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友人フリッツ

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第三幕その五


第三幕その五

「こんな喜びはない、今までなかったことだ」
「全くです。それでは」
「うん」
 二人は見詰め合ってそのうえで頷き合った。
「このままずっと」
「二人で」
 静かに抱き合った。その時だった。
「おお、遂にだね」
「ダヴィッド」
「戻って来られたんですか」
「うん、そうだよ」
 笑顔でこう告げるダヴィッドだった。それは二人に対してである。
 その後ろにいるのは皆だった。使用人達までいる。
「用事が終わってね」
「その用事とはまさか」
「その通り」
 スーゼルの察しに応えての言葉である。
「二人を祝いに皆を呼んでいたんだ」
「やあフリッツ」
「そしてスーゼルさん」
 フェデリーコとハネゾーが陽気に二人に声をかけてきた。
「おめでとう」
「いいことになったね」
「うん」
 幸せに満ちた声で二人の言葉に頷くフリッツだった。
「全くだよ。おかげでね」
「さて、それでだけれど」
 ここでまたフリッツに言ってきたダヴィッドだった。
「フリッツ、覚えているかな」
「賭けのことかい?」
「そうだよ、それのことだけれよ」
「わかっているよ」
 その笑みで応えるフリッツだった。
「あの果樹園をね」
「有り難う」
「葡萄もワインも存分に楽しんでくれよ」
「そしてそれは」
 ここでスーゼルを見るダヴィッドだった。そのうえで話すのだった。
「君にあげるよ」
「私にですか」
「それが私からの祝福だよ」
 そうだというのである。
「だから。いいね」
「そんな。何という贈り物」
 スーゼルはその贈り物に深い感動を覚えていたのだった。
 
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