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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter25「信頼と疑念」

 
前書き
アンケートまだまだ募集中です。
皆様の選択を心待ちにさせていただきます。 

 

ティアナ・ランスターにとって、自分の銃の師でもあるルドガー・ウィル・クルスニクは謎大き人物だ。管理局の精鋭が集まる機動六課の中で、唯一の一般人でしかも管理局でも干渉不可能な異世界の出身の人間。階級はありはするが、それはあくまでも建前。
だがその実力は誰もが認める程の腕前であり、魔力の源『リンカーコア』を持っていないにもかかわらず、管理局でも名を馳せる六課ライトニング分隊副隊長シグナムに黒星をつけるほど実力を有している。また精霊と呼ばれる生命体の力の一部『骸殻』なるレアスキルに近い力を使えば、ガジェットの部隊をたった一人で殲滅できるほど力の持ち主。あれだけの力を持つルドガーが正直羨ましい。

凡人である自分には決して体現できない力を当然のように振るう彼のように強くなりたい……同時に、自分には永遠に手にする事ができないのではとも思ってしまう自分がいる。

「はあっ!」

廃都市の中で勇ましいティアナの掛け声と共に銃声が響く。

「もっと来い!」

まるで自身に降り掛かる魔力弾など生ぬるいとでも言うかのように、攻撃の手を増やせと指示を出すルドガー。正面から迫る銃撃をカストールで捌き斬る。

「 ! 」

「おおおりゃあああ!」

高速で地面を削るような音を出しながら、ルドガーの背後にリボルバーナックルを振りかざそうと全力疾走。カートリッジをロードし、一気に距離を詰め、上へと飛ぶ。魔力を加速させ、更に回転の力を加え、威力を高める。

「ディバイン…」

スバルが幼い頃から尊敬してやまない憧れの教官、高町なのはの技を自分の技として再現した必殺技『ディバインバスター』。その威力はオリジナルに見劣りはするも、壁抜きなど容易に可能であり、いくらルドガーでも当たればただではすまない。

「バス---」

後はこの拳を振りかざすだけ。初めてルドガー相手に勝利を確信するスバル。
しかし、腹部に凄まじい圧力を感じると同時に彼女は地面に体を打ちつける事になっていた。

「あぐっ!」

自分の身に何が起こったか理解できないスバル。
腹部に残る痛みを感じながら、あの間何が起こったかを思いだす。ティアナと思念通信でタイミングを合わせ、銃撃に気を取られているルドガーに背後からティアナの幻影魔法で姿を消したスバルが奇襲を行う。接近を悟られなければ、それで全てが終わっていたはずだった。
しかし、ルドガーは幻影魔法で姿を消したスバルの気配に気付き、技を放とうとしたスバルの腹部を蹴り飛ばしたのだ。魔力弾を捌きながらルドガーはティアナに近接戦を仕掛ける。

「 ! 」

もはや弾幕ではルドガーを止められないとわかったティアナは、クロスミラージュのトリガーを
1プッシュし2丁銃からオレンジの魔力光の短剣を形成し、慣れない接近戦に備える。

「フリード!」

「キュクー!」

ティアナを援護する為、キャロがフリードに攻撃を命じ、フリードはティアナに被害が及ばない離れた場所でルドガーに向け火炎弾を放つ。迫りくる熱気から逃れ為ルドガーは火炎弾が着弾する前にその場から数度バク転で回避する。

「はあぁぁっ!」

すかさずエリオが横からストラーダで攻め入る。仲間の攻撃を上手く陽動に使った戦法にルドガーはフォワード達が、自分に勝つ為に綿密な作戦を練ってこの模擬戦に挑んでいるのだと、彼女達の動きを見てわかる。防戦一方になるルドガー。更にそこへダメージが回復したスバルが加わり、状況は益々ルドガーの方へ傾いていく。
だがそれでもルドガーは焦る様子を見せず、淡々とスバルのリボルバーナックルによる格闘とエリオのストラーダによる近接戦を躱し、カストールを巧みに操り、互角の戦い演じ続ける。
自分達に有利な状況のはずだが、間近でルドガーの剣技を目の当たりにしるスバルとエリオは、決定打になる一手を決められず、次第に胸に焦りを募らせていく。左右から迫りくるナックルと槍を双剣で受け止める。受け止めているリボルバーナックルとストラーダごとカストールを前へと押し出し、それに引かれたエリオとスバルもルドガーに背中を見せる形で前へと意識とは関係なく動く事になってしまう。

「鏡月閃!」

「「うわぁ!?」」

体ごと回転さる風を帯びたカストールで斬りつける武身技により2人は弾き飛ばされる。
離れた所から態勢が自分達に不利だと確認したティアナは念話で一時集合し態勢を整える事を3人に指示しようとするが、ビーっという音声が聞こえる共に自分達が模擬戦に負けた事を知る。

