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ビビッド“ダ・ガーン”オペレーション

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第2話 隊長になった少女

 
前書き

私は黒騎れい。緑が浜中学の二年生よ。
やっと日常を取り戻したのだけれど、数十年ぶりに宇宙人が地球に攻めて来た。そして、私はかつて地球を侵略者から救ったロボットの隊長に選ばれてしまったの。
折角取り戻した世界。侵略者に好き勝手させる訳にはいかない!
 

 

オーリンによってダ・ガーンの隊長に選ばれたれい。彼女は星史とともにビークルモードのダ・ガーンに乗って現在地球防衛機構軍の日本支部に向かっていた。
因みに、芽依はあの後病院に運ばれた。星矢は彼女の付き添いである。
そして、車内では星史とダ・ガーンがれいに勇者とその隊長達についての説明を行っている。これまで、ダ・ガーン達の事は何度もテレビで特集番組をやっていたのでそこそこの知識があったが、知らない部分と間違っている部分があるため、二人によって補足と説明が行われていた。

「分かっていると思うが、ダ・ガーン達は君の命令が無いと攻撃などといった具体的な行動を取れない。だが、心もちゃんとあるのだから道具ではなく仲間として接してくれたまえ。」

「はい。分かりました。」

「それと、君とダ・ガーンは一応軍の所属となる。規律は守るように。」

「変わったな、星史。」

星史が説明をしていると、ダ・ガーンが突然そんな事を言ってきた。

「どう言う意味だ?」

「前は我々勇者が軍に組み込まれるのを嫌っていたじゃないか。」

「ああ、そう言う事か。俺も大人になったんだ。考え方も変わるさ。」

「そうか・・・だが、一つ言っておきたい。」

「何だ?」

「もし、隊長であるれいが軍の所属になる事を拒んだら、私も軍に入る事は出来ない。」

「それくらい分かっているさ。で、れい君はどうなんだ?」

「私は・・・」

星史に聞かれ、れいは考えるが答えは直ぐに出る。

「地球を守るために、かつて勇者達の隊長だった星史さんのアドバイスをもらいたいんです。ですから、軍の所属になる事は構いません。」

「分かった。ならば私はかつての経験と大佐としての権限を使って全力で君をサポートしよう。」




あの後、ダ・ガーンが暫く走ると基地へと到着した。れいと星史の二人はそこでダ・ガーンから降りる。

「おっと、忘れる所だった。」

すると、星史は何かを思い出し軍服の懐に手を突っ込んだ。

「これを君に渡さなければな。」

そして、一つの端末を取り出しれいに渡す。その形はダ・ガーンの胸部装甲を模してした。

「これは?」

「ダイレクターだ。かつて私が勇者達の隊長をやっていた頃に使っていた物でな。言わば、隊長の証だ。」

「隊長の証・・・」

その言葉の持つ意味の重さをれいは噛みしめる。

「それを開いて穴の部分にオーリンをかざしてみてくれ。」

「はい。」

れいは星史の言う通りダイレクターの下の部分のスイッチを押して開いた状態にした。そして、露わになった水滴型の穴の上にオーリンをかざす。すると、オーリンが小さくなり穴の中へ収まった。それによりダイレクターが起動し、モニターにダ・ガーンのデータが表示される。

「ダイレクターには通信機としての機能もついている。ダ・ガーン達への各種命令はそれで送るんだ。」

「分かりました。」

「それでは、これから新たに現れた敵に関する緊急会議が行われる。君も参加してくれたまえ。」

「はい。」




地球防衛機構軍・日本支部の会議室。ここでは本日現れた数十年ぶりとなる地球外からの敵に関する会議が始まろうとしていた。
オーボス以来の脅威という事で、会議室は緊張に包まれている。

