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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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-吸血鬼の貴婦人-前編-

 
前書き
テスト、終了。

色々と、終了… 

 
遊矢side


保健室で起きるのは、二度目だ。

タイタンとの闇のデュエルで、闇のデュエルがどんなものか分かっていたつもりだったが…甘かったな。

特に、黒炎弾が痛かった。

今度は真夜中なようで、光が差し込まず、辺り一面真っ暗闇である。

それでも保健室と分かるのは、そろそろ一年になるこのデュエルアカデミアの生活と、…近くで心地良さそうに眠る、彼女の寝息からだ。

「明日香…」

親友、天上院明日香は俺の布団の近くでうたた寝をしていた。

看病でもしてくれたのだろうか?

もしそうなら、嬉しい限りである。

「風邪引くっての…」

隣の使っていないベッドからかけ布団を持って来て、明日香にかける。

流石に、自分のかけ布団をかけることは無い。

相変わらず心地良さそうな寝息を聞き、デッキから一枚のカードを取り出した。

《パワー・ツール・ドラゴン》

ダークネスとのデュエル、こいつがいなくては負けていた。

感謝、だな。



このカードにも、このカードをくれた奴にも。

結局、誰だか分からないが。

パワー・ツール・ドラゴンをデッキにしまい込んで、このまま寝るのもいかがなものかと思った。

学園内をブラブラ散歩でもするか…

そう思った時、横の方で人が動き出す気配。

「う、うんん…」

明日香だ。

まだ、時刻は5時頃だから、起こしてしまったのだろうか。

「おはよう、明日香。」

「…ゆう、や…?」

寝ぼけてるな。

いつも、気丈に振る舞っている明日香にしては、なかなかレアな光景だ。

記憶に刻み込んでおくことにしよう。

「遊矢!」

いきなり覚醒したな。

「もう起きて大丈夫なの!?」

明日香が鬼気迫る表情で問い詰めてくる。

…悪いが、若干怖い。

「ああ。闇のデュエルも二回目だからな、もう大丈夫。」

「…良かった…」

鬼気迫る表情から、安心した表情になる明日香の目に涙が浮かぶ。

「頼むから泣かないでくれよ。」

「だって…」

泣かれたら困る。

慌てて明日香の言葉に自分の言葉を被せる。

「お前が人質になったかは関係なく、俺は闇のデュエルをやっていたさ。だから、お前が泣く必要は無い。」

「…それだけじゃ無いの。あなたがデュエルしたダークネスなんだけど…」

ダークネスなんだけど?

「…私の、兄なの。」

「兄?…って、行方不明っていう…?」

俺の質問に、明日香がコクリと頷く。

明日香の兄。

話だけしか聞いたことが無いが、名前は天上院吹雪。

亮に匹敵するほどのデュエルの腕前であり、二年前…つまり、亮が一年生の時だ…に行方不明となったらしい。

「じゃ、その兄さんは…」

ダークネスは、俺に負けた後に、カードの中に封印された。

つまり、俺に封印されたのだ。

「兄さんは、そこよ。」

「え?」

明日香が指を指した先に、茶髪の生徒が死んだように眠っていた。

「私には良く分からないのだけれど…黒い仮面が、兄さんを操っていたらしいの。」

確かにダークネスは、黒い仮面を付けていた。

「だから、カードに封印されたのは仮面の方で、兄さんは闇のデュエルの影響で倒れているみたい。」

「はは…良かった。明日香の兄さんを封印していなくて…」


「兄さんを帰ってこさせてくれて…ありがとう。遊矢。」

「ただ、闇のデュエルで勝っただけだよ。俺は関係無い。」

明日香の笑顔を直視出来ず、顔を背けながら答えた。

「そういえば遊矢。兄さんとデュエルした時に出した、あの機械の竜って何なの?」

「ああ、そういえば、まだ言ってなかったな。」

先日、シンクロモンスターについての説明を明日香たちにしていなかった。

「あれは、デュエルモンスターズでの新たな召喚方法。シンクロ召喚だ。」

「…シンクロ、召喚?」

まあ、言っても分からないよな。

「詳しいことは、後でみんなが来た時に話すよ。」

それから、明日香と世間話をしていると、セブンスターズの関係者…三沢、亮、万丈目、十代と翔と隼人…が来た。

先日の闇のデュエルに関しては、明日香に聞いていたらしく、俺の回復を喜んでくれた後、(約一名、悪態をついたサンダーがいたが)俺が使った、シンクロモンスターの話になった。

