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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  六十二話:初デート的ななにか

「旅人の宿へ、ようこそ!お泊まりですね?二名様ですか。お部屋は一部屋で、よろしいですか?」
「ああ、頼む」
「え?」

 同室ですか?

「あのさ」
「嫌なのか?」
「嫌とかじゃなくて」

 昨日、ヘンリーが眠れなかったのってさ。
 その後のニコポ的な反応のあれこれを見るに、やっぱり私と、というか女性と同室だったからじゃないの?
 奴隷部屋で大勢で雑魚寝とは、状況が違ったし。

「お前を一人にしとくと、危ないだろ」
「でも。また、眠れなくなるんじゃないの?」
「……大丈夫だ」

 なんか思い出したのか、また赤くなるヘンリー。

「大丈夫そうに見えないんですけど」
「別にしたところで、それはそれで眠れないから。ラリホーでもかけてくれりゃ、いいだろ」

 うーん。
 どうせかけなきゃ眠れないなら、同室のほうが都合がいい、のか?
 でも仮にも未婚の、付き合っても無い若い男女が、宿で二人きりで同室とか、どうなの?

「知らない男に夜這いかけられて寝不足になりたいのか?」
「嫌です」

 すごく、嫌です。
 着替えたからそこまでのことは無いと思いたいが、否定しきれないところが、本気で怖い。
 負けることは無いだろうとは言え寝不足は困るし、そんなのの対応するのも気持ち悪い。

「じゃ、いいな」
「……うん」

 本当にそれでいいのか、疑問は多々残るところではあるが。
 ヘンリーがそれでいいと言うなら、ここは甘えさせてもらおう。


 というわけで、宿に部屋を取り。
 大して無いとは言え、町を回るのに不要な荷物を置いて、再び町に()り出します。

「オラクル屋は、夜にならないとやってないはずだから。場所の確認はしておくとして、まずはモンスターじいさんだね。馬車が無いとダメかもしれないけど」
「そうだな」
「武器屋と防具屋も見たいけど、荷物になるから後がいいよね」
「そうだな」
「占いババさんとカジノも、折角だから見ておきたいし。用を済ませてからでいいけど」
「そうだな」
「で、さ」
「なんだ?」
「……もう、いいんじゃないでしょうか。歩きにくいし」

 また、肩を抱かれてるんですけど。

「嫌か?」
「歩きにくいという意味では、割と」
「……そうか」

 肩を離されて、身軽になります。
 はあ、やっと、自由に歩き回れる。

 と、思ったら。

「……ヘンリー」
「なんだ?」
「手が……」
「歩きにくくは無いだろ」
「そうだけど」

 何故に、恋人繋ぎ(注・握手状態では無く、指と指を組み合わせるようにして手を繋ぐこと)。

「普通に繋いだら、簡単にほどけるだろ」

 まあ、人混みに揉まれて手が外れてはぐれるとか、普通にありそうだけど。

「このほうが、それらしいだろ」

 虫除けを兼ねてるわけだから、それもそうなんですけど。

「いいから、行くぞ」

 でも、なんだか納得いかない。
 ……()せぬ!


 と、もやもやした思いを抱えつつ、うまい反論も思い付かないので、そのままヘンリーに引っ張られたりヘンリーを引っ張ったりして、町を見て回り。

「あ、ヘンリー。あっちも見てみたい」
「そうか。じゃ、行くか」

 必要な場所を確認する以外にも、色々と気になるお店を、冷やかして回って。

「うわー、キレイだねえ。余裕ができたら、こういうのもいいなあ。使う機会無さそうだけど」
「……似合いそうだな。たまには、いいんじゃないか?女らしい格好しても」
「うーん……。そうだね、たまにはね」
「買うか?」
「うーん。いいよ、今日は」
「そうか」

 昼時になったけど、店に入って落ち着いて、という感じでも無いので、屋台で見慣れない料理にはしゃぎながら色々買って、食事を済ませて。

「あ、あれも美味しそう。似たようなのも見たことないし、買おう、買おう」
「そんなに買って、食えるのか?」
「半分こすれば、大丈夫だって」
「俺も食うのか」
「イヤ?」
「いいけどよ」
「じゃ、いいね。すみません、ひとつください!」

 ……完全に、デートですね、これ!
 そう装ってるんだから、当たり前だけど!
 だが……解せぬ!!



