| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

皇太子殿下はご機嫌ななめ

作者:maple
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第3話 「余の顔を見忘れたかっ」

 
前書き
MS開発局は皇太子の道楽。
原作で言うところの、グリンメルスハウゼン艦隊みたいな扱いですね。 

 
 第3話 「祝、原作組登場」

 いえーいーどんどんぱふぱふー。
 やってきました。このときが。とうとうきましたこの時が。
 そう、わたしは三年待ったのだー。
 原作組の登場です。
 私の目の前には、未来の双璧こと。
 ウォルフガング・ミッターマイヤー君とオスカー・フォン・ロイエンタール君がいます。
 皆様、盛大な拍手でお迎え下さい。

 いや~別に、原作とは関係ないところで出会ったんだけどね。
 徳田新之助を気取って、護衛の女性を一人つけて、オーディンの街中を歩いてたら、うちの護衛がどこぞの兵士に絡まれちゃったんだよ。

「おう、うちのもんに何してくれてんだ」

 と凄んでたら、二人がやってきて助けてくれたってわけ。
 しかもどこの所属かは知らないが、相手はカストロフの家臣だ。目をつけられると厄介な事になるから気をつけろ。と忠告もされてしまった。
 名乗ってやろうかしら?
 いやいやここで名乗ってはおもしろくない。
 また今度の楽しみにしておいてやろう。
 それにしても二人ともいい奴らだ。気に入ったぞ。目を掛けてやろう。帰ったら軍務省に連絡しておこう。君のところにはいい青年がいるねって感じ?
 こういうのも結構、好きなんだよなー。

 とーこーろーでー。いままで気づかなかったが、一つとんでもなく厄介な事が分かった。
 あちし、銀河帝国皇太子なのね。それでね、下手にあの女の子かわいいね、などと口にするとだ。
 問答無用で連れてきちゃうんだよ。役人どもが!!
 親父のところに愛妾が多いはずだよ。ありゃ半分以上、九割がた役人連中が押し付けてきたもんだったらしい。しかもだ、断るとその子ら殺されちゃうかもしれないんだよ。
 そこに自分の意志はない。
 恐ろしいだろー。帝国の闇ってやつだ。
 グリンメルスハウゼン……お前いったい今まで、何してた?
 覗き魔で、コレクターで、貴族の醜聞を集めてきたくせに、それぐらいの事、押さえつける事もできなかったのか?
 親父も親父だ。無気力ぶって目を逸らしていただけだろう。俺としてはそれぐらいで連れてきたら、ぶっ殺すぞ。ぐらいの気持ちで睨みつけたら、誰も連れてこないようになったがな。
 パーティーで見初めたっていうんなら、見てみぬ振りしてやってもいいが、親父の下にも連れて行くなと言い聞かせるのは、ちと苦労だった。

 ■ノイエ・サンスーシ 皇太子の別館 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

 ここに来てからというもの、バタバタとした生活も、ようやく落ち着いたような気がします。
 皇太子殿下に初めてお会いしたさい、一言、悪かったなと仰られたのには驚きました。私をここに連れてきた役人達の言っていた、皇太子殿下が見初めたらしいというのは、どうやら勘違いだったようです。
 皇太子殿下が仰るには、下手にあの女の子かわいいね、なんて言うと問答無用に、連れてきてしまうそうです。

「本当に悪い事をしたと思ってる。お前だって好きな奴の一人ぐらい、いただろうにな」

 そう言われても私には好きな人というのは、いませんでしたし、どう答えていいのかも分かりませんでした。ただこれからは勝手に連れてくるなと、お命じになったというのを、メイドたちから聞き、私の方こそ、皇太子殿下の迷惑になっている事を知ったわけです。

 ■皇太子の間 オットー・フォン・ブラウンシュバイク■

 ルードヴィヒ皇太子殿下の下に私はオイゲン・リヒターとカール・ブラッケの両名を連れて行き、紹介した。二人とも貴族でありながら、自ら貴族の称号である“フォン”を外している変わり者だ。しかし皇太子の目はどことなく冷たい印象を受ける。
 冷笑という表現がふさわしいように思えるほどだ。
 彼らの語る改革案を聞いた皇太子殿下は、

「絵に描いた餅は食えん」

 と仰られ、机上の空論を述べる暇があるなら、憲法の一つも考えて来い。と言い放った。

「……憲法」

 二人の呆然とした表情をわしは生涯忘れる事はないだろう。
 わしとしても同じ思いだ。
 それにしても憲法とは……。まさか皇太子殿下ご自身の口から語られるとは、思ってもみなかった。皇帝主権の専制国家である銀河帝国。それも皇太子殿下が自らを縛るであろう憲法を考えて来いとは、いやはやこのお方は、どこまで先を考えておられるのか?