「なるほど、《融合》の魔法カードが要らない代わりに、フィールドにモンスターとチューナーを出す必要があるモンスターか。」

「流石は三沢。聞いただけで良く説明出来るな。」

「それより、そのシンクロモンスターって奴を見せてくれよ!」

十代が詰め寄ってくる。

…お前は…

「これがそのシンクロモンスターの一体、《パワー・ツール・ドラゴン》だ。」

エクストラデッキからパワー・ツール・ドラゴンを取り出す。

「格好良いッス!」

機械族つながりか、翔が一番早く反応した。

…ように見えたが、その後ろに翔の兄…亮が食い入るようにパワー・ツール・ドラゴンを見ている。

確かに機械の竜(サイバー・ドラゴン)だが、なんだろう、何か思うところでもあるのか?


「それで遊矢。シンクロモンスターとやらは、いつ頃発売されるんだ?」

「お前ならそう言うと思ってたよ、万丈目。「さんだ!」」

もう、俺は意地でも呼び捨てを続けることにしていた。

…まあ、元々、万丈目をさん付けする人物などいないのだが。

「俺も、ペガサス会長とそんな話をした訳じゃないからな…分からん。」

「チィッ…貴様が持っているのに、俺が使えないのは我慢ならん!」

「…随分、子供っぽい理由なんだな…」

良く言った隼人。

「みんな。そろそろ授業が始まる時間だ。」

三沢の呼びかけに、みんなが「また来る」との声を残して去って行った。

…明日香を除いて。

「おい、明日香。授業行かなくていいのか?」

「私は、今日から保健室で遊矢と兄さんの看病を担当するのよ。」

明日香が、看病だと…?

「…お前、看病なんて出来るのか…?」

「で、出来るわよ!」

言うや否や、火傷の薬や包帯をとってくる明日香。

「明日香?」

「あなた、兄さんのレッドアイズの攻撃で火傷してるでしょ?だからよ。」

そう言って、いそいそと火傷薬を手に取る明日香。

すまないが…

「鮎川先生を呼んできて欲しい。」

「…私じゃ、ダメなの?」

グハッ!

唇を尖らせる明日香に、とてつもない罪悪感が俺を襲う。

だが。

「お前が持っているのは消毒液だ。」

火傷薬と消毒液を間違える奴に、看病をして欲しく無いのも事実だった。

「え?…ご、ごめんなさい…今、取り替えてくるわね。」


顔を赤くしながら、今度はキチンと火傷薬を持ってくる。

「それじゃ、足出して。火傷薬、塗ってあげるわ。」

「それぐらい、自分でやるさ。火傷薬貸してくれ。」

「駄目よ!ケガ人なんだから!」

明日香は、火傷薬を絶対に渡してくれなさそうだった。

確かに、心配してくれるのはありがたいが…

「これぐらいのケガ、なんともないって。」


「いいから!」

決して退こうとしない明日香。

何がお前をそんなに駆り立てるんだ?

一進一退の攻防戦…もとい、火傷薬の奪い合いをしていた時、保健室のドアが開いた。

「あら…ごめんなさい明日香さん。お邪魔しちゃったみたいね。」

入って来たのは、オベリスク・ブルー女子寮長にして保健室の養護教諭、鮎川先生だった。

「お邪魔…?」

「そ、そんなことないです鮎川先生!」

お邪魔って何だよ。

むしろ俺は助かったぞ。

「それより遊矢くん。あなた宛てに、大量のカードが届いているのだけれど…」

そう言って鮎川先生が取り出したのは、ぎっしりと詰まったカードボックス。

もしかして…ペガサス会長がもう届けてくれたのか?

