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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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本編
  例えばこんなインフィニットストラトスは何だかあれだ

 
「む~ん・・・」

某月某日、俺は目の前のハイテクで出来た鉄の塊を眺めながら呻いていた。
後ろの監視員みたいな人が言外に「さっさとしろよこのウスノロが!!」と視線のニードルスピアーを突き刺してくるのが居心地悪い。唯でさえやたらと調べる連中が多いからタイムロスが嫌なんだろう、ご愁傷様だ。

俺こと真田悟朗左衛門(さなだごろうざえもん)(略してゴエモンと呼ばれている)は現在全国一斉IS適正者調査に半ば強制参加させっられている。調査方法は簡単、ISに触って反応があればクロ、なければ目出度(めでた)くシロ(つまり紛う事なきパンピー)の証を得ることが出来る。さすれば俺はその帰りにスーパーでやっているティッシュとトイレットペーパーの安売りに間に合うって寸法よ。

こんな検査が行われている理由はめんどいので全部略す。簡単に言えばただでさえ名前のせいで悪目立ちする俺が0,000000001%くらいの可能性でさらに目立ちまくる可能性があるというだけの話だ。俺はとっとと家に戻って家族団らんしたいのだ、面倒事は御免こうむる。
・・・あ?なんでそんな江戸時代の人みたいな名前かって?俺が知るか、母さんに聞け!俺だってこんな妙ちくりんな名前嫌だわ!

それはさておき、ISとは簡単に言えば超高性能パワードスーツでなぜか女性にしか起動させられない代物だ。だから俺に反応するわけないじゃんとタカをくくって純国産第二世代IS≪打鉄≫の目の前に立った俺。

そんな俺を待っていた打鉄君は、こっちを見るなり目をキラキラさせて出迎えた。

いやISは全身装甲(フルスキン)か頭部バイザーのある機種以外目に当たるパーツはないので唯の比喩なんだが、そいつは俺が前に立った瞬間嬉しそうに一瞬光ったのである。幸い試験官は見ていなかったようだが、俺にはそいつが無邪気に語り掛けているような気がしてならないのだ。感覚的には、「ねぇねぇ触って?」とこっちに期待してる感じ。

だがここで立ち止まっていてもしょうがなし。試験官からの「てめえのせいで全部ストップしてんだよとっととやれ蛆虫が!」と言わんばかりのニードルスピアーがそろそろリアルスピアーに変わりそうなので急いで覚悟を決める。打鉄が「早く早く~!」と待ちきれない感じでうずうずしているような気がするので気休め程度に念を押しておくことにした。

「いいか、絶対押すなよ・・・じゃなかった。絶対反応するなよ・・・俺が触ったら知らんぷりするんだぞ、いいな?守ってくれたらなでなでしてやるから、な?」
(なんか独りごと言い出したわよこいつ)

可哀想なものを見る目線でこっちを見ている試験官さんに気付かない程度の音で、ブォン、と小さくISが鳴った。「え?ナデナデしてくれるの!?わかった!がんばる!」という意志が込められているような気がするのできっと俺の思いは伝わったはず!

レッツTOUCH!
ぴとっ・・・っと。

「・・・・・・」
「・・・・・・反応なし。もう結構ですよ真田さん」

よっし!反応なかった!完璧だ!帰れるぞ!

ブォォン・・・

・・・ん?なんだ打鉄、なぜおれの服の裾を掴んでいる?え?「言いつけ守ったからナデナデして~?」だって?なんだ結構甘えん坊なやつだな。いいだろう、君はどうやらお利口さんみたいだしな!ムツゴロウインストール!ほら、よーしよしよしよしよ・・・し?

そこでふと俺の上機嫌だった思考がストップする。「服の裾を掴んでいる」だって?

打鉄を見る。『人が乗ってないのに』なぜか立ち上がって俺の服の裾を器用に摘まんでいる。傍から見るとつまり、腕や足のパーツがひとりでに宙を浮いている。人が乗って動かすパワードスーツが『単体で動いている』。それも『俺という特定の人物』とコンタクトを取ろうとしているかのようなアクションを起こしている。・・・あれ、うん?なんかまずいのでは、なかろうか・・・?

「あ・・・?あ・・・?」

試験官みたいな人が目の前で起こるホラー現象にただただ言葉にならない声を漏らす。これ・・・これなんか違う。これ俺の思ってた反応の仕方と違う。違うのだが、現実として打鉄はこれ以上なく上機嫌そうにブォンブォン音を鳴らしている。俺のナデナデに呼応するように。

「違うんだ、俺は動かしてないんだ!あいつが勝手に動いたんだよ信じてくれよ!!」

「でもその子どう見ても君に反応してるのは変わらないよね?」

ブォン♪
「\(^o^)/」

「/(^o^)\」←監視員さん

/^o^\/^o^\<知ってるか?富士山って二つの火山が噴火のせいでくっついて出来たんだぜ?(※精神崩壊)

―――こんなことを起こして「俺一般人です」なんて通るはずもなく、いろいろ検査やら軽い実験をした結果、俺はIS学園に足を踏み入れることとなった・・・ああー、安売りと家族団らんがぁぁ~~~・・・


 = =


うふ、うふ、うふふ、もう駄目だぁ、オラは死んじまっただぁ・・・うふっ。
と不気味な笑い声をしているとピピッっと小さな電子音とともに首にくっつけた俺のISの待機形態、微妙に首輪っぽいネックレスから目の前に小モニターが投影される。≪ストレスゲージの増大と筋肉の緊張を確認≫、人間の言葉に訳すと「ねぇ大丈夫なの?無理しない方がいいよー?」ということを言っていると思う。