「お待たせしました。」

そこへ、れいを連れた星史が入って来た。

「高杉大佐。その少女は?」

すると、基地司令が聞いてきた。星史は直ぐそれに答える。

「彼女がこの度ダ・ガーン達の隊長に選ばれた人間です。」

「おお!彼女が!!」

ダ・ガーン達の隊長。その言葉が出て来た事で会議室の雰囲気は少し明るくなった。

「しかし、まだ子供じゃないですか。大丈夫なんですか?」

だが、一部の軍人達は子供であるれいが隊長である事に不満があるようだった。

「私がかつて隊長に選ばれた時は小学生でしたよ。」

すると、星史が彼らにそう反論する。

「もし子供に任せるのが不安なのなら、我々大人の手でサポートすればいいだけの事です。」

「高杉大佐の言うとおりだ。それに、あのロボット達は隊長の命令しか聞かないそうだから、彼女が選ばれてしまった以上、今更どうこう言う事は出来ない。」

さらに、基地司令も星史の味方になったので、彼らは黙るしか無かった。

「とにかく、今は会議を始めよう。」

そして、基地司令のその言葉とともに会議は始まった。




「結局、決まったのはれい君がダ・ガーン達の隊長だという事は重要機密とし、一般に公開しない事だけか・・・」

会議が終了し、会議室から出てきた星史は悪態をついた。彼の言った通り、ここでの会議ではあまりしっかりした事は決まらず、オーストラリア本部での会議へと持ち越しとなった。

「こんな調子で、地球を守る事など出来るのか・・・」

星史は少しだけ、自由気ままに行動していた小学生時代が恋しくなった。

「あの、星史さん。私はこの後どうすれば・・・」

その時、れいが尋ねてきた。

「ああ、それならもう帰っていいからダ・ガーンに家まで送ってもらってくれ。そのついでに彼と親睦を深めてくるといい。」

「分かりました。」

そして、星史は近くに居た兵士を呼び止めると、れいを出口まで案内させたのだった。





基地から出たれいはダ・ガーンに乗って帰宅する途中だった。だが、ここで彼女はある事を思い出す。

「ダ・ガーン。目的地を変更して。」

「了解。で、何処へ行けばいいんだ?」

「病院よ。」

「病院?どこか悪い所でもあるのかい?」

「私じゃなくて友達の見舞いよ。」

「なるほど。彼女か。」

ダ・ガーンは基地へ行く前に救急車で病院へと運ばれた少女を思い出す。

「そう言えば、少し気になっていたんだが。彼女の父上の名前はもしや“ヤンチャー”と言うんじゃないのかい?」

「そうよ。」

「やはりな。あの髪の色と尖った耳からしてそう思ったよ。」

「そう言えば、ヤンチャーさんも確か勇者の隊長だったって聞いたわね。」

芽衣の父親であるヤンチャー。本名“ヤンチャラン・スターレット・バンナー・グリシウス・ジャックギンガー・ワイルダー14世”はオーボス軍に滅ぼされたワイルダー星の唯一の生き残りで、ワイルダー星の勇者“セブンチェンジャー”の隊長でもあった人物だ。

