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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第33話 桜通りの吸血鬼-その3-

 ははははは。

 早速、カモネギがやってくれました。

 細かく言えば、カモがやったのだが、使い魔の罪は主の罪なので、つまりネギの罪だ。

 女子寮の下着を集めてカモの寝床を作ったり、何の説明もせずに一般人の宮崎に仮契約を迫ったりとやりたい放題だ。

 一応宮崎の方は気付いた神楽坂が阻止したようだが、ぶっちゃけ未遂でも許されることじゃないので、一般人を何の説明もなく巻き込んだと良識ある「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」の中で大騒ぎだ。

 両件とも神楽坂から木乃香、木乃香からオレ、オレから明石教授、と言うラインで情報が流れ、学園長の所にも結構な数が押し寄せたが、仮契約の件は証拠不十分でお咎め無しになった。証拠不十分とか笑わせてくれるのが、ネギに事情を聞きもせずに話しを終わらせたことだ。
 まぁ、ネギに事情を聞いた時点でアウトなので、学園長としても聞くに聞けなかったようだが。

 下着--ちなみに盗まれた下着は全て女の魔法先生が回収し、焼却処分にした--の件はネギが弁償すべきだが、正式な先生でもないネギではまともな給料もないので弁償することもできず、指導教員の学園長が立て替え弁償することですべて収めたらしいが、使い魔にも主にも処罰がない、言わば金で下着ドロを容認する行為は、女の魔法先生達のひんしゅくをかなりかった。





  ☆  ★  ☆  





 ネギが無断欠勤した。

 正確には職員室にも顔を出さず、3-Aに顔を出し、エヴァを捜して学校から出て行ったらしい。

 何を考えているんだろう?

 ちなみに、エヴァは風邪で休むという連絡があったのだが、何か関係あるんだろうか?

 唯一ネギに残っている3-Aの英語の授業すら放棄するとか、今の立場をわかっているんだろうか?



 わかっていないんだろうなぁ。



 夕方、ネギの行方がわかった。茶々丸から連絡をもらったのだ。

 なんとエヴァのログハウスを訪問し、果たし状を渡しに行っていたらしい。

 負けて血を吸われた記憶がないにしろ、いい度胸だ。
 それだけはホント感心する。

 ついでに言うと眠っているエヴァに夢見の魔法をかけ、過去を覗いたらしい。

 ………。敵の情報収集という面では正しいのかも知れないが、英国紳士的にどうよ? と思う。

 意気揚々と学園に戻って来たネギはそのまま学園長室に連れて行かれた。ついでに何故か職務放棄の件で学園長がネギに説教するのにつきあわされた。

 開口一番、「家庭訪問してきました」とか、あまりにも先生という職務を舐めた発言があり、いっそ学園長が哀れに感じられた。

 一応学園長の説教は聞いていたが、意外とまともなことを言っていた。ただ惜しむらくは、ネギがまったく聞いていないことだ。

 恐らく果たし状のことで頭がいっぱいなのだろう。

 学園長が求めたら謝罪の言葉はなんとか出たが、自主的にネギから謝罪の言葉が出ることは一度もなかった。

 きっと唯一残されている3-Aの英語の授業を放棄したことの意味すらわかっていないし、生徒達に「すまない」という気すらないんだろう。





  ☆  ★  ☆  





 果たし状が来た。



 相手はネギでもなければ、エヴァでもなく、3-Aの桜咲からだ。

 ちなみに日付は麻帆良大停電の日で、奇しくもエヴァ対ネギの2回戦の日だ。

 実はもう当日で、さっき女子寮前に呼び出されたエヴァと茶々丸がネギと神楽坂、ついでにカモを追いかけて跳んで行ったのを確認した。

 神楽坂がネギと一緒に行動していたので、多分ネギと仮契約してるな。なんだかんだ言って神楽坂はお人好しだし、ネギの容姿は世話になった父親(ナギ)とそっくりなので、流されたのかも知れない。なんにせよ、神楽坂をネギの従者候補に考えていただろう学園長は願ったり叶ったりだろう。

 ところで、ネギよ。
 わかりやすいと言えばわかりやすいが、女子寮前に呼び出すとか、その場で戦闘し始めたら被害甚大で魔法バレを隠しきれるもんじゃないと思うんだが、そこんとこは考えていたんだろうか?



 そんなことを考えつつ、自分が呼び出された森に向かう。一応時間的には間に合う心算だ。

 ちなみに桜咲から来た果たし状は、リニスはもちろん木乃香や千雨にも見せている。

 果たし状。
 4月○日夜10時、学生寮の裏手に有る森に来られたし。そこで貴様を倒す。お嬢様は絶対に渡さない。これ以上お嬢様の側にお前を居させない。私が勝てばお嬢様には二度と近づくな。

