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銀色の魔法少女

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第四十三話 暴走開始 後半

side 刃

 俺は今まで何をやっていたんだ。

 会議の中、俺は頭を抱える。

 俺は、あいつも同じこの世界を、『リリカルなのは』を楽しみに来た転生者と考えていた。

 けど、違った。

 あいつは自分の記憶を消して、この世界の住人となる道を選んだ。

 なぜか?

 さっきまでの俺ならわかるはずもないことだ。

 俺は、あいつから言われた一言で、やっと気づけた。




         『あなたは、なのはたちを人として見ていない』




 一瞬、何のことだかさっぱりわからなかったが、すぐに理解した。

 俺は、『リリカルなのは』のキャライメージを通して、彼女たちを見ていた。

 今ここにいる彼女たちを無視して、幻想の世界の彼女たちを見ていた。

 そりゃ、嫌われるのは当然だ。

 彼女たちの意思を無視して、ゲームのように彼女らに接していたら、ウザイ奴以外の何者でもない。

 あいつはそれが分かっていたらか記憶を消した。

 余計な知識なしで、この世界で生きることを選んだ。

 それが本来の転生だ。

 神様だ、特典だで見失っていた本来の形だ。

 俺は一度死んだ。

 そして新たな生を受けた。

 なら、この世界で生きるのが道理だった。

 けれど、俺はそれを見失い、ゲーム感覚で生きていた。

 いや、『生きている』は言えない。

 何が転生者だ。

 こんなことに気づけないなんて、ただの馬鹿以下だ!

