20体

   隊長 デュラン(バーサーカー)
    バーサーカー隊 500

 増援で増えたはいいが負傷者はまだ回復していないし、トードが集めた連中も何処まで使えるか分からないので攻勢なんて却下。
 訓練と親睦をかねてバイロイトの城壁修復作業をさせていたり。

「む……ここは……」

「おきましたか。アッシュ。
 あの後気を失っていたのですよ。
 今は、あの戦いの翌日です」

 ちょうど見舞いに来た時にアッシュが目を覚ましたので、私はそのまま椅子に腰掛けた。

「物見の報告では、帝国軍は一旦兵を引いてアンベルグとエルランゲンの間に防衛線を敷いたみたいですね。
 どっちを攻めてもゼノビアから後詰が出せる配置です。
 こちらも、魔女デネブが降伏しましたのでその警戒に当たっていた兵をこっちに呼んでいる所なのでしばらくは動かないでしょうね」

「それだけ、姫様の宣言が衝撃的だったという事じゃろうな。
 だからこそ、姫様。
 嘘偽りなく言ってくれ。
 皇子は……トリスタン皇子は本当に生きておられるのか……?」

 老人から搾り出したかのような魂の言葉に、私は彼の手を取って囁く。

「本当です。
 我々はトリスタン皇子が生きているのを確認しており、接触する為に配下の者を動かしています」

 老人の目から涙が溢れる。
 彼の後悔が、捕らわれの時間の中に積み重ねられた怨嗟が、その涙によって解けてゆく。

「おお……神よ……
 貴方に感謝します……」

 ただ静かに嗚咽の声をあげる老人を一人にしてあげる為に、私は静かにアッシュの部屋を出る。
 その後ろにコリが居て私に囁きかけてきた。

「姫様。
 良いニュースと悪いニュースがある。
 どっちから聞きたい?」

「良いニュースからお願い」

「トリスタン皇子生存のニュースはスラムにまで広がって、動揺が始まっている。
 既にスラムの有力者の幾人かはこっちに寝返った」

 たしかに良いニュースだ。
 これで、ゼノビア攻略の障害の一つであるスラムについて手が打てるからだ。

「で、悪いニュースは?」

「トリスタン皇子の従者ってのに接触できた。
 だが、解放軍の振る舞いに信用ができないらしい。
 特に姫様。あんたが」

 ですよねー。
 分かっていたけど、デネブ取り込みの為のカオスフレームの低下がこんな所に出てきている。
 とはいえ、攻略の手段がない訳ではない。

「じゃあ、その従者に再度接触して頂戴。
 『お話がしたい』と」

「姫様聞いているのか?
 相手はあんたが信用できないって言っているんだぞ!」

 呆れ声でコリが肩をすくめる。
 私も似たようなポーズをとって茶化しながら話を続ける。

「だから、お話をして相互理解をしましょうって言っているのよ。
 何もトリスタン皇子と話がいきなりできる訳ないでしょう。
 宗教都市プルゼニュで双方二人の従者をつけてお話をしたいと言って頂戴」

 貿易都市フィラーハ。
 占星術師ウォーレンが占った結果、トリスタン皇子とその一党が潜んでいる可能性が一番高い場所である。

「買収は?」

「しなくていいわ。
 むしろ逆効果よ。信用されていないらしいから。私」

「違いない」 

 二人して冗談に笑い声をあげるが、後になって思った。
 こんな冗談で笑っているから、信用されないんじゃないか?私?
 
 

 
後書き
オリキャラメモ

 デュラン バーサーカー

 トードが辺境の蛮族達を奴隷としてこき使っていたらしい。
 で、そいつらの開放を条件にこっちに送り出したとの事。
 トードは後でエリーから身辺整理の説教を食らう。

戦死
 フレディ デボネア将軍に一撃。つよい。
 ジドゥ  大軍の包囲相手に連絡線を確保するのがどれだけ難しいか。
  
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