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必死なのだ

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第五章

「夜も寝ないでいきましょう」
「コーヒーを飲んでかい」
「はい、そうしましょう」
 こう言うのだった。
「そうしていきましょう」
「五日の間に」
「早ければ早いだけいいですから」
 だからだというのだ。
「そうしましょう」
「わかった、それじゃあな」
「食事は適当に空いている人が作って」
 インスタントラーメンなら誰でも作ることが出来る、だからだった。
「あとなくなれば一人外に出てもらって」
「ラーメンなりパンなりをか」
「買えばいいですから、いえむしろ」
「むしろ?」
「今のうちに買っておきましょう、皆で」
 考えを変えてこう提案したのだ。
「スーパーもコンビニの中も大変ですから」
「お客さんでごった返しているんだね」
「そうなっています」
 何故そうなっているかというと、言うまでもないことだった。
「もうパニック状態ですから」
「早く買わないとか」
「お金があっても買うものがありません」
 そうなってはどうしようもない、それでだった。
「ですから今のうちに」
「皆で買っておくか」
「そうしましょう」
「わかった、ではだ」
 大石は赤穂のこの提案にも頷いた、そのうえで。
 支社のスタッフ全員で一旦仕事を止めてまでしてものを買いに行った、そしてごった返すスーパーやコンビニの中で何とかものを買い集めて。
 そのうえで急いで支社に戻った、それでだった。
 とりあえずパンを食べてから話をした。
「これだけあればです」
「いけるか」
「とにかく食べるものがないと」
 ついでに言えば飲むものもかなり買っている。
「お話になりませんから」
「仕事ばかりで考えていなかったな」
 そこまではというのだ。
「迂闊だったな」
「腹が減ってはです」
 戦にならぬ、だった。
「もっとも攻めてきそうな国はその食べるもの自体が」
「ないな、そういえば」
「餓えた連中程怖いものはありません」
 これは今の仕事とは直接関係はないがこのことも考えればだった。
「とにかく食べましょう」
「よし、食べてな」
「あとどうしても動けなくなれば随時です」
 各自だというのだ。
「休んでもらいましょう」
「不眠不休じゃないのか」
「倒れてしまっては元も子もないので」
「今までそうだったがな」
「かえって能率が悪いですから」
 二十四時間態勢だがそれでも休養は必要だというのだ。
「そうしましょう」
「わかった、ではな」
 こう話してだった、そのうえで。
 彼等は食べて休養も取りながら二十四時間態勢で動いた、そして。
 二日後の朝、赤穂は仕事の状況を見て大石に言った。
「今の調子ですと」
「どうなんだ?」
「いや、五日じゃなくて」
 仕事の流れを見ながらの言葉だった。
「もっと早くこの国を出られそうですね」
「どれ位かな」
「明日の夕方には」
 その頃にはというのだ。 
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