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クラディールに憑依しました

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彼女達と合流しました

 ――――――キリトとサチが去った後。俺のマントから開放されたシリカがピナと一緒に背伸びをしていた。


「うー。眠いです」
「お前の睡眠欲は何よりも優先されるのか」
「そんな事――――無いですよ」
「めちゃくちゃ眠そうじゃねーか」


 出口に戻る途中、照明の下を通ったシリカは目じりに涙を浮かべて欠伸を噛み殺していた。


「それにしても、よくあそこにサチさんが居ると判りましたね」
「歌を聞き取って道案内したのはお前だろ」
「でもこの水路に居るって予想したのはクラディールさんじゃないですか、サチさんがあそこに居るって知ってたんですか?」

「此処に入る前にも言ったが、お前が見かけてから短時間でフレンドリストから確認できない位置に居た。
 …………それが此処だっただけだ」
「此処には覗きをしに来たんですよね?」

「覗いてたじゃねーか」
「サチさんは関係ないって言ってませんでした?」
「あぁ、関係ないぞ。俺の用事は済んだ」

「――――――結局、何が目的だったんですか?」
「わかんないもんを――――理解できない事を無理に理解する必要は無い」
「んー。わかりました。そう言う事にして置いてあげます」


 出口が近付いてくると――――――向こう側に人影が見えた…………しかも複数。


………………
…………
……


「アスナ、大丈夫?」
「――――え? あ、うん。大丈夫だよ?」


 ぼーっとしていたみたいだ。


「本当に? 最後の方は――――なんか歩き方おかしかったよ?」
「そう? よく覚えてないかな?」
「正確にはデュエルの途中で会話をした後だナ、いきなりアーちゃんのスピードが落ちたゾ」

「え!? そうなの!?」
「そう言われればそうね。最初は目で追うのが精一杯だったけど、途中から見易くなったわ」
「わたしは何が変わったのか、良く判らなかったけど…………」

「明らかに動きが悪くなったのは確かだナ――――本当に何とも無いのカ?」
「うん…………大丈夫だよ」
「そうカ。ならシリカを探しに行こうカ――――あの馬鹿と一緒だロ?」
「あーッ!? そう言えばッ!? 急いで探しに行かないとあいつ何をしでかすか――――シリカが危ないッ!?」
「…………でも、どうやって探したらいいの? 今フレンドからもギルドからも現在地確認できないよ?」

「最後に会ったのは誰だっタ? 何処で別れタ?」
「最後に会ったのはリズだよね?」
「別れたのは最前線の転移門広場よ、今日は黒猫団と一緒に行動するって言ってたから」
「ふム。するとサチが居なくなる直前まデ、このフロアに居たと言う事だナ――――宿屋から追って見るカ」


 それからアルゴさんの追跡スキルでシリカちゃんの行方を捜したけど――――。


「なんか、第十層の時を思い出すわね。こうやってアルゴを先頭に迷宮区に潜ったっけ」
「直ぐ下の階層だね。あの時は大変だったなー」


 アルゴさんの後を追いながら中央通を進む――――突然アルゴさんが立ち止まった。


「ム?」
「アルゴさん? どうしたの?」
「足跡が消えタ!? まさか此処から転移したとでも言うのカ!? 少し待ってくレ、情報屋ギルドの連中に連絡を取ってみル」


 ――――どうやらアルゴさんの追跡スキルでもシリカちゃんの後は追えないみたいだ。


「………………――――――あの馬鹿たれメ!」
「何か判ったの? シリカは何処!?」
「とりあえず噴水広場だナ、あの馬鹿は此処でシリカを抱えて噴水広場に移動したと目撃情報があっタ」

「シリカちゃんを抱えた!? 寝袋や担架で!?」
「いヤ、補助も無しにマントの下に潜り込ませて持ち上げただト。見た奴はアイテムストレージに収納したのかと錯覚したそうダ」
「…………あの人のSTRってシリカちゃん一人のアイテム総量ぐらい軽く持ち運べるのね」
「…………武器はどうしたのかしら? 倉庫帰りだったとか?」


 噴水広場に着くとアルゴさんが急に何か地面から拾い始めた。


「何を拾ってるの?」
「第二層の石だナ」
「…………第二層? 何でそんな所の石が――――まさか!? その石って!?」
「あア、第八層の時にシリカと初めて会ってナ…………その時に受けさせタ」

「じゃあ、シリカちゃん体術スキル使えるの!?」
「一時的にオレっちに弟子入りしてるからナ、みっちり仕込んでやったゼ」
「弟子入り!? シリカちゃんがアルゴさんに!?」

「――――それで? 何でその石が噴水広場に落ちてるの?」
「…………この石は耐久値がトンでもなく高くてナ、地面に放置した程度では絶対に減らない代物なんダ」
「――――つまり、目印、置石として使えると?」
「そのとおりダ、スタート地点に三つ。通常形式だナ、危険は無い様だナ――――向こうに続いていル」


………………
…………
……


「シリカちゃん大丈夫!?」
「変な事されなかった!?」
「よシ、今すぐその馬鹿を殺そうカ!」

「だ、大丈夫です――――アルゴさん鉤爪を出さないでくださいッ!?」
「……………………もう少しで深夜だってのに元気だなお前ら」


 ――――どうやってこの水門を嗅ぎ付けたんだこいつら? シリカの足跡は残さなかった筈だが?


「お前ら、サチはどうした? 見つかったのか?」
「…………あー、そっちはキリトが追跡スキル使って探しに行ったから大丈夫よ」
「お前さんが追跡スキルを使ってサチを探せば直ぐに見つかったんじゃないのカ?」


 いきなり核心を突いて来やがったなコイツ。


「この水門が近かったからな、宿に戻ってもどれがサチの足跡か判らんし、手近な所から探して見ただけだ」
「シリカに聞けばサチの部屋ぐらい直ぐに判るだロ? 何故余計な手間をかけタ?」
「あの、アルゴさん。今日はもう遅いですし、サチさんも大丈夫ならそれで良いじゃないですか」


 シリカとアルゴは暫く見つめ合い――――。


「………………――――――シリカに感謝するんだナ」
「――――そりゃどうも。さて、さっさと帰ろうぜ。流石に疲れた」
「ちょっと待って」


 アスナからストップが掛かった。


「どうした? 何か問題でもあったか?」
「ちょっと――――ちょっとだけ、あなたに相談したい事があるの」


 少し不貞腐れた様なアスナのしぐさは――――どこぞの兄に人生相談を持ちかける妹を彷彿させるには充分だった。 
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