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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第五章 StrikerS編
  第百三十一話  『ティアナとのお話(後編)』

 
前書き
後編になります。
今回はシホとティアナの話し合いになります。 

 





Side ティアナ・ランスター



明日なのはさんが分隊ごとに模擬戦をするというので準備を入念にしている時だった。
シホさんがあたしを部屋に招いてきた。
なにを話されるのだろうと思いながらも向かった。

「ティアナ・ランスター、入ります!」
『はーい! ちょっと待ってね?』

中からシホさんの声が聞こえてくる。
なにか中が騒がしいけど一応待っていると扉が開き、

「いらっしゃい、ティアナ。さ、立っているのもなんだから中に入って」
「わかりました」

中に入るとそこにはアルトリアさんとネロさんの姿もあった。
二人共ゆったりとしているのであたしはどうしていいかと戸惑う。

「あ、楽にしていていいわよ。そこにある椅子に座っていていいから」

シホさんはそう言いながらもお茶などを用意している。
しばらくして、

「はい、ティアナ。簡素だけど地球製の紅茶よ」
「い、いただきます…」

それで紅茶を一口。
すると、

(お、美味しい…! この味って桃子さんと同等の味がする!?)

以前、任務でいった97管理外世界『地球』のなのはさん達の実家がある翠屋で出してもらったミルクティーや紅茶と同じくらいの味で、これのどこが簡素なのだろうと思う始末である。
シホさんって魔術も武術も魔法も料理もなんでもできるしやっぱり優秀なんだわ。
一人シホさんの能力に打ちのめされている間にも、

「それじゃ、リラックスも出来ただろうし少し話をしましょうか」
「は、はい…」
「それでティアナ、早速聞くけど、あなた…なのはの訓練ではマジメには受けているけど身についていないでしょう?」
「ッ!?」

急にそこを突かれてあたしは背に汗を掻いてしまった。

「その表情だと図星のようね」

そう言ってシホさんは少し目を伏せる。

「最近のティアナの自主練を見ていて思ったことなんだけど、なのはの教導が意味を成していないと思ったのよ」
「そ、それは…」
「なにをそんなに悩んでいるの? なのはの教導はそんなに嫌…?」
「いえ、嫌ではありません。むしろこんな凡人のあたしなんかには勿体無いくらいです」
「…ティアナの悪い点1ね」
「…え?」
「その、自分には才能が無いと思い込んで卑下しちゃう姿のことよ」
「で、ですがあたしは本当に才能なんて…!」
「誰がティアナに才能がないって決めつけた…?」

それであたしは首を絞められるような気分にさせられた。
シホさんの目があまりにも真剣なものだったので。

「…あなたには才能があるわ。毎日見ている私が言うんだから確かよ…」
「…シホさんには才能があるからですか?」
「ん?」

シホさんはポカンとした顔になる。
でもあたしは続けた。

「シホさんはあたしにはない才能があるから、無いあたしを勇気つけるためにそんな事を言っているんですか?」

だとしたら余計なお世話だ。
才能がある人には敵わないんだから。

「………はぁ。そこからすでに勘違いしていたのね」
「そのようですね、シホ」
「うむ。軽い視野狭窄に陥っているようだな」

シホさんが呆れながらそう言う。
何か変なことを言ったのだろうか?

「ティアナ。一つ言っておくわ。私には魔術も魔法も武術も才能なんて無いわ」
「へ…?」

シホさんに才能がない!?
そんな、どうして!
だったらどうしてここまで強くなれるの?
『魔弾の射手』と呼ばれるようになるまでに強くなったの?
あたしが軽いショックを受けていると、

「私の師匠筋の人たちから散々言われてきたことだけどね。
私には武や魔の才能はからっきしなのよ」
「嘘、ですよね…?」
「いいえ、それは本当です」

アルトリアさんが代わりに答える。

「シホには剣術や武術の才能はありません。
あるのは積んできた経験を活かしての心眼なのです。
シホは今までに死ぬほどの努力を重ねてきて今の力を手にしてきたのです。
魔術の才能も今はかなりできますが所詮後から出来るようになった付け足しの程度。
魔法も資質に救われているだけで才能はありません」
「そんな…才能がないんですか? シホさんは…」
「ええ。私の誇れることといったらそれこそ弓だけで一直線に飛ぶだけでティアナみたいに精密にコントロールはできないから。
武術に関しても死ぬほどの努力を重ねてやっと二流の限界分を収めただけだもの。
つまり私はどこまで言っても二流どまりで決して一流にはなれない運命なの。
まぁ、そう言っても大抵の人は信じてくれないけどね」

