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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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一周年記念コラボ
Cross story The end of world...
  交戦

蒼炎がレイヴンの周りに吹き出し、リンを絡め取ろうとする鎖の乱舞の合間に襲い来る。正直鎖よりこの蒼炎の方が厄介だった。鎖は弾けばいい。
だが、炎は実体を持たない上にこの炎はどうやら特別製だ。

「…………っ!!」

体勢が崩れた所に降り注ぐ蒼の火矢。体を投げ出すようにして前転し、それらをかわす。
しかし僅かに背をかすった炎が少しずつ燃え上がり、リンはそれを消火するために燃えている部分を切り落とした。その際、炎が剣に触れないようにしなくてはならない。
《滅罪》の炎は万物を燃やし尽くす。リンから逸れた炎は床に大きなクレーターを作ってからようやく消えた。そんな炎がもし直撃しようものなら確実に死ねるだろう。

(かわしてるだけじゃ勝てない……何かないか?)

周りの様子や自分の技能、相手のクセなどから勝機を見出だそうとする。

『避けているだけでは勝てんぞ?』

レイヴンは抑揚の無い声で言うと、鎖と炎を放ってきた。視界の中央を鎖、端を炎の矢が埋め尽くし、怒濤の勢いで迫ってくる。

「……まったく、一番面倒なやつに当たったんじゃないだろうな?」

さらに引くか否かの思考は一瞬。両手の剣を前方でクロスさせながら鎖に向かって突っ込む。そのまま当たればただでは済まないような勢いでその鎖と剣が激突し、甲高い金属音が響く。
衝突の瞬間に剣で鎖の運動ベクトルをやや上方に変え、剣を鎖に沿えながらレイヴンに接近し、新たな鎖が射出される前に攻勢に転じた。

「……くらえッ」

走った勢いそのまま地面を蹴って飛翔、クロスした剣と体が物理法則に逆らって回転し始めた。

二刀流単発重突進ソードスキル《メテオライン》

流れるような連続攻撃を信条とする二刀流スキルで唯一の例外と言っても過言では無いほど杜撰なソードスキルだ。
しかし、単純故の高威力で生半可な防御は紙同然。さらにもう1つ、リンにとって有利な要素がある。骨ばかりの肋の一部をごっそりもぎ取り、反対側に着地する。
制動を掛けようとする足をわざと崩し、僅かなHPを犠牲として技後硬直をキャンセル。《メテオライン》の余波である赤褐色のオーラを纏い、回転受け身から立ち上がった勢いに身を任せ、再びソードスキルのモーション。

二刀流上位ソードスキル《インフェルノレイド》9連撃

風を受けた風車のごとく体を回転させながら切り付け、最後の重攻撃を放つ。本来ならここで技後硬直があるが、リンはさらに動き続ける。再びモーション。

二刀流中位ソードスキル《シェインサキューラー》15連撃

剣から放たれる紫色の光の残照が辺りを飛び散り、消えていく。最後の左右同時突きの余韻を感じる間も無く左の白銀の剣《デュランダル》を背の方に回す。ソードスキル発動。

二刀流最上位ソードスキル《スターバーストストリーム》16連撃

燃え尽きる寸前の流星のように激しい光を放ち、最後の一撃がレイヴンの巨体を大きく吹き飛ばした。

「……っく、流石にキツい」

全40連撃のソードスキル。かなりギリギリだったが、何とか成功したようだ。
最初のメテオラインの技後特殊効果、一定時間の《技後硬直》キャンセルと《スキル発動待機時間》の短縮の結果、二刀流による剣技連携《スキルコネクト》ができた。
これは着地した瞬間から適用されるが、メテオラインの硬直には適用されない。故に自力でキャンセルする必要があるため、わざと転んだのだ。第一段階はこれでクリアだ。
さらにスキル発動中は身体能力によって剣速をできる限り速め、終了した瞬間には次の技の準備に入る。これら一連のコンボは元よりこの世界では曖昧だったシステムアシストに抗えたから可能だった荒業だ。

