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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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07 はるかなる日々 その一

 
前書き
 調べれば調べるほど納得する新生ゼノビア王国崩壊の理由。
 まぁ、このあたりは私のオリジナル解釈という事で。 

 
 城塞都市バイロイトを私が率いる別働隊が落としたのは、ポグロムの森突破を決意してから七日目の事だった。
 その兵力は1000で、ポグロムの森を守備していた帝国軍降伏兵などを吸収して規模だけは膨れ上がっている。
 その分、治安は悪化したが。

「これで反乱軍本拠地のミュルニークと連絡がとれますな」

 そう言ったのが隣にいるゼノビア王国騎士団長だったアッシュ。
 この城に幽閉されていたのを救出したのである。

「死にぞこないの老いぼれが、この城に捕らわれ20年あまり。
 2度と光を見れるとは思わなかったよ」

 そうやって城壁から空を眺めるアッシュの鎧姿はまだまだ現役の雰囲気が醸し出されていた。
 この街は彼を捕えるために作られたような町だから、ある意味監獄になっている。
 つまり、外からも入りにくい要塞と言ってもいいだろう。

「どうやらわしの死に場所を見つけてくれるらしい。
 どうだね?
 このわしを反乱軍に加えてはくれんかね?」

 捕らわれた老人の声には張りがあり、差し出された篭手には力強さがある。
 私は手を握って、長年の問いを問いかける事にした。

「こちらこそ喜んで。
 だからこそ聞かせてください。
 何故殺されなかったのです?」

 私の真顔を見て、こちらが事情を知っているのは分かっていると悟ったのだろう。
 老騎士の口から、真相が語られる。

「25年前にグラン王が暗殺された後で知った話だ。
 あれは、魔導師ラシュディの魔法でアッシュに姿を変えた黒騎士ガレスの手によるものだった。
 だが、私は王族を守るべき役目を果たせなかったことから、罪を否定することなく獄に捕らわれた。
 騎士団長でありながら王家を裏切って王族を殺害したとして、狂戦士の異名と共にね。
 その理由は君達だよ」

 やはりか。
 うすうすは感づいていたが。

「大規模反乱が発生した時、あの当時のゼノビアの関係者だったら、必ずわしを助けるだろう。
 そして、それを見過ごす帝国軍ではない。
 私は、君達反乱軍を誘い出すための餌という訳さ」

 となれば、帝国軍はこの街をどうする?
 私の顔から血の気が一気に引いた。

「全軍城外に出て!
 街の住民も避難させなさい!!
 やつら、この街ごと反乱軍を根こそぎ殲滅させるつもりよ!!!」

 私の叫び声に周囲の兵がうろたえる。
 だが、その狂騒をアッシュはただの一声で打ち消して見せた。

「案ずるな!
 既に帝国の仕掛けは解除してある!
 この街は少なくとも崩れはせぬぞ!!」

「……本当なのですか?
 それは?」

 周囲の沈黙にたまりかねて私が切り出すと、アッシュは歯を見せて笑って言ってのけた。

「わしは信用できないだろうが、この街の住民がこの街を滅ぼすのを黙って見ていると思うか?
 牢獄からは出れなんだが、耳はいいのだよ。わしは。
 来るのが遅すぎたようだな」

 老人らしい笑い声をあげるアッシュに安堵感を覚えながら、ニンジャのコリに命じて確認を急がせる。
 実際、一日かけた探索で、罠が無効化されたのは確認できた。
 『トロイのもくば』を使ったもので、城壁と一体化したこの街全体の崩壊を企んでいたらしい。
 なんて恐ろしい。

「兵をこの地に残して帝国軍を待ち受けます。
 アッシュ殿。
 指揮をお願いできますか?」

「わかった。
 大いに暴れて見せよう」

 翌日。
 城塞都市バイロイトの会議室ににて頭を下げた私に、鎧姿の老騎士は胸をどんと叩いて了承した。
 そして、私は会議室にいる幹部連中に向けて口を開く。

「聞いた通りよ。
 スザンナ。オデット。フレディ。エリナ。ヴェルディナは彼の指示に従う事。
 ジドゥはミュルニークとゴヤスの連絡線を確保に努めて。
 魔法都市パルマノーバ開放は本隊と連携して行うからしないように。
 フレディとスザンナ。
 貴方達が副官となってアッシュ殿を支えるように」

「「「「「「了解」」」」」」 

 ヴァルキリーのスザンナ、ウィッチのオデット、ビーストテイマーのフレディ、クレリックのエリナ、アーチャーのヴェルディナ、ホークマンのジドゥが声をそろえて敬礼する。
 これぐらいの統制がとれる部隊になってしまった。
 それは、その分戦場経験を積んだと言う訳で、なんとなく心が痛い。
 私は一人会議室を出て、影の名前を呼ぶ。

