| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第61話 エキシビジョンが始まるようです


Side 愁磨

『子供先生ダゥゥーーーン、と同時に何者かが乱入ーー!フード姿はクウネル選手に見えるが一体!?』


「ナギ……ナギ・スプリングフィールドの事アルか?」

「恐らく、だが。」

「ふぅむ………。」


それだけ言うと、司会に連絡を取る超。俺は急ぎ、ステージへ向かう。


「よお、愁磨……って、二回目か。」

「マジで、ナギなのか?本物………だよな。」

「お前が一回見た人を忘れるタマか?俺じゃあるまいし。」


あまりにもテンションが違うから、それは疑問にも思う。

"答えを出す者(アンサートーカー)"と魂の形で確認したんだから、間違いは無いんだが。


『ご来場の皆様、先程の試合だガ。私達はアリア選手の攻撃は危険な物だったと判断し、反則。

ネギ選手の勝利としたネ!!』


超の言葉に、騒然となる会場。倒れてるのが優勝者の上、乱入だからな・・・文句も言いたいのだろう。


『しかしこの乱入者、何とネギ坊主の父親との事ネ!そこで、決勝進出者の父親同士でのエキシビジョンを行うアル!』

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


超の言葉に湧き上がる会場・・・って、あいつ勝手に・・・まぁ、いいか。俺も何だかんだ気になってた所だ。


「よくわかんねぇけど……久しぶりに、やるか。」

「ああ、そうだな。」

『二人とも了承した所で………司会、お願いするネ。』

「ああ、ちょっと待った。野郎共、今だ!!」

「「「「「サー!イエッサー!」」」」」


待機させていた奴等にレバーを下ろさせると、例のシステム・・・技術部に作らせた、多重障壁発生装置が作動する。

メンバー的に、エキサイトし過ぎた場合、元から張っていた物だと障壁が消し飛ぶから、その時の為に

用意しておいた、んだが・・・。


「俺らだと20秒しか保たないから、限定戦闘な。アリア、ネギ引っ張って離れててな。」

「ん・・・。がんばって、ナギなんかに・・・負けないでね・・・。」

「ハハッ、任せとけ。」


アリアに首根っこを掴まれて、ズルズル引っ張って行かれるネギ。

二人が障壁の外側へ行ったと同時に、俺とナギの魔力が練られステージにヒビが入って行く。


『それでは麻帆良武闘祭最終戦、エキシビジョンマッチ!"|赤点魔法使い《デスペナルティ・マジシャン≫"織原VS"赤き鳥頭"ナギ!

レディィィィィィィイイイイイ!!ファイッッッ!!!』

「"バル・ボル・ベルグ・バルホルス!"」「"リィン・ニーグ・ゴエヴォーイ!"」

「「"契約に従い我に従え、高殿の王!」」

「―――なんてな!『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!!」

「来れ、巨神を………!?"アトロポスの剣"!!」
ザンッ!

最上位魔法の詠唱キャンセルに高速再詠唱の上、詠唱破棄だと!?どんな上達の仕方だ・・・!


「消えてる間に、随分やる様になったじゃないか!!」

「色々あったんでな……っオラァ!!」


雷の投擲(ヤクラーティオー・フルゴーリス)』が数十本集まり天井の様になり、それが5層重なって降って来る。

前は2~30本が精々だったのに―――


「気前が良いな!"雷帝(イシュテルテ)"、"リル(雷喰蟲)"!久しぶりの出番だ、気張れよ!」

「キュルィ~!」

「ハッ………!『千の雷』!」

「『聖逆十字反天雷烈波(クロス=クルセイド・リバースデリンジャー)』ぁあああ!!」


リルが上の雷槍を喰い尽し、下では雷の塊と鳥がぶつかり合う。それを突き破り、殴り込みをかける・・・!


「「オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」
ドガァァ!!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
ガガガガッガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッガガガガ!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」


俺と同様に、魔法を突き破って来たナギと殴り合いをする。前はここで終わってたのに・・・面白い!!


「"リィン・ニーグ・ゴエヴォーイ!" 契約に従い我に従え、高殿の王!来れ 巨神を滅ぼす燃え立つ雷霆

聳える黄塵 吼える雷神!!」

「……!リル、下がれ!!『創造』『付加 "雷" "登録短縮 後光、左剣、右盾、前鎧、地陣、天冠"』!

