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男装の麗人

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第二章

「そうしてみましょう」
「全く、俺はな」
「したくないの?女装」
「そういう趣味はないからな」
 勇太は眉を顰めさせて苦い顔で述べた。
「だからな」
「大丈夫よ、誰にもばれないから」
「誰にもか」
「私の仕事は何よ」
 涼子はここで自分の仕事を話に出した。
「エステティシャンでしょ」
「だからか」
「誰にもわからない様に、しかも」
 尚克だというのだ。
「凄く綺麗にしてあげるから」
「俺をか」
「美人にしてあげるわ、私もね」
 涼子もだと、こう話してそしてだった。
「見事な男になってみせるわ」
「ううん、何ていうかな」
 勇太は涼子のこの話をそのまで聞いてだ、そしてだった。
 食べるのを止めたままだ、こう妻に言った。
「本当に突拍子もないな」
「でもいいでしょ」
「いいか?」
「誰にもわからないから」
 確かな声でまた夫に言った。
「楽しめるわよ、普段とは全く違った姿になれるしね」
「どう答えればいいんだ、けれどな」
「けれど?」
「どうしてもなんだな」
「ええ、どうしてもよ」
 涼子は引かなかった、今の彼女は動かざること山の如しだった。
 その彼女を見てだ、そしてまた言ったのだった。
「じゃあやるか」
「ええ、付き合ってね」
「本当に突拍子もないな。まあやるか」
「はい、じゃあ」
 こう話してそしてだった、二人はだった。
 涼子がメイクをしてそしてだった、二人で。
 服も着た、勇太は涼子が着たその服を見てこう言ったのである。
「不思議な感覚だな」
「そう思うのねえ」
「ああ、スカートなんてはじめてはいたけれどな」
 赤いタイトのミニだ、上はスーツである。
 それもだ、それに加えてである。
「ストッキングもな」
「面白いでしょ」
「そうか?ガーターにしかも」
 下着もだ、当然の様に。
「俺ずっとトランクスっで最近ボクサーパンツにしたけれどな」
「ショーツは駄目?」
「ここまで徹底するなんてな」
 それもどうかというのだ。
「いや、ちょっとな」
「私の主義は知ってるでしょ」
「ああ、やるからにはだよな」
「そう、徹底してね」
 これが涼子だ、家事にも仕事にも手を抜かないのが彼女なのだ。
「そう考えてるから」
「それでか」
 下着もだというのだ、当然勇太は今ブラも着けている。
「凄くなったな」
「私もだから」
 見れば涼子は勇太の横で着替えている、夫のスーツを着て今ネクタイもしっかりと締めている。
「こうしてね」
「下着は俺のか」
「ボクサーパンツね、おかしな感じね」
「当たり前だろ、女がはくものじゃないぞ」
 身体の構造としてそうなっているのである。
「それではいてもな」
「違和感があって当然だっていうのね」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというのだ。 
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