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ワンピース -炎とゴムの姉は虫(バグ)-

作者:nyonnyon
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鬼教官と呼ばないで 2

 はい、柔軟が終わりましたのでいよいよ走り込みに入っていきますよ!!

 走り込みを指示すると、みんな一斉に『来た』、『やっぱり走るのか』と言った表情を見せる。 当然である、足腰の鍛錬は強くなる基本なのだ。 それと、走り込みを行うことで持久力もつく。 さらには疲れている時の体の動かし方も学べるので、いざという時に生き残る可能性も高いのだ。
 よって、走り込みはいくら嫌がられようが敢行する!!

 はいそこ、しっかり説明を聞きなさい。 しっかり聞かないと、途中で力尽きるかもしれませんからね。
 普通に走るだけなら、訓練学校でもできますので、ここでは少し違った走り込みになります。 まぁ、演習場の壁を登るっていうのが入るだけなんですけどねぇ。 でもこれが結構曲者で、意外にきついんです。 あぁ、そんなことより、新兵の皆さんに説明しなければ……。

「え~まずスタートはここです。 で、後ろを見てください。 壁際にロープがあるのが見えるでしょうか? あそこまで走っていただいて、ロープを登ります。 そのまま反対側まで行って、壁を下り、道を真っ直ぐ進みます。 真っ直ぐ進むと海にぶつかりますので、そこで左に曲がり、海岸線を走ってください。 そのまま走っていただきますと、前方にロープの垂らした壁が見えてきますので、それを登って、反対側で降りて、ゴールとなります。 なお、この走り込みには私たち教官も一緒についていきますので、よろしくお願いいたします。 あっと、忘れていました。 これは特別強化プログラムの一貫ですので、皆様にはこちらのウエイトを手足につけていただきます。 重さはそんなにないですが、手足に負荷が増えますのでご注意ください」

 さて、それじゃあ、海兵特別強化プログラム一番目の訓練行きましょうか!!!










 え~こちら、一固まりになって走る新人海兵を後方から見守りつつ走る、モンキー・D・アモスです。 ど~ぞ~。

 はい、現場のアモスさん。 コースの半分ほどまで走ったとお伺いしておりますが……。

 はい、こちら現場アモスです。 なかなかに高ペースではないでしょうか? 年々、海兵の質が高くなっているという噂は本当のようです。 去年より12~3分ほど早いペースでコースの半分、所謂折り返し地点に来ております。 え~、ここでは吸水ポイントといたしまして、アモス特製『毒鱗粉スポーツヲーター(誤字にあらず)』が、先行して折り返し地点に到着している教官の先生方から手渡されております。 このまま行きますと、特別強化プログラム始まって以来の好タイムが期待できそうです。 私はこのまま、後方より新人たちの活躍を見守りたいと思います。 以上、現場アモスでした。 一旦、スタジオにお返しします。

 ……。

 ……。

 はい、意味のわからないやり取りをしてしまいましたが、新人海兵を見守るアモスです。
 意味のわからないやり取りではありますが、しっかりと状況は把握できるので問題ないでしょう。

 現在、走り込みコースの半分まで走りきりました。 この程度の距離は、皆さん何の苦もなく走り抜けてしまわれるようです。 一周30kmのコースなので、結構な距離のはずですが、やはり皆さん将来上を目指す方たちですね。 これはやりがいがあります。

 お、何人か辛そうな表情の方が出てきましたか? でも、まだまだ泣き言は言いませんね。 頑張ってください。





 はい、どーも。 一周がもうすぐ終わります。 みんな眼前の壁にあるロープを見ております。 ええ、そうです。 この垂直の壁を登っていただきますよ。 壁の高さなどは、スタート時に越えた壁と同じです。 ですが、30kmという長距離を走ってきた今では、凶悪な壁に見えることでしょう。

 みんな、『え、まじ、これ登んの?』的な表情でこちらを見てきますね。

 (^^)b

 サムズアップを返しておきましょう。





 なんとか脱落者を出すことなく一周を終えましたね。 みんなへばっております。 肩で息をするとはこういうことをいうのでしょうか? ほぼ全員が座り込んで呼吸を整えております。 何人かは気がついたようですが、ここはスタート地点の海軍特別訓練場です。 訓練場を出て、島を一周、訓練場に帰ってくると言ったコースとなっております。 さて、少し話をしておきましょうか。