俺はどうも特殊な脳波が出ているらしく、その脳波がISから放たれる波長と一致しているらしい。だからISは俺という個体を非常に特殊かつ自分たちに近い存在として認識しているそうだ。あの打鉄が無人で動いたのは俺の脳波が打鉄を誤認させて操縦者が乗っていないのに起動形態に移ったから・・・と言われた。
難しいことは分からないがIS開発者の篠ノ之博士が直々に教えてくれたのでそうなんだろう。早い話、俺が近くにいるとISはその自立意志をもって自力で動くことが出来るようになるそうだ。なにそれこわい。ホラーすぎるので俺の首にかかったこのカスタム打鉄ちゃん(もちろん検査のときの打鉄と同じコアだ)で俺の脳波が周囲に散り過ぎないよう抑制してるらしい。

カスタム打鉄ちゃんは”オウカ”と呼んでいる。それは人生を”謳歌”したいという願望とISの特殊装備が”桜の花”を連想させえる美しさだからだ。ちなみに俺はオウカに限らずISを起動させることは『出来ない』。そしてISが『勝手に動いて』俺を乗せ、『IS自身の意志で戦う』事は出来る。つまり、俺は操縦しないけどISが自分で動けば戦える。なにそれこわい。


ある意味男性IS操縦者の織斑一夏君を超える凄まじい存在になってしまった俺は日本政府からあれこれされ、家族とも離れ離れになってしまった。現在は国の重要人物として保護されているから安心しろ、だそうだが俺は家に帰れなかったからその辺よく分かんない。
一応見てくれはISを起動させているように見えるし明らかに放置できない能力なのでIS学園に放り込むのが妥当ということになり、IS学園の教室へ向かっている。それはもう嵐のような日々だった。おまけにISに関する基礎知識をそのクソ忙しい期間内に頭に叩き込まねばならなかったのでなおのこと大変だった。幸いSF知識はそこそこあったため割とすんなり理解できたのは不幸中の幸い以外の何物でもない。

≪間もなく目的地に到着≫という連絡を受けて顔を上げると教室の前に俺の担任になるという凄腕IS操縦者、織斑先生が立っていた。人の名前を覚えるのが壊滅的に苦手な俺でも知っている有名人だ。世界一の操縦者に輝いたらしい。すげぇ。センセイ、オネガイシマス。
では足並みそろえて国立アンニュイ学園1年1組にれっつらひぁうぃごー。ここ数日の周囲を巡る急激な環境変化にすっかり疲れ切った俺は、先生のアドバイスに従いやけくそ気味にポケットの耳栓を取り出した。



 = = =



「・・・突然だが、実はこのクラスに今日転入してきたやつがいる。真田、入ってこい」
「シツレーします」

話は聞かせてもらった!みたいな感じで教室に入ってきたそいつは――

「お、男・・・?」
肯定(アファーマティブ)です」

男だった。体の大きさや身長はいたって標準的。髪は短めにカットしてある。顔は特別イケメンでもないが、今はそんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。本当に大切なことというのはいつでも心の中に・・・じゃなくて!

「神様、ああ神様!ありがとう・・・俺を独りにしないでくれて本当にありがとう・・・ッ!!」

声高らかに俺こと織斑一夏は叫んだ。周囲に女子しかいないという精神的孤独感と圧迫感、そして動物園のパンダを見るような好奇の目線で雁字搦めにされていた俺は、同志ともいえるもう一人の男の出現に狂喜乱舞した。同時に周囲の女子達の声も爆発した。

「「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」」」」
「ふ、二人目ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「フツメンだけどまぁいいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「薄い本が厚く暑く熱くなるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

なんかもう女子連中のテンションがおかしいことになっているがもう誰も気にしてない。その場のノリでとにかく叫びまくっている。一夏も混ざって叫ぶ。真田はドン引きしていた。


~しばらくお待ちください・・・~


「真田悟朗左衛門と言います。ゴエモンって呼んでね」

ざわ・・・ざわ・・・!みたいな感じで黒板に書かれた俺の名前をもの珍しそうに眺める一同。この時間が俺にとって一番嫌だ。見世物じゃねーぞジロジロ見んなオラァ、と言ってみたが気迫が足りないせいであんまり通じなかった。こらそこ、「え、それ本名なの?」とか「変な名前~」とか言うな。唐草模様の風呂敷?いつの時代の大泥棒だばかたれ。

「さて、真田がこの学園に来た理由だが・・・まぁこの状況だから察せ」
「教師にあるまじき説明の投げっぷりだな・・・」
「黙れ織斑、ここでは私が法だ」

言い切ったよこの人。しかしその言い方って結構上手いな。詳しい事情は話さない上に生徒が勝手に誤認するような言い方をしている。嘘は一言も言っていないあたりが実に汚くてステキだ。嫌いじゃないですよ、そういうの。
・・・ん?どうしたオウカ?「私も汚い方がステキなの?」だって?お前は今のままでも素敵だからああなる必要はないよ。・・・ありゃ、照れて黙っちゃったよ。

まぁこうして、俺のわけわかんない学園生活が始まったのでごぜーます。
  
 

 
後書き
名前:真田悟朗左衛門 15才男性 中肉中背 血液型:AO型 誕生日:7月3日 蟹座
好きな物:家族、ゲーム、散歩 嫌いな物:悪臭を放つもの全般、間違ったものを放置すること
趣味:カエルを飼うこと 特技:泥棒(進んで行うことはない) 愛称:ゴエモン

遺伝確率250億分の1で誕生する異能ゴエモン体。篠ノ之束以外で唯一ISの声を認識することが出来る。ぶっちゃけ相手がISならたとえどんな操縦者が主でもコミュニケーションを交わすことが可能な対IS限定の超絶チート人間。無人機ならほぼ100%協力を得られるのでうっかり無人IS大量投入とかすると思いがけず大変なことになる。 
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