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未来の為に

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第二章

「ああいったものがないとな」
「我が国は成り立たないですからね」
「全てナイルの賜物だ」
 ナイルから文明を築いた古代エジプト人が彼等に残してくれた置き土産だというのだ。
「有り難く使わせてもらわないとな」
「連中はこうしたことを頭に入れてるんでしょうか」
「入らないからテロリストになってるんだろうな」
 フザイファは眉を顰めさせてカッザーンに答える。
「そうしたことがな」
「視野の狭い連中ですね」
「それもだ、視野が狭いからテロリストになっているんだよ」
 このことからもテロリストになるというのだ。
「視野が広いと色々なものが見えてよくわかってくるだろ」
「頭にも入りますね」
「それがないからな、連中は」
「ああしてテロをするんですね」
「イスラムは寛容な筈だがな」
 それが看板にもなってきた、実際にその寛容さもあり勢力を瞬く間に伸長されてきた歴史がある。
「それでも連中は違うな」
「正しい信仰を持って欲しいものですね」
「全くだ、それにだ」
 そのピラミッドを見ながらカッザーンに話していく。
「ピラミッドがなくなったらエジプトはどうなる」
「誰も観光に来ないですね」
 カッザーンもスフィンクスのことも頭に入れつつ答える。
「それこそ」
「そうだ、破壊するのは一瞬だがな」
「破壊した後はですね」
「観光で成り立っている国が観光の対象をなくしてどうする」
「国が干上がります」
「それは我々の子供、子孫への犯罪だ」
 もっと言えば人類への犯罪だ。特にそれで生きている今の彼等と将来同じことから生きる子孫にとっては。
「そんなことが許せるものか」
「全くですね」
 二人でそんな話をしていた、とりあえずそのガーニムというテロ組織は今はイスラエルとの闘争を選んでいた、だが。 
 イスラエルは強い、しかもテロリストはどんな手段を使ってでも殲滅する国だ、イスラエルに潜入した彼等もだ。
 徹底的にやられた、それこそ構成員の九割を殺された。捕虜は一切取られなかった。
 その報告を聞いてだ、フザイファはは微笑んでカッザーンに言った。二人は今もデスクワークに徹している。
「今回はイスラエルに感謝するか」
「はい、よくやってくれました」
「敵の敵は味方というがな」
「今回のイスラエルはそうですね」
「あの国も大概だがな」
 中近東のイスラム諸国からはそう思われている、理由はあの場所いるからだ。
「だがな」
「今回は本当に助かりましたね」
「これでガーニムは終わりだ」
 フザイファは満足する顔でカッザーンに言った。
「九割以上死んだからな」
「後はどうということはないですね」
「エジプトに逃げ帰って来たところで一斉に捕まえるか」
「そうしましょう」
 カッザーンもそれで済むと思っていた、実際に彼等はイスラエル政府から情報を得て、今回は敵の敵ということで味方だからだ。
 行動の細かい情報を提供してもらいそれに従って逃げ帰って来た彼等の残党を一斉に捕まえた、だがその中で。
 一人だけ逃してしまった、その一人はカイロに潜伏するとそこで爆弾を作成し多くの銃火器を持って武装したうえでクフ王のピラミッドに飛び込んだ、そしてこんなことを言いだした。
「このピラミッドを道連れに自爆する!」
「何っ、ピラミッドと一緒に!?」
「自爆!?」
 このことにはエジプト国民だけでなく世界中が驚いた、何しろクフ王のピラミッドといえばピラミッドの中で最も有名なものだからだ。
 だから誰もが驚いた、しかし驚くだけではどうにもならない。
 すぐに対策が講じられた、その結果だった。
 フザイファは部下達に険しい顔でこう告げた。 
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