『はーい、みんなー!模擬戦終了だよ!』


------------------------

「どうだったルドガー君?」

「ああ。最初と比べたら随分動けるようになっていたな」

模擬戦終了後、なのはの号令で集合するフォワード達。なのはは直接模擬戦で相手をしたルドガーに
フォワード達の動きがどうだったか感想を求めていた。

「上手く連携も出来ていたし、スバルとエリオ、2人の相手をしていた時は正直ヤバイと思った」

「本当ですか!?」

「はは、嘘は言わないって」

自分達と戦ってルドガーが苦戦したと知ったフォワード達は表情が明るくなる。

「けど、今回の模擬戦あくまでも相手が俺だからここまでやれたという事もある」

「そうだね。フォワード4人とルドガー君の模擬戦はもう7回はやっちゃってるからね。ルドガー君の動きや戦法もわかってきているから、対処法も充実してくる頃だよね」

「しかも俺はハンデで剣以外は使ってないしな」

「「「「うっ…」」」」

ルドガーが自分達相手に苦戦したと知り、喜んでいられたのは一瞬だけだった。

「そう落ち込む事もないだろ?そうだなぁ……まず、スバルとエリオ」

「「は、はい」」
若干気を落としているスバルとエリオに何かを思い出したのか、2人に話しかける。

「さっきも言ったが、模擬戦での2人の連携は上出来だった。相手をしていて、俺の仲間を思い出したよ」

「お仲間さん…ですか?」

「あっ!もしかして、あの写真に写ってた!」

スバルが以前食堂でフェイトが拾って六課メンバーの目に触れる事になった、ルドガーと仲間と写ってた写真の事を思い出す。ああと頷き写真を取り出し、その場にいる者に見えるようする。

「この白衣を着てる奴はジュードって言ってスバルと同じナックルを武器にしててな」

「ジュードさんって強いんですか?」
「ああ。本業は医学者のはずなんだけど、得意の格闘戦は軍人顔負けの実力……スバルはジュードより戦術や戦いの経験等では劣るが、パワーとスピードは間違いなくジュードを上回ってる。戦いの経験値はこれから嫌でも身に付いていくから、自分の戦闘スタイルをイメージして、脳内プレイで戦術を作っていけよ」

「はい!」

スバルが返事をするのを見るとエリオの方に首を動かす。

「エリオはまだ槍使いの間合いの取り方がわかっていないな。相手との間合いを詰めすぎだ。俺の剣よりストラーダの方がリーチはあるし、間合いを上手く取れば剣使いに反撃の暇を与える事もない……それが今後のエリオの課題だな」

「気をつけます!」

「ははっ、そう気負うなよ。俺も一応槍使いだ。わからない事があったらいつでも聞いてくれ」

「ありがとうございます」

「次にキャロとティアナ」

「「は、はい!」」

意外と真面目な個人の戦闘評価をルドガーが行う事から、少し緊張して声が出てしまう2人。
普段と表情は変わらないが今日の彼の言葉はいつもりよ、的確な物になっていた。

「俺は召喚師や竜使いの事はまったくわからないけど、フリードとよく意志疎通が出来ていたのはわかる。ティアナの援護で撃ったあの火の玉はナイス判断だった。これからもその調子で頑張って行こうな」

「はい!」

「キュクー!」

ルドガーに誉められ、嬉しいに返事をする1人と1匹から、視線をティアナに移す。

「今回はティアナ自身もよく動けていたし、大分指示系統も構築出来てるみたいだな」

「いいえ、全然ダメでした。なのはさんが言った通り、何度も戦ったルドガーさんが相手だったから、今日はここまで戦えました。それでも惨敗でしたけど……」

「それでも成長している事はお前が強くなっている証だ……あと少ししたら俺もお前達の相手をするのもきつくなるだろうな」

「………」

模擬戦での活躍を評価されたティアナは、スバル達と違い喜びを覚えている様子が見受けられない。
その姿を見たルドガーは彼女の事が気になったが、食堂での仕事の時間が近づいている事に気付き、
なのはに残りの教導を引き継いでもらう。

「お疲れルドガー君。後は任せて」

「よろしく……それじゃフォワード達もがんばれよ」

「「「「「はい!」」」」

なのは達を残し訓練場を後にするルドガー。コックと教導官の2つの仕事は慣れない最初の内はハードスケジュールではあったが、今ではさほど疲れる事もなくなった。

厨房のスタッフと軽く挨拶をすませ、自分の仕事を始める。


------------------------

『マター・デストラクト!』

部隊長室のモニターにスリークォーター骸殻に変身したルドガーの姿が写しだされる。
部隊長室の自分の椅子に座りながら派遣任務先で起った戦闘をはやては数名の部下と振り返っていた。