『――Briah』!」

「「『雷帝召喚』!!」」


それぞれの背後に、雷を纏った巨人が現れる。

魔法世界で最強に設定された、フェイト達しか使えない属性最大顕現、絶対魔法、その一つ。

こっちの人間であるナギには使えない筈・・・!


「うぉぉっっ……ぉぉおぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

「はぁあああああああああああああああああああああああ!!」
ズズゥゥゥゥゥン!!


巨人のパンチがそれぞれに当たり、巨人が消える。余波と巨人を作っていた魔力が溢れ、障壁にヒビが入る。


「次で終わりか……!」

「そう、みたいだな………。久しぶりに楽しかったぜ。」


そう言いながらも、悲しそうな、寂しそうな顔をするナギ。


「ナギ…………。」

「愁磨、俺は……「似合わねええええええええええええええええええええええ!!」………は?」

「似合わねえ、似合わねえぞナギ!そんなのはお前じゃねぇ!!

馬鹿は馬鹿らしく騒げよ、しょげて静かにしてるなんてらしくねェぞ!!」

「ハ、ハ………ハハハハハハハハハハハハハ!!

フッ、ハハハハ!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


ナギは驚いた顔をしたと思ったら、次には大笑いした。・・・・・・・情緒不安定?思春期?

そうだったら安心と言うか納得と言うか。


「ク、クククク……あー、そうだそうだ、そうだった。すっかり忘れてたぜ。

難しい事考えるなんて、らしくなかったな!」

「それでこそ鳥頭だ!来いよリーダー!!」

「言われなくても!」


残り四秒。二秒で全開まで行く所を、それを超えて力を凝縮させる。今残っている、ありったけを込め・・・!!


「「ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
ズドンッッッ!!