そう言ってシホさんは苦笑いを浮かべる。

「でも、私に比べてティアナには才能がある。
あなたの精密な射撃と視野を広く持ってセンターガードでみんなに指示を出せる人が才能がない?
そんな訳ないわ。
ティアナは才能に溢れている。
周りがどんなに才能に溢れている人ばかりでもティアナはティアナよ。
そして想像してみて? イメージするのは常に最強の自分を…」
「最強の自分…」
「そう、外敵なんて関係ないの。
常に最強の自分をイメージしていればどんな困難な事態になっても心を貫ける。
ティアナが常に戦う相手とは自分自身のイメージに他ならないんだから。
だから、あなたは自身だけを見ていればいいの。
他人の芝生なんて羨まなくていいの。
しっかりとした才能があなたの中には確かにあるんだから…」

そう、シホさんはあたしの腕を買ってくれている。
それがどんなに嬉しいことか、あたしは自然と涙を流していた。

「あ、あれ? どうして…」
「色々と溜まっていたのね。
あなたはお兄さんの魔法は無駄じゃなかったと証明したいという事だけを考えていたから…だから自分の中に眠っている才能に気づけなかった」

シホさんは優しい笑みを浮かべてあたしの背中をさすってくれる。

「あたしには、才能があるんですか…?」
「ええ、あるわ。
あなた自身がそれに気づけば自ずと身についてくるわ。
それになのはの教導もきっとあなたの為になる。
なのはがどうしてこんなに無茶をしない教導をするか知っている?」
「い、いえ…」
「だったらなのはに教導の意味を聞いてみなさい。
きっとなのはなら教えてくれるわ。
それにティアナはやっぱりまだ視野が狭いのよ。
もっと広げてみれば自分はみんなに支えられているんだなと思う時が来るわ。
特にあなたの相棒のスバルとか。
スバルはティアナにいつでも付き合ってくれていたでしょう?」
「はい…」
「スバルがティアナを信頼しているように、私達もティアナを信頼しているのよ」
「信頼…」
「そう、信頼されている。でなきゃフォワードのみんなもティアナの指示に的確に動いてくれるわけないわ」
「あ…」

そうだ。こんなあたしの指示にみんなは文句を言わずに今まで付き合ってくれてた。
そっか。あたしはみんなの信頼も見ぬふりをして一人で意固地になって我武者羅に踏ん張っていただけなんだ。

「どう? 思い当たるフシがあるんじゃない?」
「はい。あたしはみんなに支えられていて、そして同時にあたしがみんなを支えてあげなきゃいけない…」
「そう。それが分かれば及第点ね。ティアナには、私のように過酷な道には進んで欲しくないのよ…」

シホさんはそう言って少し儚い笑みを浮かべた。

「あの、聞いていいですか…?」
「なに…?」
「シホさん。あなたの過去に、一体なにがあったんですか…?」
「んー…そうね。しいて言えば……………一人で勝手にあがいて地獄を見てきた。
ただそれだけね。私、反面教師だから」

なんでもないようにそう笑うシホさん。
でも、それは決して誇張ではなく嘘じゃないとあたしは思った。
シホさんの表情があまりにも真剣すぎたから。
だから…、

「そうですか…ありがとうございます」
「うん。どういたしまして…それと明日の模擬戦はスターズは私が担当するから、だからティアナ達の全力を見せてきてね。
後、一つ言っておくけど…模擬戦は決して喧嘩じゃない。
己の力を誇示したい気持ちも分かるけど、習ったことを出し切らないと教えている人達に失礼だわ」

そこまで言い当てられた。
ここに来る前までにスバルと一緒に考えていた計画が一気に頭の中から霧散してしまった。
そうだ。なにを焦っていたんだ。
あたしはあたしの力を出し切ればいいんだ。

「シホさん…気づかせてくれてありがとうございます。
あたし、もう少しで大きな間違いを侵すところでした」
「そう。吹っ切れたようね。ティアナ、今あなたいい笑顔を浮かべているわよ?」
「そうですか…?」
「ええ。無理をしなくてもいいの。
自然体のままの方が力を存分に発揮できるわ。
だから明日の模擬戦、楽しみにしているわよ」
「はい! ありがとうございます!!」
「ええ。それじゃもう夜も遅いからさっさと寝て明日に備えなさい」
「わかりました!」

そうだ。あたしの今まで培ってきた成果を出していけばいいんだ。
無理無茶はせず自身の信じてきた力を…!
シホさんから習った一つの言葉…常にイメージするのは最強の自分!
そしてあたしは部屋に戻ると、

