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IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年

作者:Shine
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第10話

 
前書き
最初に謝らせてください。

更新が遅れてすいませんでした!!!

私用と言うか、俺は受験生で大学に出す書類を整理するのに時間が掛かってしまい、昨日更新できませんでした。

では、本編どうぞ。

 

 
カルロスがIS学園を訪れ、早二日。学年別トーナメントを明日に控えた木曜日。俊吾は簪と最終打ち合わせをするために、アリーナで動きの確認をしていた。

「っと、こんなもんかな。簪さん、今日はもう終わろうか」

昨日から打鉄弐式の動作確認と立ち回りについての確認をしていた。今日はそれを全部踏まえた、確認作業をしている。

「打鉄の方の調子はどう?」

「問題ない……武装の方も出力も安定した数字が出てる」

「そっか……。じゃあ、完全に完成したわけだな」

「うん……俊吾くんが手伝ってくれなかったらこんなに早く完成しなかった……改めて、ありがとう」

「どういたしまして……って言えないか。こっちも貴重な体験をさせて貰ったし、お礼言うのはこっちかもしれないな」

「うん……それでも、私は俊吾くんに感謝してる」

「まぁ、この話は置いといて、そろそろ寮に戻ろうか」

時刻は六時を指していて、夕食を食べられる時間になっている。寮の門限は七時なので余裕はあるが早くもどるのに越したことはない。

「そうだね……じゃあ、着替えてから入口で合流しよ?」

「了解。じゃ、また後で」

俊吾は簪と反対の更衣室(男子用)に向かった。そこでISスーツの上に制服を来て、入口に向かう。更衣室にシャワー室を設けられているが、まだこの時期は暖かく動いてもそこまで汗をかかないので部屋まで浴びないように俊吾はしている。

少し早かったらしく、簪の姿はない。もしかしたら、シャワーを浴びているのかもしれない。俊吾は余っている時間で何か飲み物を買おうと自販機まで行く。

「ん~、何か炭酸でも飲むかな……。あ、簪さんにも何か買っていったほうがいいか…………。といっても、何買おうか……。無難に紅茶でいいか」

飲み物を二つ持って、アリーナの入口に向かうとそこには簪の姿があった。

「あ、悪い。待たせちゃったみたいだな」

「別にそれはいいんだけど……どこに行ってたの?」

「ちょっと自販機にな。ほら、これ簪さんの」

俊吾は紅茶を簪に渡す。

「え、いいよ……何だか悪いし」

「もう買ってきちゃったから貰ってよ。あ、もし、紅茶嫌いなら無理しなくてもいいけど」

「紅茶は好きだよ……じゃあ、せめてお金は返させて」

「いいって。俺が勝手に買ってきたんだから」

俊吾は微笑みながら簪に紅茶を渡す。簪も抵抗しないでそれを受け取った。

「じゃ、戻るか」

二人は寮に歩きだした。

少しすると、簪がどこか緊張した声音で話し始める。

「ねぇ……俊吾くん」

「ん?簪さん、どうした?」

「私のこと……名前で呼んでくれない?」

「いや、名前で呼んでるだろ?」

最初の頃は緊張したけど今では普通に言い出せるようになった。これは進歩なのか慣れなのか分からないけど、簪さんに対しては苦手意識が薄れつつある。

「あ、ごめん……そう言う意味じゃなくて、呼び捨てにして欲しい、って意味」

「……良いけど、何でまた?」

「何か、さんって付けられると本当に私たち友達なのかなって不安になるの…………我が儘だよね」

「まぁ、確かにそう思うのも仕方ない、か」

俊吾は少し呼吸を整える。いくら名前を呼ぶのが慣れたといっても、呼び捨ては別物だ。正直言って、女子を呼び捨てしたことなんてない。

「はぁ……ま、腹括るしかないよな…………」

簪はどこか申し訳なさそうな顔をしている。簪の心境を考えると、確かに友達にいつまでもさん付けなのは不安になるだろう。どうにかして、自然な会話で名前を呼ぼう。今はそれが限界だ。俊吾は他愛のない会話を繰り出す。