「とりあえず渡しておくわね。」

「どうもありがとうございます。」

鮎川先生からカードボックスを渡してもらい、開けてみると…


-中には、大量のカードが入っていた。

「すごい数ね…シンクロモンスター関係?」

「そうみたいだな…とりあえず、三枚ずつ送ったってところか。」

数枚手にとってみると、どれも戦士族か機械族。

デッキは【機械戦士】のまま、という約束も守ってくれたようだ。

「よし、明日香。新しいデッキ作り、手伝ってくれよ。」

「…でも、あなたケガして…」

まったく。

「心配してくれるのはありがたいが、俺は大丈夫だよ。お前も、新しいカードには興味あるだろ?」

興味はあるが、ケガを放ってはおけないって顔をする明日香。

分かりやすいな、おい。

「良いんじゃない、明日香さん。」

「鮎川先生…」

明日香に助け舟を出したのは、鮎川先生だ。

「遊矢くんのケガはたいしたことはないし、吹雪くんの面倒は私が見るわ。」

「…分かりました。兄さんをよろしくお願いします。」

結局、明日香の方が折れて、一緒にデッキ作りをすることとなった。

「シンクロモンスターも、ほとんどみんな、《ウォリアー》って名前なのね。」

「俺がそう頼んだんだよ。【機械戦士】のままが良いからな。」

元々のデッキにシンクロのギミックを入れることになり、意外と大幅な改造が必要となった。

ちょっと装備魔法を減らさないとな…

「お疲れ様、二人とも。」

鮎川先生が、お茶を持ってきてくれた。

「あ、どうも。」

「良いわよ、これぐらい。…そういえば。」

鮎川先生が、何かを思い出したかのようなポーズをとる。

「今、デュエルアカデミアで妙な噂が流れてるのよ。あなたたち、何か知ってる?」

「噂?」

あいにく、噂には疎いほうだ。


「確か…湖に吸血鬼が現れたって話だったかしら?」

「吸血鬼?」

明日香の言葉に、吸血鬼がデュエルしているところをイメージする。

…シュールだ…

「噂の出所は分からないんだけど…とりあえず、気をつけてね。」

それじゃ、と、鮎川先生は吹雪さんの看病へ戻っていく。

「吸血鬼、ねぇ…」

心当たりは一つ。

「遊矢も、そう思う?」

「ああ。十中八九、セブンスターズだろうな。」

なんたって、闇のデュエリストだ。

吸血鬼がいたところで、何もおかしくない気がする。

「今回は、誰が相手をするのかしら。」

「ダークネスの時は、相手が勝手に選んだな…ま、十代あたりじゃないか?」

自分から率先してやりそうだしな。

「じゃ、デッキ作り再開だ。」

俺と明日香は、授業が公欠になっているのを良いことに、夕方頃までずっとデッキ作りに没頭していた。

そして。

「よし、できた!」

明日香の協力のおかげで、新たな力を得た、【機械戦士】が完成した。


まさか、1日がかりになるとは思っていなかったが…

「ありがとうな明日香。デッキ作り、手伝ってくれて。」

「これぐらい、何でも無いわよ。」

明日香はすました顔でそういうものの、それでは俺の気がすまない。

「明日香。お礼に、こいつを受け取って欲しい。」

俺が渡したのは、とあるチューナーモンスターと、とあるシンクロモンスターだ。

「だ、ダメよ!これは遊矢の機械戦士だし…」

「こいつは、機械戦士ってよりはサイバー・ガールだと思うぜ。明日香なら、扱いこなせると思うんだが…」

一癖も二癖もある、サイバー・ガールたちを扱っている明日香の力は本物だ。

「それに、お前もシンクロモンスター、使いたいだろ?」

「…もらって、いいの?」

「ああ。」

俺なりの感謝の気持ちだ。

受け取ってもらって良かった。

「遊矢…」

明日香が、何かを決心したような瞳で見つめてくる。

「私、遊矢のこと…」

明日香が何事か言う前に、首に掛かっている七星門の鍵が、動いた。

「何だ!?」

明日香の方の七星門の鍵も動いているのか、明日香も慌てている。

「明日香、なんでだか知ってるか?」

「ええと…昨日、三沢くんが、
『七星門の鍵が動いて、君たちが闇のデュエルが行っている場所が分かった』
って言ってたわ。」

なるほど、三沢たちが火山にいた理由はそういうことか。

そして、頭の中にイメージが浮かぶ…これは、湖?

