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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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例えばこんな無人機は悪い奴じゃないから話せば分かるだろ

5月23日 今日の蟹座のラッキーアイテムはオルゴール。…持ってない。

今日はクラス対抗戦当日。即ちデザート半年フリーパス券が手にはいるかどうかの瀬戸際である。アイスクリーム大好きな身としては是非ともおりむーに勝って欲しいところだ。
しかしセシリアの見立てでは8対2位の割合でおりむー不利とのこと。理由?経験値不足。残り2割は瞬時加速による奇襲が上手くいったらの確率なんだとか。

ヴァイスも「機体性能以外でおりむーが勝てる要素は殆ど無い」と言っていた。どんまいとしか言えん。

果たしてヴァイスとシャロンのどちらが勝つのやら。のほほんと一緒にお菓子食べながら観戦することにした。ホワイトチョコうまうま。で、ついに試合が始まった。が――



《…けて。……しいよ》

「…?」

《くる…しい。寒……助け…》

「!?」
≪誰!?どこ!?≫

聞こえる。いや、感じる。オウカもその声に気付いたのかひっきりなしに周囲を調べる。だが声の主は会場内にはいないみたいだ。声は少しずつ近づいており、俺は試合そっちのけで声の主を探した。

そしてついに声の主を見つけた。上だ!



ズドォォォォォオォン!!



腹の底を伝わる衝撃。気が付いたらジェーンさんが庇うように俺を抱えていた。ちょ、顔が埋まって苦しっ・・・何にとは言わないけど!それ死ぬ!鼻と口が塞がって死ぬ奴だから離してくださいお願いします!
≪前方の未確認IS!あの子の声だ!!≫と目の前にモニターが表示され、思わずジェーンさんをどかして確認する。・・・いた。確かにあの子だ。

《くる、しぃ・・・体、気持ち悪い・・・うぐっ・・・》

悲痛な声を上げながら、ISはおりむー達に攻撃を開始した。でも俺達には、いや俺たちにだけ分かる。あの子は苦しんでいる。そしてあの子を助けられるのも、恐らく・・・
瞬間、アリーナの防護シャッターが俺達とあの子の間を物理的に遮断した。

俺はもうとにかく必死で走った。確かピッチからなら内部に侵入できたはずだ。叫び惑う人々の中をかき分け俺は廊下を急いだ。避難命令なんて聞いちゃいなかった。ただあのISを苦しみから解き放ちたいという思いしかなかった。

だってISコアはみんないい子たちで、とても純粋で、とても人間が大好きで、パートナーと一緒にいる時はとても生き生きしてて。だからあんなに苦しんでいる子を放っておくなんて選択肢は初めから思いつきもしなかった。

俺が走ってる間にもアリーナ内からIS達の感情が伝わって来る。焦るシャロン、苛立つヴァイス、そして涙を流しながら苦しんでいるあの子。とうとう我慢できなくなった俺はオウカに頼んでピッチにつながる隔壁を叩き壊してもらった。直後織斑先生から通信が入ったけど、あいにく今だけは耳を傾ける余裕がないのでこっちから回線を切った。



ピットからアリーナ内に飛び出す。その瞬間オウカをビームの嵐が襲った。避けられるものは避け、当たりそうなものは桜花幻影を纏った散華で散らし、一直線にその子のもとへ向かう。

《いやぁ・・・戦いたくなんてない・・・誰か、誰か止めてぇぇぇ!!》
≪「今、止めてあげるからね?」≫

ISに取り付く。俺の脳波の有効範囲はオウカに抑制された状態でも頑張れば半径2メートル前後まで広げられる。つまり、俺がその範囲まで近づいた瞬間、この子は自立性を有する。どんな操縦者がパートナーなのか知らないが、これでこの子は戦わなくて済むはずだ。

《あっ・・・んっ・・・はぁ・・・》

伝わってきた悲しみと苦しみのイメージが急激に和らいでいく。外野が何か言っているが耳に入らない。
オウカからメッセージが伝わってくる。このISには操縦者がいない。中に詰まっている機械とISコア本体に無理やりねじ込まれた不純物のせいでこの子が苦しんでいたのだという。不純物を取り除けば詰まった機械はもう放っておいていい、とのこと。早速コアとリンクしてもらい、得たデータを基に八紘一宇で不純物を強制排除するプログラムを組む。直接コアをどうこうする技術はないので半ばコンピュータウィルスみたいなプログラムで無理やり吐かせるという荒業だ。

結果上手くいったのか、この子は小さく《あったかい・・・あり、が、と・・・》と言い残して休止状態になった。良かった、苦しみからは解放されたようだ。




これにて一件落着!めでたしめでたし・・・







とはいかなかった。そりゃそうだ。俺は教師の言いつけをガン無視して無断でISを展開し、傍から見れば無謀な突進を仕掛けた挙句よく分からんことをして未確認ISを停止させたのだから。

この子――名前は空から降ってきたからウツホにしよう――が寝付いたと同時におりむーと鈴音さんが駆け寄ってきて質問攻め、そうこうしている間に3人纏めて織斑先生に連行されこってり絞られた。ついでに俺は守秘義務をもう少し守れと口を酸っぱくして言われた。やはりペラペラ喋りすぎたのだろうか。

揚句ジェーンさんにあっちょんぷりけ食らった。「あまり私を心配させんな」だそうだ。ごめんなさい・・・
更に箒ちゃんに右の頬をビンタされ、セシリアに左の頬をビンタされ、鈴音さんからは拳骨を食らってあまつさえおりむーにもでこピンを食らった。顔いてぇ。みんな俺の突然の行動に本気で心配したらしい。本当にごめんなさい・・・一緒にオウカも《ごめんなさい・・・》と謝ってくれた。お前は本当にいい子だよ・・・ぐすん。
ついでに鈴音さんと箒さんから「さん付けは止めろ」と言われた。せめてちゃん付けに、と言われたので箒さんは箒ちゃんに固定、鈴音さんは鈴ちゃんなうに変えた。あっ嘘です鈴音って呼ばせてもらいますだから拳を構えないで!・・・え?おりむーと同じ鈴でいい?分かりました。


疲れて帰ろうかと思ったら織斑先生に一人だけで呼び出された。あの子の事を聞かれたのでオウカに頼んで分かったことを知らせた。コアに施された改造といい、誰かが悪意を持って作ったものにしか思えないが。
ところでウツホはこれからどうなるんだろうか。調べによるとウツホはアラスカ条約で定められたISコアに登録されてないらしい。
このままだと折角苦しみから解放されたウツホがどんな扱いを受けるか・・・と思っていたら突然後ろの扉が開き篠ノ之博士登場。「話は聞かせてもらった!私に任せてもらおう!」「おいばかやめろ」←※織斑先生です。

ウツホは博士がどうにかしてくれるそうだ。やったー。
安心したら眠くなったので俺はもう寝る。
・・・あ、そういえば明日は『あの日』だなぁ、楽しみ・・・ではないけど感慨深い。
  
 

 
後書き
Q,なしてわざわざ日にち書いとるん?そんなとこ誰も見とらんとよ?
A,んなこと言われてんが始めたもんは続けるのが筋やさかいなぁ。

要するに気分です。 
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