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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第73話

とりあえず、三年の男子のトライアスロンの競技会場に向かった、麻生と制理。
麻生や制理の他にも同じ学校の生徒が応援に来ていた。
その集団より二、三歩離れた位置でトライアスロンを見つめる。

「麻生、応援しないの?」

隣にいる制理は何もせずにただ立っている麻生に言う。

「俺が応援した所で結果は変わらないだろ。
 俺が思うにだが、あの三年生達がどれだけ頑張っているかを見て、それを覚える事も応援だと思うがどうだ?」

麻生の言葉に制理は何も答えない。
沈黙を肯定と受け取った麻生はそのままトライアスロンを頑張る三年男子を見届けた。





三年のトライアスロンが終わると、麻生は制理に言った。

「お前、これから何か用事とかある?」

「あるわよ、運営委員の仕事がね。
 それがどうかしたの?」

「俺は次の競技まで暇なんでな。
 そっちが人手不足なら、俺も運営委員の仕事を手伝おうか?」

次の競技までまだ時間がある麻生は制理に運営委員の仕事を手伝えるかどうか聞いた。
普段はやる気が全く感じられない麻生だ。
だが、その本人の口から運営委員の仕事を手伝いたいと言い出した。
その言葉を聞いた制理は驚きを隠せないでいた。

「貴様は本当に麻生恭介か?」

「人が頼んでいるのに失礼な奴だな。」

「普段の貴様を知っている人から聞いたら同じ反応をするでしょうね。
 それで、どうゆう風の吹き回しかは分からないけど、手伝ってもらう事は出来ないわ。」

「一応、理由を聞かせてくれ。」

「運営委員には競技の一つずつに効率よく運営できるかを話し合っているの。
 何も知らない貴様が来たら足手まといになる可能性が高いからよ。
 後、運営委員でしか出来ない事があるから、結局は貴様がついて来てもやる事がないのよ。」