 まぁ、こんな内容だ。

 思わず絶句して木乃香に見せた。

「木乃香、君らが結婚適齢期になる頃は、イギリスでも同性婚は認められから、式を挙げる時は呼んでくれ。ただ、詠春殿にはしっかり理解してもらえよ」

「違うだろ! そこは(あきら)がオレが守る的な発言をするところだろ!」

 千雨が放心状態の木乃香に代わってつっこんでくる。

「まぁ待て。オレとしては恋愛は本人同士の自由だと思うんだ。他人が口出ししちゃダメだろ。もっともオレはノーサンキューだが」

「そうなのか? いやそうじゃないだろ!」

「はっ! 暁くん。ど、どどないしよう? うち返事した方がええんかな? どう言えば、せっちゃんを傷つけないと思う?」

「あれ? 木乃香、断るのか? 折角桜咲が勇気を出して告白してくれたのに。木乃香のことをずっと見守ってくれているやつだぞ。ストーカーのように。まぁ、護衛にはまったくなってないが」

「ストーカーって………」

 千雨はドン引きだ。

「ち、ちょっと待ってぇ~な。うち、同性愛の趣味はないで。せ、せっちゃんは好きやけど、友達としてや!」

「けどなぁ。あの桜咲がやっと秘めてた思いをカタチにしたんだぞ。オレとしては………」

「あ、暁くん。オレとしては な ん や ?」

 く、黒いオーラが木乃香の周りに………。
 ち、ちょっとからかいすぎたかなぁ。

「い、いえ。なんでもないです。きっと誤解ですよ、木乃香さん」

「せやろ、きっとそうに違いないで」

「「そうですね」」

 思わず声がそろったオレと千雨だった。





 エヴァ達を見送り、森の中の待ち合わせ場所に到着した。半径100メートル程の森の中にぽっかり空いた広場になっており、果たし合いには向いている、のか?

 暗いこともあり誰もいないようだが、「円」で気配を探ると3人いるようだ。

「どうした? 人数は書いてなかったけど、お前らも一緒か? 龍宮。長瀬」

「刹那から頼まれてね。仕事ですよ」

 マナが苦笑しながら森から広場に出て来る。

「拙者は暁先生と手合わせできると聞いて。ニンニン」

 長瀬はテスト結果でずっと流されていた勝負ができると聞いて便乗して参加するらしい。

「木乃香は私が貰うとか書いておきながら、協力者がいるのか。お前にはがっかりだ。このヘタレが!」

「な、何を言っている!? 私はお嬢様の周りにお前のよう不審者がいるのが我慢できないのだ!」

 焦って答えながら出て来る桜咲。

「えーっ? だってなぁ………」

 果たし状を龍宮と長瀬に見せると、「刹那………。これはどう読んでも近衛への告白だ」とあきれたように龍宮が言う。長瀬もニンニンと頷くばかりだ。

「そんなつもりはない! 私はこんな怪しいやつがお嬢様の近くにいのが我慢できないだけだ!」

 桜咲は顔を真っ赤にして弁明している。

「怪しい奴って。仮にも副担任に向かってひどくね?」

「まぁ、あれだ暁先生。新学期になっていきなり名前が変わったら、西の若手のトップテンに入る符術師が正体だったとか、刹那からしたら怪しいってわけだ」

「あぁ、なるほど? 確かにオレは西というか中部魔術協会の符術師だけどちゃんと東西共に許可とってここにいるぞ」

「私もそう言ったんだけどね。どうにも納得しなくてね」

「もういい。こちらは3人でやる。負けを認めるか、戦闘不能になったた方が負けだ。行くぞ! はぁぁぁぁぁ」

 まだ了承もしてないのに刀を抜いて襲いかかって来る桜咲。それを見てあきれながらも戦闘モードに入り、森に身を隠す龍宮。ニンニン言って楽しそうに桜咲に追従する長瀬。

「問答無用かよ」

 あきれつつも封時結界を張り、こちらの情報が学園側に漏れないようにする。

 まずは相手をするのが面倒な長瀬に瞬動で一気に接近し、後ろに回り込む。
 「とった」と思いつつ魔力を込めた掌底を繰り出すが、フラグだったようで、当てた瞬間煙となって長瀬が消える。どうやら分身だったらしい。

「斬岩剣!!」

 桜咲をスルーして長瀬に向かったのが気に障ったのかいきなり大技を撃ってくる。

 まぁ、簡単に避けるわけですが。

 ぶっちゃけ、印可を持つ神鳴流は木乃香や千雨の修行時の空き時間も使って修行をしているので、桜咲程度なら念で身体強化もしているので、敵にならない。
 むしろ戦場を渡る傭兵の経験のある龍宮やトリッキーな技や術のある忍者の長瀬の方が戦いにくい。