「そういえば、今日、ご飯はどうする?」

「どうするって……どう言う意味?」

さっきの事を気に病んでいるのか、少し返答は元気がなかった。

「一緒に食べるかどうかって意味」

「俊吾くんに迷惑じゃなかったら、一緒に食べよう?」

「んじゃ、一緒に食べるか。一回部屋に戻るか?」

「今日はそこまで汗かいてないし……このまま行こう?」

「よし、じゃあ、食堂まで行こうぜ、簪」

簪はその一言で今までの会話の意図を理解して、少し嬉しそうな顔をして

「うん……」

と控えめに微笑んだ。それを見て俊吾は安心した。そのまま二人は食堂に向かった。

◇   ◆   ◇   ◆

夕飯を食べた俊吾は部屋で寛ぎながら、色々と考えていた。

「…………はぁ、これから何もないといいけど」

一番気にかかるのはカルロスだ。シャルルに接触してきたからどこかで仕掛けてくると思ったんだけど、何もアクションはない。街の方で学園を探っていたという人たちもいなくなったと楯無さんから報告を受けたし……。一昨日の接触はシャルルが男として活動しているかの確認だったのか……。それは違うと思うんだよな。だったら、自分から来る必要はない。何かを確認するためにここに来たんじゃないんだろうか。

正直、予想できないことだらけだ。だけど、仕掛けてくるとしたら明日の学年別トーナメントか。来るとしたらやっている途中じゃなくて、夜か?ううむ、いまいち分からんな。情報が少ないからどうも言えないな。とりあえず、明日用心することに越したことはない。

あと心配事は、ドイツからの転校生の理不尽さん―――もといラウラ・ボーデヴィッヒだな。月曜だってあんなことしたし、今回のトーナメントで要注意だな。色んな意味で。けど、今回は先生も監視役いるし何とかなるかな。

とりあえず、頭に入れておこう。今日はもう寝ようかな…………。

◇   ◆   ◇   ◆

学年別トーナメント当日。俊吾と簪は控え室で自分の出番を待っていた。

「はぁ…………多分、負けることはないだろうけど緊張するなぁ」

「俊吾くんも……緊張するんだ」

「まあな。あんまりこう言う大会とかそういうのは得意じゃない。けど、始まっちゃえば関係ないんだけどな……」

今、組み合わせ発表を待っている。一年の専用機持ちは7人(鈴とセシリアは今回怪我のため辞退)なので、他は量産機だ。専用機とは性能が違うので負けることはまずない。

一夏とシャルルはと言うと、時間が余ったので飲み物を買いに行っていて今、席を外している。おそらく、あと数分で戻ってくるだろう。

すると、控え室のモニターにトーナメント表が映し出された。

「お、やっとか……。えっと、俺たちは……」

「一夏くんたちとは……反対のブロックだね」

「だな。相手はボーデヴィッヒさんじゃないから問題ないな。っと、そういえば、一夏たちは誰とだ?」

一夏とシャルルの山の相手を確認すると、ある名前があった。

「ああ…………運が良いんだか悪いんだか……」

「そうだね……どうも言えない……かな…………」

相手は『ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒』ペアだった。

◇   ◆   ◇   ◆

「さて、俺たちの出番か……じゃ、行ってくる」

トーナメントが始まり、はや数十分。俊吾と簪の出番が来た。

「二人共、頑張れよ」

「落ち着けば勝てる相手だよ」

「おう。じゃ、行くか、簪」

「うん」

控え室を出て、カタパルトに向かう。

「まぁ、相手は量産機だし考えてた戦法でやるか」

「量産機だからって……油断は駄目……」

「そうだな。気を引き締めよう」

簪はその言葉に頷いた。

◇   ◆   ◇   ◆

カタパルトからアリーナに出ると、既に相手はそこにいた。一人はラファール・リヴァイブ。もう一人は打鉄。無難な組み合わせだ。

「あ、ごめん。待たせちゃったみたいだね」

俊吾はチャンネルを相手につなぎそう言った。

「ううん。大丈夫だよ。お手柔らかにね……って言っちゃったけど、負けるつもりはないよ?」

相手は俊吾たちが専用機だからといって、気負いはないらしい。そう言う相手はやりにくかったりする。少しでも怯えていたりすればそこに付け込めるのだが、それが出来ないとなれば正攻法しかない。

