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ネギまとガンツと俺

作者:をもち
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第7話「試験―②」

 
前書き
ガンツアニメにもスズキ星人がいたと思いますが関係ないです。 

 


 エレベーターが見つかり、あとは帰るだけ。

 ――地上に戻ったら、とりあえずあの三人に教えるか。

 そう考えたときだった。彼の背筋を例のアレが襲ったのだ。

「!?」

 誰にも見られないように注意を払いつつ、それでも急いでポケットからコントローラーを取り出した彼はやはりというかうんざりというか、そんな表情を見せる。

 ――いる。

 星人の位置を示す赤い点がいくつもある。点自体は小さいようだが、数が多い。

 ――ボスミッションか?

 と冷静に考えるのもそこまで。

 まずいことにその内のいくつかはタケルたちの方に向かってきている……しかもなかなかの早さだ。

 慌ててカエデの背を押し込み、しかしその瞬間にはエレベーターのブザーが鳴り響いた。全員乗り切るには重量オーバーだったということだ。

「――何!?」

 タケル自身でも信じられないほどの大きさの声で吐き出された言葉だが、その声がいけなかった。何らかの非常事態が迫っていることに気付いたカエデがすぐさまその身を翻してエレベーターを作動させた。

 結局、二人を残して地上へと移動し始めたエレベーターを背に、タケルとカエデ敵を待ち受けることになった。

「「……」」

 ほんの少しの静寂が二人を包む。

「長瀬さん、隠れていたほうがいい」

 また平坦な声色に戻ったタケルの言葉に、カエデは首を傾げる。

「……なぜでござる?」
「……それは――」
「それは?」
「――こいつらだ」

 タケルが示したとおり、それらは現れた。

 羽ばたく大きな翼。人体を簡単に引き千切ってしまえそうな鋭利な爪や嘴。大きさは人間でいうと成人男性と大して変わらないだろうか。翼を含めればそれ以上。

 わかりやすく表現するならその姿は田中星人の中身と酷似している。違うのは翼と脚部の発達具合だろうか。

 田中星人に関しては歩くため人に間と同じような足を備えていたが、代わりに翼が発達するのが遅かった。その証拠にボスの田中星人しか翼で飛ぶことは出来なかった。

 だが、目の前に姿を現した彼等は違う。より鳥に近い姿をしている。鳥のように発達した翼。鳥のように退化した脚部。

 ――名づけるなら……スズキ星人、でいいか。

「……魔物?」

 カエデが声を漏らしたと同時、2体の星人がその身を翻してタケルに殺到する。

「タケルどの!?」
「問題ない」

 ――肉眼で確認できる程度の速度で連携もない……典型的な雑魚。

 大体の敵の強さを測り、大した敵ではないと考える。だが、タケルに油断はない。雑魚でも時に
強力な攻撃方法を有していることがあるからだ。敵の戦力を過不足なくはかることが生存への近道となる。

 2体の星人とタケルが交差する。一体が腹部めがけて嘴をつき立てようと真っ直ぐに飛来し、もう一体は頭部を目指してその爪を振るう。

 ――Xガンは……やめたほうがいいな。

 チラリとカエデに視線を送り、タケルが取り出したのはガンツソード。

 Xガンのほうが楽に倒せるはずだが、この世界には存在しない形状の武器を見られるのは好ましくないという考えからだ。

「ふっ」

 小さく息を吐き、ソードを伸ばして一刀のもとに2体を斬って落とす。「ギゲ、グ!」と意味不明な断末魔をあげながらそのまま深い底へと落ちていく鳥のような星人たち。

「……」

 簡単に撃退して見せたタケルだったが、表情は険しい。

「……足場が悪いな」

 そう、彼等は一時間近くも螺旋階段を上ってきたわけで、つまり足場は段差のある場所しかないのだ。

 ――もっと一気に来られたら面倒だな。

 今更考えても仕方がないことだが、Zガンを持ってきていないため一撃で一掃、という手段はない。

 少し考える素振りを見せ、だが、それがいけなかったのか。気付けばカエデに一体のスズキ星人が飛び掛っていた。

「……長瀬さん行ったぞ!?」

 だが、タケルの呼びかけは全くの無意味だった。

「あいあい♪」

 彼女もまた独特な掛け声を発し、飛来する星人に見事に飛び乗り、トンと後頭部らしき位置に手刀を叩き込んだ。「ググ」とくぐもった声と共に墜落を始める星人。そして星人の背を足場にタケルの横に降り立った。