「あ、ティア。おかえり。シホさんに呼ばれていたようだったけど大丈夫…?」
「大丈夫よ、スバル。それよりスバル…」
「ん?」
「明日の模擬戦だけど、今日まで考えていた無茶な作戦はなしで行くわ」
「えっ!? で、でもいいの? せっかく二人で試行錯誤して考えてきたのに…」
「ええ、もういいのよ。あたしはあたしの力を全部出しきればいいんだから…」
「そうなんだ。ところでティア…なにか変わった?」
「そういうあんたが変わっていないのよ。あたしはこれからもランスターの魔法を証明していくわ。
だけどもう無茶はしないって決めたのよ」
「そっか…。よかったぁ~…今までティア、余裕がないみたいであたし、心配していたんだ」
「そっか…。そうね、確かにシホさんの言う通りだったわね。
あたしは視野が気づかないうちに狭くなっていた。
こんなに頼れる相棒が近くにいるのにね」

あたしはそう言ってスバルの頭を撫でる。

「ティア~、もっと撫でて~」
「調子に乗るんじゃないわよ!」
「ギブギブギブ!!?」

スバルの首を思いっきり絞めてやった。
今日は久しぶりにいい眠りができそうね。



◆◇―――――――――◇◆



Side シホ・E・S・高町



ティアナが部屋から出て行ってしばらくした後、

「もう出てきてもいいわよ? なのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、フィア、はやて、シャーリー?」

私がこのためにわざわざ投影したあらゆる魔術的な探知を遮断・透過する『身隠しの布』をみんなに渡して全員の気配を消させていたのだ。
それを解除するとわらわらとなのは達が狭い空間から出てきた。

「はぁ~…苦しかったわ。でも、さすがシホちゃんの青い君の秘密道具にも匹敵する宝具の布やね。
私達七人の気配をあの幻術使いのティアナに察知させないやなんてな」
「それよりシュバインオーグ。いい話だったぞ」
「そうだな。ティアナの心にしっかりと響いていればいいがな」
「大丈夫ですよ。きっとお姉様の気持ちは伝わっています」
「うん、シホのいう言葉は色々と感動した…」
「はい、とても感動しました!」
「シホちゃん、本来なら私がティアナを正さないといけなかったのに…任せちゃってごめんね」
「いいわよ、これくらい。もともと私が言い出した事なんだから…でもこれで明日は今まで以上に手強くなっているわね。
スッキリとしたティアナなら模擬戦、いいところまで行くと思うわ」
「そうですね、シホ」
「うむ。もう吹っ切れたようだからな。奏者よ。明日は厳しいぞ?」
「そうね。それと明日模擬戦が終わったら…なのはの教導の意味を過去を踏まえて教えていこうか」
「そうだね。うう~…明日、私達の過去を話すんだね」
「私の過去はまだ話さないけどね」
「シホ、ずるいよ…」
「話せるものではないでしょう? 私の魔術もばらすことになるのよ?」
「あのー…なにか大切なお話みたいですけど、私は聞いていていいんですか…?」
『あ…』

それでシャーリーがおずおずと声をあげて私達はバレたことを悟る。
それでシャーリーには全員に言わないという約束で私の秘密と過去を教えることになった。
その際、やっぱり非常に驚かれたのが確かだ。



◆◇―――――――――◇◆



そして翌日、

「さて、午前中のまとめで2on1で模擬戦をやるよ。
まずはスターズから。相手はシホちゃんだよ。バリアジャケットをまとって準備して!」
「「はい!」」
「エリオとキャロ、ランとレンはあたし達と見学だ」
「「「「はい!」」」」

そこにランが声を上げてヴィータに話しかけた。

「あの、ところでティアさんの件はどうなりました…?」
「万事シホが全部解決しちまったよ。もうティアナは無茶はしないって決めたそうだ」
「そうですか…。よかったです」
「姉さん、なんの事…?」
「あんたはもっと周りに気配りしなさい!」
「な、なにいきなり…!?」

ランとレンが口で何か言い合っているがヴィータは四人となのはを連れてビルの屋上で見学となった。
みんなの視線の先ではシホがスターズの二人と対峙している。

「それじゃ始めましょうか。ティアナ、わかっていると思うけど…」
「はい! あたしの全力を出し切ってみせます! 無茶はせずに! そしてイメージするのは常に最強の自分です!」
「それならよし…!」

そこに遅れてフェイトがやってきた。

「もう模擬戦始まってる?」
「ああ、シホがさっさと始めたよ」
「にゃはは…。私は働きすぎだと言われて今日一日は見学にされちゃった」
「ま、当然だな」
「うん。なのはは働きすぎだから。それを言うとシホもメンタル関係で昨日かなり頑張ったもんね」
「うん!」
「なのはは少し頑張りすぎ。
部屋に戻ってもずっとモニターに向かいっぱなしでしょ?
訓練メニュー作ったりビデオでみんなの陣形をチェックしたりしているし…倒れないか心配なんだから」
「えへへ。ごめんね、フェイトちゃん」
「なのはさん、それにシホさんも訓練中はいつも僕たちのこと見てくれていますよね?」
「本当に、ずっと…」
「だから私達は頑張れるんです」
「う、うん…!」