―――パキャァァァアン


互いの右ストレートが頬を捉え、衝撃の余波が後ろに溢れ障壁が完全に壊れる。


「ぐっはぁ………。」「うぐぁ………。」
ドサドサッ
『両者ダゥゥゥウウーーーーーーーーーーーーーーン!!』

「ひ、久々に痛かったぜ……。」

「―――なぁ、愁磨。お前ら何企んでんだ……?」


カウントが進む中、倒れたまま質問して来るナギ。お前ら・・・この場合、俺と造物主(ツェラメル)の事か。


「俺は、そうだな……。世界を救う救世主、とまでは言わないが。

俺に出来る、魔法世界の生きるモノ全員を救う唯一の方法。そう信じてる。」

「あー、そうかい。なら、精々頑張れよ。俺も、もう少し頑張るからよ。」

『8! 9! 10!両者起き上がれず、ドロォォォォオオオオオ!!』

「ウチの息子に、よろしくな。」


決着と同時に、どこかへと転移したナギ。後は・・・やっぱり追えないか。


『これより、授賞式に移ります!』


今はナギより・・・ネギと超、麻帆良の連中の方が先か。

Side out


Side ネギ

『―――優勝したネギ選手へ、開催者超 鈴音から賞金1000万円が手渡されます!』

「フフフ、不満そうネ?ネギ坊主。」

「いえ、そんな事は……。」


僕が目を覚ますと、エキシビジョン―――愁磨さんと父さんが戦ったらしいけれど、一瞬も見れなかった。

――が終わってて、更にアリアさんが反則を取られて、僕が優勝していた。


「(腑に落ちない、なんてものじゃないよ。気を失ってる間に全部終わってるし、アリアさんには睨まれるし……。)」

「麻帆良新聞部です!優勝したご感想は!?」

「優勝賞金の使い道は!?」


カメラとマイクを持った人達がワラワラ集まって来る。こ、これは・・・。


「い、インタビューとか苦手ですので!!」
ドゥッ!
「あっ、逃げた!部員に連絡して追わせろ!」

「なら、こっちは準優勝のアリア選手に……って、もう居ないし!?」

「やめとけ、織原に殺されるぞ……。」


ギャーギャー言いながら追って来るマスコミ(?)を、屋根を八艘跳びして何とか撒き、遅いとは分かりつつも、

追跡魔法を使う。すると。


「―――見つけた。」


風の精霊が、父さんの位置を掴んだ。影は追い掛けないって決めた。

けれど・・・あとを、姿を追うのは当然だ。仕方ない。


「地下、なのかな……?とにかく、行こう。」


決心すると、図書館島へ向かう。地下へ行く為の地図が必要だし・・・何より、あそこは地下に直接繋がってる。

管理する人には悪いけれど、最悪の場合、地下の壁を壊しながら目的地へ行かせて貰う。

こっちは、行方不明だった父親を追ってるんだ。大目に見て欲しい。だって――――


「……一発くらいぶん殴らないと、気が済まないよ!!」

Side out


Side ノワール

「の、ノワール。アレ、どうにかならんのか?」(ヒソヒソ

「なる訳ないでしょう?あれは相当キレてるわ。責任は本人に取って貰いましょう。」(ヒソヒソ


明日の計画の為、早めに森のお家に帰って来ていた私とエヴァ―――

いえ、シュウとネカネ、それと救護室に運ばれたもみじを除く皆は、非常に困った状況にあった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
……ゴ、ゴルゥ? グルァ!? ガウッ クゥゥン

「うるさい。」
キャィンッ!×4


アリアの一切容赦の無い叱責を受けて、ご主人様の周りを回っていた虎ちゃん達は皆、逃げるように帰った。

そう、武闘祭から帰って来てからアリアは、これまでになく不機嫌なの。

普段も喋らない方とは言え、ただいまも言わないで、喋ったのは今の『うるさい』だけ。

声をかけても反応無かったのよ。


「刹那、愁磨さんはまだなのか?」(ヒソヒソ

「ど、どうでしょう?もう少しで帰って来そうなものですが……。」(ヒソヒソ

「さ、流石に今の状態がもう一時間も続くのはごめんじゃぞ。」(ヒソヒソ

「・・・・。」(ガタッ

「「「「「「「(ビクゥッ!)」」」」」」」


突如アリアが立ち上がって、玄関の扉を凝視する。気付き、耳を澄ますと・・三人分の足音が近づいてきた。


―――――――――――――――――――――――――――――

subSide ネカネ

「うーん、うーん………まだ痛いよぉ~。」

「だ、大丈夫ですか?もみじさん。辛いようでしたら……。」

「気にすんな。あの程度の攻撃がここまで尾を引くほど痛い訳が無い。」


アリアちゃんの攻撃で気を失ったもみじさんを、計画に関係ない私と愁磨さんで迎えに行った、その帰り。

救護室で幸せそうに寝ていたもみじさんを、愁磨さんは無言でベッドから蹴り落として、『さっさと帰るぞ』

と言い、今の様に痛がるもみじさんを無視して来ました。た、確かに演技っぽくはあるんですけれど・・・・。


「久しぶりに褒めてやろうかと思ったのに……。」(ボソッ

「ほぇ?なんか言った?」

「別に。」


愁磨さんの小声はもみじさんには聞こえなかったようですが、私にはバッチリ聞こえてきました。

ここまで来る道で、他に6回ほど。


「(愁磨さん、何を怒ってるんですか?)」

「(………別に、怒ってる訳じゃ無いって言うか、何と言うか……。

言わなきゃ矜持に反するんだが、言うとウザいって言うか……。)」


そのまま、またブツブツ言いながら行ってしまいます。

・・・要するに、褒めてあげたいけれど、褒めたらもみじさんがすごく喜んでウザい、と言うことでしょうか。


「(………照れるなんて、愁磨さんらしく無いですね?)」

「べっ、ばっ、照れてるわけじゃねーよ!!」

「ふぬぅ?愁磨はにゃーにを照れてるのかい?ボクに「言わねーよ!お前だけには言わん!!」ぶー!」


本当に珍しいです。『照れてる訳じゃないんだからね!』くらいのボケすら言わないなんて。

・・・いつもなら褒めちぎった上で、抱きしめたりグリグリしたり、そのままお持ち帰りするのに。


「フンッ、もういいもん!」

「ま、まあまあ、もみじさん。(ほら、もみじさんだって頑張ったんですから。少しくらい……。)」

「(………あーーーったよ、もう!!)」


愁磨さんはおいっち、に。と気合を入れると、もみじさんの頭に―――


バンッ!
「フギャッ!?あぅぅぅぅ………。な、なにすんの!!」

「あ。わ、悪い。つい力が入って………。」


・・・・・・撫でようとした手を、思いっ切り叩きつけました。

この二人、何なんでしょう?何かあるんでしょうか?


