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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第三幕その二十三


第三幕その二十三

「何でしょうか」
「準備はいいですか?」
「何ですかな、この歌は」
 顔を顰めさせてザックスに対して言うのでした。
「私はそれこそ生まれてから歌を作って歌い続けていますが」
「ええ」
「こんな歌ははじめてです」
 たまりかねた顔で言うのだった。
「何といいますかこれは」
「別にそれでやらなくていいのでは?」
「いや、昨夜の歌は」
 それでもだというのだった。
「今思えば出来がよくありませんので」
「だからですか」
「はい、この歌でいかせてもらいますよ」
「御自身の歌でもどうかと思うのですが」
「いや、これでいきます」
 彼も意固地になっていた。
「ここは何があってもです」
「それではです。歌われるのですね」
「はい」
 ここでは返事は毅然としていた。
「歌って勝利を手に入れますよ」
「そうなればいいのですが」
 しかしザックスの言葉はここでは冷たいものであった。
「ですが歌われるなら」
「全く難解な歌だ」
 彼にとっては極めてであった。
「本当にはじめえですよ。ですが」
「ですが?」
「貴方の歌に期待しましょう」
 彼はとにかくこの歌で行くと決めていた。
「ここはね」
「それでは宜しいのですね」
「はい」
 ザックスの言葉に対して頷く。
「それではそのように」
「はい、では」
「皆さん」 
 ザックスはベックメッサーとの話を終え民衆に顔を戻した。そうしてそのうえでまた彼等に対して高らかに言葉を出すのであった。
「マイスタージンガーも民衆も宜しければ」
「おっ、いよいよだな」
「はじまるな」
「歌合戦をはじめると致しましょう」
「では独身のマイスタージンガー達よ」
 コートナーも進み出て告げてきた。
「御支度を。歌う順番はです」
「どういった順番ですか?」
「年齢順でどうでしょうか」
 こうザックスに述べるのだった。
「これで。如何ですか?」
「そうですな。それでは」
 ザックスもこれで納得するのだった。これで決まりであった。
「ベックメッサーさん」
「ええ」
 早速ベックメッサーが応えてきた。
「はじめて下さい」
「わかりました。それでは」
 昨日の騒ぎのせいでまだ身体のあちこちが痛くて歩くのが辛い。中央に作られた芝生の小山のところに向かう。小山は花で飾られているが今の彼には目に入っていなかった。それどころかその小山の上に登って不機嫌な顔で周りに言うのであった。
「この小山は何だ?」
「何だって?」
「何かありますか?」
「もっと固めてくれないか」
 苦い顔で周りにいる徒弟達に言うのだった。
「こんなのではゆらゆらするよ」
「大丈夫だと思いますけれどね」
「なあ」
「いや、駄目だ」
 それでもベックメッサーは言うのだった。
 
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