「そろそろ病院ね。ダ・ガーン、ここで止めて。」

「了解。」




病院へ来たれいはナースステーションで芽衣の病室を聞いた。彼女が少々特殊な生い立ちであるためか個室にあてがわれているそうだ。れいは直ぐにそこへと向かった。

「芽衣!大丈夫!!」

そして、病室へ飛び込むと・・・

「れい、心配をかけたな。」

芽衣はベッドの上に居た。見た所元気そうである。

「よっ、隊長さん。」

星矢も室内に居て芽衣の看病をしていた。

「星矢・・・私をそう呼んだって事はまさか・・・」

「おう。芽衣にはちゃんと説明しておいた!」

「やっぱり・・・」

軽いノリで言う星矢にれいは頭を抱える。

「星矢。言っておくけど、軍では私が隊長だって事は秘密にするって方針になったから。」

「え!マジか!?」

「マジよ。」

驚く星矢にれいは真顔で答えた。

「まあ、芽衣になら言っても大丈夫ね。誰かさんとは違って口が固いだろうし。」

「悪かったな!!」

「それより芽衣。調子はどうなの?」

文句を言う星矢を無視し、れいは芽衣に容体を聞いた。

「骨や内臓に異常はなかったが、大事を取って数日入院だそうだ。」

「そう。良かった。」

「良かった?どこがだ!!!」

その時、芽衣がいきなり叫んだのでれいと星矢は思わず一歩下がる。

「こうしている間にもし母さんがまた倒れたりしたら誰が面倒を見るんだ!!」

だが、この言葉を聞いて「またいつものか。」とため息をついた。

「でも、ヤンチャーさんが居てくれるから大丈夫なんじゃ・・・」

ひとまず、れいが落ち着かせようとする。

「父さんは当てにならない。」

「おい、ヤンチャーさん泣くぞ。」

返ってきた答えに星矢がツッコミを入れた。

「って言うか。お前ん家にはいつもばあやさんが居るんだから、別に気にしなくていいだろ?」

「何言ってる!ばあやはもう歳なんだ!!ただでさえ学校に行っている間は任せきりだと言うのに、これ以上負担をかけたら倒れてしますだろうが!!!」

「じゃあ、どうするってんだよ・・・」

いつまでも問題が解決せず、星矢は頭を抱える。その時・・・

「大丈夫でっか!芽衣はん!!」

一人の男性が病室に入ってきた。額に星のマークのついた団子鼻のかなり背の低い男性だ。

「あれ?団長じゃん。」

「どうしてここに?」

彼の姿を見た星矢とれいが不思議そうに言う。
この男性は“団長”こと“デ・ブッチョ”。数十年前に地球へ侵攻してきたオーボス軍の一員であったが改心し、今は罪滅ぼしとして自らの持つ地球外のテクノロジーを地球の人々のために使っている。

「そりゃあ、ジュラルディンちゃんトコの娘さんが怪我して病院に運ばれた聞いたさかい。いても立ってもいられへんでしたわ。」

ジュラルディンというのは芽衣の母親の桜小路蛍の事だ。団長がオーボス軍に居た頃、好みのタイプだった彼女を自分の側に置くために攫ってきた際にその名前をつけたのだ。以後、癖になってしまったのか改心した後も蛍の事はそう呼んでいる。

「・・・何度も言っているが、母さんをその変な名前で呼ぶのは止めてくれ。」

だが、娘である芽衣はそれを良く思っておらず、今もこのように不機嫌になっている。

「別にいいだろ、渾名くらい。」

そんな彼女を星矢は何とかなだめようとする。

「私は当時小学生だった母さんに手を出そうとしたそいつを信用する事なんて出来ない。」

「ぐはあっ!!」

だが、芽衣は無慈悲な言葉を吐き、団長の精神に大ダメージを与える。

「め、芽衣はん!そんな言い方は無いやろ!!星矢はんとれいはんも何とか言ってくだはれ!!!」

だが、何とか踏みとどまり残り二人に援護を求める。だが・・・

「ええと・・・」

「その辺はちょっと、な・・・」

れいと星矢は目をそらすだけだった。

「んな殺生なあ〜!!!」





地球に侵攻してきた存在、キャンデロロの母艦。その艦内にある格納庫では新たなロボットが作られていた。

「リチェルカが戦闘を行った事で得られたデータを元にした勇者の性能の解析が終了しました。」

キャンデロロの側近の一人、ももいろさんが報告を行う。

「そう。それで、設計図は?」

「こちらです。」

キャンデロロが聞くと、今度はもう一人の側近、あかいろさんが設計図を手渡した。

「そう。それじゃあ、早速取り掛かるとするわ。」

それを受け取ったキャンデロロは内容を熟読すると、空いているハンガーに向かって両手を伸ばす。すると、彼女の手に二丁のマスケット銃が現れた。彼女は躊躇いなくその引き金を引く。マスケット銃は一発しか弾が込められないので、撃った銃は投げ捨ててまた新たな銃を出撃させる。そして、引き金を引くのを繰り返した。その姿はまるで舞いを踊っているかのようである。発射された弾丸はハンガーの壁には当たらず、途中で弾けて無数のリボンとなった。リボンは互いに絡み合い、次第に形を成して行く。暫くすると、そこには設計図通りのロボットが出来上がっていた。