「明日香!行くぞ!」

「ええ!」

湖の吸血鬼。

保健室から湖は遠いが、出来るだけ急いで走った。


湖に着いた時には、もうデュエルは終盤を迎えていた。

「三沢!」

デュエルを見学している三沢に声をかける。

「遊矢!?ケガは大丈夫なのか!?」

「大丈夫だ。それより、説明頼む。」

俺を見て、三沢は大丈夫だと思ったようで、説明を始めてくれる。

「相手はセブンスターズの一人、吸血鬼のカミューラだ。」

吸血鬼。
噂は本当だったのか。

「クロノス教諭が率先して相手になり、苦戦するも相手を追い詰めているところだ。」

デュエルを見てみると、

クロノス教諭と、妙齢の美しい女性…カミューラというらしい…が、デュエルをしていた。

クロノス教諭のフィールドには、クロノス教諭のエースカードである、《古代の機械巨人》。
ライフは2000ポイントだ。

対する闇のデュエリスト、カミューラは、フィールドにいるアンデッド族モンスターの攻撃力を上げる、《ヴァンパイアバッツ》のみ。

ライフは1000。

圧倒的にクロノス教諭の方が有利だった。

「相変わらず、クロノス教諭は強いわね…」

横で明日香が呟く。

同感だ。

俺は、クロノス教諭に勝てる気がしない。

「頑張れ!クロノス教諭!」

十代や翔が応援し、クロノス教諭がその応援を受け取る。

「とくと刻むと良いノーネ!実技最高責任者、クロノス・デ・メディチの名を!カードを一枚伏せ、ターンエンドなノーネ!」

「くっ…私のターン、ドロー!」

カミューラの手札は三枚。


「フッ…私は、通常魔法、《生者の書-禁断の呪術-》を発動!《ヴァンパイア・ロード》を特殊召喚し、先生。あなたの墓地の、《古代の機械巨人》を除外するわ。」

ヴァンパイア・ロード
ATK2000→2200
DEF1500

カミューラは、三沢と同じくアンデッド族使い…どれだけ厄介かも、良く分かっている。

だが、アンデッド族モンスターは、基本的に攻撃力が低い。

古代の機械巨人を、どうやって突破するんだ…?

「そして、ヴァンパイア・ロードをリリースし、《ヴァンパイア・ジェネシス》を特殊召喚する!」

ヴァンパイア・ジェネシス
ATK3000→3200
DEF2100

おそらく、これがカミューラの切り札。

そうと分かる威圧感…!

「ヴァンパイア・バッツの効果で攻撃力が200ポイント上がる…攻撃力は、3200…!」

「まずいぞ、クロノスの古代の機械巨人の攻撃力を超えやがった!」

悔しいが、万丈目の言う通りだ。

どれだけ優勢でも、古代の機械巨人がやられては…

相手のカミューラも、分かっているのだろう。

口元をニヤリと笑わせる。

「行くわよ先生!ヴァンパイア・ジェネシスで、古代の機械巨人に攻撃!《ヘルヴィシャス・ブラッド!》」

ヴァンパイア・ジェネシスの攻撃が、クロノス教諭に向かっていく…

「リバースカード、オープンなノーネ!《次元幽閉》!攻撃モンスターを、除外するノーネ!」

ヴァンパイア・ジェネシスの進路上に、次元の穴が現れ、ヴァンパイア・ジェネシスを飲み込んでいく。

「なぁっ!?」

「フン!生徒ならともかく、道場破り相手に、手加減する気はないノーネ!」

まだ道場破りって言ってたんですか、クロノス教諭。

「道場破り…?我々は、闇のデュエリストよ?」

「いいや、このクロノス・デ・メディチ、断じて闇のデュエルなど認めるわけにはいかないノーネ!何故なら、デュエルとは本来、青少年に希望と光を与えるもの!恐怖と闇をもたらすものではないノーネ!」

