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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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第3話:足には自信あり!

(サンタローズの洞窟)

「ピキィー!!」
逃げる。俺は逃げる!
突如現れたスライム1匹に恐怖を覚え、俺はひたすら逃げまくる。

忘れてたよ……俺ってば戦うのが怖いんだったね!
一人で洞窟に入るなんて、自殺と同義語なんじゃねぇ~の!?
持ってる武器が棒っきれ(檜の棒)1本だし……戦闘なんてキチガイ沙汰だよ!

今までに倒したモンスターの数が0匹な俺ちゃんは、代わりに発達した脚力を駆使し、それ程広くない洞窟を逃げ惑う。
逃げ足だけならレアモンスター“はぐれメタル”にも勝てるね! まぁ経験値入ってこないけど……

な~んて余裕ぶっこいてるけど、本当はチビリそうな程怖いんです!
やべ~よ俺……絶体絶命(ピンチ)だよ俺!
何時までも走り(逃げ)続けられる訳じゃないし、なんとか助かる方法を考えないと……

最初に思いついたのは、このまま逃げ続け出口に向かう事だ。
だがそれだと、何一つ目的を達成してないし、勝手に危険な洞窟に入った事だけが浮き彫りにあってしまう……
結果、周囲の大人に怒られビアンカには呆れられ、何も良い事は無い!

ではどうするか……
危険を承知で洞窟内を逃げ回り、岩下敷きオッサンの所まで走り続ける……そんな賭に出るしかないな!
保つか俺の体力? 保つか俺の脚力!?
しかしビアンカの為……いや、俺の未来の嫁の為に頑張るしか無いだろう!

決意を新たにし下り階段を探そうと思ったところで、俺の逃亡劇に新たな展開が訪れる。
チラリと追ってくる(モンスター)を確認すると、スライム1匹だったのが3匹にグレードアップしており、俺への殺気が尋常じゃない状態だった。

更にビビった俺ちゃんは、前方への逃亡(ダッシュ)スピードを上げ死に物狂いに……
すると突然、俺の前に別のモンスター……『とげ坊主』が現れた!!
俺の行く手を遮る様に、とげ坊主2匹が立ち塞がり殺気を振りまいている。

ヤバいよ……今のスピードじゃ止まれない!
仮に止まれたとしても、前後を(モンスター)に阻まれ、残り人生あと僅か状態じゃん!
どうする、どうすれば良い!? 手段を考える時間がほしい……でも、そんな余裕はもう無い!

しかし、こんな所で死ぬ訳に行かない俺ちゃんは、咄嗟に大胆な行動に出る。
それはね……
「とうっ!」
って感じに大ジャンプするのサ!

まだこの辺のモンスターは小さい連中ばかり。
鍛え上げられた脚力で限界を超えた俺のスピードに、敵の攻撃を避けるのに発達した跳躍力を合わせれば、眼前のとげ坊主など簡単に飛び越えられるってモンよ!

華麗に(とげ坊主)を飛び越え、“キャット空中三回転”とばかりに着地……の予定だったのだが、あろう事か着地地点が例の大穴……『とってんぱーの にゃん ぱらりっ』の掛け声空しく、奈落へ落ちる主人公であるはずの俺。ニャンコ先生、助けて~……


(どかっ!)「ぐはぁ!」
奈落へと落ちた俺は、幸運にも目的地へと到達した。
まぁ、ドでかい岩に全身を強打しての到着だが……

「うわぁ~ん、痛いよ~!」
俺ちゃん号泣。
だって仕方ないじゃん……もう其処彼処から出血してるんだモン!

「おぉ……ボウヤはパパスさんの所のアルスじゃないか!? どうしたんだこんな所で? ワシの足に乗っかってた大岩を動かしてくれたのはお前さんか?」
どうやら俺の決死の体当たりにより、薬師のオッサンを拘束してた大岩を動かしたらしい。
結果オーライと言いたいが、体中が痛くて涙が止まらない。

「血だらけじゃないか!? 子供がこんな所に一人で来ちゃ危ないぞ……まぁ結果は見ての通りだが」
「うわぁ~ん!!」
助けて貰って言う事がそれか!? こっちは死ぬかと思ったんだぞ!

