| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

一周年記念コラボ
Cross story The end of world...
  黒き翼を持つもの達



装備した2本の片手剣の感触を確かめながら通路を抜けた先は迷宮区のボス部屋のような円形の広間だった。違いを上げるならば、天井が恐ろしく高い――と言うより、見えない事だろうか。
そして――、

「お前か、俺を呼んだのは」
『いかにもだ。人間』
「何故だ?」

俺は手前の広間でじゃんけんで一番最初に通路を選ぶ権利を得た。その時、ある通路から『声』を聞いたのだ。それがこの大鴉だった訳だ。
全身を黒い影で覆い、その全体像は見えない。

『他の連中は面白味が無さそうだったのでな』
「……へぇ?」
『お前がこの世界にやって来てから、ずっと見ていたぞ。その年でその聡明さ。我の相手に相応しい』
「だったら姿を現せ、影と話しているのも馬鹿らしい」
『ほう?……ハハハ。実に良いぞ!良かろう、クク……』

一気に霧が晴れるように影が霧散し、レイヴンが姿を現した。巨大な鳥の骸骨に、無数の鎖と漆黒の巨大な翼を纏っている。やがてその周囲を蒼炎が踊り始め、空気を焼いていく。

『我が名はレイヴン。司るのは《滅罪》。黒き翼を持つ()神獣が一角。名乗れ、剣士よ』
「……《黒き導き手》リン」
言うが否や二刀を抜き放ち、不意打ちを敢行する。
二刀流突進系ソードスキル《ダブルサキューラー》

熱せられた空気を切り裂いて肉薄したリンと、レイヴンの嘴が激突した。




____________________________________________



「クソッ……」

右手に生み出したスピアをつがえて頭上を飛び回る巨大な影を撃つ。だが、影は体を傾けるとそれを難なく回避し、さらに高空へと逃げ去る。

「ぐ………」

弦を限界まで引き絞って放つが、放ったスピアは届かずにきりもみしながら落下してくる。交戦開始から随分と経っているが、まだ決定的な一撃は入っていない。グルリと宙を一周したグリフィンは壁に爪をたてると、そこを支点に体を支えた。
名前から飛行する敵だと予測し弓で挑んだはいいが、射程外に逃げられてしまってはどうしようもない。が、

『もう良いか』
「…………っ!?」
『何だ?儂が話すのはおかしいか?』
「……いや、驚いただけだ」

ズウン、と巨体が地面に着地し、地面が波打つように振動する。さらに、ひび割れた地面から土色の流砂と鎖のようなものが飛び出し、グリフィンの周りを漂い始めた。

『変に思うかもしれないが、儂は所謂人見知りでな。初対面の者は苦手なのだ』
「は、はぁ……」

随分と人間臭い――というか、苦手と言う割にはやけに饒舌だ。

『ふむ……。成る程。この塔にやって来たのはヤツに唆されたからか』
「ヤツ、だと……?」
『ヒースクリフ、だろう?知っておるぞ。会った事も、戦った事もある』
「なんだと?」

ヒースクリフにははぐらかされたが、ヤツはこの塔の主である《魔女》とも知り合いかもしれない。
このグリフィンとも知り合いなのだとしたら、ヒースクリフはこの塔に昇った事がある…………?

『ふふ。中々面白い話である故、詳しく話してやりたいという気持ちもあるが、無条件では興が無い。構えよ』
「…………」

人見知りを豪語した割には本当に饒舌になってきたグリフィンにため息を吐いて、背の両手剣と弓を取り換える。

『儂の名はグリフィン。司るのは《時空》。黒き翼を持つ()神獣が一角。名乗れ、剣士よ』
「…………」
『早ようせんか』
「……《ホワイト・バレット》ゲツガ!」

目の前の珍獣以外誰も聴いていない事を祈り、ヤケクソ気味に叫ぶ。同時に剣を腰だめに構えると、殺陣で一瞬ステータスを入れ替えグリフィンに肉薄していった。






_____________________________________________





ワイヤーによる神速の斬撃が竜のような黒い化物に迫る。竜はそれを避けようともせず、喰らう。

しかし、確実に切った筈の体表からは血もでず、そもそも切り傷すら付いてない。いや、微かに伝わる手応えからするに――切れてない。体表を透過し、攻撃を無効化されている。

『……愚かな事だ』
「…………っ!?」
『まだ解らぬか。我は幽玄の存在。貴様では我は倒せん』
「そんな訳あるか」
『まあ、信じぬのも良いが。気の済むまで付き合おう。その間、昔話でもしていようか』
「勝手に、しろ!!」

今度は連続してワイヤーで斬りつける。上下左右、斜めから息の吐く間もなくごく普通の個体であれば、細切れ間違いなしという程に切り刻もうとする。

『あれは何年前だろうかな。多分百数年だった気がするが……。如何せん気が遠くなるぐらいここに閉じ込められているんでな。……その昔、ヒースクリフとか名乗る若造が我に喧嘩を売ってきた』

