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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百五十六話 ヴァンフリート星域会戦 その5

 
前書き
お待たせしました。

なんとか8月中に書く事が出来ました。 

 
宇宙暦794年 帝国暦485年 4月1日


■自由惑星同盟 ヴァンフリート4=2 同盟軍後方基地  基地司令室

基地全体を揺るがすような爆発に、一瞬司令室では帝国軍が攻撃を加えてきたのかと身構える者達も居た。特にセレブレッゼ中将は怯えまくり、司令官席で立ち上がり、キョロキョロと辺りを見回す、その顔が見る見るうちに真っ青になっていった。

そんな中でも、副官のサンバーク少佐は冷静にオペレーターに情報を問いかける。
「いったい何が有ったのか?」
サンバーク少佐の落ち着いた声に司令室の動揺が収まる。

「弾薬庫と、酸素供給システムが内部から爆発した模様です!」
「直ちに酸素供給システムをサブシステムに切り替えろ」
「はっ」

「どう言う事なんだ、帝国軍の攻撃なのか……」
司令官席ではセレブレッゼ中将がオロオロしながら、ブツブツと呟いているが、誰も気にせずに自分の職責を全うしていく。

「少佐、弾薬庫の火災が大きすぎて、自動消火システムだけでは、消しきれません!」
「要員を送って、確認させろ、ただし無理に消火しようとするな。此処で命を散らすリスクを背負う必要は無い、最悪の場合は該当ブロックを放棄せよ」
「了解しました」

少佐の指示に従い司令部要員がテキパキと連絡を行っていく。

サンバーク少佐の考えでは、“どうせ降伏する基地で有る以上、無理な行動で部下達の命を危険に晒す事を避けよう”と言う事であった。

「少佐、帝国軍から連絡が入っています」
「繋いでくれ」

サンバーク少佐は即決で通信を繋げさせる。
スクリーンには先ほどと同じ、ケスラー中将が映る、その横のスクリーンにはローゼンリッター連隊副連隊長のシェーンコップ中佐の姿も映っている。

『セレブレッゼ中将、いったい何があったのですか?基地からいきなり爆発が起こったのですが?』
ケスラーが驚いたような顔で質問してくる。

セレブレッゼ中将は青い顔をしながら震える声で、ケスラーに真意を問いかける。
「いったいどう言う事なのかね、ケスラー中将、此は帝国軍の攻撃かね?我々は降伏するというのに攻撃とは酷いではないのか!」

セレブレッゼ中将の的外れな言動に、サンバーク少佐以下の司令部要員は唖然とした。先ほどから、爆発は内部からだと司令室全体に流れているのに係わらず、それすら耳に入っていなかったとはと。

ケスラーとの話の途中で爆発が起こった為に、一旦話を中断し、その遣り取りを聞いていたシェーンコップも内心で“やれやれ、後方で優秀な人材でも前線では駄馬にも劣るか”と苦笑い状態で有った。

『セレブレッゼ中将、帝国軍は、皇帝陛下に誓って一切の攻撃行為も行っておりませんぞ、副官の方に確認為さってください』

セレブレッゼ中将は、そう言われて始めて、辺りを見渡し、司令部要員が呆れた表情で自分を見ている事に気が付く。

「少佐、ケスラー中将の話は本当なのか?」
サンバーク少佐も呆れていたが、副官の仕事を確りとする。
「はっ、確かで有ります。爆発は内部から起こっております」

「何故、消火せんのか、このままでは基地が危険ではないか!」
部下達が必死に延焼を防ごうと努力しているにもかかわらず、その神経を逆なでするような行為を行う。

「目下誠意奮闘中です!」
頭に来たオペレーターの一人が聞こえるように大声で報告する。
『中将、我が艦隊から工作艦を派遣し消火活動に参加させます』

ケスラーの言葉に、セレブレッゼ中将は断ろうとしたが、それより早くサンバーク少佐が、答える。
「宜しいのですか?」
ケスラーは頷きながら答える。
『無論だ、此処で火災が続けば、基地の人命に多大なる危険が迫るだろう、同じ人間として、その様な事を見て見ぬ振りなど出来る訳が無い』

ケスラーの答えに、基地で話を聞いていた面々は“この人が、指揮官であったら”と思い“この人なら、約束通り、無体な事をしないで有ろう”と信頼感が増した。

シェーンコップ達、ローゼンリッター連隊の面々も、ケスラーを信用するに値する人間だと納得する事と成った。

ケスラーの申し入れを受け、基地全体に“帝国軍が消火の手伝いをしてくれる旨、絶対に攻撃等をしないように”という命令が伝達された。

一人蚊帳の外のセレブレッゼ中将はサンバーク少佐の独断を責めたが、司令部総員からの冷たい視線にフラフラと司令室を出て行き、そのまま自室へ籠もってしまった。





その後、基地の激しく燃える現場に、帝国軍工作艦が接近したが、基地側の対空レーダーも射撃レーダーもスイッチが切られ、工作艦から多数の消化剤や、液体窒素等が噴射され、次第に火災も下火になっていった。

それより前、基地から数台の装甲車が火災で棚引く煙をカモフラージュにして南へと逃げ去っていった。その装甲車にはローゼンリッター連隊長ヴァーンシャッフェ大佐以下ゾルゲと彼の部下達が乗り、ありったけの物資を積んで、遙か南極点にある無人観測基地へと逃亡したのである。