 一瞬、タケルは声を失った。

「気を失わせただけでござるが、この高さから落下したなら墜落死は免れないでござるな」

 事も無げな様子のカエデ。

 スーツもなしに星人を倒す。しかも武器すら使わずに。

 ――非常識だ!

 叫びたくなるのを堪えて頷く。

「……ああ」
「あの手刀が効いたということは生物なのは間違いないでござるな」

 ふむ、と敵の正体を考え出したカエデだったが、すぐさまその思考を中断させられることになった。

 突然、脇と膝の辺りに回されたタケルの腕。それに伴い、行き場を失い浮かび上がった足。ふわりと持ち上げられて、いわゆるお姫様抱っこだ。

「む……ちょ、何をするでござるか!?」

 さすがに中学2年生で180cmを越えているだけあって、こういった女性のような扱いは初めてだったのだろう。滅多なことでは動揺しないカエデが顔を赤らめる。

 だが、偶然その表情を見てしまったタケルはさらに悔しげに呟く。

「くっ、どうしてウチのクラスはこう……」

 ――グッとさせる表情を出来る娘が多いんだ。

 さすがに後半は内心で呟き、カエデの方を見ないようにして言う。

「この足場はよくない、飛び降りるぞ」
「……飛び降りる?」

 高さにしておそらく数百メートル単位、下手をすればもっとある。カエデでも気や術を使うか、ところどころの足場を用いなければ降りられない高さだ。

「拙者を抱えてでご……」

 カエデが最後まで言い切る前にその場から飛び降りた。さすがにこれほどの高さだとすぐさま床に衝突はしない。

 体の中で最も重い頭部が真っ先に地面に向き、頭に血が上るのがわかる。それでもカエデのお姫様抱っこを解かずに落下を続ける。

 体が風を切る中、翼を持つそれは当然やってくる。下方左に2体。右方に3体。両手で抱えていたカエデを片腕で抱き寄せ、銃を取り出す。

「長瀬さん!」
「ニン」


 短く答えたカエデがタケルの腕をすり抜け、肩に乗る。




 タケルはカエデの運動力に純粋に舌を巻きつつも、右方のスズキ星人を照準で捉え、上トリガーを3発ひき、標的へのロックを即座に済ませる。




 一方、カエデはタケルが取り出した銃の形状に首を傾げながらも、どこから取り出したのか、身の丈を越えるサイズの手裏剣をとりだし、敵を見据える。
 




 チャージ、チャージ。

 Xガンが唸りをあげる。




 カエデが手裏剣を投じた。それは確実に一体をしとめ、壁に突き刺さる。

「肩を御免」

 タケルにささやく。「? ……ああ」よくわからずに頷いたタケルの肩を蹴り、壁に刺さった手裏剣を回収。再び壁を蹴った。




 カエデに肩を蹴られたせいでバランスが崩れたが、そもそもロックを終えているので今更そんなことは些細な問題だった。

「発射ぁ!」

 タケルが声を放つと共に銃撃が放たれる。ロックされて放たれたXガンの射撃は確実に星人へと着弾を果たしていた。

 3体の星人が獲物に襲いかかろうと嘴を開け、爪を振るい、タケルに到達しようとした所で――




 壁からタケルの元へと戻る最中、残りの一体の魔物が翼の形状を刃物に変えてカエデに襲い掛かった。どうすればそんなことが出来るのか、カエデは一度空中を蹴り、その翼の刃を難なく避けてみせる。そしてすれ違いざまに手裏剣を一閃――