思わず手を止めて竜を見上げる。黒い竜は宙で体を捩ると、1つ頷いた。

『……まあ、結果から言えば我は負けたのだがな。あやつは涼しい顔をして去っていったぞ』
「……攻撃が効かない相手にどうやったのさ」
『教えるか、馬鹿め。……ともかく、先程の発言は訂正しよう。そんなやり方では我は倒せん』

竜はまるで、自分を倒してくれと言わんばかりの口調で言う。気だるそうに早くしろという態度で。
SAOの中で彼のワイヤーが効かなかった相手はごく少数、それも大半はただ歴然とした力の差があっただけだ。
少なくとも、目の前の敵のように『何もしていない』のにも関わらず歯が立たないという事は無かった。

『さて……余興は終いだ。さっさと本気で来い。我はよく気紛れと評されるが、つまりそれは貴様などやろうと思えば殺れるのだぞ?』
「随分と親切にしゃべってくれるね?何考えてるの?」
『何も。さてと、別にやりたか無いがルールだから仕方ないな。……我の名はジャバウォック。司るのは《夢幻》。黒き翼を持つ()神獣が一角。はい、名乗って』
「はい?」
『貴様の番だ』

え、ナニコレ?やんなきゃいけないの?

「……《冥王》レンホウ」

ジャバウォックは一瞬目を瞑ると、野太い咆哮を上げた。どこからともなく湧き出た黒い障気と純色の鎖がジャバウォックを守るように周りを周回する。

「な、なに!?」

そこに居たのはさっきまでの気さくな怪物ではなく獰猛な獣だった。







_________________________________________





接近する気配を察知し、白銀の刀を一閃する。
僅かな手応えと、羽毛が散るのを確認する間も無くその場から退避した。無音の襲撃を視界の悪い暗闇で回避してのけるのは決して容易では無い。大気の流れを読むという技能をフルに活用しつつ、次の襲撃に備える。
しかし、やって来たのは襲撃ではなく問いかけだった。

『どうやって私の闇討ちを避けているのかしら?』
「……話せんのか」
『あら、不思議?』
「いや、人語を理解出来る程高等な知能を持っているとしたらやっかい者だと思っただけだ」
『……つまらない子ね』

って言うか女(雌?)かよ。やりにくいな。

『ねぇ、あなた達は何のためにあの方に会いに行くの?』
「過去へ帰るためだ」
『ああ、そうゆう事。という事はあなた達がヒースクリフの言ってた『異端者』達なのね』
「……知り合いなのか?」
『まあね。そっか、それは失礼な事しちゃったわね』

ズズッ、と暗闇が何かに引き寄せられるように消えていく。何を光源としているのかは分からないが、薄明かりの円形の広間に俺は居た。

『《魔剣王》ヒースクリフが選定した4人の異端者が《魔女》を倒す。何かの預言にそう書いてあったそうよ』

《魔剣王》、また新しい単語が出てきたぞ……。

ここまで手に入れた情報から推測するに、おそらくヒースクリフは随分前にこの塔を訪れ、《魔女》ともこいつらとも戦っている。そこでどんな事があったかは分からないが、何か目的があってヤツは《魔女》を倒したいのだろう。だから元凶でもある俺達を魔女にけしかけた。

(……全く、相変わらず憎たらしいヤツだ)

何せ向こうは情報という限りなく高い対価を払う代わりに目的に近づく、こっちは危険と隣り合わせになる代わりに過去へ帰れるのだ。元凶である俺達が過去に帰ろうとする限り、双方には対等なデメリットしか発生しないのだ。当然俺達は諦める気は更々無い。

「何故そんなことを話す?何が目的だ」

未だに姿が見えない声の主に問いかける。答えは当てにしていなかったが、存外それに対する反応は早かった。

『私達はね、あなた達と同じく違う世界の生き物なの。レイヴン、グリフィン、ジャバウォック、そして私、アウル……と、もう1人は《魔女》に召喚されてこの世界に貼り付けられた……もうこの世界に慣れてしまったヤツも居るけど、私は帰りたい。あなたに協力してあげたい気持ちはあるけど、ダメなの。魔女に召喚された時にかけられた呪いであなたを倒さなければならない。分かって頂戴』
「……ああ」

憐れにもコイツらも被害者のようだ。ならば、ついでながら助けてやらなければならない……。白い大太刀《白蓮妖ノ刀》を納刀し、《狒々ノ太刀》を両手で握り上段で構える。幸いここは『現実』しかも命を張る、純然たる『戦場』だ。

『もう引き返せないわよ?』
「構わないさ、()()で戦うからな」
『そう……良かった』

目の前で空気が揺らぎ、漆黒の梟が顕現する。同時にその身の回りを鋼鉄の鎖が回り始めた。

『私の名はアウル。司るのは《死》。黒き翼を持つ()神獣が一角。名乗りなさい』
「《紅き死神》レイ」

名乗った時に俺はもう既に飛び出していた。今の時代、戦いにおいて名乗り合いは無意味に等しい。互いに話し合いの余地が残っていないのなら尚更だ。

自分以外が止まって見えるような加速感の中、レイの表情は段々と嬉しそうに歪んでいった。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