「コリいる?」

「はいはい。姫様。お側に」

 ニンジャは表に出しても意味がない。
 影に隠してこそ意味があるのだ。

「ゼノビア内部のスラムの情報収集と買収よろしく」

「了解。
 で、姫様はどちらに?」

 ニヤニヤ笑っているコリに負けず劣らず、ニヤニヤしながら私は私の予定を伝えた。

「そりゃ、好き勝手したからわびを入れないとね」



 反乱軍本拠地ミュルニーク

「おい。
 あれエリー様じゃないか?
 ポグロムの森を一週間で突破してきたって」

「だが、悪い噂も聞いているぞ。
 悪徳商人トードの助命を許したとか」

「私も聞いた事あるわよ。
 あの魔女デネブ・ローブと停戦を結んだとか」

「悪い人じゃないんだろうけどなぁ。
 おかげで、ゼノビア攻撃に全軍を集められたんだから……」

「しっ!
 聞こえるぞ!
 黙ってろ!!」

「しかし、エリー様の後ろについているウィッチも凄い美人だよなぁ……」

「あれが、魔女デネブだったりして」



「正解」

「聞こえるわよ。
 黙ってて」

「はいはい。
 しかし貴方もなかなかのものよね。
 こんなに早く『おうごんのえだ』を取ってきてくれるなんて」

「それは、悪徳商人に言ってあげてよ。
 今、彼善行をつもうと奮闘しているから」

「あらあら。
 私が褒めたら悪徳が溜まっちゃうじゃない」

「分かっているじゃない」

 城塞都市バイロイト開放から三日後。
 私は魔女デネブを連れて反乱軍本拠地ミュルニークを歩く。
 もちろん理由は、デネブとトードを仲間に引き込んだ事の釈明の為である。
 私が会議室に入ると、一部からの視線がきつくなる。

「この火急の時期に何処に行かれていたのか説明をおねがいできますかな?
 エリー殿」

「もちろん。
 入ってきて。デネブ」

 ランスロットのきつい視線と質問に私が返事をするとドアの前で控えていたデネブが室内に入り、その妖艶な笑みを反乱軍首脳部に振り掛ける。
 誰一人として虜になった者がいないのを察して若干デネブの機嫌が悪くなったがそれは気にしない。

「デネブを味方に引き込んだわ。
 これが、デネブの降伏署名。
 領地の放棄と反乱軍への協力を条件に降伏するそうよ」

 ばん!とテーブルにその降伏書類を叩きつける。
 見ると、笑っているやつが一人。
 デスティンだ。

「さすがエリー。
 考え付かない事をやってのけるね」

「あら、いい男」

 デネブ。とりあえず黙れ。
 カオスフレームが下がっている事は分かっていた。
 だからこそ、今がデネブを味方に引き入れるチャンス。
 そして、ディアスポラ地方の森にしかない『おうごんのえだ』を入手できる悪徳商人のコネもある。
 躊躇う事無くトードに頼み、ぼったくり価格で『おうごんのえだ』を入手して、彼女の元へ飛んだという訳。

「で、他に質問は?」

「あんたの手腕に文句を言うつもりはないが、もう少し手段は選べなかったのか?
 元ゼノビア王国の連中から苦情が来ているぞ」

と、たしなめてくれたのはシャローム領主のギルバルド。
 彼の助言に私は素直に頭を下げた。

「勝手な振る舞い申し訳ありません。
 ですが、これも勝利の為。
 手段は選んではおりませんが、反乱軍リーダーであるデスティン殿の命には従う所存」

 こういう政治的儀式はとても大事だ。
 特に、自分が粛清されかねない危ない橋を渡っている時は特に。

「いいよ。
 エリーは我々の為にやっているんだからね」

 デスティンの一言でこの話はこれでおしまいとなった。
 で、私が席に座り、皆が机の上の地図に視線を向ける。

「で、戦況は?」

「良くはない。
 帝国軍はデボネア将軍自ら四千の兵を繰り出して城塞都市バイロイトを攻撃している。
 こちらから後詰を出そうかと考えていた所だが、宗教都市エルランゲンとミュルニークの間にあるロシュフォル教会近くに帝国軍三千がこちらを伺っており、どうするか迷っていたところだ」