荒い故に先はどうなるか分からない、リンにとっては不本意なロジックでもあるが。

『……やりおるな。だが、もう限界か?』
「……ああ。動くのがやっとで剣なんか振れたもんじゃないな」

諸々の曖昧なシステム系の代わりに、この世界で体力は有限である。両腕の筋肉が悲鳴をあげ、剣も持っているのもやっとだ。

『我の期待に見事応えた礼だ。受けとれ』

目の前に蒼炎が一瞬、瞬いて何かが落ちてくる。

「…………?」

死にかけの動物のごとく命をかけて襲いかかってくるかと身構えていたため、肩透かしを喰らった気分だった。

『上層に行くための鍵だ。持っていけ』
「……ああ」

レイヴンは望んでここに居る訳ではない。それは翼を持っていながらこんな狭い塔に閉じ込もってるというおかしな状況から何となく悟っていた。多分、彼等は上層にいる《魔女》に囚われているのだろう。
リンはボロボロになったレイヴンの横を通りすぎ、元来た道を戻っていった。





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流砂によって殺傷力を高められた鎖が両脇から迫ってくる。

「……ォ、らあ!!」

過剰とも言える高度まで飛び上がったゲツガは手にした両手剣の重量に任せ落下していく。あわよくば背中を切り付けてやるつもりが、グリフィンはこれを悠々とかわす。
ゲツガもこれにはあまり期待していない。狙いは着地した瞬間だ。着地の衝撃を殺し、腰を下ろしたまま疾走を開始する。ステータス置換スキル《殺陣》による敏捷一極の高速移動だ。反対に弱くなった筋力値のため両手剣は信じられないほど重くなったが、気合いでホールドする。

「……ッ、くらえ!!」

接触の刹那に再び《殺陣》を発動、腰だめに構えた両手剣を担ぎ上げるように振り上げ、敏捷一極の突進による慣性+両手剣の重量+筋力一極の腕力を叩き付ける。

『ぐおっ……!?』

その一撃はグリフィンの肩口を深々と切り裂き、さらに石畳の床を叩き割った。手応えは十二分だったが、グリフィンは漸く怯んだ程度の事でしかない。一旦体勢を立て直すべく、後退する。

「はぁ……っと。くそっ、ここが現実世界ってことつい忘れてた……」

石畳を叩き割った衝撃で握力が麻痺している。幸い時間が経てば治りそうではあるが、今その時間があるかどうかは目の前の鷲面次第だ。

『……儂に一撃くれたのは《魔剣王》以来だな』
「魔剣、王?」
『ヒースクリフの事だ。《魔剣王》《魔王》《魔界の覇者》奴に与えられた称号は数えきれん』

魔王は納得だが、他にもあるのは驚きだ。というか思念体とか言っていたくせにまるで実体があるような活躍ぶりだな。

「なあ、俺が訊くのも変かもしれないけど、ヒースクリフってどんなやつなんだ?」
『……そうか。確か、お主らは過去から今に来てしまったのだったな。端的に言えば今のヒースクリフはヒトではない。お主らがこの世界に来てしまったのとは別の理由で今に到り、生きる者だ』

生きる者……ヒースクリフが、茅場が生きているだと?

『混乱するのも無理は無かろう。お主らが居た時、確かにカヤバアキヒコは一度死んだ。だが消えはしなかった……そうゆう事だ』
「……何となく、理解した」

話が終わった所で握力を確認する。本調子ではないが、後一回ぐらいはさっきの技が使えそうだ。

だが、それにはまず隙を作らなければならない。両手剣を逆手に持ち変え、左腕1つで支える。

「行くぞ……!!」

《殺陣》で再び高速接近し、体を回転させながらグリフィンに両手剣を叩き付けるが、それは振り上げられた鉤爪に防がれた。体勢が崩れたところを鎖が襲いかかってくるのを体は倒れるままにしてそれを紙一重でやり過ごす。
鎖が通り過ぎた所でようやく体勢を立て直して反撃のソードスキルのモーションを起こす。

両手剣上位スキル《ファイトブレイド》8連撃

重量のある斬撃が前足の表皮に亀裂を入れる。反対側の足による反撃をかわし、再び攻撃体勢に入る。が、

『ふん、甘いわ!!』
「くそ……」

砂塵がゲツガに襲いかかり、視界を潰す。だけでなく、僅かずつHPが削られていく。結果としてそれはゲツガが再び距離を取る事になったが、状況はさっきとまるで違った。

「……なら」

床に剣を突き刺すと再び弓を取り出し、《錬金術》で精製した武器を一気に4本つがえる。砂塵が晴れた瞬間、それらを一息に放つ。砂塵が再度吹き荒れそれらを吹き飛ばすが、ゲツガはその隙に一気に接近した。