「あなたの名前は“ヴィットーリャ”。勝利という意味の名よ。その名の通り、勝利を掴んで来なさい!」

キャンデロロがそう名付けると、ロボット…ヴィットーリャは目を光らせた。





ダ・ガーンが初めて戦った日の翌日の放課後、れいと星矢は芽衣の家に向かっていた。彼女に代わって蛍の世話をするためである。

「にしても、親父も太っ腹だな。」

「そうね。」

星矢の言葉にれいは相槌を打つ。

「今回の勇者は親父の時とは違って軍の所属なのに、隊長のれいに今まで通りの生活をさせてくれるんだからさ。」

そう。れいは軍の所属になったにも関わらず今まで通りの普通の女子中学生としての生活を続けられる事となった。表向きには彼女が隊長なのだとバレないようにするためにカモフラージュと言う事になっているが、星史の計らいと言う部分が大きい。

「お父さんとお母さんも、そのおかげで私が隊長をやるのを納得してくれたし。」

昨晩、星史はれいの家にやって来て彼女の両親にれいが勇者の隊長になった事を説明した。最初はれいが隊長をやる事に反対していた両親だったが、星史が全力でサポートをするという約束をしたのと、れいが覚悟を見せたので了承してもらえたのだ。

「っと、話してる間に着いたぜ。」

そう言いながら星矢が親指で一軒の日本家屋を指差す。広いもののあちこちがボロボロでかなり古い物件だ。そう、ここが芽衣の実家である“桜小路家”である。
二人は門をくぐると、玄関の前に置いてある太鼓をチャイムの代わりに鳴らし戸を開けた。

「「お邪魔します。」」

「いらっしゃいませ。」

すると、一人の老婆が二人を出迎えた。この屋敷を任されているばあやである。

「そう固くなんないでくれよばあやさん。今日は芽衣の代わりに蛍さんの世話に来たんだからな。」

「色々と言いつけて下さい。」

そう自信満々に言う星矢とれい。だが、彼女達は後に後悔する事になる。




「まさか、屋敷中の掃除をさせられるなんて・・・」

割烹着姿の星矢が箒で畳の上をはきながら文句を言う。すると、後ろからばあやに尻を叩かれた。

「何を言っておられる。おひい様は毎週これをやっていると言うのに音を上げた事などありませんぞ。」

「ええ!?あいつ毎週こんな事やってんのかよ!?」

ばあやの口から出た驚きの事実に星矢は驚愕する。

「そう言えば、れいの方は何やってんだ?」

「れい様には奥様に出すお料理を任せておりますが。」

「はあ!?何言ってんだ!あいつ殆ど料理出来ないぞ!!!」



桜小路家の調理場。ここで星矢と同じく割烹着姿のれいは困惑していた。彼女は元々料理が得意ではないがそれだけが理由では無い。
なんと、桜小路家の調理場はシステムキッチンなどではなく、釜戸だった。

(どうすればいいの!?)

当然、れいにその使い方が分かる訳も無い。ひとまず、まずはご飯を炊こうとお釜を取り出すれい。そのまま米を洗うがここで問題に気付いた。

(水って、どれくらい入れればいいの?)

