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世界の片隅で生きるために

作者:桜里
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プロローグ
  弟子卒業試験のはじまり2

1994
 12月末 ハンター世界にトリップ。ビスケに保護される。
  (年末年始の休暇を利用してイギリス旅行する予定だったっけ)

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1995
(原作) キルア、天空闘技場に初挑戦。
(原作) GIで、集団でカード収集する組織(ハメ組)設立。

 10月 ビスケ、283期ハンター試験の試験官に内定。弟子入り。

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1996
(原作)幻影旅団、クルタ族を襲い緋の眼を略奪。

  1月 283期ハンター試験。
  5月 ヤン襲撃。念を覚えた。
 12月 念修行がGI編のゴンたちと同じクラスに。

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1997
(原作)キルア、天空闘技場にて200階に到達。

 10月 ビスケから弟子卒業試験を言い渡される。←☆イマココ!!





「うーん……ハンター試験までは登録して……登録抹消にならない程度に戦えばいいか」
 カレンダーと日記(覚えてる限りの原作のことなんかも書いてある)をにらみながら、私はつぶやいた。
 今日は一日好きに過ごしていいと言われたので、自室に戻ってベッドに横になっている。
 食べてすぐ寝ると太る?
 ちゃんと片付けはもちろん、日課の家中の掃除や洗濯も終わらせてからに決まってるじゃないか。

 ……あ。

 今年って、キルアが天空闘技場にて200階達成する年だ。
 たぶん、もう家に戻ってるはずだから、ニアミスするとか無いよねえ……?
 こんな所で原作に関わっちゃうのも、ちょっと困る。

 ハンター試験は、毎年一月。

 だから「今年」の試験というのは正確には「来年」の試験だ。
 今は、十月。今朝の師匠の話からすると、天空闘技場の四季大会のうち春夏の大会はすでに終わっているはず。
 とすると、残りは秋冬だけれど時期が問題だ。
 秋はおそらく今月だけど、冬はいつになるんだろう? 十二月に大会があるならそれは避けたい。翌月に試験が控えているし、その前に怪我をするのも癪だし。

『あんたは、どんな相手にも手加減して本気でやれない』

 ゴロゴロしながら、師匠の言葉を反芻する。
 自分は、結構痛みに鈍感だ。下世話でぶっちゃけた話だけど、元の世界では毎月来る月の物とか酷いときは意識失ったり倒れたりするほど酷かった痛みを耐えてたせいだと思う。こっちの世界に来てからはそういう痛みとは無縁になったから、それだけは良かったなあ。この辺はホント実際にそういう人じゃないとわからないだろうけどさ。

 だからと言って他人の痛みに鈍感なのかというとそうじゃない。
 人が痛みを抱えている姿を見るのは苦痛。だからこそ、自分が全力を出して相手を傷つけたら、その痛みはどれくらい? って考えると怖くてできない。

「それを直せってことだよね、きっと……」

 師匠としては、私を死なせたくはないんだろう。
 ハンター試験中の死傷率は異常とも言えるものだし、新人の合格率は3年に一人。
 本試験会場に自分は師匠のおかげでナビゲーターも探さずに行けるけれど、会場についたもののうち9割は一次試験で不合格。それ以後の試験内容だって、試験官によっては受験者同士で殺しあいを公然とさせるものだってある。
 自分が最初に会得した念能力は、本当に戦いには向かない。師匠はそれを知っているから、オーラ総量を増やす鍛錬をしてくれたわけだし。

 いつかは、戦闘にも使えるような発を作ってはみたいけれど、あまり気が進まない。

 ……ちょっと不安になってきた。
 私、本当にハンター試験受けても大丈夫なのかな。

「いや、大丈夫なはずだ! 念を知らない人だって受けてるんだし、大丈夫」

 自分を励ますように声を出す。
 明日には、この少しは住み慣れた家を出ていく。師匠が天空闘技場行きの飛行船のチケットを用意してくれていたから。

 てか、準備良すぎだと思うんだ。
 私が断ってたらどうするつもりだったんだろう?

 断っても、無理やり放り込むつもりだったんだろうなあ。



 荷物は大きめのカート式のトランクケース一つと、この世界に来る時に持ってきた肩掛けカバン。
 中身は着替え(例のごとくゴスロリ……)と身の回りの細々としたもの。
 あとは愛用の化粧品類。この化粧品は、師匠の愛用品と同じものだけど、物凄くイイ。

 スキンケア用の乳液にしても化粧水にしても、メイク用のファンデにしてもグロスにしても、付けた感じが違うし、香りもまるでリラックス用のアロマみたいで癒される。人工の香料や肌に悪い添加物みたいなものは入ってない。
 きっと念能力者が作ってるんだろうなあと、漠然と思ってる。

 服と宝石、そしてこういう美容に関するものには、師匠はお金に糸目は付けない。
 お金を稼ぐ手段がなかった私にも同じように買い与えてくれていたから。

「しばらくは、闘技場の外のホテルに泊まることになるだろうしね。持って行くといいわさ」

 空港まで送ってくれた師匠に渡された封筒はかなり重い。
 中を見ると万札が束で入っていた。

「し、師匠……多すぎる気がします」

 あまりの大金に、軽く目眩を覚える。

「それはパラダイスレッドの買取料だと思えばいいわさ。だから、きちんと持ってくるように。
 ま、そのくらいのお金があっても、あの辺のホテル代は高いからすぐに100階クラス以上にならないと金は尽きるよ」

 ニコニコと笑みを浮かべて、恐ろしいことを師匠は言う。
 この金額がすぐ無くなるとか、どんなぼったくりホテルだ。

「安い闘士用のホテルは物騒だし、不潔だからね。
 セキュリティのしっかりした観光客用のホテルとなると高いんだわさ」

「ああ、そうなんですか……」

 納得はしたものの、原作でズシとウィングが泊まってたホテルはどのランクに入るんだろうと頭の片隅で思う私がいた。
 あれ、観光客用だったのかなあ……。

「それと、ハンター試験の時には数日前に迎えが行くように手配しとくから」

 申込みも済ませてあるし、あとは時期が来るのを待つだけ。
 そんな風に思いながら、師匠の顔を見ると浮かない表情を浮かべてる。

「スミキ。一人だから……もしかすると、またヤンが襲って来るかもしれないけど」

 念を覚えるきっかけになったアイツ。

「大丈夫ですよ」

 思い出したくもない相手だけど、次に会ったときは師匠のためにも決着を付けないと。 私は、にっこり笑って手を振って、搭乗ゲートへと向かっていった。 
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