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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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04 月夜の晩に ガラスのカボチャ デネブのカボチャ の裏で

 シャローム地方を制圧した反乱軍だが、その道はまだ長い。
 降伏兵や志願兵が集まったとはいえ、その数はたったの3000なのだ。

「なぜポグロムの森を突破しないのだ?」

 会議の席で、ジャンセニア湖への進軍を主張する私と、ポグロムの森を突破を主張するランスロットの意見が対立する。
 ランスロットは私のスターティアラでポグロムの森に巣食うスケルトンやゴーストを一掃できると主張しての案だがそれはある意味においては正しい。

「ポグロムの森だけならば、突破も容易でしょう。
 ですが、ここからゼノビアを目指すのは危険すぎます。
 ゼノビアに駐留するのはクアス・デボネア。
 ハイランドの精兵の中でも最強を誇る四天王の一人です。
 彼と彼の手勢を打ち破らないと、我々の勝利はありません」

 ここで、私は地図の一点を指差す。
 これこそが、ポグロムの森を突破案を断念した理由である。

「問題はアヴァロン島です。
 この島はロシュフォル教の総本山である聖地なのですが、あの島にはハイランドの皇子、黒騎士ガレスが来ています」

 その名前に一同の顔が固まる。
 神聖ゼテギネア帝国の第1王子で、魔導師ラシュディの導く暗黒道に魅入られ、周囲に悪霊や死霊を伴う不死身の黒騎士として恐れられているからだ。
 私は一同の顔を確認しながら、指していた指を南にずらしてゆく。
 そこがポグロムの森だった。

「ポグロムの森を突破してゼノビアを攻めた場合、黒騎士ガレスが後詰にきた場合後背が脅かされます。
 そして、その脅威を抑えきれるほど我々の戦力は整っていません。
 反乱軍の戦力を充実させる為にも、辺境部の制圧が必要なのです。
 私がジャンセニア湖への進軍を主張する理由がこれです」

 今度は、反乱軍に参加したシャローム領主であるギルバルドが口を開く。
 反乱軍に参加したとはいえ彼は領主である以上領地を守る義務がある。

「それは理解した。
 では、ポグロムの森から来る連中はどうするのだ?」

「私が残ります。
 防衛戦ならば、私のスターティアラとドラゴンで十分でしょう。
 1000の守備隊を残して頂いて、ギルバルド殿と共に後方を支えましょう」 

 こうして、反乱軍主力は私を残してジャンセニア湖への進軍を開始する。
 そして、私は守備隊を率いて、ポグロムの森から来るスケルトンやゴーストに備えたのだった。


 

「天駆ける星々の輝きよ、我が下に集いて汚れし大地を浄化せん!
 スターティアラ!!」

 私の呪文と共に、襲ってきたゴーストの群れが雲散する。
 それに慌てたウィザードだが、身を守る盾は無くアマゾネスの矢に貫かれ絶命する。

「またやって来るぞ!
 アマゾネス隊弓構え!
 放てっ!!」

 アマゾネス隊を指揮するのは、ヴァルキリーのスザンナ。
 降伏した女性陣のとりまとめ役の一人である。
 勝気というか男勝りというか。
 その性格ゆえにとりまとめ役になったのだろう。

「生き残りがいらっしゃいますわよ。
 確実に始末していきませんと。
 とりあえず、お仲間同士で殺しあってくださいな。
 チャーム♪」

 女性陣もう一人のとりまとめ役でウィッチのオデットがチャームの呪文をかけてワイアームを魅了する。
 おっとり腹黒系だが、多くの男性と浮名を流しているあたりウィッチだなぁと感心したり。
 シャロームとポグロムの森の間には川が流れており、橋もかけられていないから飛行ユニットによる攻撃が中心になっていた。
 敵の飛行ユニットは、ゴースト・デビル・ワイアームで回復ユニットがいない事から、特攻作戦のようになってしまっている。
 敵からすれば、死体が増えればゴーストやスケルトン、デーモン召喚の材料にしか思っていないのかもしれないが。
 私達守備隊は、シャローム本拠地ペシャワールの西にある教会を司令部にこの攻撃を防いでいたのである。
 ここに連れて来たのは300ほどで、残りはシャローム各地の警備や訓練および休養に当てられている。