お釜には炊飯ジャーのようにどれくらい水を入れればいいのかという印が着いていない。なので、れいはそこでフリーズしてしまう。

「何をしているの?」

そこで、後ろから声をかけられた。振り返ってみると、そこには芽衣の母親“桜小路蛍”が立っていた。

「蛍さん!?どうしてここに!?」

「うちの調理場の勝手が分からないんじゃ無いかと思って見に来たの。」

「それは、どうも・・・」

「それと、あなたに伝えなきゃいけない事があるの。」

「伝えなきゃいけない事?」

「そう。」

れいが聞き返すと、蛍は頷きながら応える。

「また、来るわ。」

「来る?まさか、昨日の敵が!?」

「そう。心を絶望にとらわれてしまった悲しい人が。」

「心を絶望にとらわれた?」

蛍の言葉の意味が分からず、れいは首を傾げる。だが、れいは直ぐに街へ向かう事を決めた。蛍の予知はよく当たり、星史が勇者の隊長だった頃は何度も助けられたと聞いている。なら、また敵がやって来ると言う事はほぼ間違いは無い。

「ごめんなさい。私、用事を思い出したので行ってきます!!」

「うん。」

割烹着を脱ぎ捨て、玄関へ向かうれいを蛍は黙って見送った。




一方、ここは地球防衛機構軍の日本支部。ここのレーダーが再び謎の飛行物体を捉えていた。

「奴は何処へ向かっている!」

「お待ち下さい!」

星史に言われ、オペレーターは敵の行き先の計算をする。その時・・・

『星史。』

格納庫に居るダ・ガーンから通信が入った。

「どうした、ダ・ガーン。」

『れいから連絡が来た。緑が浜に敵が近付いているらしい。』

「緑が浜に?」

そう星史が聞き返した時だった。オペレーターが計算を終えた。

「出ました!エリア357です!!」

「昨日と同じか!!」

エリア357。緑が浜を含む地域で、前も敵はそこに向かっていた。

「分かった。ダ・ガーンの格納庫を開けろ!出撃だ!!」

「了解!!」

星史がそう命令すると、オペレーターはダ・ガーンの居る格納庫の扉を開くボタンを押す。扉が完全に開くと、ダ・ガーンはエンジンを全開にして緑が浜へと向かった。



ダ・ガーンが出撃した後、星史はある場所に居る部下に連絡を入れた。

「“アースファイター”と“アースライナー”はどうなっている。」

『アースファイターは元々軍の物でしたので、既に用意出来ていますが、アースライナーはまだ準備中です。』

「そうか・・・なるべく急いでくれ。今回の戦いで必要になるかもしれん。」

『分かりました。』





緑が浜の街中。ここに一体のロボットが降り立った。カラーリングは前のロボットと同じ黄色だが、機体のサイズは一回り大きい。その手には長大なライフルが握られており、妖しく輝くモノアイが敵を探すかのように左右に動いていた。
すると、そのロボットへ向かって防衛機構軍の戦闘機が飛んで来て攻撃を始めた。だが、ミサイルも機関砲もロボットの装甲に傷一つつけられていない。ロボットはライフルの銃口を戦闘機に向けると引き金を引いた。その威力は以前現れたロボットの拳銃とは比べ物にならず、戦闘機の機体を貫くどころか抉った。
街に駆けつけたれいはその様子を見ながらダイレクターでダ・ガーンに通信を送る。

「急いでダ・ガーン!防衛軍が押されているわ!!」

『直ぐに到着する。』

そう返事が来た直後、目の前を一台のパトカーが通過した。

「チェーンジ!ダ・ガーン!!」

そして、ロボットへと変形する。そう、

「これ以上この地球を荒らす事はこの私が許さん!!」

敵の前に出るとそう宣言するダ・ガーン。だが、その体格差は大きかった。

「何て大きいの・・・」

ダ・ガーンが近くに行った事で、れいも敵の大きさを実感する。




「来たわね、勇者さん。」

母艦のブリッジのモニターでヴィットーリャのメインカメラを介した映像を見ながらキャンデロロが呟く。

「さあ、ヴィットーリャさん。その方を“救済”してあげなさい。」

キャンデロロが命令すると、ヴィットーリャはライフルの銃口をダ・ガーンへと向けた。




ヴィットーリャはダ・ガーンにライフルの銃口を向けて発砲する。

「とうっ!」

ダ・ガーンはそれをジャンプする事で回避した。

「ダ・ガーンマグナム!!」

そして、彼は右足から愛用の拳銃“ダ・ガーンマグナム”を取り出し、引き金を引いてビームを発射する。発射されたビームは見事敵の胴体へ直撃した。だが・・・その装甲には傷一つつかなかった。