 私の質問にカノープスが答える。
 おそらく、デボネア将軍の立てた策はこうだ。
 反乱がここまで拡大した以上、速やかな鎮圧は不可能な為、後に残らない為に確実に殲滅する必要があった。
 その為、信頼できる兵をゼノビアに留めたまま反乱軍の来寇を待ち、一気に殲滅するつもりなのだろう。
 一万の兵のうち、もっとも信頼できる直属騎士団1000は総予備にして、残りを3000の部隊三つに分ける。
 一つはゼノビア守備に残し、後の二つで反乱軍を攻撃。
 数だけならば、6000対3000で十分に殲滅可能だし、アヴァロン島に来ている黒騎士ガレスの後詰を期待できたのだ。
 だが、ロシュフォル教大神官フォーリスの殺害が全てを狂わせた。
 神官や僧職が多いアヴァロン島の抵抗運動に、暗黒属性の黒騎士ガレスと相性は最悪。
 後詰を期待するどころか、デボネア将軍が黒騎士ガレスの求めに応じて手勢をアヴァロン島に送った事を悪徳商人トード経由でつかんでいたのである。
 デボネア将軍が自ら出てきたのはそれが理由だろう。
 そのあたりを説明すると、皆の視線が変わる。

「敵も焦っているみたいね。
 もっとも、こっちもいっぱいいっぱいだけど。
 この戦いは、ゼノビアを攻めたら負けです」

 きっぱりと言いいきった私は更なる爆弾を投げ込んだ。

「こう言いなおしましょう。
 我々反乱軍がゼノビアを開放してはいけません」

 導火線に火はつけた。
 炸裂させる為に私は一旦言葉を区切り、皆を見渡してから爆弾を炸裂させた。

「ゼノビアを解放するのは、トリスタン皇子でなくてはいけません。
 トリスタン殿下は生きています」

 新生ゼノビア王国が何で崩壊したかという面で考えると、実はある疑問が沸いてくる。
 トリスタン皇子の権力は実はかなり弱かったのではないかと。
 またこれがらみのエンディングがあったりするからたちが悪い。
 さらに厄介なのが、反乱軍の正当性である。
 今は反乱軍を名乗り、後に解放軍を名乗る我々をウォーレン派としよう。
 後にぶいぶい言わせているランスロットとその一党は騎士ではあるが、騎士『でしか』ない。
 ゼノビア残党の中では傍流なのだ。
 実際、この反乱軍がここまでの規模になってもその正当性の担保は、シャローム領主であるギルバルドに頼っている始末。
 もし、この反乱がここで鎮圧された場合、反乱首謀者の名前ではなく『ギルバルドの乱』と記載されるだろう。
 話がそれたが、反乱軍においてこれぐらいデスティンとウォーレンの影が薄い。
 しかも、当人はそれを気にしていないから困る。
 ベストエンドだとこの二人そのまま世界の危機を救う為に旅立っちゃうから、そりゃ新生ゼノビア王国がガタガタになるのも無理はない。
 ゼノビア王国を開放した主力が去り、新生ゼノビア王国を運営しているのは外様と旧王国メンバーなのだから。
 トリスタン皇子は善王と称えられたらしいが、裏返せば善政をせざるを得ない状況に追い込まれていたともとれるのだ。
 何しろ、あのゼノビアのスラム問題は数年で片付くものではないし、その王都を開放したのは彼ではないのだから。


 私の爆弾発言の後、デスティンとウォーレンの三人で集まる。
 もちろん、話はトリスタン皇子の扱いだ。

「まじめな話、私はデスティンが王を目指すのであればそれを支持するわよ。
 どうする?」

「王なんて柄じゃないよ」 

 言うと思った。
 これで、話がぐっと楽になったのでウォーレンに問いかける。

「数年前になるのかな。
 元ゼノビアの属国だった北の王国リヒトフロスで騒乱が発生したけど鎮圧された。
 あなたがそれを知らないとは言わせないわよ」

 さしあたって、気分は犯人を追い詰める探偵の如し。
 これで顔色を変えないのだからウォーレンもたいしたたまである。

「たしかに知っていますが、それが何か?」

「その時の主要メンバーが、ゼノビア残党、しかも元軍師とかが参加している事も知らないと?
 そして、その時のリーダーが元ゼノビアの騎士エストラーダ・エクソンとなっているけど、彼は乱の途中で命を落としている。
 彼の死後誰が乱を指揮していたのかしら?」

「……」

 『伝説のオウガバトル外伝 ゼノビアの皇子』なんて誰が知っているんだよ。
 ネオジオポケットだからやっていた人少ないし。
 北の王国リヒトフロスって何処って頭を抱えたのも懐かしい。

「占星術師ウォーレン。
 あんたが何者なのか私は知らないし、知るつもりもない。
 あんたがあんたの正義で動くのは理解できるけど、それに付き合う他の人の事情ももう少し考えても良いんじゃない?」

「それを貴方が担ってくれるのであれば、私は貴方を呼んだ事を誇りに思うでしょう」

 ウォーレンの言葉を私は真っ向から睨みつける。
 彼が何を考えているのわからないが、今はその言葉を信じる事にしよう。

「占って頂戴。
 トリスタン皇子の居場所を。
 まだこの近くにいるはずよ。
 彼が馬鹿でないならば、この状況を見逃すはすがないわ」 
 

 
後書き
ここ山場にして終わってもいいんじゃないかという誘惑が。が。 
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