 ひと通り目当ての場所を確認し終えて、モンスターじいさんのところに向かいます。

「ごめんくださーい」

 呼びかけながら、薄暗い地下室に入ります。

 と、素早く近付いてくる人影。

 室内の暗さに目が慣れて、人影がじいさんだと認識する前に手を取られ、引き寄せられて目を覗き込まれます。

「おお!お前さん、モンスター使いの才能があるの!わしの教えを、受けてみぬか?」
「あ、はい。お願いします」
「そうか、そうか。ならば、奥に入りなされ。ん?なんじゃ、お前さんは。部外者は立ち入り禁止じゃ、さっさと帰りなされ」

 私の肩を抱いて奥へと誘導しつつ、ヘンリーに向かって追い払うように手を振る、じいさん。

「あの。それ、私の連れなんで」
「なんじゃ、そうか。ならば、仕方あるまい」
「……」

 無言かつ無表情で私をじいさんから引き離し、背後に隠すヘンリー。

「……あのー」
「なんじゃ!指導の邪魔じゃ!やはり、出てゆけ!」
「セクハラじじいの指導なんか、受けさせられるか」
「なんじゃと!愛を以てモンスターを従える、モンスター使いの指導じゃ!師弟にも当然、愛は必要じゃろう!」
「触る必要はねえだろ」
「スキンシップはコミュニケーションの基本じゃ!」

 なんだ、この子供のケンカみたいの。

 互いに譲らず言い合いを続けるヘンリーとじいさんに、どう言って止めるべきか考えていると。

「はいはい、そこまで」

 バニースタイルの女性が、割り込んできました。

「む、なんじゃ、イナッツちゃん」
「ダメでしょ、おじいちゃん。いくら可愛い娘だからって、適当なこと言ってベタベタしちゃ」
「やっぱ適当かよ!」
「ごめんなさいね、お年寄りのすることだから。許してやってくれないかしら。次から、ちゃんと止めるから」

 バニースタイルの女性、イナッツさんに宥められて、双方なんとか矛を収めます。

 イナッツさんが、私に向き直ります。

「あなたも、ごめんなさいね。って言っても、気にしてなさそうだけど。……って、やだ、女の子よね!?綺麗だし、可愛いのに、なんかカッコいいわね!これで男だったら、絶対惚れちゃうわ!ね、お名前は?」

 オープンだなあ。
 こんなに言い切られたのは、初めてだ。

「ドーラです。こっちは、ヘンリー」
「ドーラちゃんに、ヘンリーくんね!さ、入って入って。今、お茶淹れるから。おじいちゃんは、私と一緒よ」

 ちゃきちゃきと場を仕切り、じいさんの手を引きながら、私たちを奥へと案内してくれるイナッツさん。


 勧められた椅子に腰掛け、じいさんとイナッツさんが戻るのを待ちます。

「おい、ドーラ。いいんじゃねえか?もう。指導なんか受けなくても、お前なら仲間にできるだろ」
「うーん。でも、知らない情報があるかもしれないし。やっぱり一応、受けときたい」
「……わかった。なら、俺が、守る」

 決意を込めた感じで、言われましたが。
 そんな、大層なことか。

 とか言ってる間に、お茶とお茶請けを持ってじいさんの手を引いて、イナッツさんが戻ってきました。
 なんかもう、イナッツさんが主体みたいだなあ。
 介護してるみたい。

「お待たせ!じゃ、おじいちゃん。いいわよ」

 じいさんが私の向かいに、イナッツさんがヘンリーの向かいに掛けて、じいさんがもっともらしく頷きます。

「うむ。では、モンスター使いの心得を、教えて進ぜよう」 
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