「くらえぇぇぇっ……!!」

白い弾丸となったゲツガの超威力の斬撃がグリフィンにクリティカルに入り、鮮血が砂塵とゲツガを染めた。

「はぁ、はぁ……う。これは中々キツいな……」

返り血を盛大に浴びたのに顔をしかめていると、崩れ落ちたグリフィンがゆっくりと立ち上がりつつあった。

『……この辺で良かろう。ほれ、持っていけ』

目の前に砂の塊が現れたかと思うと、広げた手に鍵が落っこちてきた。

「何だ、これは……?」
『上層に行くための鍵よ。勝利の証に持っていけ』
「……いいのか?」
『儂とてすき好んでこんな狭いところに居るわけではないわ。色々あるのだ』

そう言うとグリフィンは地に伏せて目を閉じた。最後の言葉に込められていたのはおそらく、警告なのだろう。
いずれにせよ、まだまだ緊張感は保っておいた方が良いかと思いつつ、その部屋を後にした。



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突然暴れ始めた漆黒の竜から放射状に放たれた紫電が壁や床に穴を穿つ。
知的な光を宿していた黄金の目は赤く染まり、口からは荒々しい獣の咆哮とドロッとした粘液が発せられるばかりで先程のような言葉は出てこない。

「いったい……」

どうした、という言葉は続かなかった。目に入ったのは異様な光景。ジャバウォックが、いや、周囲の空間が歪んで何かが出てくる。黒く、鋭い………

「…………っ!!」



空中にその何かが精製されたと思ったその刹那、その黒い何かはレンを貫き、その小さな体を消し去った―――、








「……ッッッ、だぁ!?」

という幻覚に襲われ、レンは危うく《消された》という思い込みで本当に死ぬところだった。

『ふむ……解いたか』
「随分と手荒い事するね……」

《夢幻》を司る守護神獣、ジャバウォック。
自らは幻の存在にして他者には悪夢を植え付ける。悪夢に囚われればやがて精神が瓦解し、肉体の死に至る。
レンは考える。この特大トカゲ(?)を倒す、その前に攻撃を当てる方法を。
ソードスキルは勿論、ワイヤーを心意で加工しても無駄だろう。そこにジャバウォックは『居ない』のだから…………―――

「…………ん?」

『居ない』?そんな事は無い。
レンの目は節穴では無いのだから、そこにジャバウォックは間違いなく『居る』。
そう、ヤツが操るのは夢や幻。早い話が思い込みによる『幻覚』。それを解く技術をレンは持っていないが、代わりの方法は有る。

「な~んだ。そうゆうことだったか~」
『ほう。気付いたか。ヒースクリフより速い。やるな』
「どーも。じゃ、行くよ」


―【Incarneit system starting】―


レンの小柄な影の色が濃くなり、そして彼を中心に円形状に影が広がっていき、半径20m程に広がった。

魔女狩り峻厳(ソルシエール・ゲブラー)

それは影とその上空に存在するものを強制的に無に返す《心意技》。

本来、この技は存在が幻であるジャバウォックには効かないが、レンが今回した《事象の上書き(オーバー・ライド)》は《消滅》出はなく《存在》。

『む……!!』

『幻』に『存在』が上書きされ、ジャバウォックが『現れる』。

「これで、終わりだ」

心意を維持したままワイヤーにソードスキルの蒼光を宿らせる。

協奏曲(コンチェルト)色欲(ラスト)

ワイヤーがジャバウォックに突き刺さり血飛沫の中、その巨体を縫い上げる。

『………ぐぉぉぉ!?』

どちゃ、と地面に倒れこんだジャバウォックはしばらく動かなかったが、やがてゆっくりとこちらに顔を向け―――笑った。

『……容赦無いな。どうやら我の負けのようだ……。これを持っていけ』

レンの目の前に黒い影が現れ、そこから鍵がポトッ、と落とされる。これが手前の部屋の閉められた扉を開くための鍵だろう。

『気を付けろ』
「……え?」
『お前達が会おうとしている魔女は本物の化け物だ。もし、戦いになったら勝とうと考えるな。やつは戦いと狂乱を好む狂い神。見た目に騙されると、殺られる』