『両者、規定の位置まで移動してください』

アナウンスが流れ、二つのペアはアリーナ中央で止まる。

『3、2、1…………試合開始!』

ブザー音が鳴り響く中、俊吾はダガーナイフを二本コールし、相手に投げつける。それが真正面から当たり、相手が少し怯む。その怯んだ隙に、サブマシンガンをコールし、弾を撃つ。

相手も負けじと応戦して、リヴァイブが俊吾と同じようにサブマシンガンをコールして、撃ってくる。それを確認した俊吾は一度下がり、簪とスイッチする。簪は、下がっていたときに下準備を終えたマルチロックオンミサイルを発射する。ロックオンされたミサイルは避ける相手を追い続ける。俊吾は逃げる二人をアサルトライフルを撃って、上手く誘導し逃げ場をなくしていく。

三十秒も逃げると、二人は壁の隅に追いやられ逃げ場を失っていた。そして、そこにミサイルが着弾する。威力を高めに設定していたので、シールドエネルギーが半分は無くなっただろう。ミサイルが着弾した際に出た土煙のせいで相手を確認できないが、二人は攻撃を止めない。

俊吾はミサイルをコールし、簪は荷電粒子砲をコールする。この二つの武器はピンポイントで当てる方法も有るが、広範囲に向けての攻撃もできる。二人は土煙の中に、ミサイルと荷電粒子砲を撃ち込む。その攻撃に驚いた打鉄が驚いて土煙から出てくる。

そこを狙ったように俊吾はスナイパーライフルで撃ち抜く。数発撃つと、打鉄は動かなくなった。もう片方のリヴァイブも簪はマルチロックオンミサイルと荷電粒子砲で追い詰めていた。数秒もすると、ブザー音が鳴り響く。

『勝者、大海、更識ペア』

俊吾と簪は見事、初戦を突破した。

◇   ◆   ◇   ◆

控え室に戻ると、一夏とシャルルから祝福の言葉を受けた。

「初戦突破おめでとう。というか、圧倒的すぎないか?お前ら」

「確かに圧倒的だったよね。打ち合わせでもしたの?」

言われてみれば確かに、圧倒的だった気もするな。俺は数発弾を受けたけど、簪は無傷じゃないか?ううむ、我ながら上手くいったもんだ。

「まぁ、打ち合わせはしてたよな、簪」

「打ち合わせって言えるか分からないけど……」

「作戦みたいなことだから、打ち合わせでいいんじゃないか?」

「俊吾くんがそういうなら……」

少し、二人だけで話していると一夏達が驚いた目をしていた。

「何か、俊吾か女子と普通に話してると違和感があるな……」

「確かに……それに何か親しげだし」

シャルルの一言はどこか刺を含んだ言い方だった。何故、刺々しいのか俊吾は分からない。シャルル自身も分かっていない。

「まぁ、仲がいいのは、趣味が一緒だからかな」

「趣味って?」

「大きく言えばISかな。細かく言えば、ISのメンテナンス方面だな」

「へぇ、簪もISのメンテナンス好きなんだな」

「あう……まぁ……うん……」

一夏に微笑みながらそう言われ、簪は俊吾の後ろに隠れてしまう。まだ人見知りは治っていない。それに、人見知りに一夏のようなイケメンと話せという方が間違っている。その様子を見て、シャルルは段々と機嫌が悪くなっている。

