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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:~神々の饗宴~
  第四話

 近未来的な暗い金属の通路。いたるところに青白い光のラインが走っていく。

 まるでUFOだな、と清文は心の中で考えた。先を行く千場や小波はひとことも言葉を発せず、ただ黙々と歩いていく。

「緊張しますか?」

 隣を歩くハクナが聞いてくる。

「ん?ああ、いや……そうだな。ちょっとは緊張してるのかな」

 小波が創りだしたものがどのようなものなのか、不安になる気持ちもなくはない。

「ついたよ。……千場」
 
 千場が黒光りするドアの隣に設置されたパネルに手のひらを当てる。ポーン、という音とともに人工音声。

『掌紋を確認しました。パスワードを……』

 言葉が終わらないうちに、千場の右手がひらめき、パネルのボタンを押していく。

 ピンポーン、と軽快な音が鳴り、続けてドアがスライドする。

 その奥には、巨大な空間が広がっていた。

 モニタリング用と思しきパネルが点在し、研究員も幾人かいた。そのすべてが、どこかで顔を見かけたことのある《ボルボロ》の初期メンバーだった。

 そしてこの空間で一番目を引くのが――――

 ところどころに設置された、巨大な機械だ。

 外見は2018年ごろにアミューズメントパークに設置され始めた第一世代フルダイブ機器にそっくりだ。しかしそれよりも各所に点在するデバイスやコードが、なんともいえぬ試作品感を醸し出している。

「なんだ……あの中途半端なのは……」
「ん?あれかい?あれはね、《DTL》だよ」
「ディーティーエル?なんだそりゃ」
「正式名称は《ドリーム・トランス・レーター》。知人が《人の魂を解析する機械(STL)》を作っていてね。俺がそれを基にして造った機械で、人の意識に夢を投影する、《STL》が夢をこしとるのに対して《DTL》は夢を植え付けるのさ。《ジ・アリス》と同じ戦法で…………」

 なんだか難しいことばの羅列が並び始める。

「ようは人の夢に手を加えるわけか」
「で、これを……ん?あ、そうそう。そんな感じ」

 意気揚々とDTLの構造について説明していた小波は、ちょっとつまらなそうな顔をすると答えた。

「清文、こっちへ」

 千場が清文を呼び出す。

「ハクナも」
「は、はい」

 清文とハクナが千場に連れてこられたのは、《3》と書かれているDTLの前だった。

「お前たちも出てこい」
「へ~い」
「はい」

 DTLの裏側から、千場の呼びかけに答えて二人の人間が顔を出す。

 ひとりは、赤味がかった髪を持った、活発そうな少年。
 もう一人は、つややかな長い髪に、凛とした顔立ちの少年。どちらも年頃はハクナと同じくらいか。

「あんたが最後の一人か?」

 赤い髪の少年が清文に近づくと、挑戦的な口調で問うた。

「最後の一人……?とりあえず、そうなのかな?」

 清文が答えると、少年はじっと数秒ほど清文を見つめると、急にニッとわらい、「合格」と言った。

「俺は四条(しじょう)カズヤ。よろしくな」
 
 カズヤと名乗った少年は後ろを見ると、長髪の少年に向かって叫ぶ。

「リーリュウも自己紹介くらいしたらどうだ」

 すると長髪の少年は一歩進み出て、無表情のまま言った。

「……里見(さとみ)良太郎(りょうたろう)という。よろしく」

 カズヤと良太郎の両方と握手をすると、清文も名乗る。

「俺は栗原清文。よろしく、二人とも」
「栗原?じゃぁ、小波さんの弟って言うのはあんたのことか」
「ああ。……姉貴と面識があるのか?」

 すると良太郎が失笑していった。

「なんだ、意外と頭が悪いな。俺達がここにいる時点で、ほぼそれは確定事項だろうに。俺達は小波さんに選ばれたテストプレイヤーだ。当然、お前も。それにふさわしい行動をしてもらう」

 清文は少しばかし驚愕した。
 
 今の良太郎の言葉からは、妄信的な小波への信頼がうかがい知れた。これほどまでの逸材を、彼女は揃えていたということなのか――――――。

「清文、ハクナ、カズヤ、良太郎。お前たちの準備ができ次第、実験に入る。それぞれ2~5のDTLを使用しろ。ハクナが2、カズヤが3、良太郎が4、清文が5だ。いいな」
「「了解」」
「わかりました」
「あ、ああ……」

 千場が解散、というと、それぞれが自分のDTLに向かって歩き始めた。


             
                    *

「良太郎」
「なんだ。何か質問でも?」
「ああ。――――実験って……ダイブテストをするってことか?」

 すると良太郎はまた失笑し、

「当たり前だ。ここでそれ以外の何をする」

 と言った。

「いや……。急だな、と思って」
「いつもこんな感じだ。お前もそのうち慣れる。……と、言っても、しばらくは戻れないと思うけどな」
「……?それは一体……」

 すると良太郎は今までより真剣な顔をしていった。科学者の顔だ、と清文は感じた。秋也やキリト、そして茅場晶彦に漂っていたのと同じ気配がする。

「DTLは人の夢にアクセスする。システムが形作った夢を、強制的にみさせる、と言えば分りやすいか。過去の科学者たちが、夢の中の体感時間と現実世界の時間は異なっているという法則を発見した。これを応用することで、DTLは現実界の何倍もの時間をプレイヤーたちに見せることができるんだ」
「なるほど、ね……。そう言えば気になったんだけど、何でテストプレイヤーが必要なんだ?あいつらだけでも問題なさそうなのに……」
「DTLはアクセス条件が厳しいんだ。俺も詳しいことはよくわからないが、『適合者』とよばれる存在がいるらしい。俺達はその条件を満たしていて、だからDTLのテストプレイヤーに選ばれたんだそうだ。残念ながらどのような条件なのかはわからないがな……」

 清文が良太郎に抱いた感情は、感心の一言に尽きる。どうすればここまでたくさんのことを記憶できるのだろうか。

「さて、俺はこっちだ。お前は向こうの五番のDTLを使え」
「おう。ありがとな」

 清文は《5》と書かれたDTLの前に立った。

「……さて、どうしろと?」

 清文が長考にはいろうとした直前。

 ガシャン!という機械的な音がして、DTLのドアが開いた。しかも、上向きに。イメージとしてはどこぞの機動〇士のコックピットか何かだろうか……。

「……」

 清文がその中に入ると、本当にコックピットの様な椅子があり、部屋の低い天井にはヘッドギア型の物体が設置されている。形状はナーヴギアによく似ていた。

 清文は椅子に座ると、ヘッドギアの横にあった取っ手を引いた。すると天井に設置されていた機械が降下してきて、ヘッドギアは自動的に清文の頭に装着された。

 バイザーに、《Link Start》という英単語が浮かび上がった。

 唱えろ、ということなのだろうか。 

「……リンク・スタート」

 なじみ深いそのワードをつぶやくと、今まで何度も体験したフルダイブとなんら変わらぬ感覚が襲ってきて、清文を仮想世界へといざなった。

 ――――そして同時に、その思考を《栗原清文》から、仮想世界の剣士、《セモン》のものへと切り替えさせた。 
 

 
後書き
 お久しぶりです、Askaです。最近更新ができてませんでした。そして次回からも更新が遅くなります。

 いよいよセモン君が新たな舞台にレッツゴー。

 次回もお楽しみに! 
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