 ――星人の頭部が弾け飛んだ。標的を見失った体は各々好き勝手に壁へと激突。そのまま階段へと落ち、動かなくなった。




 ――星人の首が刎ね飛ばされた。刎ね飛ばされた首は数秒ほどつながっていたが、旋回しようと星人が態勢を変えた途端にずれ落ち、それに気付いた体がまるで今になって重力を思い出したかのようにそのまま墜落を始めた。




 楓がタケルの腕に再び収まる。両腕でお姫様抱っこに抱えなおして、残り数mへと迫ったところでクルリと体を回転。

 見事に足で着地し、それとともにタケルの足元から蒸気のようなものが噴射された。

「悪かった」

 楓を地面に下ろし、素直に頭を下げる。

 先程の彼女の戦闘を横目で見ていたタケルにはわかったのだ。彼女は一人で飛び降りても無事に着地できる人間だということに。

「いや、あれはアレで珍しい体験ができてうれしかったでござるよ」

 いきなりセクハラまがいのことをされたのだから怒っているかと思えばそうでもないらしい。笑ってくれる楓にタケルはホッと微笑んだのだった。

「それで、その武器はなんでござるか?」

 楓が何気なく発した言葉にピシとタケルの空気が凍った。楓の視線と自分のもつXガンを交互に見比べ、そしてがっくりと膝を折った。

「……しまった」

 ――つい使ってしまった。

 彼にしてみれば仕方がなかった、としか言えない。身動きの取れない空中で星人とやりあうのにソードだけで挑むなど愚の骨頂でしかない。下手をすれば死んでもおかしくなかった。

 ――何て言おうか。

 必死に誤魔化す言い訳を模索するが、そんなすぐに良い案が思い浮かぶはずもない。これは正直に言うしかないんじゃ、狂人あつかいされないだろうか、というか頭がボンとなるだろうか。最悪そんなことまで考え込んだタケルの脳内に神様が降臨した。先程、楓が漏らした言葉を思い出し、そこからパッと思いついた言葉を並べ立てる。

「あの魔物を狩るための俺の専用武器、みたいなものだ」
「……」

 沈黙が重い。

 ジッと見つめる彼女の視線を受け、身じろぎ一つせず次の言葉を待ち受ける。

「専用武器ということは、タケル殿はあのような魔物をよく狩っているでござるか?」
「え……ああ、まぁ、そうだな」

 ――あれ、そっちに食いつくか?

「なるほど」

 それきり俯いた楓に、タケルは声をかけようか迷ったが、今はそんな場合ではないことを思い出してコントローラーを見る。

「あとは雑魚5体とボスが1体か」

 ――声をかけないほうがいいのか?

 先程から動かない楓に、タケルが迷いながらも声をかけようとしたところで彼女が動いた。

「タケル殿?」
「……なんだ?」
「拙者もそれを手伝うでござる」
「……ああ、助かる」

 ――心強いな。ガンツスーツを着ていない分、心配がないといえばウソになるが、それでも彼女は生身でスーツ級の戦力を保持している。

 タケルには何となくそう思えた。

 ――というか武器は誤魔化せたのか?

 なんとなく彼女に目を向けると「?」と首を傾げられた。

 ――桜咲さんといい長瀬さんといい、この世界の人たちは結構何でもありなのか? ……だとするとZガンや強化スーツも言い訳によっては、いくらでも誤魔化しようがあるのではないだろうか。