「そういえば、お前らそろそろ出番じゃないか?」

俊吾に言われ、トーナメント表を確認すると、一夏たちの二つ前の試合まで終わっていた。実質、今やっている試合の次である。

「お、そうだな。俊吾と簪。そろそろ行ってくるな」

「おう、頑張ってこい」

一夏は先にカタパルトに向かった。

「じゃ、僕も行くね」

「行ってらっしゃい」

「うん、行ってきます」

シャルルは微笑みながら控え室を出ていった。部屋に俊吾と簪だけになると簪が口を開いた。

「何だかシャルルくんって……女の子みたいだね」

一瞬、言葉を失った俊吾だったが、すぐに持ち直し口を開く。

「まぁ、体の線も細いし仕方ないんじゃないか?」

「それとは違くて……仕草が女の子っぽいっていうか…………」

……やはり、楯無さんの妹と言うべきなのか。シャルルを少し見ただけで、良く分かるもんだ。でも、言われてみれば、やっぱり少し気が抜けてるのか仕草が女らしかった気もする。まぁ、でも問題ないだろう。今日、区切りを付けると言ってたし。とりあえず、この場は何とか取り繕って終わろう。

「俺はあんまりそう思わないけどな」

「何だか、私も自分で言ってて……自信なくなってきた」

「ま、それでも問題はないだろ?それに、一夏たちの試合が始まりそうだ」

中継モニターを見ると、さっきまでやっている試合が終わり、一夏たちの試合の準備が始まっていた。

◇   ◆   ◇   ◆

「ふん、逃げずにちゃんと出てきたんだな」

「まあな。逃げる理由もないしな」

場所はアリーナ内。一夏とラウラは対峙して直ぐに皮肉を言い合う。シャルルと箒はそれを苦笑いしながら見ている。

『両者、定位置まで移動してください』

二つのタッグは中央に向かう。

『3、2、1……試合開始』

ブザー音が鳴り響き、試合が始まった。

一夏はブザーと同時に瞬間加速を使い、ラウラに攻撃を仕掛けた。不意打ちになったかと思われたが、ラウラの前で一夏が止まる。

「っ!」

「ふ、ワンパターンだな、貴様は」

ラウラは右手をかざしていた。AICである。慣性停止能力とも言われ、運動している物のベクトルを無くし、止めることができる物である。意識が向けられている物全ての動きを止めることもできるが、それは操縦者の技量による。

「今回は遊ぶ理由もないしな。これで終わりにしてやる」

ガチャンと音を立て、ラウラはレーザーカノンの標準を一夏に合わせる。万事休止かと思われるが、横から銃弾が飛んでくる。

「なっ!」

それに気を取られたラウラ。AICが解除され、一夏は一度距離を取る。

「助かった、シャルル」

「一夏も大丈夫?」

「何とかな。でもこれで分かったことがある」

「そうだね」

この一連の動きで分かったもの。それはラウラが『複数個に意識を向け、AICを使うことができない』と言うことだ。これが分かれば、戦法は一つしかない。一夏とシャルルもその方法を考えていた。

