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銀色の魔法少女

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第三十四話 転校生

 
side 遼

「えっと、ここで合ってるよね?」

「…………間違いない」

「なんだかワクワクするね」

 なのはの家の近くのマンション。

 そのとある一室の前に私たちはいた。

「じゃあ、押すわよ」

 そう言ってすぐに呼び鈴を押すアリサ。

「はい、どちら様ですか?」

 するとすぐにクロノが現れた。

 彼は私たちを見て察する。

「ああ、フェイトの友達か、ちょっと待っててくれ、今呼んでくるから」

 そう言って奥に引っ込むクロノ。

 それを確認すると、私はゆっくりとすずかの後ろから顔を出す。

(ビックリしたぁ、いきなりクロノとエンカウントなんて心臓に悪いよ)

 ドアが開く少し前、覚えのある気配を感じた私は神速を発動、全力ですずかの後ろに隠れていた。

「まったく、やましいことしてるわけじゃないんだから、隠れる必要なんてないのに」

「仕方ないよ、遼ちゃんの恥ずかしがり屋さんはそう簡単には治らないよ」

「……あんたは何で嬉しそうなのよ」

 そんなことを話していると、奥から二人が現れた。

「アリサちゃん、すずかちゃんに遼ちゃん」

「こんにちわ」「来たよー」「…………やぁ」

「にゃはは、遼ちゃんは相変わらずなの」

 苦笑いで私を見るなのは。

 ……うう、申し訳ない。

「初めまして、ってのも何か変かな」

「ビデオメールでは何度も会ってるもんね」

「でも、会えて嬉しいよ、アリサ、すずか、…………遼?」

「ああもう! いい加減こっち来なさい!」

 そう言ってアリサに力づくでフェイトの前に引き出される私。

「こ、こんにちわ……」

 勇気を振りしぼってこの体たらく、我ながらひどい。

「うん、こんにちわ、ちゃんと顔を見るのは初めてかな?」

「あんたビデオの時いっつも私たちの誰に隠れてたもんね」

「ちゃんと前に出てもうつ向いちゃったり、謎の砂嵐なんかで映らなかったこともあったね」

(ごめんなさい、後半のは私のせいです)

 無意識のうちにシュヴェルトライテを発動してしまったのは、私の痛恨のミス。




side ALL

 フェイトの引越しから数日後の学校、なのはのクラスちょっとした騒ぎが起きた。

 教室に群がる生徒、その中央に制服を着たフェイトの姿。

 当のフェイトはあわあわと慌てて、まともな応答ができていない。

 すると見ていられなかったアリサが助け舟を出し、フェイトはクラスメイトと打ち解けていく。

 そんな光景が繰り広げられた日の放課後、なのはの家。

 これは美由希のある一言から始まった。

「え、遼はそんなに強いの?」

「うん、そうだよ、多分小学生の子だと誰も敵わないんじゃないかな」

 大人も倒す遼の実力を知っているすずかは心の中ですごく頷く。

「うそー、いっつも眠そうにしてるのにそうは見えない」

 アリサが不思議に思って遼を見つめる。

「そうね……、フェイトちゃんは何か運動って出来る?」

「え、はい、棒術ならなんとか」

「棒ね、確か倉庫にあったはずだから、一度体験してみるのもいいかもよ」



 高町家、道場。

 なのはの服を借りたフェイトと、あらかじめここに置いてある運動服に着替えた遼が向き合う、

 フェイトには身の丈程の木の棒、遼は小さい木刀を二つ。

 もちろん、危ないためメガネはすずかが預かっている。

(伊達メガネだったんだ)

 フェイトは表情に出ないものの驚いていた。

 メガネを外す前は大人しそうな普通の子、外した後は綺麗で強そうな女の子と言う感じに遼が違って見えた。

「じゃあ、くれぐれも怪我しないようにね」

 そう言って上げていた腕を下ろす美由希。

 これが開始の合図だった。

「はぁ!」

 フェイトはまずは様子見と遼の持っている木刀めがけて振り下ろす。

 それに対し遼は少しだけ後ろに下がる。

 結果、遼に当たるはずだったそれは虚しく空を切ることになる。

(見切られた! 遼はもしかして本当に強いのかも)

 フェイトは油断しないように、しっかり遼を見つめる。

(太刀筋が良くなってる、迷いが消えたからかな)

 一方遼はフェイトの成長が嬉しく、ついつい気が緩んでしまう。

 その隙をフェイトは見逃さなかった。

「そこ!」

 一気に間合いを詰めて、今度はかわされないように横に凪ぐ。

 あの事件以降、フェイトの太刀筋は格段に良くなり、速さも増した。
 
 しかし、遼はそれを容易にかわせる。

(悲しいかなぁ、まっすぐな一撃ほど先が読みやすいのよね)

 もちろん、ブレた太刀筋より、ブレない方が威力があるに決まっている。

 けど、地獄の特訓で『見切る』ことを覚えた遼にはブレない方がかわしやすかった。

 しゃがんで棒をやり過ごすと、そのまま反撃を開始する。

 ハズだった。



                「ふにゃあ!」



 気の抜けた声が、道場に響く。

 床に倒れているのは遼で、それを見下ろしているのはフェイト。

「は、遼ちゃん!」

 すずかが慌てて抱き起こす。

「あう、あぅ……」

 遼はくるくると目を回し、とてもじゃないが立てそうにない。

「あちゃー、もうちょっとだったのにねぇ」
 
 美由希は何が起こったのか全てを見ていた。

(フェイトちゃんの一撃をかわしたまではよかったのに、そこで足を滑らせるなんてねぇ)

 結果、遼の体は中を浮き、そのまま床板へとダイブ。

「はい、今回は引き分けってことで二人共、ちゃんと手当はしておくようにね」

「私はどこも……、あ」

 フェイトは自分の手首を見て驚く。

 そこには薄らと何かで切った痕があった。

「遼ちゃんがコケた時にかすっちゃったみたいね、ちょっと待ってて絆創膏探してくるから」

「……ありがとう、ございます」

 この時、フェイトにある疑念が生まれていた。

(私では捉えきれない剣撃に彼女と向き合った時のあの感じを、私は知っている)

 多少構えは違うが、彼女の中のシグルドのと目の前の遼には近いものがあった。

(もう少し様子を見よう、報告はそれからでも遅くはない、はず)

 そう思い、フェイトは遼を見る。

 額を真っ赤に染め、涙目の遼。

 フェイトが彼女の正体を知るのは、もう少し後の話。
 
 

 
後書き
『ちょこっと、女神の部屋!』 メ=女神 ア=アリシア

メ:あれ、アリシアなんでこっちに来てるの(゚д゚)!

ア:えへへ、出番がなかったから遊びに来たの!

メ:出番ちゃんとあったじゃない(`・ω・´)

ア:部屋の中で局員さんのお手伝いなんて出番とは言わないよ! それに書かれてないし

メ:仕方ないじゃない(´・_・`) あなたは遼の素顔知ってるから、むやみに会うべきじゃないって言われてるでしょ(´・ω・`)

ア:でもー

メ:安心なさ、次の次はちゃんと出番あるから( ´∀`)b

ア:ほんとに!

メ:というわけで次回はスーパー銭湯、お楽しみに(^-^)/~
 
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