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占術師速水丈太郎 五つの港で

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第八章


第八章

「そうだったのですね」
「海の中を引き摺っていった形跡もあります」
 原田はこのことも話した。
「そして海の中で捻って、です」
「不可思議なことばかりですね」
「ええ。これで何かわかったでしょうか」
「今わかったことは僅かです」
 速水はそれだけしか言えなかった。今はだ。
「ただ」
「ただ?」
「カードが教えてくれました」
 また懐からカードを出した。今度のカードは。
「これです」
「それは」
「正義です」
 翼を持つ女神が右手に剣、左手に天秤を持っている絵がそこにあった。それを原田に見せての言葉である。
「どうやらその海士長は悪事の結果そうなったようですね」
「それでなのですか」
「カードはそれを教えています」
「評判のよくない人物でしたが」
「では思い当たる要素は」
「尽きません」
 それもかなりだというのだった。
「一体幾つあるやらです」
「本当に素行に問題のある方だったのですね」
「自衛官にも色々いますので」
 語る原田の言葉には苦いものが宿っていた。身内の恥を語ることは彼にとってもあまり気持ちのいいものではなかったのである。
「中にはそうした人間もいます」
「そうですか」
「怨みを持っている人間もこの横須賀にも多いので」
「左様ですか」
「容疑者が多過ぎました」
 ひとえにそうなのだった。思い当たるふしが多いというのも大変なことである。
 そしてであった。原田はここまで話したうえで。速水に顔を向けて問うてきた。
「参考になったでしょうか」
「はい、充分です」
 速水は静かに彼に言葉を返した。
「これで」
「そうですか。それではですね」
「はい?」
「その被害者の船ですが」
「あちらの港のですか」
「そこまで船を出しますので」
 こう申し出てきたのであった。
「小船ですがそれで宜しいですか?」
「はい、それではそれでお願いします」
「では」
 こうして速水は原田と共に横須賀のもう一つの港にも向かった。そこは水道を通っていくものであり左右に緑の草が見える。そこを通ってそのうえでその港に入った。
 そこにも白い建物が見え数隻の艦艇が見える。中にはかなり大きなものもある。桟橋が一つでありそこに並んで停泊していた。速水はそこに来たのである。
「塚本士長の乗っていたのはですね」
 原田がその護衛艦に案内してそのうえでそこでも話を聞いた。これで横須賀での事情聴取は終わった。わかったのは彼の個人情報だけであった。
「横須賀にずっといたわけではなかったのですか」
「はい、そうなんですよ」
 横須賀の本港に戻ってそのうえで原田と話をしていた。桟橋を歩きながら話をしている。
「途中術科学校にも行っていました」
「術科学校といいますと」
「海上自衛隊、いえ自衛隊には各種の技術を学んで身に着ける学校がありまして」
 原田は自衛隊についての説明もしてきたのだった。
「塚本士長は航海のマークでして」
「その学校は横須賀ではなく呉にあるのですね」
「それで呉にいたことがあります」
 そうだったというのである。
「そして呉でも江田島にその学校がありまして」
「江田島にですか」
「そこにいたことがあります」
「江田島といいますと」
 ここで速水は考える顔になった。そうしてそのうえで原田に対して言うのだった。
 
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