「じゃ、手はず通りに頼む」

「分かった」

シャルルはそう言って、一夏から離れ箒と対峙する。

「さて、しばらく俺と遊ぼうぜ?ラウラさんよ」

「ふん、言ってろ」

両者はそう言って、激突した。

◇   ◆   ◇   ◆

「いやぁ、この学園は楽しいことばっかり起きるなぁ」

俊吾はこの試合を見ながら興奮していた。

「そうだね……AICなんて始めて見た…………」

「本当にな。一生目に掛かれるか分からない代物だしな」

二人はAICについて話していた。簡単にお目にかかれるものでもなく、稀少なので二人は興奮している。

「AICってどんな感じで使うんだろうな。意識を向けると使えるって言うけど」

「確かに……ボーデヴィッヒさんは手をかざしてたけど……本来は必要のないものだし」

「あれじゃないか?あれをやると意識を向けやすいとか」

「なるほど……本当に沢山発見があるね」

「発見だらけだな。普通のISだって操縦すると新しい発見とかしかないし。っと、試合が動くんじゃないか?」

俊吾がそう言って、二人は中継モニターを見る。試合が大きく動いた瞬間だった。

◇   ◆   ◇   ◆

「お待たせ、一夏!」

シャルルは箒を戦闘続行不能にして、一夏と合流していた。

「よし、じゃあ、作戦どうり行くぞ!」

一夏はそう言って飛び出す。またも、ラウラに向かうが今回はさっきとは違う。シャルルはそのまま横にスライドし、ラウラの横から攻撃する。ラウラはシャルルの方にAICを発動させる。シャルルの攻撃は届かないが、一夏が上手くラウラの後ろに回り込み、攻撃をする。完全に不意打ちになり、攻撃が直撃する。一夏は直ぐに離脱する。ヒットアンドアウェイだ。

一度、距離を取る。今度はシャルルが先に動き、銃で牽制する。ラウラはそれにAICを使わず、腕でそれを防ぐ。シャルルの銃の弾切れと同時に、一夏は瞬間加速を使って、ラウラに切りかかる。ラウラはここぞとばかりにAICを使い一夏の動きを止め、レーザーカノンを発射する。レーザーカノンの弾は一夏に直撃するが、完全にフリーのシャルルがミサイルを撃つ。そして、瞬間的に次のミサイルをコールし、撃つ。ラピッド・スイッチである。

ミサイルが直撃すると、AICは解け一夏がさっきのお返しとばかりに攻撃する。ラウラはそれにレーザーブレードで応戦。剣撃と剣撃がぶつかり斬り合いが繰り広げられる。その間、シャルルは銃でラウラのシールドエネルギーを削る。それに痺れを切らしたラウラは、ワイヤーブレードをシャルルに飛ばし、腕に巻きつけレーザーカノンの標準を合わせる。

今度は一夏がフリーとなり、斬りかかるが今度はさっきと同じようにはいかなかった。ラウラはAICを一夏に使い、シャルルの攻撃は無視し、レーザーカノンを撃つ。弾がシャルルに直撃するが、シャルルは直撃した後にラウラに突進する。ラウラはその意図が分からなかったが、レーザーカノンで応戦。シャルルはその弾を避け、ラウラに近づく。その途中で、腕に備え付けられているシールドが外れる。

「なっ!貴様、それは『シールド・スピアー』!?」

シールド・スピアーはその名の通り、シールドを打ち砕くほどの威力を発揮する武器である。針の先に火薬が仕込んであり、当たると同時に火薬が爆発し、威力を増大させるものだ。威力は絶大だが、リーチが短いため扱いにくい武器である。

ラウラは一夏にかけていたAICを解除し、シャルルに使おうとするが、時すでに遅し。シャルルのシールド・スピアーが直撃する。ラウラはあまりの破壊力に身を怯ませる。その隙に何度もシャルルはシールド・スピアーを食らわせる。何度もシールド・スピアーを喰らい、ラウラは意識が朦朧としていた。

私は……ここで負けるのか…………?こんな新人のいるペアに………………?……………………嫌だ。そんなのは嫌だ。

私は遺伝子組み換えによって鉄の子宮からから生まれた。私の存在意義は戦うこと。それ以外何もない。起きては訓練、起きては訓練。そんな日々を過ごしていた。そして、私はエリートになった。ISはそんな私を崩した。一気に出来損ないになった。皆から蔑まれ侮蔑などの目で見られた。そんなある日私の前にあの人が現れた。織斑千冬だ。

『ここ最近調子が振るえないそうだな。なに、心配するな。私が教えれば1一ヶ月で使い物になるようになる』

教官に教えてもらうようになってからはメキメキと上達した。今まで蔑んできた奴らも直ぐに抜かした。そして、私はまたトップになった。あいつらの驚いた顔が面白かった。教官が来て1年が経とうといていた。もうすぐ、教官は日本に帰る。

そんな時、教官が日本に帰る理由を知った。弟だ。弟が教官を日本に縛り付ける。その弟よりも私が優秀になればいい。そう思っていた。だが、今のこの状況はなんだ?その弟に私が負けようとしている。

………………もっと力が欲しい。今、教官の弟、織斑一夏を倒す力が。教官を魅了する絶対的な力が。

『――――願うか…………?汝自らの変革を求めるか……?より強い力を欲するか………………?』

力を……全てを変革できる力を…………私によこせ!!!