「貴族領の直接税を下げ、領民に余裕を持たせる事によって、間接税の税収を上げる。それぐらいの事ならガキでも思いつく。さらに貴族からも税金を取れば、一石二鳥だ。だがそれだけでは、オーディンに近い、大貴族達はともかく、辺境は苦しむだけだ。間接税は一律だからな。力の弱まった貴族では辺境開発はできん。じゃあどうする。俺がお前達に求めるのは、そこだ。よく考えてから出直して来い」

 産業基盤の拡大。インフラ開発。確かに考える事は多々ある。
 平民達の権利の拡大はやるべき事をやってからだ。権利はあっても、食えなきゃどうしようもあるまい。皇太子殿下らしい、お言葉だ。

「首都オーディンで道や橋が必要かと聞かれれば、いらんと答える者も多いだろう。生まれたときから揃っているからな。しかし辺境では、お前達が有って当たり前と思っているものすら、無い状況だ。ちっと現状を甘く見てないか、うん?」
「せ、戦争を……や……め……」

 リヒターが俯き、顔を真っ赤にして呟いている。小さすぎてよく聞こえん。

「そう思うのなら、戦争を止める理由を考えろ。止める方法を持って来いっ!! 永久にとは言わん。五年か十年でいい」

 皇太子殿下には聞こえたのか?
 五年か十年、戦争を止める方法。確かにそれだけの時間が有れば、帝国もましになるだろう。しかし本当にそうだろうか……わしにはそうは思えぬのだが。
 皇太子殿下はどう思っておられるのだ。
 顔色を窺ってみても、一向に読めぬ。普段は喜怒哀楽の激しいお方なのだが……。

 ■皇太子の間 ルードヴィヒ皇太子■

 まったくばかばかしい。
 この泥沼の戦争の中で、どうやって改革をやっていくか、悩んでいるというのに。夢のような改革案を持ってきやがって。
 それができるんなら、誰も苦労はしねえよ。むかつくから官打ちしてやろうか?
 お前がやるか? できるのか?
 原作のラインハルトのように貴族を滅ぼして、財産没収しても、戦争を続けりゃ、きれいさっぱり無くなるだろうが。
 戦争もできるだけコストパフォーマンスを重視して、やらねばならんのだ。
 その中には人命も含まれている。うまく使えば、歩も金になる。飛車や角にもなれるさ。それに下手に戦争を止めても、今度は国力が回復した同盟と戦う事になる。
 国力を回復したいのは、帝国だけじゃない。向こうも同じだ。
 あいつらの経済をガタガタにして、こちらだけ回復できれば良いんだがな。どっちにしても産めよ増やせよ地に満ちよ。の時代だ。人が少なすぎる。

 ■MS開発局 ルードヴィヒ皇太子■

 さてと、あいつらもいなくなった事だし。
 俺の心のオアシス。
 るんるんとばかりに、MS開発局にやってきました。

 何か最近、ここの連中のノリがおかしい。戦艦造っている奴らとはまったく違う。向こうはもっと真面目だったぞ。
 ここ本当に銀河英雄伝説の世界だよな~? 自信がなくなってきたんだけど。

「本日は特別ゲストもおられます」
「誰だよ?」
「オフレッサー上級大将閣下です」
「へっ?」
「ザ○とは違うのだよ。ザ○とは」

 野太い声に振り返ると、そこには青い機体。
 男らしいシルエットに肩の角がチャームポイントな。
 そう、グ○だった。
 あれ乗ってんのオフレッサーかよ。

「皇太子殿下~。こいつを装甲敵弾兵にも配備してもらえませんでしょうか?」
「いるのかよっ!!」

 どうせならお前とリューネブルグともう一人ぐらい集めて、黒い三連星やってろよ。ド○を配備してやるから。そっちの方がよっぽど似合うぞ。

「皇太子殿下」

 陰鬱な声に振り返れば、奴がいた。
 正論で固めたようなドライアイス。オーベルシュタインだ。
 なぜここに?

「卿は?」

 知ってて知らない振りー。義眼の調子がおかしいらしい。チカチカしてやがる。

「パウル・フォン・オーベルシュタイン中佐であります。以後お見知りおきを」
「うむ。どうやら義眼の調子がおかしいようだが、戦傷を受けたのか?」
「いえ、生来のものであります」
「なるほど」

 なぜここに来たのかは知らんが、こいつをどうしようか……。
 そうだ、こいつにあれをさせよう。劣悪遺伝子排除法の廃法を考えさせよう。こいつなら、考え付くんじゃねえか?
 まあとりあえず、お前のMSはギャンな。ついでに壷も用意してやろう。

「いかがなされましたか?」
「劣悪遺伝子排除法」

 ぼそっと口にすると、オーベルシュタインの体がほんの僅か、強張った。

「ルドルフ大帝の御世であれば、生まれたときに殺されていても不思議ではない。それだけに内心、鬱屈したものがあるだろう」
「いえ、そのような事はございません」

 しらっとした顔で言いやがる。この狐め。

「そうか、俺でさえあるというのに、卿にはないと申すか?」
「はい」
「あの法は廃法にしたいと、俺は本気で思っている。だが、俺としても理由なくして、廃法にはできん。大帝が作った法だからな。しかし理由、大儀があれば、廃法にできる」

 無言で俺を見つめているな。男に見つめられても嬉しくない。綺麗なおねえちゃんがいいなー。

「理由を考えて来い。卿なら、身に沁みているだろう。いい案ができたら俺のところにもってこい。いいな」
「はっ、命に従います」

 ■MS開発局 パウル・フォン・オーベルシュタイン■

 本気、だろうか?
 しかし、もし仮に、本気だとすると……この私の手で、劣悪遺伝子排除法を廃法にできる。
 この私の手で……。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