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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:~神々の饗宴~
  第七話

「《縛鎖の城》は西部エリアにある城型ダンジョンの名前だ。近辺にはデュラハンやアンドロイドをはじめとする鉄機系のモンスターが出現する。今回のミッションは《縛鎖の城》の調査、というか最奥部まで行くこと。そこに管轄のNPCがいるから、そいつに話しかければミッションクリアだ」
「正式には《縛鎖の城》は城跡の遺跡、だな。すでに崩れてしまっているところも少なくはない。それに面積がかなり広いから、踏破するには二日ほどかかる。途中には休憩地点がいくつかあるから、そこで休憩を何度かとろう」
「コクトさんの参戦は少し遅くなるみたいですね。どうやらしばらくは我々四人だけで戦わなくてはならないようです」
「なるほどなぁ……なぁ、みんなはもう何回かその《縛鎖の城》に行ったことがあるのか?」

 セモンが聞くと、三人は顔を見合わせて、それから言った。

「行きましたねぇ。何回も」
「懐かしいなぁ、リーリュウがあそこのボスに殺されかけた時の話」
「やめろ!それは俺の黒歴史だ!」
「リーリュウってば一人でボス倒そうとか言い出しましてね――――」
「やめろぉおおおおおお!!!」

 こういったやりとりを見ていると、セモンはこの三人に結ばれた固い絆を感じ取ることができた。まるで自分と、秋也と、陰斗のような……

「っ―――――」

 今はもうない、その絆を思い出し、セモンの心の穴がうずく。

 しかしその感情を無理やり押し殺すと、セモンは前を見据えた。


「(小波は約束した。この計画が完成すれば俺を日本に返すと。そうすればもう一度琥珀に会える。秋也に会える。陰斗に会える。それに――――)」

 セモンは、小波が漏らした《本物の陰斗》と言う言葉が気になっていた。

 本物の陰斗。ならば今まで自分たちとともに生きてきた天宮陰斗は何者なのだろうか。

 それを、突き止めなくてはならない。



  
                     *



「お兄様?」
「うん?どうしたんだい?」
「いいえ。見なくてよいのですか?」
「ああ……今はまだ、いいかな……」


                     *


 
 砂。

 砂砂砂砂砂。

 見渡す限りが全部砂。

 それが、《縛鎖の城》の第一印象だった。

「す、砂嵐ひどすぎるだろ!!」
「知らん!いつもはこんなんじゃないんだ……」
「リーリュウ!どうにかできませんか!!」
「……やってみる」

 リーリュウが空中に幾何学模様を描き、《風を呼ぶ笛(エオス)》を呼び出す。

「……風よ聞け。お前たちの主の声を」

 リーリュウが横笛を口に当てる。

 激しい砂嵐とあまりにもミスマッチな、涼しく、透き通った音が響いた。リーリュウの笛の音が響き渡ると同時に……

「砂嵐が……」
「収まり始めたぞ!」
「行きましょう。この《砂の壁》を超えれば少しましになります。リーリュウ!!」

 ハクガの声に答えて、リーリュウがうなずく。

 そのまま四人は進む。砂嵐は、リーリュウの笛の音が聞こえるとかしずくように静かになる。そして、いつしか砂嵐は音がなくても静けさを保つようになった。

「ふぃ~。やっと抜けたか~」
「お疲れ様でした」

 リーリュウが《風を呼ぶ笛》をしまい、セモンに語りかける。

「みろ、セモン。あれが……《縛鎖の城》だ」
「あれが――――」

 リーリュウの指差した方向にあったのは、さび付いた銀色の建造物の残骸たちだった。数が非常に多く、それもそこかしこに散らばっている。かつては非常に栄えていたのであろうと推測することができた。

「《縛鎖の城》……」
「もっと正確には《縛鎖の城跡地》なんだけどな……」
「しかしフィールドの登録名は《縛鎖の城》ですからこれであってるんですよ。さぁ、行きましょう」

 ハクガに促されて四人は、頷きあうと《縛鎖の城》へと踏み込んでいった。

 
                   
                     *


 
 《縛鎖の城》内部には、今までセモンが戦ったことの無いタイプのモンスターが出現した。

 《機械モンスター》である。アインクラッドには原則として《機械モンスター》は出現しなかった。(見た、と言う噂はいくつかあるが)もちろん、ゴーレム系やアインクラッド第五十層ボスの多腕仏像の様に金属でできたモンスターは腐るほどいた。しかし《近未来的》とでもいうべきか、そのような機械モンスターはアインクラッドにはいなかった。当然の様にアルヴヘイムにもそんなモンスターはいないし、妖精郷のアインクラッドも同様だ。

 それが……この《縛鎖の城》――――ひいては《ジ・アリス・レプリカ》には出現した。

 動きが単調で決して強敵と言うわけではないのだが、いかんせん硬い。非常に硬い。金属装甲によって剣がはじかれてしまう。

 セモンの武器はストレージに入っていた銀色の刀だ。固有名詞は《ハヤテガミ》。なかなかスペックのいい刀で、ALOで使っている刀とよく似た感覚がする。

 カズの武器は彼の《ギア》でもある《ノートゥング》。カッターのような形状の太い大剣が外見にそぐわぬスピードで振るわれ、機械モンスターたちを破壊していく。

 ハクガの武器は巨大な弓だった。《セレーネ》という名前のその弓は、小型の両手剣に変形し攻撃できたが、それだけではない。ハクガは、自分の手からエネルギーでできた矢を作り出すことができるのだ。それをつがえて、機械たちを打ち抜く。

 リーリュウの武器は細い刀。それを逆手持ちにし、ひらりひらりと舞うように動き回る。時折機械モンスターと接触したかと思うと、機械たちの弱点部分を的確に切り裂き、既に次の行動に入っていた。その戦い方は《舞刀》カガミを思い起こさせる戦いだった、

 
 そして、最も驚愕したのは《ソードスキル》の存在。この世界が一体どのような機構で成り立っているのかはいまだ謎のままだが、なぜかアインクラッド時代に使用できたもの、あらたにALOから出現したものも含めソードスキルが使えるのだ。まぁ、13のユニークスキル情報を保管していたくらいだからきっとどこかにデータがあるのだろうが……。

 驚愕はそれだけでは収まらない。カズやハクガ、リーリュウまでもが、それらソードスキルを縦横無尽に使いこなしているのだ。アインクラッドにもこれほどの使い手たちは少なかった。

「もう終わりか?じゃぁさっさと進もうぜ」

 大剣用ソードスキル《グラビティアス》で中型機械モンスターを一刀両断したカズは、こちらを振り向いて言った。

「そうですね。あらかた片付きましたか……。では、進みましょうか、みなさん」

 ハクガが《セレーネ》をしまい、歩き出す。セモン達も後を追った。

 ふと、セモンの中に疑問がわいた。

 ソードスキルをここまで再現するからには、限りなくオリジナルに近いシステムが必要なはずだ。ALOでソードスキルが再現できたのは、あそこにSAOの管理システムである《カーディナル》の本体があったからである。
 
 いったいどうやって、小波はソードスキルを再現したのだろうか。

「……細かいことは後で問い詰めるか」

 セモンは、仲間たちを追って走り出した。 
 

 
後書き
 こんにちは、お久しぶりですAskaです。

 久々の更新でしたね。今回は戦闘パート(短いけど)でした。次回はコクトさんが登場できるように頑張ります。

 あ、それと序盤の方をさらに編集しました。読みやすくなっていると思うのと、少し話が変わったところもあるので読み返してみてもいいかもしれません。

 それでは、次回もお楽しみに! 
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