 けど、運目は残酷だ。

 後から気づいた俺より、あいつは辛い人生を歩んでいる。

 俺は前世で辛い過去を背負って生きていた。

 だから、神様が俺を転生させてくれた。

 話を聞く限り、ショウのやつもそうだった。

 アイツは小さい頃に親に捨てられ、ずっと施設育ちだった。

 これ以降は聞くのははばかられたが、たぶん、まだ辛いことがあっただろう。

 ならあいつはどうだ。

 前世で辛い目にあい、転生してからもこのざま。

 呪われているとしか思えない。

 理不尽すぎる。

 俺が呑気に原作待ちをしている間、あいつは自分を鍛え続けた。

 そりゃあ、勝てるはずもないわ。

 完敗、圧倒的なまでに完敗だ。

 おそらく、この後も俺はあいつに勝つことはできない。

 心が違う、志が違う、信念が違う。

 そう、その時だった。




『緊急事態発生! 闇の書の暴走が確認されました、局員は所定の持ち場につき、事態に対処してください、繰り返します、闇の――』







side ALL

「エターナルコフィン!」

 全てを凍てつかせる最強の凍結魔法が闇の書に襲いかかる。

 起動したばかりの闇の書は、それを回避することができず、直撃してしまった。

 全身の様々ところから凍り、最後には分厚い氷の壁の中の闇の書を閉じ込めてしまう。

 この魔法の前には、いくら闇の書だろうと解除は不可能、骨の髄、リンカーコアすら凍りついて指一つ動かすことはできない。

「これで、後は次元の狭間に流すだけだな」

「ああ、やっと父様の願いが――」

 その言葉は、最後まで続かなかった。

「え?」

 氷の壁を突き抜けた黒い刃が、仮面の男の脇腹に突き刺さっていた。

 スっと、それが消えると、彼の腹部から血液が溢れ出す。

「が、バカな!?」

 分からなかった。

 完璧な封印方法だったのに、どうしてそれが破られたのか不思議だった。

 しかし、次の闇の書を見て、全てを理解した。

「氷の中が、空洞になっている!?」

 そう、実際には彼らの凍結魔法は闇の書にまで届いておらず、その少し前までを凍らせていたに過ぎなかった。

「そうか、そういうことか!?」

 もう一人の仮面がどうしてそうなったかを理解した。

「あいつは、凍らされる前に同等以上の凍結魔法で自分を凍らせて、我らの魔法を防いだのか」

 その後は、魔法を解除するだけでいい。

 そうするだけで、エターナルコフィンは防げた。

「ばかな、そんなことができる魔導師なんて、被害者の中には――」

 そう、魔道士の中にはいなかった。

 しかし、騎士の中にならいた。

「戦場 遼、彼女は凍結魔法の使い手だった、ならば自身の凍結魔法に対して打開策を持っていても不思議ではない」

 思わぬ誤算。

 長年積み上げた計画が、たった一人の少女の存在によって瓦解した。

 そして、誤算はそれだけではなかった。

「これは!?」「バインド!」

 二人の体を、青い鎖が縛り上げる。

「ストラグルバインド、使いどころがない魔法だけど、こういう時にはうってつけだ」

「「く、あ、ああ、あああああああああ!!」」

 彼らの変身魔法が強制的に解除される。

 仮面が落ち、二人の獣娘の姿が現わになる。

「やっぱり君たちだったんだね」

 彼女らは、リーゼロッテとリーゼアリア、両者ともクロノの師匠にあたる存在だった。

「今から君たちはアースラにて身柄を拘束させてもらうよ、ここはあまりにも危険すぎる」

 二人を転送魔法にで送り出した後、急に静かになった闇の書を見つめる。

(おかしい、氷の壁を貫けるほどの力がありながら、どうして出てこない?)

 そう思い、良く中に目を凝らしてみる。

 闇の書はこちらには目もくれず、あさって方向を凝視しているのがわかる。

(何だ、何を見ている?)

「我が主、彼女もすぐにそちらへお連れしましょう」

 彼女? クロノがそう疑問に思った時だった。

「クロノ君!」

 なのはとフェイト、アルフにユーノ、それに刃が現場に到着したその時、闇の書がこちらを、ぐるりと振り向く。

「管理局員数、さらに増加、優先順位、変更、結界を展開」

『Gefängnis der Magie』

 まずい! そう感じたクロノは、なのは達に全力で叫ぶ。

『全員ありったけの魔力で防――』

「我が左腕は、全てを貫く鋼の腕、 『虚刀流・花鳥風月』」

 クロノの叫びより先に、それ、は放たれた。

 闇の書の左腕から放たれた紅い槍は、ボロボロになっていた氷の壁を粉々に砕き、なのはに襲いかかる。

「!?」

 けれど、先ほどのクロノの叫びのおかげでなんとか反応できたなのはは、それをシールドで防ぐ。

「きゃあ!?」

 しかし、それの威力は凄まじくシールドは粉々になるが、なのははなんとか回避できた。

「虚刀流って確か!?」

「うん、遼が使ってる技だね」

 ユーノの言葉をフェイトが肯定する。

「けど、クリムさんに聞いてたのと違うの!?」

 虚刀流は、武器を持たない体術。

 当然、遠距離攻撃などできるはずもない。

「多分、闇の書のアレンジだ、厄介なことに彼女は取り込んだコアの持ち主の技を完全に会得しているらしいな」

 そうクロノが告げた瞬間だった。

「咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを凍てつく光となれ……」

 闇の書の頭上に、銀に輝く光が集まり出す。

「「「「「まずい!?」」」」」「?」

 なのはの最大威力を誇る魔法に遼の凍結を足した、『スターライトブレイカ―+h』である。

 途方もない威力の『スターライトブレイカー』に凍結を加えたとなれば、その威力は想像もできない。

 少なくとも、かすっただけでも凍りつくことは誰にでも予想できた。

「今からでも一発ぶちかませば」

 そう言って刃はインフェ二ティバスターを放つ。

 しかし、

「盾よ」

『Panzerschild(パンツァーシルト)』

 掲げた両手の前に黒く光るシールドが現れ、刃の砲撃を防いでしまう。

「だめか! ならもっと強力なのを――」

「無駄だ! もう時間がない」

 そう、もう収束は終盤に差し掛かっていた。

 元々彼らには時間がなかった。

 いくらなのはよりも収束に時間がかかるとしても、同じように『スターライトブレイカー』級の魔法を撃てる程の余裕はなかった。

「みんな固まって!」

 なのはと刃の比較的防御が高い二人を前に、その後ろで残りの全員が二人の補助にまわる隊形であった。

『Wide area protection』『ワイドエリアプロテクション』

 二人の前に、ピンクと赤の防護壁が現れ、残りはその魔法にかぶせるように自身のシールドを加える。





 そして収束が終わり、




        「凍てつけ、閃光、 スターライトブレイカー!」





 銀色の光が、全てを覆い尽くした。






 
 

 
後書き
『スターライトブレイカー+h』
強力な収束砲で蹂躙すると同時に周囲を凍てつかせる魔法。
順番としては、破壊→凍結。
かすっただけ、または盾で防いだとしてもその部分から凍りつく。 
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