Damage Level ・・・・・・D.
Mind Condition ・・・・・・Uplift.
Certification ・・・・・・Clear.


《 Valkyrie Trace System 》・・・・・・・・boot.

◇   ◆   ◇   ◆

「ああああああああああああ!!!」

突如、ラウラが悲鳴をあげた。そして、ラウラのISの形状が変わっていく。会場にいる、全てのものが驚いている。モニターで見ている俊吾と簪も同様だ。モニターの中で、ラウラという存在が書き換えられている。まさにそんな感じだ。

異常を察知した教員たちが、観客席にシャッターを降ろしていく。これで余程のことがない限り、観客席に被害が行くことはない。

誰もが異常事態に騒いでいるが、俊吾は別な理由で動揺していた。

先ほど、モニターでラウラのISの形状が変わったとき、後ろの空に何か影が見えたのだ。

まさか……もう、か……?デュノア社が動き出したのか?考えすぎだとは思うが…………けど、あの影の形状はIS、しかもラファール・リヴァイブだった。見間違いするはずはない。何て言ったって俺が一番好きなISだ。となると、この混乱に乗じて何かアクションを起こすつもりじゃ……こうしちゃいられない。

俊吾は控え室を飛び出した。

「俊吾くん……!?」

簪の驚いた声が聞こえたが、無視して外に向かう。幸いにも廊下まではシャッターが降ろされていない。簡単に外に出ることができた。外には何人かの教師がいて、外に出てた生徒を保護していた。教師は俊吾に気づき

「君もこっちにきて!」

と保護しようとする。だが、ここで保護されてしまったらこのあと行動できなくなる。瞬間的に考えを巡らせ、突破口を探す。少し見渡すと、教師の中に麻耶がいることに気づいた。これで一つ突破口を思いつく。

「あのすいません!山田先生!」

俊吾は声をあげ、麻耶を呼ぶ。その声に気づき、麻耶が俊吾に近づいてくる。俊吾を保護しようとした教師は麻耶が来たので大丈夫と思ったらしく、配置に戻ったようだった。

「どうしました、大海くん?」

「織斑先生って今呼ぶことが出来ますか?」

「え?呼べないこともないですが、今は緊急事態なので難しいかと」

「それでも呼んでください!それ以上の緊急事態が起ころうとしてます!」

俊吾が大声で言ったせいで麻耶は驚いたようだったが、焦りを理解してくれて直ぐに千冬に連絡を取ってくれた。

これで最低限、対策は打てるはずだ。だけど、間に合うかが分からない。理由もわからない。いや、理由はシャルル絡みなのは確か。けど、それをどうやって織斑先生たちに教えるか……。背に腹は代えられない、か。

数分後、千冬は額に汗を滲ませながら俊吾の所に来た。

「全く……緊急事態だというのに何の用だ?」

この場に、千冬と麻耶だけがいることを確認して俊吾は口を開く。

「まず、最初に話しておくべきことがあります。シャルルのことです」

「デュノアのこと、か」

「シャルルは女なんです」

その一言に麻耶は驚いたようだったが、千冬は顔色一つ変えない。薄々感じていたのかもしれない。それを確認して俊吾は続ける。

「月曜、デュノア社社長のカルロス・デュノアがシャルルと接触しました。それで、おそらくシャルルの状態を確認するために接触したのではないかと俺は考えます。それで本題ですが、さっきボーデヴィッヒさんのISの形状が変化した時に、空にラファールリヴァイブが見えたんです」