「クロノス教諭…」

だから、闇のデュエルなど無いと否定してきたのだろう。

全て、生徒たちの為に。

「格好良いぞクロノス教諭ー!」

一番最初に叫んだのは、やはり十代。


「甘く見るんじゃないよ…人間ごときがッ!」

そう言ったカミューラの口は、口裂け女のように裂けていた。

吸血鬼。

人間にあらざる者。

「私は、魔法カード、《幻魔の扉》を発動!」

カミューラの背後に、巨大な扉が現れる。

「…なんなノーネ!?この扉ーは!」

クロノス教諭ですら知らないカード。

俺も知らない。

「幻魔の扉の第一の効果…相手モンスターを、全て破壊する!」

「なんデスート!?」

あの禁止カード、《サンダー・ボルト》と同じ効果、だと…

古代の機械巨人が扉に吸い込まれていき、クロノス教諭のフィールドはがら空きになる。

「しかーし、次の私のターンで決めれば良い話デスーノ!」

「ふふ…先生、幻魔の扉には、もう一つ効果があってよ?一度でもフィールドに出たモンスターを、あらゆる条件を無視して、私のフィールドに特殊召喚する!」

「ふざけんな!何だそのインチキカードは!」

サンダー・ボルト+死者蘇生の上位互換。

聞いただけでインチキカードだ。

「もちろん、このカードにはリスクもあるわ。」

「そりゃそうだろ!そんなカードにリスクが無いわけないじゃんか!」

十代の言う通りだ。

「このカードを使って敗北したプレイヤーの魂は、三幻魔に喰われる…それが条件よ。」

「実質ノーコストではないか!」

そんなカード、使った段階で決着する。

だから、万丈目が言う『実質ノーコスト』と言うのは間違いではない。

「さあて、今回の生け贄は誰かしら?」

カミューラがそう言った直後、幻魔の扉から触手が放たれる!

「避けろ明日香!」

少し離れていた、俺と明日香の方向に向かって来たため、明日香を突き飛ばす。

代わりに。

「ぐっ!」

謎の触手に捕まり、カミューラの下…いや、幻魔の扉の前に連れていかれる。

「あら、まあまあの顔ね。生け贄にするのはちょっともったいないわ。」

生け贄、だと…?

「さあ、彼の魂を生け贄に、古代の機械巨人を特殊召喚!」

古代の機械巨人
ATK3000
DEF3000

クロノス教諭のエースカードが、カミューラに従っている。

「敗者は、幻魔に魂を奪われる…つまり、私が負けたら生け贄にした彼の魂が三幻魔に奪われることになるわね。」

その為に、俺を生け贄にしたのか!

「私はこれでターンエンドよ。」

「クロノス教諭!攻撃してください!」

俺の決死の叫びも空しく、クロノス教諭はこちらに笑いかけるだけ。

「私のターン、ドロー。…ターンエンドなノーネ。」

クロノス教諭はドローしたカードも見ずに、ターンエンドの宣言をする。

「先生?この闇のデュエルの敗者への罰ゲーム、覚えてるかしら?」

「敗者は、人形に魂を封印される…覚悟は、出来てるノーネ。」

闇のデュエルに負けたダークネスは、カードに魂を封印された。

ならば、クロノス教諭が負ければ…

「私のターン、ドロー!」

カミューラのターンになる。

古代の機械巨人を止める手段は、もうクロノス教諭のデッキには存在しない。

「シニョール、そしてシニョーラたち。ワタシからの特別授業なノーネ。」

クロノス教諭はとつとつと語り出す。

「例え闇のデュエルに敗れたとしても、闇は光を凌駕できない。そう信じて決して心を折らぬ事。私と約束してくだサイ。」

闇は、光に適わない。

そう信じて、決して心を折らぬこと。

「最後の授業は終わりかしら?古代の機械巨人で、先生にダイレクトアタック!アルティメット・パウンド!」

古代の機械巨人の腕が、クロノス教諭に迫る。

「…光のデュエルを…!」

クロノスLP2000→0

「クロノス教諭ッ!」

クロノス教諭は、最後まで光のデュエルのことを言っていた。

糸を失った人形のように、クロノス教諭の身体が倒れていく。

手札のカードは…

古代の機械兵士が二枚と、ライトニング・ボルテックス。

…俺が捕まえられなければ、クロノス教諭は、勝っていた…

カミューラが言った罰ゲームの通り、クロノス教諭の身体は縮み、人形になっていた。

クロノス教諭が人形になったと同時に、俺に巻きついていた触手が消える。

「クロノス教諭ッ!」

急いで、人形になったクロノス教諭と、それを持つカミューラの方へ向かう。

「…やっぱり、不細工な人形ね。いらないわ。」

カミューラが、クロノス教諭の人形をどこかへ放り投げる。

「おっと!」

…良かった。

湖に落ちる前に、万丈目がキャッチしたようだ。

「それでは皆さん、また招待状を贈らせていただくわね…」

カミューラの姿が、霞のように消えていく。

…クロノス教諭…

「みんな。次は、俺があいつとデュエルする。」

出来るだけ怒りを抑えた一言に、反対する者はいなかった。

 
 

 
後書き
展開の都合上、クロノス教諭に幻魔の扉を使いました。

結構、テンプレですが。

さあ、カミューラ!

俺のテストの結果で得た苦しみと、二十五回のシンクロを使えなかった苦しみを味わうが良い!
 
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