「そうか、それなら仕方がないな。
 次のお前が向かう競技場はどこなんだ?」

「何でそんな事を聞くのよ。」

「気になっただけだ。
 暇ならそれを見に行こうと思っただけ。」

麻生の言葉を聞いて、軽く麻生が何を考えているのか考える。
だが、無駄だと思ったのか少しだけため息を吐いて教える。

「次の競技名は玉入れ。
 場所は・・・・・口で言うより地図を見て言った方が早いわね。」

制理はパーカーの中から大覇星祭のパンフレットを取り出す。
中を開けて、学園都市の地図に書いてある中学校を指を指す。

「此処が玉入れの競技場。
 この競技には常盤台の生徒が参加するから見に来れば。
 貴様が来ている事が分かれば、彼女達も喜ぶでしょ。」

最後の方には何故か不機嫌になっている制理。
なぜ不機嫌になっているのか、その理由を考えていると制理は麻生に言った。

「それじゃあ、そろそろあたしは次の競技の準備とかあるから行くわよ。
 来るか来ないかは貴様の勝手だけど、私達の邪魔はしないでよね。」

それだけ言うと制理は次の競技場に向かって歩いて行った。
結局、制理が起こっている理由が分からなかった麻生。
頭をかいて、ため息を吐くと独り言を呟く。

「まぁこのままこうしていても暇だし、玉入れでも見に行くとするか。」

制理に教えて貰った競技場を思い出しながら、麻生も歩いてその競技場に向かう。






その頃、上条はとある競技場を目指して携帯を耳に当てながら走っていた。
通話の相手は土御門だ。
上条と土御門とステイルは学園都市に侵入してきた魔術師の一人である、オリアナ=トムソンを見つけた。
捕まえて、もう一人の魔術師であるリドヴィア=ロレンツェッティがどこにいるのか、そして受け渡しの魔術霊装である「刺突杭剣(スタブソード)」をこちらに渡してもらう為に、三人はオリアナを追っていた。
幸いにも、オリアナの腕の中には「刺突杭剣(スタブソード)」を隠せるだけの大きさにぴったりの看板を持っていた。
三人はオリアナを追っていて、バスターミナルについた。
オリアナを追って中に入るとオリアナが張った罠に出くわすも、上条の右手でそれを無力化した。
しかし、それに構っている少しの間にオリアナに逃げられてしまった。
だが、オリアナの魔力の残滓が残った単語帳のような板ガムの大きさくらいの紙が残っており、それを使ってオリアナがどこにいるか逆探知する事になった。
土御門自身は魔術を扱う事は出来るが、使えば暴走に巻き込まれてしまう。
人間の体力をゲームのように数値化できないので、何回耐えられるか分からない。
一回で死ぬ時もあれば、数回は耐えられるかもしれないと、かなり博打が入る。
もし一回使って行動不能になれば、その先に何が待っているか言うまでもない。
上条は右手の事もあるので使用不可能。
ステイルは魔術を使えても逆探知する魔術を知らない。
そこで、土御門が逆探知する魔術、「理派四陣」を発動する為の陣を書く。
次にその陣をステイルが魔力を注ぎ、発動させてオリアナを追う事になった。
「理派四陣」をステイルの魔力で発動するまでは良かった。
しかし、発動して少しした瞬間だった。
ステイルが突然、叫びだし苦しみ始めたのだ。
土御門は上条に右手で触るように指示して、上条の右手が触れるとステイルは荒い息を吐いていたが何とか無事だった。
ステイルはバスターミナルからオリアナが出ないように出入り口付近などにルーンのカードで罠を張っていた。
しかし、それが原因でステイルの魔力を読み取られ、そこから生命力を読み取られてしまった。
それを元に迎撃魔術を作ったという訳だ。
魔力には宗派や術式などで質や量を変えてしまうので、それ単体で迎撃魔術を作る事は難しい。
だが、生命力はその人間が生まれた時に決まっているので迎撃魔術を作る事は簡単なのだ。
このままではオリアナを捕まえる事が出来ない。
だから、土御門はステイルに敢えて魔術を使用させて、こちらからその迎撃魔術が発動している場所を逆探知する事になった。
上条は驚いたが、ステイルは了承する。
なぜ、彼をそこまで衝き動かすのか、答えは簡単だ。
もし、この受け渡しが成功すれば学園都市や魔術世界に何らかの影響が出てくる。
それが原因で上条の側にいるインデックスが呼び戻しを受けるかもしれない。
インデックスは上条の側にいる事を幸せと感じている。
ステイルはインデックスの幸せを守るためなら何だってする。
それがステイル=マグヌスという男だ。
土御門も自分の身を犠牲にして「占術円陣」を使い迎撃魔術の居場所をつき止めた。
ステイルの側に「理派四陣」を設置し、魔術を使った反動で血で汚れた体操服を着替える為に土御門は別行動をとっている。
いくら大覇星祭中とはいえ、体操服のほとんどが血で汚れていたらさすがに騒ぎになるからだ。
とりあえず、上条は一足先に競技会場に向かっていた。

「けどよ、時間がないとはいえ俺達高校生が中学生の競技に紛れ込むなんてさすがに無理があるだろ。」

「まぁ、そこは若さでカバーだぜい、カミやん。」

携帯を片手に土御門と通話する。
土御門の言葉を聞いて何だか駄目かも、という気持ちになる上条。

「だが、時間はかけたくない。
 他の一般生徒に被害が出ないためにも急がないとやばいぜい。」

次に聞いた土御門の言葉を上条は聞き逃す事が出来なかった。

「他の一般生徒に被害って、どういう事だ!?」

「オリアナの魔術である「速記原典(ショートハンド)」については説明したな。」

オリアナは自分の手で魔道書を作る事が出来る魔術師だ。
ステイルに迎撃魔術をすぐに発動できたのもこの「速記原典(ショートハンド)」の力が大きいだろう。
魔道書を書くのには時間がかかる。
それに原典を用意するのも簡単にはできない。
だが、オリアナ自身が簡単な走り書きとはいえ魔道書を書ける魔術師なら合点がいく。