その姿自体は、超高感度センサーの塊であるケスラー艦隊旗艦エリュテイアでは観測されていたのであるが、ケスラー、メックリンガー、ベルゲングリューン、ビューロー達も敢えて言及せずに、そのまま逃亡させる事に成った。

彼等は、態とヴァーンシャッフェ連隊長を逃がすという作戦を知っていたからであり、それ以外のケスラー艦隊司令部要員は全て、グリンメルスハウゼンの手の者で構成されていたが為に、誰一人として、それに異を唱える者はいなかった。

必然的に、ヴァーンシャッフェ連隊長はローゼンリッター連隊を見捨てた事に成った。





宇宙暦794年 帝国暦485年 4月2日

■自由惑星同盟 ヴァンフリート星域 銀河帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ

延々と追いかけっこをする帝国軍では、ケスラー艦隊からの“敵補給基地降伏”の連絡を受け、アルフレート・フォン・レーテル中将、フランツ・フォン・カイテル中将、アドルフ・フォン・ホイジンガー中将等、司令官、参謀達が参集されていた。

その中には、大佐でありながらもノルデン少将の副官として臨時に准将に任命されたラインハルトの姿も有った。

艦隊司令官、参謀長達も今回の件については何も知らされて居ない為に、次に発せられたエッシェンバッハ元帥の言葉に息を呑んだ。
「まず卿等に謝らねば成らん事がある」

ざわつく会議室。

「卿等の中には、今回の延々と続く追いかけっこを、憤慨している者もおるとおもう」
そう言いながら、エッシェンバッハの目線はラインハルトに向いている。

その目線に気が付いて一瞬自分の考えが知られたかと、ギョッとするラインハルト。実際散々エッシェンバッハやグライフス達を馬鹿にしていたのであるから。

「元帥閣下、その様な事ございませんぞ」
ノルデン少将が、KY振りを発揮して多少場がほぐれる。
此こそ、テレーゼが考えた“使えない人間など居ない、適材適所に置けば役に立つ”という考えで行った人事の結果であった。

「うむ、実は今回の出兵は、このヴァンフリート星域に叛乱軍が設営した後方基地攻略という目的があったのだ」

エッシェンバッハの言葉に再度ざわめきが起こる。
「元帥閣下、その様な施設が存在したのですか?」
参謀長の一人が質問した。

「うむ、叛乱軍が3ヶ月ほど前に基地を設営したと、さる筋からの報告で判明した事だ」
更にざわめく。
「其処で、叛乱軍に気取られぬ様に、この様な仕儀になった訳だ」

「元帥閣下、その基地攻略を何時為さるのでしょうか?」
カイテル中将が質問する。
「攻略については、既に別働隊が攻略を進めている所だ」

エッシェンバッハの答えに、先ほどより遙かに大きなざわめきが会議室を飲み込む中、総司令部次席参謀長のエーリッヒ・フォン・シュペルリンク少将が、ヴァンフリート星系図を表示し作戦を説明し始める。

作戦を聞き、殆どの将官が息を呑む中、ラインハルトは“俺にその襲撃艦隊を指揮させれば叛乱軍の誘引までしてのける物を”と考えていた。

「元帥閣下、基地が既に陥落したのであれば、艦隊は此からどの様な行動を?」
帝国艦隊でも期待度が低いレーテル中将が質問してくる。

「うむ、其処でだが、通信傍受などの結果、叛乱軍は今だ基地陥落を知らぬようだ、其処で、一個艦隊を分岐しヴァンフリート4に近づかせ、偶然4=2にある後方基地を発見した為、基地を攻撃する様に見せかけ、救援に駆けつける敵艦隊を誘引し三方向より包囲撃滅する」

元帥の作戦案に相づちを皆が打つが、ラインハルトはエッシェンバッハの作戦案が自分の考えとほぼ変わらない事に驚き、エッシェンバッハに対する警戒度を高めていた。

その後、シュペルリンク少将が具体的な作戦を説明していく。
「分岐する艦隊には、レーテル中将の艦隊を当てます」
その言葉に、喜びの顔で返答するレーテル中将。
「はっ、元帥閣下、お任せ下さい」

「既に、敵基地では、捕虜の移送が始まっており、一両日中に終了する予定です。その後敵基地が攻撃されそうだという通信を自動放送で流し続け、敵にレーテル艦隊の目的を気づかせます。此は本艦隊とのタイミングが重要で有ります」

シュペルリンク少将の説明にエッシェンバッハ元帥が補足する。
「レーテル中将、卿の艦隊との同調の為に、総司令部より連絡将校としてノルデン少将とシェーンヴァルト准将を派遣する」

いきなりの指名に驚くラインハルトと名誉で感動しているノルデン少将であった。

その後、詳しい作戦が話し合われ、解散と成ったが、作戦前にキルヒアイスと会ったラインハルトは、事の次第を話していった。

「キルヒアイス、エッシェンバッハは、多少なりとも有能なのかも知れん」
「ラインハルト様、如何為さいましたか?」
ラインハルトから、作戦を聞いたキルヒアイスは、予想を超えるエッシェンバッハ元帥の作戦に“ラインハルト様の野望の為にも、元帥は最大限の障害だ”との認識を得る事と成った。

そして、元帥だけでなく、グライフス大将、シュペルリンク少将などに対する調査を行い始める。更に元帥が遂に明かさなかった、情報源についても探るのであるが、此ばかりは転生者テレーゼからの情報だと判る訳が無く、叛乱軍側に居るスパイの事だと結論づける事に成った。
 
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