「ビ、ビアンカが(ヒック)……困ってて(ヒック)……オジサンが(ヒック)……必要で(ヒック)……」
俺はガチで泣き止めない状態で大まかな説明をオッサンに施す。
お願いだから原作の様に、幼い子供を置き去りになんてするなよ!

「そうか……お前はビアンカちゃんが好きだったからな。彼女の為に怖い思いをして、ワシを助けに来てくれたのか」
「う、うん(ヒック)……で、でも……もう歩けない(ヒック)」
マジです。ガチです。本当です! 体中が痛くて歩く事が困難です。

「困ったなぁ……ワシも足を怪我してるから、背負(おぶ)ってやる事が出来ない……アルスはホイミを使えないのか?」
「つ、使えるけど(ヒック)……効果が(ヒック)……低い(ヒック)」
そうなのだ……昨日の強行軍で、初めての魔法『ホイミ』を憶えたのだけど、ささくれを完治する程度の回復力で、現状の俺を治す事など到底出来ない。

「ではワシの足を治してくれんか? 多少歩ける様になれば、お前さんを背負(おぶ)って帰る事も出来るだろう」
そう言うとオッサンは真っ赤に腫れた足首を折れに突き出し、魔法(ホイミ)を要求してくる。
正直、今は他人に構ってる余裕は無いのだが、無事に帰還する為にはオッサンの戦力を当てにせねばならない……

「ホイミ(ヒック)」
俺の目の前でオッサンの赤く腫れ上がった足が微かに輝く。
しかし見た目には変化がおきず、足の痛々しさはそのままだ。
ただ、現状の俺の痛々しさに比べれば足の一本くらい何でもないだろう。

「おぉう、お前さんのホイミは良く効くなぁ! これでワシはもう大丈夫……お前さんを背負(おぶ)って帰る事が出来るぞ」
豪快に笑いながら俺の頭を撫でる薬師のオッサン。
絶対に嘘なのが見え見えなのだが、俺を背負(おぶ)るとヒョコヒョコ歩き出した。

俺は何してんだろう?
助けに来といて、逆に助けられ……
被害者以上の被害に見舞われ……

こんな事ならサンチョを駆り出せば良かったんだ。
あの人も結構戦えるのだし、『ビアンカの為なの!』とか『サンチョが手伝ってくれなければ僕は一人でも行くよ!』とか言って、色々利用法はあったはずなのに……
一人で助けたと言う既成事実が欲しくて、格好悪いとこだけがクローズアップしてしまった。



怪我人+お荷物(俺)付きなのに襲いかかるモンスターを粉砕し村へと戻ってきた薬師のオッサン。
血まみれの俺を見た村人Aが血相を変えて父さんを呼びに走る。
幸か不幸か父さんは既に帰宅しており、大分動揺しながら俺を抱っこする。因みにサンチョは号泣中。

話を聞きつけたビアンカとママさんも現れ、俺の姿に血の気引きまくり。
「ごめんよパパス! わたしが変な事を言ったばかりに……」
ビアンカママ泣きながら父さんに謝罪……ビアンカも気まずそう。
絶対に俺、格好良く見られてない……それどころか、情けない上に迷惑千万なガキと思われてる。

「アルスが助けに来なければ、ワシはあの場で死んでたよ。この子のホイミで歩ける様になったし、ワシの救世主だよ!」
薬師のオッサンが一生懸命フォローしてくれる。

だが、父さんの説教+サンチョの泣き説教+ビアママの泣き謝罪+ビアンカのシラけた目は止む事がなく、村中を巻き込んだ大騒動になっていた。
俺は少しでも許されるようにと、心からの号泣と「大好きなビアンカの為に……」と言う言い訳を連呼し、子供だから仕方ない的な空気に持って行こうと努力する。

しかし怒りながらもホイミを忘れないのが優しいパパだ。
勿論こっそり薬師のオッサンにもホイミしてます。
傷が治り体中の痛みが消え、やっと安全な父の下に戻ってきた安心感から、気を失い倒れる俺。

憶えて無いがこの後も大騒動だったんだろう……
気付いた時は翌朝で、ビアンカとママさんが我が家のリビングで談笑しておりました。
つー事は、次なるステージへ進出だね!



 
 

 
後書き
何とか一人で洞窟探索も終了出来ました。
だけど大丈夫かな、こんな激弱主人公で…… 
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