「何!?」

ダ・ガーンがそれに驚愕していると、ヴィットーリャは彼の頭を狙ってライフルを撃ってきた。ダ・ガーンは顔を横に動かすことで避けたが、発射されたビームの熱量は凄まじく、角の先端と肩の装甲が少し溶けた。

「ダ・ガーン!!」

それを見たれいが思わず叫ぶ。

「私は大丈夫だ。」

ダ・ガーンはそう答えて彼女を安心させようとする。だが、敵は容赦無くライフルを連射してきた。連射の間隔自体は長いので回避出来ない訳では無いが、こちらの攻撃が効かないのでこのままではジリ貧だ。だが、その時・・・ヴィットーリャの背中に何者かの攻撃が当たった。奴が振り向くと、そこには青と白で彩られた大型の戦闘機が居た。

「あれは!!」

その機体を見てダ・ガーンは思わず叫ぶ。

「と、言う事は・・・」

次に、彼は高架橋の上にある新幹線の線路を見た。すると、二両編成の300系新幹線が走って来て停車した。

『れい君!聞こえるか!!』

その時、この場に星史の声が響く。戦闘機をよく見ると、そのコックピットに星史が乗り込んでいた。

『今直ぐオーリンをかざすんだ!さあ、早く!!』

「は、はい!」

れいは言われるがままにダイレクターを取り出す。しかし、ヴィットーリャは星史が目障りと判断したのか、ライフルを彼の乗る戦闘機に向けた。

「星史さん!危ない!!」

それを見たれいが叫ぶ。当然、星史は回避行動をとろうとするが、完全に避ける事は出来ずビームが主翼を掠めてしまった。そのせいで機体はバランスを崩し墜落して行く。

「れい!早くオーリンをかざすんだ!!星史を救い、奴をどうにかするにはそれしか無い!!!」

その時、ダ・ガーンが叫んだ。れいは彼の言葉を信じ、ダイレクターを開くとオーリンをかざす。
すると、オーリンが光った。それとダ・ガーンが共鳴し、彼の左胸にある六芒星のマークから二つの光が放たれる。一つは新幹線と融合し、もう一つは星史の乗る戦闘機と融合した。すると、戦闘機は再び機首を上げて飛び上がる。だが、それだけでなく新幹線も飛び上がった。そして、変形を始める。
まず、新幹線が横に折りたたまれ、先頭部分が爪先になる形で下半身となった。そこへ、ビークルモードとなったダ・ガーンが車体を二つに折りたたんでドッキングする。さらに、星史の戦闘機が機首を折りたたんで上半身のパーツとなり上にかぶさった。最後に頭と拳が飛び出し、背中の翼が X の文字を描くように展開される。

「合体!ダ・ガーンX!!!」





暗い空間。そこにスポットライトを当てられたかのように一箇所だけ明るくなっている場所にある座席に星史は座っている。

「ここに座るのも久しぶりだな。」

そう彼が呟いて前を見ると、そこにはダ・ガーンが見ている光景が映されていた。そう、ここはダ・ガーンのコックピットである。と言っても、ここでダ・ガーンを操縦出来るという訳では無いが。