 で、少し距離を空けて長瀬や桜咲と相対していると森の中に光が走る。

 するとリニスが龍宮を肩に担いで森から出て来る。

「「マナ!」」

 一応伏兵に備えてリニスを森に隠していたのだよ。
 もちろん、桜咲と1対1ならリニスは森から見物していただけなんだけどね。

「き、きさま~! 神鳴流奥義斬空閃!!」

 マナがやられたのに頭に血が上ったのか、気を剣速に乗せてメチャクチャに飛ばしてくる。
 が、大振りなので簡単に避けれる。

「このおおお!!」
 ムキになって振ってくるがより大振りになり避けやすくなるだけだ。

「刹那落ち着け! それでは無駄に体力を削るだけでござるよ」

「うん、良い判断だ。長瀬も大変だなぁ、足手まといがいると。はっきり言ってやると良いぞ、邪魔だって」

「暁殿………」

「クッ、も、もう許さん! 神鳴流奥義雷光剣!!」

 恐らく今の桜咲の最大の技を放ってくるが、

「この未熟者!」

 隙が大きいので、簡単にカウンターを合わせ、魔力をまとった掌底で、腹に魔力を叩き込む。

 詠春殿は何を教えていたんだろう………。

「刹那!!」

 魔力ダメージで崩れ落ちる桜咲を気にしがらもこちらへの警戒は怠らない長瀬はさすがである。

「で? お仲間2人はダウンだがまだ続けるか?」

「もちろんでござるよ」

 そう言って長瀬は4人の分身にクナイを持って突っ込んでくる。

 で、それを無視して後ろを向いて、背中から攻撃しようとした長瀬の本体の腕を捕らえて、背負い投げで投げ飛ばす。背中から落ちて良いダメージが入ったのか、分身も消えてしまう。

 種明かしをすると「円」を張ってしまえば、気の濃淡でどれが分身でどれが本体かはすぐわかるのだ。

「いや降参でござる。まったく、上には上がいるもんでござるな」

「まだまだだな。オレより強い奴らはたくさんいるからな、精進しろ」

「わかったでござるよ………」

「龍宮と桜咲のことは頼んだぞ、長瀬。じゃぁな」

 リニスの電撃を喰らって気絶している龍宮を桜咲の隣にリニスが寝かせ、結界を解き、後は長瀬に任せて家に帰る。
 長瀬に詳しい事情を聞くと、どうやら戦力強化のために刹那が巻き込み、その時魔法についても聞いたそうだ。

「忍術があるんだから魔法があってもおかしくないでござるよ、もっとも拙者は魔法も忍術も使えんでござるが、ニンニン」

 とか長瀬が言っていたが、武道四天王最後の1人、(クー)と違い、裏に片足を突っ込んでいる長瀬は遅かれ早かれ魔法に関わるだろうし、そう言う方面の覚悟はあるだろうから、長瀬への魔法バレは問題ないか。
 ただ、同僚の龍宮はともかく長瀬まで巻き込むとは、相当追いつめられていたんだなぁ、桜咲………。




  ☆  ★  ☆  



 

 ちょうど家に着くか着かないかぐらいで停電が終わり、電気が復旧する。

 エヴァとネギの戦いがどうなったかは気になったが、明日聞けばいいかと思い、念話で木乃香と千雨に桜咲達との戦いについて話そうとしたら、ちゃっかりサーチャーで見ていたらしい。桜咲の同性愛説の誤解も解け、大怪我することもなく戦いが終わったので、木乃香的には大満足らしい。

 なお次の日。
 ネギと神楽坂はエヴァをトラップにかけて倒そうとしたり、ネギと神楽坂が戦闘中に仮契約ーーどうも戦闘開始時点では仮契約してなかったらしいーーしたり、想定以上に善戦したようだが、停電中で魔力が復活し全盛期に近い戦闘力のエヴァにより、ネギは氷付けにり、魔法の効かない神楽坂は気絶させられて負けたらしい。
 なお、最後の方でネギを助けるため、学園長は予定より早く停電を復帰させたらしいが、停電し魔力が復活した時点で、既に結界の効果を人形に移すようにしていたため、エヴァの魔力を再封印できず、当てが外れたようだ。

 もちろん、この後魔力が戻ったエヴァの処遇について魔法先生の間で一悶着あるわけだが、学園長がなんとか強権を発動し収めたらしい。一連の件では契約書で首を押さえられているので学園長も必死で、エヴァも経過を見ていて大笑いだ。

 ちなみに、ネギとの対決をオレ達が誰も見ていなかったことが気に入らなかったようで、少しの間エヴァがすねた。  
 

 
後書き
刹那回でした。最初は刹那にどんなに護衛として役立たずなのかを説教しようかと考えていたんでが、あっさり負けてしまったので、説教することもなく帰らせました。

原作キャラの原作との相違(ネギマ編)
綾瀬夕映・・・・・図書館探検部無期限休部の後、強制退部
神楽坂明日菜・・・新学期からネギと別の部屋、バイト禁止中
近衛木乃香・・・・魔法バレ済み、念・ミッド魔法取得、図書館探検部無期限休部の後、強制退部
早乙女ハルナ・・・図書館探検部無期限休部の後、強制退部
桜咲刹那・・・・・本作では人外の地位は原作よりも高いが、暁の無自覚のチクリで西での評判悪し
長瀬楓・・・・・・ネギではなく桜咲から魔法について知らされる
長谷川千雨・・・・魔法バレ済み、念・ミッド魔法取得
宮崎のどか・・・・図書館探検部無期限休部の後、強制退部
エヴァンジェリン・木乃香により呪い正常化、暁により魔力封印対処済み
ネギ・・・・・・・主人公補正がないため行動通りの評価を受けている。エヴァには2連敗。
 
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