「どうやら勝ったみたいね。
 敵も退却しだしたみたいだし」

 私が気を抜くと、ワイアームを踏みつけていたドラゴンのポチが尻尾をばたばたと振る。
 死傷者はなし。
 というか、負傷者は私のヒーリングで治し、死者が出ても拠点がロシュフォル教会なので生き返らせていた。
 こうした対応策で私は兵からの信頼を勝ち取っている。

「姫さん。
 ちょっと相談したい事が」

 声をかけたのが、ビーストテイマー隊のフレディ。
 シャローム辺境部の守備をしていたのだが、ギルバルドが反乱軍に加わったので代官として忠臣だったリドリーが派遣されてこっちに加わっていたのである。
 おかげでポチの世話が凄く楽になった。

「何?」

「いえね。
 姫さんのぽちが踏んでいるワイアーム、こっちに寝返るんじゃないかと」

 そういえば、タクティクスオウガだったか敵ユニットを寝返らせる事ができるのだった。
 その条件が忠誠度が低くて、HPをぎりぎりまで削って、隣接して説得するだっけ。

「フレディ。
 聞くけど、あのワイアームがなんて仲間になると?」

 忠誠度なんて見えないのにと続けようとしたらフレディが一言。

「だって、尻尾振っていますよ。あれ」

 なっとく。
 踏まれて命乞いしていればそりゃ、分かるか。
 んでは……

「ぽち。
 ちょっと待った」

「がう」

 ぽちの踏み付けが弱まる。
 で、命乞いをしているワイアームに顔を近づけて一言。

「仲間になる?」

 意思は伝わったらしい。
 砂埃が舞うぐらいに尻尾ふってやがる。こいつ。

「フレディ。
 後はお願いね」

「了解。
 あと、吉報だ。
 リーダーがジャンセニア湖のシリウスを撃破したらしい。
 姫さんのアドバイスどおりに攻めた結果、城はあっけなく陥落したそうだ。
 で、姫さんと姫さんの隊をジャンセニア湖に呼んでこいと」

 ジャンセニア湖のボスであるシリウスはウェアウルフである。
 だから、夜に戦うのを避けて昼に戦えとアドバイスしたが、見事に決まったらしい。
 問題はそこから更に奥にある、デネブの庭だ。
 放置しても問題はないが、クリアしておかないとというかデネブを仲間に、最低でも生存させないといけない。

「分かったわ」




 それから一週間後。
 私の率いる別働隊は、ランカグアに陣取っていた。
 デネブの本拠地バルパライソを望める場所に私達だけで来たのには理由がある。
 デネブの生存の場合、カオスフレームやアライメントに影響が出るのだ。
 ぶっちゃけると、男リーダーでデネブを許すと『デネブの美しさに惑わされた』なんて噂が。
 まぁ、女でもうわさをたてられるのだが、泥をかぶるのが補佐の仕事である。

「つーか、私ら必要なくね?」
「ほんとよね。
 この仕事がなかったら、もう少し寝ていられたのに」
「男のベッドの上でしょ。それ」

 スザンナとオデットが私に聞こえるように愚痴を言う。
 まあ、言いたくなるのも分からないではない。
 この間捕まえたワイアームに乗って、デネブの本拠地バルパライソに単身乗り込むつもりなのだから。
 乗っけられる人数だとこれが限界なので、まとめ役であるスザンナとオデットにも来て貰う事に。
 なお、別働隊の指揮はフレディに任せてランカグア防衛に徹してもらう予定。

「はいはい。
 今日中には帰れるからさっさと行くわよ。
 で、このワイバーンの名前ってなんだっけ?」

「ボイナだって」
「ぽちがかわいがりしていた時に聞いたらしいわよ」

 それかわいがりというなのい……げふんげふん。

「じゃあ、ボイナ。
 よろしくね」

 まぁ、尻尾をわっさわっさ振っているから大丈夫だろう。
 なんかやらかしたらぽちの餌という恐怖もあるだろうし。



 ワイアーム一体のみという身軽さゆえに敵から隠れつつデネブの本拠地バルパライソに降り立つ。
 主力はランカグアに出撃していたらしく、出迎えたのはパンプキンヘッドの群れ。群れ。群れ。