「はい、注目!! 皆さん。 走り込みはいかがだったでしょうか? この一周をみなさんは一時間半というペースで走りきりました。 これはなかなかに好タイムです。 ですが、官持ちの方たちになってくると、同じ時間で三周以上、最高二十周はされる方もいるぐらいです。 これからみなさんが目指すのはそんな素晴らしく人間をやめたのではないかと思えるようなレベルです。 この一周の辛さをしっかり覚えておいてください」

「「「「「はい!!」」」」」

 うんうん、いいお返事ですね。

「話は変わりますが、誰も一周とは言っていませんよ? さぁ皆さん。 二周目に突入です!!!! みなさんなら確実に走り切れます。 頑張りましょう!!!」

「「「「「えっ……!!!!?」」」」」

 新人の顔はみんな『絶望した』って顔ですね。 毎年思いますが、何をそんなに絶望しているのでしょうか? 軽い準備運動程度の走り込みなので軽めのはずですが……。

「あの~」
「はい?」
「いや~、ちょっときつくないでしょうか? 一周でもなかなかにきつく、こうしてみんなへばっているわけですし……」

 おや、走り終えてからクレームというか意見があるようです。 あぁ、意見はちゃんと聞きますよ。 なんたって【鬼教官】ではありませんから。

「? もう走れないと?」
「ええまぁ……」
「大丈夫、走れますよ。 ほら、すでに三人走り出した方がいますよ?」
「あ、彼らは数少ないへばってなかった人たちなので……」
「大丈夫いけますよ」ニコッ
「はぁ、そう言っていただけるのは嬉しいのですが……」
「全然大丈夫ですよ。 まだまだ行けますよね」ニコッ
「いえ、ですから……」
「行けますよ」ニコッ
「だかr「行けますよ」ニコッ……」
「行けますよ」ニコッ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!
「……い、行けます!!!!」

 素晴らしい敬礼と共に走り出してくれました。 うんうん、わかってくれたようですね。

 え? 私の後ろに、強面の筋肉隆々な仁王らしき男性が見えた? ははは、なんの冗談です? ほら、そっちの人は別にそんなものは見えてないとおっしゃっているじゃないですか。 え? 龍? はいはい、十四歳病はとっくに過ぎ去っていいと思いますよぉ。
 では、私は新人たちを見守るというお仕事がありますのでこのへんで。





◇◆◇◆◇




 アモス中将の背後になんとも言い難い、強烈なプレッシャーを感じ、気がつけば逃げる用に走り出してしまっていた。 アモス中将は終始笑顔であった。 何も問題ない、いつも見かけるアモス中将と一切変わりのない綺麗な笑顔であったのに、そこに含まれるプレッシャーは質が違った。

 まさに【鬼】

 アモス中将は、ただ笑顔。 大事だからもう一回言おう。 ”ただ笑顔”。

 知り合いのマリリン曹長が言っていた、『笑顔は時に恐怖となり得る』という言葉は、このことだったのか……。

 そのあとも、事あるごとに立ち止まり、『もう走れない』とのたまう新兵たちに、

「まだいける」
「『もう限界です』? その言葉が出てから、後20kmは走れるよ」
「あ、(ばびゅん)……そっちはコースを外れるよ。 こっちだから」

 と、逃亡すら一瞬で連れ戻される始末。 しかも、どれも怒鳴り散らすわけでもなく、ただ笑顔。
知り合いのシー准尉たち、プログラム経験組が呪文のように唱える『アモス中将は、ただ笑顔』という呪文(この呪文を唱えると、大抵の海賊がただの雑魚に思えるようになるらしい)の意味が分かりたくもないけど分かってしまった気がする。

 だめだ、逃げられない。 どうあがいても、この走り込みを終わらせなければいけないようだ……。 皆さん、最後に一言だけ言っておきたい。





 アモス中将は、ただ笑顔……。 
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