「今度試すか」

 心の中で思ったつもりだが、漏れ出ていたらしく、長瀬さんに「なにをでござるか?」と尋ねられてしまった。

「とにかく、敵を撃破だ」
「あいあい」

 最早タケルにとってもお決まりとなってしまった返事、ではなく別のパターンの相槌を合図に、二人は一斉に駆け出したのだった。




 分身の術で4人となった彼女のクナイで最後の一際大きなボスの星人は息絶えた。

「ふぅ、終わったでござる」
「……長瀬さんは本当に凄いな」

 全くの能面のままの言葉のため、聞き方によっては嫌味とも取れるが、タケルがそんな人物ではないことを既に楓は理解していた。

「いや、タケル殿にはまだ及ばないでござるよ」

 彼女にとっては謙遜でもなく事実を言っただけだったのだが、タケルは一瞬だけ停止して「そう見えてしまう、か」と自嘲気味に呟いた。

 その反応の意味がわからない楓は首を傾げて「何か変なことでも言ったでござるか?」

「……いや、なんでもない」

 明らかに嘘っぽかったが、あまり深く尋ねるのも少しアレな気がした楓は、質問を止めて話題を変えた。

「にしても、今から帰るのは少し疲れるでござるな」

 単なる同意を求めた言葉だったのだが、タケルは何を勘違いしたのか「わかった」とだけ答え、楓の背に回りこむ。そして――

「……」

 暫しの間が空いた。

「……タケル殿?」

 またもや楓の顔がうっすらと赤くなっている。

「何だ?」
「――これはどういうことでござるか?」

 なぜか再びお姫様抱っこをされていた。

 半分は照れていることを認めたくない気持ちで。残り半分は文句を言いたいような気持ちでタケルの顔を見上げた楓だったが「違うのか?」と彼が俯いたせいで、異常に顔同士が接近し、元々赤かった顔が茹蛸のような顔色になってしまった。

 ただ、この顔の近さはタケルにとっても予想外だったようで「近っ!?」と彼もまた顔を赤くさせていた。

 その様子に毒気を抜かれたのか。

「……じゃあ、折角なんでお姫様気分を味わっても?」

 諦めたように、そしてどこか悪戯っ子のような顔をしている彼女の意図をつかめずに「ああ」と頷くタケル。

 そして――

「って!?」

 ――両腕がタケルの首に回され、顔が接近する。豊満な胸が彼の胸板に押し付けられて、楓の頭が肩に乗り、女性特有の良い香りがタケルの鼻腔をくすぐった。

「楽でござる~」

 と楓。

「……う、ぬ、ぐ」

 信号機のように顔色をかけるタケルの気持ちを知らずか、それとも知っていてわざと無視しているのか。

「さぁ、早く帰るでござるぅ」

 少々甘えた声で、彼の耳元に囁いた。

 その声色は彼にとって、どストライクだったらしい。

「……う……ぐう」

 と、苦しそうに顔を伏せる。先程まで悪戯っ子のような顔をしていた楓だったが、その様子に一転して心配そうな顔になった。

「た、タケル殿?」

 純粋に心配しているだけなのだろうが、グッと体を寄せて、結果として胸がさらに押し付けられる。そして、それがタケルをさらに追い込んだ。

「……あ」
「あ?」
「アウトォォォォォォ!!」

 物凄い勢いで走り出す。

「ちょ、タケル殿!?」

 だが、楓の声が彼に届くことはなかった。なぜなら

「落ち着け!餅をつ……じゃない!オチツケェェェェェェ!」

 と叫びながら走っていたから。

「……?」

 楓は彼の胸の中、心のどこかで置いてけぼりを食らったのだった。



 
 楓とタケルが無事に帰ったのは、ネギたちが帰還をはたしてから約1時間後だったという。

 走って一時間ほどの階段を、ミッションも含めて1時間で帰ったのだから、そのときのタケルの興奮ぶりが窺える。

 その後、エレベーターから出てきたタケルが楓をお姫様抱っこしていたという事実はクラス中で絶好の噂の的になったのだが、それはともかく。

 結局全員無事に帰ってきたバカレンジャーだったが、その後彼女達への罰の意味も兼ねて、ネギによる特別授業がみっちりと行われたのだった。

 ちなみに、期末試験日に行われたタケルの課題も、大目に見てもらって無事合格。ネギと共に無事、麻帆良学園の正式な教師となった。

 
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