「よくここまで来たわね。
 ほめてあげるわ。
 あら?
 エリーさんて意外とカワイイ顔してるのネ。
 でもホントは性格ブスでしょ?
 あたしにはわかるんだから」

「正解」
「あっているわね」

 黙れ。付き添い二人。
 それなりに気にしているのだから。

「あたしはこう見えても、れっきとした魔女なのよ。
 今も魔法の研究をしてたトコ。
 でも、アンタなんかには教えてあげないわ。
 これはあたし1人だけのもの」

「けど知っているんだ。
 あんたの魔法の研究」

 自慢気に語っていたデネブの言葉が止まった。
 ここで考えさせちゃいけない。
 一気に押し切る。

「『おうごんのえだ』」

「!?」

 びんご。
 食いついた。

「あなたが魔法の研究のため、帝国の保有する大量の魔法書の提供と引き換えに帝国側に付いたのは知っている。
 かつては人体実験を繰り返していたのも不問にしましょう。
 で、ディアスポラ地方の森にしかない『おうごんのえだ』が必要なのも知っている。
 こちらの条件を飲んでくれるならば、『おうごんのえだ』を渡してもいいわ」

「条件って?」

「簡単な事よ。
 三ヶ月の間の停戦。
 こちらが求めるのはこれだけ」

 デネブの顔が冷酷な魔女の顔になる。
 おそらく、こちらの条件の意図に気づいているのだろう。
 彼女はその言動より、その冷酷な美貌の方が本心だ。

「ゼノビアを落として、ディアスポラまで進撃できるなんて凄い自信ね。
 で、ディアスポラまで勢力が伸びるようならば、遠慮なく私を潰すと。
 私が横から殴りかかって、その褒章に帝国から『おうごんのえだ』をもらったらどうするつもりなのかしら?」

 それを一番恐れていたのだ。
 とはいえ、それをさせない手札はこっちは握っている。

「一つはこれ。
 反乱軍リーダーであるデスティン・ファローダの署名いり赦免状。
 たとえ反乱軍の勢力が拡大しても貴方を襲わない事を誓うわ」

 デネブの庭侵攻時に別働隊のみで攻める為にデスティンからもぎ取っておいたものだ。
 これで私が反乱軍首脳部の一員、およびそこに近い人間である事が分かるだろう。
 デネブが私の手から赦免状を奪い取って私の顔と交互に見比べる。
 これだけでは弱いので、彼女にもう一枚の手札を叩きつけよう。

「あんたが捨てた失敗作のカボチャ。
 魔物になってあばれまくっているわよ。
 パンタロックあたりで」

「うそ!?
 お姉さん、そんな子を作ったおぼえはないわよ」

「確かめてくればいいじゃない。
 テレポートで飛んで。
 そうねぇ……宗教都市ヤクシュあたりで聞いてみれば?」

「……うそついたらかぼちゃに襲わせるから」

 彼女が目の前から消えて、戻ってくるのにお茶ができる程度の時間を必要とした。
 そして、研究心を刺激しまくるかぼちゃのお化けの存在に心奪われたデネブは、私の条件に賛同したのだった。



 デネブとの休戦締結について、批判がなかった訳ではなかった。
 ただ、ゼノビアへの進撃を目前に、背後を襲われないという理由を理路整然と述べるとその批判も尻すぼみとなる。
 そして、デネブを生かした批判はあっさりと解決する事になる。
 彼女から買い上げたパンプキンヘッドによって。
 ガラスのカボチャが無いので、派手にぼったくられたが。

「これ、便利よね。
 こいつらが荷物を運んで、くれるんだから」

「けど、敵はこいつら目掛けて襲ってくるのはどういう事だ?
 まぁ、殴りたい顔ではあるが」

「オデットにスザンナ。
 まだ分からないの?
 敵に対する格好の囮よ。
 こいつら」

「「あ!?」」

 こうして、後背地の安全を確保した反乱軍はその勢力を拡大し、守備隊2000を残し3000の兵にて王都ゼノビア奪還の兵を起こす。
 守るは、ハイランド四天王の一人、クアス・デボネア。
 序盤最大の山場である、ゼノビア攻略戦の幕が気って落とされた。  
 

 
後書き
オリキャラメモ

ヴァルキリー スザンナ
 降伏した女性陣のとりまとめ役の一人である。
 勝気というか男勝りというか。

ウィッチ オデット
 おっとり腹黒系。
 多くの男性と浮名を流している。
 名の由来は『失われた時を求めて』から。

ワイアーム ボイナ
 名の由来は、アメリカ先住民族ジャマイカの蛇から

この二人作成時のなんとなく掛け合いイメージは天龍田だったり。 
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