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男装の麗人

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第五章

「だからね」
「そうなるよな」
「私が上になってあなたが下になってね」
「それも逆だったな」
「どうだったかしら」
 涼子はくすりと笑って勇太に問うた。
「私に抱かれてる気持ちは」
「凄かったな」
 勇太は満足している顔で妻に答えた。
「これもな」
「私もよ。いつもはあなたに抱かれてるけれど」
 それがだというのだ。
「抱くのもね」
「いいか」
「凄く」
 これが妻の返事だった。
「よかったわ」
「お互いそうなんだな」
「そうね、じゃあどうかしら」
「どうかって何がだよ」
「いつもじゃなくてもね」
「時々か」
「こうしてみない?」
 互いに入れ替わろうというのだ。
「そうしてみる?」
「いいな」
 勇太は男のままの妻の顔を見て微笑んで答えた。
「じゃあこれからもな」
「時々ね」
「入れ替わるか」
「いいものでしょ、こういうのも」
「またえらく面白いことを思いついたな」
「自分でもそう思うわ」
 夫に対してくすりと笑って答える。
「それはね」
「そうか、じゃあな」
「それじゃあな」
 こう話してそしてだった。
 二人はまた愛し合った、そしてそれからも時々だった。
 互いに入れ替わり一日を過ごす様になった、そうして二人の生活を楽しみ。
 ある日夫のままの勇太は妻である涼子にこんなことを言った。
「なあ、時々入れ替わるのがな」
「いいっていうのね」
「いいな。普通に夫婦でいるよりな」
「そうね。あなた綺麗よ」
 夫のその顔を見ての言葉だ、今二人は夕食を終えてリビングでブランデーを飲みながら話をしている。
「とてもね」
「綺麗か」
「女の要素も入ってね」
 それでだというのだ。
「余計に綺麗になってるわ」
「そうか、御前もな」
「私もなの」
「ああ、男の要素も入ってな」
 彼女もそうだというのだ。
「余計によくなってるな」
「そうなのね」
「それも考えると入れ替わりもいいんだな」
「お互いの要素も入ってお互いも理解出来るから」
「しかも普段とは全く違う感じがあ祝えるからな」
 このこともあった。
「余計にいいな」
「そうよね、本当に」
「だからこれからもな」
「ええ、時々楽しみましょう」
「入れ替わってな」
 こう笑顔で話すのだった、二人はブランデーを飲みながら話をした。今は本来の姿だがまた入れ替わる時のことを楽しみにしながら。


男装の麗人   完


                    2013・5・22 
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