『ダ・ガーン!星史さんは大丈夫なの!!』

すると、れいからの通信が来た。

「俺は無事だ。今はダ・ガーンの中に居る。」

『そうですか・・・」

星史の無事を確認し、れいは一安心したようだ。

「それより、早くダ・ガーンに命令するんだ!」

『は、はい!!』




「なるほど、これが合体ね。」

ヴィットーリャのメインカメラを介して戦場の様子を見ているキャンデロロが呟いた。

「でも、それも既に想定済みよ。さあ、ヴィットーリャさん。やってしまいなさい!!」

彼女がそう命じると、ヴィットーリャはダ・ガーンXにライフルを向けた。




「ダ・ガーン!そいつを倒して!!」

「了解!!」

れいが命令すると、ダ・ガーンはヴィットーリャと向き合う。すると、奴は早速ライフルを撃ってきた。ダ・ガーンXは飛んで来るビームを全て回避すると、腰に収納された武器を取り出す。

「ダ・ガーンブレード!!」

それは剣の柄だったが、抜き放つと同時に白銀の刃が形成される。ダ・ガーンXはそれを構えるとヴィットーリャに突撃して行った。当然、敵はライフルで反撃する。だが、ダ・ガーンXはその全てを回避した。そして、ヴィットーリャに充分接近すると飛び上がり、ダ・ガーンブレードを振り下ろす。ヴィットーリャはライフルを盾にして防御するが、ダ・ガーンブレードはそれごと奴を一刀両断した。ヴィットーリャが沈黙したのを確認すると、ダ・ガーンXは振り返ってダ・ガーンブレードをXの文字を描くように振るってから腰に収める。すると、背後でヴィットーリャが爆発した。

「やった!!」

見事敵を撃破したダ・ガーンを見て、れいは思わず叫んだ。




「そんな、ヴィットーリャさんが・・・」

一方、母艦で先頭の様子を眺めていたキャンデロロはヴィットーリャの敗北に唖然としていた。

「どうやら、奴の性能は我々の予想を上回っていたようです。」

「奴のデータを解析しますか?」

すると、彼女の背後からももいろさんとあかいろさんが話しかけてきた。

「ええ、そうね。」

すると、キャンデロロは肩をわなわなと震わせながら答える。

「勇者さん・・・いえ、ダ・ガーンXと名乗っていたわね。私に恥をかかせてくれたからには、楽に“救済”してあげる訳にはいかないわ。」

そして、モニターに映されたダ・ガーンXの姿を睨みつけるのであった。





れいは桜小路家へと急いでいた。何故なら、敵が現れる事を教えてくれた事に礼をいうのと、途中でほっぽり出してしまった家事の手伝いを再開するためである。
そして、門の前に着いた訳だが・・・そこには修羅が立っていた。入院しているハズの芽衣である。

「め、芽衣。何でここに・・・」

彼女の放つオーラと化した怒気に怯みながらも、れいは聞いた。

「無理を言って退院させてもらったんだ。そして、さっき帰ってきた所だ。」

「そ、そうなんだ・・・」

「それより、どう言う事だれい。今日の夕飯は母さんが作っていたぞ。」

「で、でも。世間一般ではそれが普通じゃないのかな!?」

「ほお…それでは、母親が病弱というのも世間一般では普通なのか?」

見ると、芽衣はその手にいつの間にかムチを持っていた。彼女が父親であるヤンチャーから譲り受けた物である。当然、扱い方もしっかりと教えられた。

「頼まれたのにも関わらず、病弱な母さんを放置してお出掛けとは、いい身分だな。」

「ま、待って!これはその、世界の平和を守るためで・・・」

「問答無用!!!」

その日の夕方。ムチを打つ音と少女の悲鳴が桜小路家の近所に響き渡った。



続く


 
 

 
後書き
《次回予告》

ダ・ガーンが合体出来るようになったけど、世界を守るにはまだ心もとないわね・・・だから、他の勇者達を復活させないと!
星史さんが言うには、ダ・ガーンみたいに工芸品に埋め込まれた物以外の勇者の石は既に軍が研究のために回収しているっていう話よ。まずはアメリカ支部に預けられている物の所に行くらしいわ。

次回・ビビッド『ダ・ガーン』オペレーション

北米の風

隊長は、私

 
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