フォワード達にそう言われてなのはは頬を赤くしているのだった。
そして模擬戦ではティアナの放つ弾丸、スバルの攻撃が丁寧に一つ一つ潰されていき二人は息を乱している。
それに対してシホはずっとツヴィリングフォルムで応戦するといった行動だった。

「スバル! なんとしてもシホさんの本気を出させるわよ!」
「オッケイ!」

そしてスバルのウィングロードでスバルに追尾するようにクロスファイヤーシュートがシホに向かっていく。

「でやあぁああーーー!!」

スバルの拳がシホに直撃するがそれはシールドで防がれる。
だがシホの背後をクロスファイヤが迫る。
スバルの攻撃を防御しているので片手でシホはすべて切り裂き、スバルも攻撃をいなされてシホから通り過ぎる。

「いまだ! クロスファイヤー………シュート!」

またしても弾丸が迫ってくるがシホは危なげなく捌こうとする。
だがそれらの弾丸はすべてフェイクでシホが切り裂こうとした瞬間に消え失せ、またしても背後から一つの弾丸がシホを襲いにやって来る。

「フェイクか…。ならこれもフェイクかな?」

そう言ってシホは今度こそ弾丸を切り裂いた。
しかしその弾丸は特殊性で切り裂かれた瞬間に弾けてシホの腕を覆う。

「これは…!?」
「はぁ…はぁ…バインド式の弾丸です。これ、結構神経使いますからなかなか使わないんですけどね…」
「そう、なかなかいい弾丸だわ。初見だとわからないものね。いいわ。少し私の本気を見せてあげる」

シホはバインド弾をもう片方の剣で切り裂き、

「フォルム、フィーア!」
《Axd form.》

そこにはとても巨大なギザギザした剣が握られていた。
これこそヘラクレスの斧剣を元にした剣である。
シホはそれを構えて、

《Nine Bullet Revolver.》
「ナインライブズブレイドワークス!!」

まずスバルにその九つの斬撃を叩き込んでスバルは全部ガードできずにダウンする。

「ッ!」
《Schützeform.》
「ナインライブズ!」

ボッ!

今度は弓から九つの魔力矢が放たれてそれらはすべてホーミング性能でティアナに殺到する。

「わぁあああーーー!!?」

すべてを浴びてティアナは沈黙する。

「よし、模擬戦終了ね」
「「あ、ありがとうございます…」」
「それじゃ…」
「うっ…」
「ティアッ!?」

そこでティアナが突然倒れてしまったのだ。

「どうしたの?」
「どうやら疲れが溜まっていたから強制的に眠りについてしまったようね…しょうがないか。
スバル、ティアナは私がシャマル先生のところに運んでおくからあなたは残りの模擬戦を見学していなさい」
「わ、わかりました…」

それでシホはティアナを医務室に運んでいき、

「どうしたの、シホちゃん?」
「はい。ティアナが気絶してしまいまして。寝かせに来ました」
「そう。でもティアナ、気絶しているのにいい顔ね」
「そう思いますか…?」
「ええ」
「それじゃ起きるまでティアナを見ています」
「そう。それじゃ寝かすから服を脱がさなきゃね!」
「変にコスプレはさせないでくださいね…?」
「患者さんにそんなことはしませんよ~」
「いえ、過去の実績がありますから…」
「そ、それを言われると…」

シャマルはそれで引き下がっていく。
それでシホは気絶しているティアナに、

「…それでいいのよティアナ、よく頑張ったわね…」

そう言ってシホは安らかに眠るティアナの顔を覗き込んでいるのだった。


 
 

 
後書き
色々と言葉を並べましたがこんな感じの説得でよかったでしょうか。
今のところ他に思いつく言葉がなかったのでこんな形になりましたが。

シホの事を知らない人はティアナと同じように才能があるのだと勘違いをしているのでしょうねー。
知識や使える魔術・魔法の種類が増えたといっても結局は完全には使いこなせずに二流までしか使えないですからね、シホは。

『身隠しの布』はこんな形で使用させていただきました。
こんなタイミングでもないと使えないですから。

結果、なのはの魔王化をまた未然に阻止してしまいました。
ヴィータにも悪魔と言われていませんし、うちのなのはは悪魔描写がありませんね。 
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