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真剣で覇王に恋しなさい!

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第14話




「良い乗り心地だ! スイ! もっとスピードは出せるだろうな!」

「もちろんです。それでは加速いたします」

 学園を出た俺はスイと共に工事中である無人のハイウェイを走っていた。
 どこに一般人がいるかもわからん街中では思う存分にスイの乗り心地を堪能する事はできんからな。
 そうして楽しんでいるのも束の間、後ろから数人分の気配が近づいてきた。

「んはっ! 次の相手は貴様らか!」

「いいな、あたしらでなんとしても止めるぞ!」

「おうともよ! そうすりゃ褒美は思いのままだ!」

「九鬼の従者として、止めさせていただきます。覚悟!」

 ジープにのって追いかけてきたのは従者部隊の三人組。忍足あずみ、ステイシー・コナー、李静初。
 早速攻撃してきたのはステイシー。

「火力こそパワーだ! 食らいやがれぇー!」

 なにやら仰々しい大きな銃を持っているが、こんなものは豆鉄砲と大して変わらん。

「ただ痒いだけだな」

「くそ、バイクの方にすら効いてねぇ」

「九鬼が作ったバイクだけあって頑丈だなー」

「まずは動きを止めましょう」

 三人が打った次の一手。
 ステイシーが懐から出して投げつけてきた球体が強烈な光を放ち、辺りが真っ白な光に包まれた。

「で、それがどうした?」

 その程度の光が目潰しになるとでも思ったのか?
 俺の目を潰したいなら太陽くらいは持って来るんだな。

「あいつ目眩ましも効かねーのか」

「いえ、一瞬でも視界を遮れれば充分です」

「むっ?」

 李の言葉と同時に、自分の身体に巻き付いていた何かに気付く。
 どうやら光で視界を遮ったと同時に投げつけてきていたようだ。

「いつの間に……なかなかの早業だな」

「有線ナイフを巻きつけました! 電撃を流します!」

 その李の言葉と共に、体に何かが流れ込む。
 ふむ……これは……

「低周波治療というものだな! 幾らか鈍っている俺の身体をほぐしてくれるとは殊勝な奴よ、褒めてやる!」

「10万ボルトもあるのですが……全く効いてませんね」

「だったらロックなバズーカを食らいやがれ! Let's Rock!」

 言うなりステイシーはバズーカを構えて俺に発射した。
 愚か者め、そんなものが通用するとでも?

「ふっ!」

 学園で爆矢を跳ね返した時と同様に、俺は強く息を吹きかけてバズーカの砲弾を跳ね返した。
 奴らが乗っているのはただのジープだ。スイとは違って簡単に壊れるぞ?
 さぁ、どうする。

「はああああああっ!」

「ほう」

 流石に九鬼の従者だけはある。対処が早い。
 寸での所で李がバズーカの砲弾を蹴り返し、再び砲弾は俺の方へと向かってきた。
 また跳ね返す事もできるが、ただ同じ事をするのでは面白くない。
 そんな俺の意を汲んだスイが、砲弾が当たる直前で急加速した。

「よくやったスイ! それにお前たちもなかなか見事だったぞ! 遠慮なく褒美を受けるがいい! やれ!」

「了解いたしました」

 応答と共にスイはあずみ達が乗るジープに向けて数十発のミサイルを撃ちはなった。
 ジープの爆発と共に叫び声があがり、俺も一度スイを停車して道路に降り立つ。
 あずみは三人の中でただ一人逃げおおせていた。

「さすがは、序列一位という所ですね」

「だが、これで終わりだ。お前も眠っているといい」

 再びスイから方天画戟を取り出し、こちらを向いて小太刀二刀を構えているあずみにそれを振るう。
 しかしまともに当たった手応えがない。

「む、この手応え……分身だな。汚いなさすが忍者きたない」

「無茶苦茶だ……文学少女の面影なんてまるっきり残ってねぇじゃねえか」

 だが分身ごとき、残らず叩き斬れば良いだけの話。
 なにやら覚悟を決めた表情だが……さぁ、いつまで持つかな?