「オリアナが仕掛けた「速記原典(ショートハンド)」は簡単に効果を説明すると魔術を使用した魔術師に自動迎撃するもんだにゃー。
 この世には言霊という簡単な術式も存在する。
 言霊の準備は簡単でな、声を出すだけで発動できる。
 だが、俺達がステイルの側で話をしていてもなんら影響がなかった。
 まぁ、言霊にも並べ方には法則があるから、ただ単に声を出すだけじゃあ反応はしなかったかもしれない。
 だが、この世には言霊よりも簡単な魔術儀式がある。」

「なんだよ、その魔術儀式は?」

上条は競技会場の裏門の近くまで来ると、足を止めて裏門の様子を窺う。
正門には入場待ちの行列が出来ていたので正面突破は不可能と考えたからだ。

「「触れる」ことだよ。
 特に「手で触れる」事に加わる意味には強いにゃー。
 魔術を扱える魔術師ならオリアナの「速記原典(ショートハンド)」に触れても弾き返せる。
 だが、何の魔術の知識もなければ、耐性のない一般生徒がその「速記原典(ショートハンド)」に触れればどうなると思う?
 はっきり言って、症状はステイルよりもずっと強くなる。」

「で、でも、ステイルを攻撃したヤツってそもそも魔術を妨害する術式なんだろ?
 魔術師でもない一般人とか能力者に反応するもんなのか?」

何とか呼吸を落ち着かせながら上条は土御門に聞く。

「厳密に言うなら、反応するのは「魔術の準備をした」人間の「生命力に対して」だから、一般人でも十分に危ないぜい。
 魔力を練られるかどうかは関係ないし、魔術の知識技術のあるなしも、おそらく関係ないにゃー。」

最悪だ、と上条は思う。
あの校庭の、どこかに地雷が埋めてあるようなものだ。
だれがその地雷を踏むかどうかは決まった訳ではない。
だが、あそこで、たくさんの人間が何も知らずに競技を始めてしまう。
それも、校庭全部を使う玉入れだ。
当たりを引く確率は格段に高い。

「カミやん、犠牲が出る前に迎撃術式を片付けるぞ。
 カメラの前で魔術現象を起こすのはまずい・・・・何より、一般人に傷をつけたくない。」

そう告げて、通話を切る。
上条は携帯電話をポケットに突っ込むと、裏門の様子を窺う。
学校の敷地を区切る金網のフェンスがあってそれを乗り越えて侵入する事も出来るが、それをすると無人偵察ヘリに見つかってしまう。
当然ながら、裏門にも警備員(アンチスキル)もいる。
このままの格好で裏門に行っても追い返されるだけだ。
競技開始まで五分前後。
他の出口を探している余裕はない。
どうしたものかと、上条が考えていると、裏門から一人、スポーツドリンクがたくさん入ったクーラーボックスを抱えて裏門から、敷地内へ入って行った。
その人物とは運営委員の吹寄制理だった。

「うそ!?」

上条は慌てて近くの自動販売機の裏に隠れる。
制理はクーラーボックスの抱えたまま、裏門の少し奥でピタリと止まると、こちらを振り返って、しかし首をひねりながら校庭へ消えて行った。

「や、やばそうだ。
 土御門のヤツ、競技中に潜るとかっつってたけど、アイツが運営委員としての審判の仕事とか始めたら、一発でバレそうだぞ。
 くそ、やっぱ土台んトコから計画に無理があるんじゃねーのか?」

「なーにが無理そうなんだにゃー?」

突然後ろから聞こえた男のささやきに、上条は驚く。
後ろを振り返ると、真新しい体操服に着替えた土御門が立っていた。

「お前もやっぱり、裏門から侵入する事にしたのか?」

「まーな、正門を突破するよか簡単そうだし。」

土御門は気軽に言うが、裏門には完全装備の警備員(アンチスキル)が三人立っていた。
空には無人偵察ヘリが飛んでいる。
こっそり忍び込むなんてできるのだろうか?、と上条が首をひねった時だった。

「お前達、こんな所で何をしている?」

突然の呼ばれ、上条と土御門の胸は一瞬だけ大きく脈を打つ。
しかし、それは聞き慣れた声だった。
二人は後ろを振り向くと、そこには麻生恭介が立っていた。 
 

 
後書き
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