いつしかジャバウォックの傷は消え、目にも光が戻ってきている。しかし、声はレンとの戦闘以外の要因で震えていた。

「……わかったよ。気を付けるようにする」

それだけ言うと、レンは部屋を後にした。




__________________________________________




辺りを舞う黒い羽を大太刀を振って吹き飛ばす。この羽はアウルの翼から出たものだが、本人曰く触れたら即死らしい。

『そこまで簡単に吹き飛ばされると自信なくすわ……』
「いやいや。簡単じゃないぞ?現にまだ一太刀も食らわせてないじゃないか。その鎖は何度も食らってるのに」

アウルの攻撃は単純。鎖による打撃や刺突、後はさっきの即死する黒い羽。
というかそれしか使われて無いにも関わらず、レイはこれ以上アウルに近づくことが出来ない。

吹き飛ばされた黒い羽が宙に消えると一気に接近を試みる。頭上から叩きつけられる鎖をいなし、立ち止まる事無く速度を上げる。残りの距離は20m。
だが、

「…………っ!!」

背後からの奇襲を察知し、やむ無く反転。恐ろしい勢いで迫ってくる鎖を叩き落とす。さらに、攻撃はこれで終わりではない。左右の側面と再び頭上から鋼鉄の塊が彼に向かってくる。

「っ、らぁッ!!」

飛び上がりながら体を無理やり捻って鎖の間を抜けた。着地すると、側面で響く大音響を掻き消すような叫び声を上げながら残りの20mを疾駆する。
が、そこにアウルは既に居ない。俺の気が一瞬逸れた隙に飛び上がり、移動したのだ。舌打ちしながら振り返ると、無音の羽ばたきで着地する漆黒の梟が声を発した。

『惜しかったわね~』
「……うぜぇ」

通常のAIで出来たモンスターになら苛立ちを感じる事は殆んど無いが、流石に相手は本物の怪物とだけあってこんな気分にもなるのだ。

『ところで、そろそろ『本気』とやらを見せて欲しいのだけれど?』
「……ばれたか」

もし本気でやっててこんな事を言われていたらブチ切れていたところだが、正直に言えばまだ余裕はある。
だが、《レイ》でいる間に『本気』になる事を厳しく戒めてきた彼にとってここが『現実』であったとしても《レイ》となってしまった以上、枷を外すことはかなり憚られた。何故なら―――

「……俺の本気を見るのは止めておいた方がいい」
『あら、どうして?』
「命の保証が出来ない。特にこの《成り》だとどんな事になるかは俺も分からん」
『……私はあなたを殺さなきゃいけないのよ?そんな私に《殺さない》なんて情けをかけるの?』
「帰りたいんだろ?元の世界に。だったら殺しちゃダメだろ」
『な……。馬鹿ね、あなた』
「馬鹿言うな。殺すぞ」

大太刀を鞘に戻し、体の力を抜く。
……アウルの目の強い光は揺らがなかった。最初から彼女は覚悟の上で俺と戦っていたのだ。


これから使うのは禁忌のシステム外スキル《二天一流》。《レイ》ではなく《水城螢》の技だ。


―《水の型、無形の構え》―


『そう、それよ』
「……来い」

無音のまま飛び上がり、こっちに飛翔してくるアウル。先行した鎖がレイ向かって飛び出した。



―チンッ……



『…………な……ぁ?』
「大人しくしていろ。死にはしない……と、思う」

鎖がレイに接触する刹那、その鋼鉄の鎖は一文字に裂けていき、そのままアウル本体も横に割られた―――というのを地面にひれ伏してからアウルは知覚した。

レイはアウルの体に埋め込まれていて、斬りつけた際に抉り出した鍵を地面から拾い上げると踵を返し、元来た通路に向かって歩き出しながら最後、アウルに告げた。

「一応、言っておこう。―――二天一流《水の型》・裏絶招、《絶一文字》。……惜しかったな」 
 

 
後書き
↑ジャバウォックはこんなイメージで書きました。

今回決め手となった、各々の技に関しまして。

コラボをさせて頂いてる3人のものに関しては無許可で作った完全に創作の技、及びロジックです。各作品に今後は出てこないでしょう。

レイの決め手もコラボ仕様となっております。こちらは出ない『かも』ですが、出す気はあまりありません、強すぎるので。

それでは残り二話(たぶん)。お楽しみ下さい!
 
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