***



 同時刻、川神学園。
 再びグラウンドで砂煙を上げた、朱色に塗られた巨大なバイクを前に、生徒たちは驚愕の声を上げていた。
 そんな中で更なる驚愕を生んだのは、屋上から飛び降りてきた男子生徒がそれに飛び乗った事。

「成功だったか。呼びかけに応えてくれなかったらどうなる事かと思ったが」

「というかちょっと! なんで私が! 本当にバイクに!」

 しかしそれを見ていた生徒達が一番驚いたのは、バイクから発されている声が女のものだった事だろう。
 しかも、明らかにビックリした感じで困惑したような感じの声。
 一体全体何事なんだと、周りの生徒が思ってしまうのも無理はない。
 そんな驚愕の視線を一身に受けつつもそれを無視し、赤戸柳司は己が乗ったバイクに向かって語りかけた。

「俺にAIを作る技術はないからな。仕方がないから九鬼から一時的に借りただけだ」

「ふっざけんじゃねーですよ! 何ですかその滅茶苦茶な理由! というか理由にすらなってねーです!」

「お前だって退屈していただろう? それよりは外を走り回るほうが楽しいと思うが」

 赤戸柳司はかなり前からこのバイクの作成を手がけていた。
 そして先々週の金曜に見た悪夢に何を感じたのか、本来ならば夏休みの始まるまでに完成させる予定のものを、急ピッチで作業を進めて今週の月曜の朝に完成させたのだ。
 しかし、その機体に積むべきAIの用意まではできなかった。技術も時間も足りなかった。
 だからこそ、彼は協力を依頼したのだ。
 クッキーの開発者であり、その発展型を開発していた九鬼の第七開発班所属の津軽海経に。

 津軽との繋がりが多少なりとも存在しなければ、協力を依頼する事はできなかっただろう。
 話し合った際、こっそり一体だけ社会体験させてやれると津軽が考えてくれなければ、実現は不可能だっただろう。
 AIをバイクに積む際、娘の為にと言って津軽が更なる改良を施さなければ、こうして今日に備える事はできなかっただろう。

 そうして『とある機体』のAIを積む事で完成したバイクは、彼が元々考えていた用途とは異なる方向への使い道になってしまったが、それでも彼は満足していた。

「とにかく、まずはスイスイ号と清楚を追う。追跡は?」

「…………」

「おい、協力してくれ。でないと色々とマズイ事になるんだ」

「それって私がお父様に命令されて嫌々やってる事わかって言ってますぅ?」

「なら余計に従ってくれ。それに……そうだな」

 ニヤリと似合わない笑みを浮かべた柳司は、馬鹿にするような口調で『彼女』に告げる。

「王様を名乗って偉そうにしている人間を放っておくのは良くないと思うぞ? 指導……いや、矯正してやるべきじゃないのか?」

 安っぽい挑発の言葉。
 普通なら乗るはずがないのだが、柳司は彼女がまだ人型だった頃にその性格を把握していた。
 しばらくの沈黙の後、自信に溢れた声がバイクから上がる。

「……いいでしょう! 本っ当に仕方なくですけど、あなたを仮のマイスターと認めます! 追跡はもちろん可能です!」

「さすが津軽さん特製だ。性能が違うな」

「当然です!」

 腰に手を当てて偉ぶる姿が幻視されるような声。
 柳司がそれを想像して苦笑していると、横合いから友人の声がかかった。

「葉桜君を追うのか、赤戸君」

「あぁ。応援してくれるのか?」

 そこにいたのは柳司の友人でもある京極彦一だった。
 彼も先ほどまで周囲の生徒達と一緒に見物に回っていたようだが、ついに学園から出て行こうとしている友人を見て話しかけてきたようだ。

「さて、私は二人共の友人だからね。どちらかを応援するという事はしたくない。それに、喧嘩をするというわけではないのだろう?」

「当然だ。俺は清楚の敵にはならない。寝ぼけて」

「寝ぼけて、か……ふっ、それでこそ赤戸君だ」

「なんだよ」

「なんでもないさ。さぁ、葉桜君の下に行ってくるといい」

 穏やかな笑顔の京極に見送られ、柳司は学園の外へと飛び出した。
 向かう先は学園から少し離れた工事中の高速道路。
 更に加速するバイクに身を預ける柳司の身体からは、うっすらと紅いオーラが漂いだしていた。

「よし、いくぞレッドⅣ! 俺の愛機!」

「ちがーう! 私はそんな名前じゃなーい!」


 
 

 
後書き

 れっどふぉー、一体何Sなんだ・・・

Q:バイクが喋るのも仮ボディで社会体験も既出だが大丈夫か?
A:大丈夫だ、問題ない。


 展開が原作と重なりすぎているので、次回からはオリジナル展開てんこもりにできるように頑張りたいと思います。
 
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