「凄まじいですね……とても魔法を使ってないとは思えないですよ」

「魔法じゃなくて精霊さんの力を使ってるんですよね?あとめちゃくちゃ格好よくなっちゃってますし!」

「バーカー、格好なんてどうだっていいんだよ」

シャーリーとリイン、ヴィータは骸殻の力を使ったルドガーの姿を見て各々の感想を漏らす。

「骸殻の事は聞いちゃいたが、ここまでとはな……どーすんだよはやて?」

「……あくまでもヴィータはルドガーの力が強大すぎると言いたいんやな?」

「アタシの経験上あれだけの力を使ってノーリスクですむとは思えねぇ」

「リスクがある事はルドガーさんも言ってたですよ?」

リニアレール事件後、ルドガーははやて達に骸殻使用のリスクを話していた。
リインは以前ルドガーから聞かされた事を思い出したようだった。

「奴自身のリスクだけじゃねぇーよ。あーゆう力は自分だけじゃなく、他の人間にも影響がある事があんだ。それにアイツ、まだ何か私たちに隠してる事があるような気がする……少なくともアタシにはそう見える」

あの時、はやてがルドガーから感じていたモノをヴィータも感じていたようだ。
リインとシャーリーはヴィータの言った事にピンと来なかったのかお互い顔を見合せている。

「シャーリー。頼んでいた件は?」

「はい」

エアディスプレイを表示し慣れた手つきで巧みに操作する。
そしてエアディスプレイに一つの映像が写しだされる。

「これってアイツの……」

「ルドガーさんの時計ですよね?」

映像に写っていたのはルドガーの金色の懐中時計だった。それは様々なアングルから撮られており、その横には何らかの情報を表した表記が記されている。

「八神部隊長が私に依頼された件……ルドガーさんの懐中時計を解析するという事なんですが……」

「何かわかったん?」

シャーリーは以前壊れた彼の時計を修復した事があり、その際時計のデータを記録していた。今回そのデータからシャーリーは骸殻の特性を解析したようだ。

「いえ、残念ながら何もわかった事はありません。ですが……」

「 ? 」

「これを見てください」

既に出ているエアディスプレイの上に重なる形で何かの反応の波形が表示されたエアディスプレイが新たに現れる。

「何だよこれ、波形か?」

「これは時計を解析した際に観測された波形なんです」

「時計からやて?」

通常無機物からこのような波形が発っせられる事はない。クルスニク一族の骸殻能力者の事を聞いた時、正直眉唾だったと思っていた者からすればこのデータは驚きの限りだ。

「この波形、リインやデバイス達とよく似てますですよ」

「言われてみりゃ確かに……じゃあ、あの時計はデバイスなのか?」

「時計はデバイスではないようです。でも役割はある意味近いのかもしれませんね」

デバイスと懐中時計。持ち主をサポートする事やAIを除けば、2つの役割はよく似ている。むしろ最も異なるのは骸殻能力者と魔導師の方にある。

「この波形は私達魔法サイドで言うなれば、術式を表しているようなモノで、単に私の推測で確証はありませんが、これはルドガーさんの世界でいう、精霊術の一種なんじゃないかって私は思ってます」

「精霊術ですかぁ……直で確認できたら少しはこの謎もわかると思いますけど……」

「無理だな。ルドガーの奴は精霊術は使えないって言ってたしな」

エレンピオス人であるルドガーは霊力野が退化しているため、骸殻を除けば精霊術行使は不可能。
その事をルドガーから話しを聞いているヴィータ達はどうしたものかと考える。

「……もう少し様子を見た方がええかなこれは」

「ヤバイ力なのは間違いないぞ。今んところはクロノ提督直属だという事でフォロー出来てるけど、表
沙汰になったら陸の連中からはしてみたら六課と海を叩く良い材料になるぞ」

ツッコミどころ満載の機動六課は地上部隊の追及を受けないよう、能力限定リミッターをSランク魔導師に施し、なのはやフェイト、シグナムを始めとするヴォルケンリッターの一部部隊員は本局からの出向という形と部隊長八神はやての固有戦力というどれも特殊な部隊参加で追及を逃れている。
だがこの裏技はあくまで六課の立場を守る意味もあるが、本局のいざという時のはやてを切り捨てるというトカゲの尻尾という役割もあり、ましてはルドガーを庇う事は六課は自らリスクを背負っているという事になる。

「その事も踏まえて近い内話し合った方がええかな……無論非公式やけどな」

この場でいくら考えても何も方針が決まらない事から、話しを終わらせる。
部隊長室ははやて1人となる。

「はぁ……」

ルドガーを信じているはずなのに信じられない自分がいる。彼へ惹かれている事を自覚し、彼の笑顔を隣で見続けたいと願った。だが今のままではそう願う事すら自分には許されない。

(私はルドガーの事を信じたい……ずっと好きでいたい)

上着の中から以前ルドガーからプレゼントされた銀色の懐中時計を取出す。
これは彼がはやてへの信頼している事を示す証。これからも傍らにあり続けるはずの証。

「……信じるよ私は。ルドガーを」

その彼女の蒼い瞳には揺るぎない想いが宿る。
今自分が彼を信じなくては他に誰が彼を信じるというのだ。

この想いを終わらせない。


それが八神はやての見いだした“選択”だった。

 
 

 
後書き
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