「それは本当にラファールリヴァイブだったのか?」

「はい、確かにラファールリヴァイブでした。この混乱に乗じて、シャルルに何かするんじゃないかと思うんです」

俊吾の話を聞いて、千冬は考える素振りを見せて言った。

「…………楯無を呼べ」

その一言に麻耶は急いで楯無に連絡を取る。楯無はものの数十秒で現れた。

「お呼びでしょうか、織斑先生」

「デュノア社のものが学園に忍び込んだ。総数不明。任せられるか?」

「仰せのままに」

そのまま話が終わりそうになる。そこに俊吾が割り込む。

「待ってください!俺にも手伝わせてください!」

「何を言ってるんだ、お前は。たかだか、ISを操縦して数週間のお前に何ができるというんだ?」

「俺はリヴァイブのことだったら誰よりも知っています。立ち回り方や戦法、弱点だって知ってます。俺なら……出来ます」

千冬は俊吾の一言を聞いて考える。

「私からもお願いできませんか?俊吾くんがいると私も心強いです」

そういったのは楯無だった。その一言に千冬は一瞬驚いたような顔をしていたが、直ぐに表情を戻し言った。

「…………分かった。楯無がそこまで言うなら仕方ない。大海、頼んだぞ」

「了解です!」

「では、ここは任せる」

千冬はそう言って、アリーナ内に戻っていった。

「さて、俊吾くん。始めるわよ」

「はい」

「この学園の地図は覚えてる?」

「あらかた暗記しました」

「じゃあ、北と西に森があるのは分かるわね?おそらく、そこに忍び込んでいると私は思うの。他に隠れる場所はないし、そこで間違いないと思う。それで、私は北側、俊吾くんが西側に行って応戦、って形にしようと思うの。何か質問は?」

「敵はどうすれば?」

「出来れば捕獲。出来なければ、戦闘不能になるまで叩く」

「了解です」

「おそらく、何かしらのジャミング効果があるものを使ってると思うの。センサーが感知していないから、特殊なタイプのもの。だから、これを持って行って」

楯無はハンドガンを俊吾に差し出した。

「これは麻酔銃。ベレッタM92Fを改造したもの。この銃の弾一発でアフリカゾウは直ぐに寝てしまうくらい強力なものよ。ISが使えない状況に陥ったらこれを使って逃げて」

某潜入ゲームと同じ銃を同じような改造した麻酔銃。名称をM9としよう。

俊吾はM9を受け取り、懐に入れる。

「正直、これじゃ物寂しくて辛いと思う。ISが使えなくなる状況になったらって言ったけど、その前に逃げて。ジャミングの効果でそこまで凄いものはあるとは思えないけど、絶対はないから。危険と感じたら逃げて。お姉さんとの約束ね?」

楯無は小指を出した手を差し出す。指切りと言うことなのだろう。俊吾は指切りに応じて、楯無と指切りをする。

「じゃあ、また後でね」

楯無は北の森に向かった。俊吾も配置の西の森に向かった。

 
 

 
後書き
えと、今回は学年別トーナメントでした。途中、グダったりしましたが焦って書いたので目を瞑ってもらえるとありがたいです。

では、前回言いました俊吾くんと黒天慟のスペックを書いていきます。

大海俊吾
身長173cm体重60kg
顔は十人に上、中、下で答えてもらうとしたら、全員が中と答える。絶対に上に行くことはない。容姿が普通なので、あまり印象に残らない。IS学園に入ってからは一夏と比べられるせいでそれが加速していて、それが本人の最近の悩み。

黒天慟弐式
原産国 日本
ラファールリヴァイブを主体として考えられ、スッペクもほとんど一緒だ。拡張領域も後付武装はリヴァイブよりも三割多く、大体シャルルの専用機と一緒だ。世代は第三世代でこれからまだまだ伸びしろがあるISである
デザインは黒を主体として、所々に灰色のラインが入っている。スラスターの動きが特殊で、操縦者の動きの合わせて、スラスターが動き、操縦が楽になる。


こんな感じです。ちょっと、長めになって申し訳ないです。

誤字脱字がありましたら報告お願いします。

次回は土、日に更新できればいいと思っています。

次回はカルロス社長、本性を表す、です。

では、次回の更新まで。
 
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