「コホン。あー、なんだ、その。ありがとな。」
なでなで
「な、何が?」

「……アリア、怪我しない様にあそこで負けてくれて。」

「べっ、べべべべ別に!!アレは、あの、アレ!アレ……そう、アレ!!油断してたの!!

そう、油断してて!」


こちらも、珍しく素直じゃありません。

愁磨さんに褒められ頭を撫でられて真っ赤になっているのに、何やら否定しています。

ここ数日見ていた感じだと、ロケットの様に抱き付き『もっと褒めて!』とか得意気になりそうなのですが。


「そうか、油断か。なら褒める必要ないな。」
スッ
「あ……………………ぅぅ。」


愁磨さんが撫でるのをやめた瞬間、もみじさんは物凄く泣きそうになりました。

すぐにでも決壊しそうです。じろり、と睨むと、愁磨さんは苦笑いして、手を戻します。


「じょーだんだよ。ありがとな、もみじ。」
なでなで
「……ん、別に。」


今度は、さっきの『別に』と違いました。顔は相変わらず真っ赤ですが、今はとても幸せそうです。


「アリアんは、ボクの……妹?みたいな感じだからさ。だから、えっと、何て言うか………。」

「フフッ、そうか。どっちも手がかかって大変だけどな。いや、姉の方がおてんばで困ってるかな。」

「……………ぅぅーーー!」


頭を撫でられたまま、ポコポコパンチを繰り出すもみじさん。

いつもの元気な感じも可愛いですけれど、これはこれで・・・・・・あ、ひょっとして。

褒められ慣れてないんでしょうか?


「さて。計画もあるけど、ネギの特訓も考えないとなー。

魔法メインだからアリカに任せっきりでもいいっちゃいいんだけど…。」


と、ほんわかしていたら、いつの間にかお家まで来ていました。

愁磨さんがぶつぶつ言いながらドアを開けると・・・いつもの様にアリアさんがとととっ、と走って来て。

愁磨さんが抱き止めようと中腰で両手を広げ――――


――――ゲシッ!!


目一杯、向う脛を蹴られました。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――

シュウともみじ、それとネカネちゃんの姦しい会話が近づきつつも、こちらは時が止まったように静止しているわ。

さ、流石の私も冷や汗というのが止まらず。

無限の時が続くかと思われたけれど。ついに、玄関のドアが開きシュウが姿を現した。

と同時に、いつもの様に駆け寄るアリア。シュウもいつもの様に応じ―――


―――――ゲシッッ!!


「ぅっわぁ………。」

「ア、レ、は……痛い……。」


そう、二重の意味で痛いわ。いつもの様に飛びこんで来るかと思ったアリアに蹴りを喰らって、

さしものシュウも茫然と立ち尽くすしかなかった。


「・・・・・・べー。」


可愛らしく舌を出し(無論初めて見たわ・・・)、そして、軽やかにUターン。

真名とエヴァの手を掴み、二階へ向かってしまう。


「あ、アリア?どうして私達を捕まえたのかなーと……。」

「・・・・今日、エヴァと、真名とねるから。」

「……う、嬉しいのだけれどこれは何というかいやはや………。」


短く言い残し、三人は二階へ姿を消す。と、同時に。両手を広げたまま前のめりに倒れるシュウ。

微動だに、本当に微動だにしないものだから、バウンドしたわ。


「しゅ、愁磨さん!?だ、大丈夫ですか?」

「愁磨、気をしっかり!あ、アリアんだって機嫌の悪い日くらい……く、らい………。

……しゅ、愁磨?」


後ろに居たネカネちゃんともみじが駆け寄って、二人がかりで抱き起こす。

もみじが何かに気付き・・・。状況を把握していた私は、その答えを示唆する。


「別に大丈夫よ。ただ、娘の反抗期にショック死しただけだから。気にする事ないわ。」

「……………あ、ホントだ。心臓止まってる。」

「………………。」(フラッ

バタッ!

「ああっ!?ネカネまで倒れた!!」


「何と言うか………飽きんのう。」

「ええ、全くよ……。」


明日は一大計画の幕開けだと言うのに、織原家はいつも通り。

深刻な空気なんて、似合わないから良いのだけれどね。


Side out
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