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遊戯王GX ~Unknown・Our Heresy~

作者:狂愛花
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第1話 異世界から来た決闘者(デュエリスト)

 
前書き
初めまして、狂愛花と申します。

pixivで書いていた小説をこちらでも投稿させていただきました。

それでは、どうぞご覧ください。 

 
「受験番号1番の生徒のデュエルを開始します。 受験番号1番の生徒は1番のデュエルフィールドに上がって来てください」

そう言って係員の男性の声がアナウンスから繰り返し会場に流れた。

それを聞いた1人の少年は、読んでいた本を閉じて隣に座って音楽を聞いている親友の肩を揺すった。

「おい、呼ばれてるぞ」

「ん? 嗚呼。よいしょ!」

そう言って少年の親友は耳に射し込んでいイヤホンを取り外し、座っていた椅子から立ち上がるとベルトに着けているデッキケースから実技試験に使用するデッキを取り出し、デッキの最終確認を行った。

「良し! じゃ行ってくる」

最終確認を終え、少年はデッキをケースに仕舞いデュエルフィールドに向かって行った。

「頑張ってね~」

フィールドに向かう少年の背を見送りながら、もう1人の少年は気だるそうに手を振った。

そんな時、不図、少年の脳裏をある事が過った。





それは何の前触れもなく起こった。

いつものように2人はどちらかの自宅でゲームをしながら面白おかしく駄弁っていた。

2人が遊ぶ時、必ずやるゲーム、それは“遊戯王”。

遊戯王とは、互いのライフポイントを削り合うトレーディング・カードゲームの事である。

その日も2人は遊戯王をプレイしていた。

すると突然、部屋の外から強烈な光が差し込み、2人は余りの輝きに目を瞑り、両腕で自身の顔を覆った。

暫くして目を開くと、2人は驚愕した。

2人の視界には、先程までいた部屋の光景ではなく“無”という言葉が相応しい程に何もない真っ白な空間が広がっていた。

何が起こったのか分からず2人は激しく混乱した。

そんな時、2人の前に1人の女が現れた。

2人は突如現れた女に若干の警戒心を抱き、女へと視線を向けた。

身長は2人より頭1つ分大きく、雪のように白い肌をしていた。

その女を見た時の2人の第一印象は、“異様”だった。

その要因は至って単純明快。

それはその女の容姿にあった。

女は、この純白の空間同様の白いローブを身に纏い、染めているでもなく、脱色したでもない鮮やかで美しい白い髪、そして2人の姿を射抜くかのような冷たく鋭利な紺碧の瞳をしていた。

自分たちが居た世界で、目の前の女の様な人間を2人は見た事がなかった。

静かな眼差しに人形の様な無表情さに2人は警戒を続けたまま女の許へと歩み寄ろうとした。

その時、静寂の水面が大きく波紋したように、無表情だった女の表情がぐにゃっと歪んだ。

突然の事に歩み寄って行った2人は急遽後ろへと飛び下がった。

嫌な汗が2人の頬を伝う。

飛び下がった2人の姿を見た女の口元が、ニヤッと三日月の様に割れた。

そして、凛とした声が空間内に響き渡った。

「よう、塵屑共」

女は嘲笑いながら、2人を見下すようにそう言った。

初対面でありながら何て言われ様だろう。

普通なら食ってかかるところだが、今の2人にそんな気は一切起らなかった。

理由は当人たちにも不明だが、目の前で嘲笑っているこの女からは、言葉では言い表せない程の威圧感が感じられた。

そして2人の本能が叫んだのだ、大人しくしていろと。

無言でいる2人の警戒しきった姿を余所に女は言葉を続けた。

「お前らには今からある世界に転生してもらう」

「「ハァ?」」

やっと声を出せた2人の第一声がこれだった。

転生? 死者の魂が別の存在へと生まれ変わる事か?

それとも、アニメや漫画等で良く描かれるあれの事か?

2人の脳裏に疑問や質問が噴水のように溢れだしてきた。

それを言葉にしようとした時、それを女に遮られてしまった。

「異論は認めない。転生する世界は、お前たちが好きな“遊戯王GX”の世界だ」

女の言葉に2人は互いに顔を見合わせた。

日常で2人がやっていたカードゲーム。遊戯王のアニメ世界。

2人が一度は夢見た事だった。

当初、2人は目の前で不敵な笑みを浮かべる女を警戒していたが、案外彼女はいい人なのではないだろうか?

人と言っていいのかどうかは分からないが、2人はそう思った。

遊戯王GXの世界。

その世界への転生は、2人がネットで閲覧していた漫画やアニメの二次創作の中にあった小説だった。

神、悪魔、閻魔等の人知を超越した存在の力によってその世界へと転生して、その世界で自分の好きなように暴れるといった在り来たりなストーリーを見ては、2人は常に思っていた。

自分ならこう行動する。

自分ならこうする。

そういった叶わない夢物語に花を咲かせ、いつも2人は笑っていた。

今回、それが叶うと2人の心は大きく躍動していた。

しかし、そんな2人の淡い期待を、女は無情に握りつぶした。

「残念だが、そんな都合のいい話があるわけがないだろう?」

その言葉に、先程まで躍動していた2人の心が電池が切れたようにピタリと止まった。

女はニヤニヤと嘲笑いを続けながら2人の周りをぐるぐると廻り出した。

「あれあれ? 何を期待してのかな? まさか、自分たちが俺のミスの尻拭いの為に転生させられて、そのお詫びにどんな願いも3つまで叶えてくれて、転生世界で自由気ままな第2の人生を送れるとでも思っていたのかな? だとしたらこれは傑作だ! 笑いが止まらねぇ!」

そう言って女は女とは思えないような男口調で腹を抱えて笑い転げた。

笑い転げる女に苛立ちが募りながらも、2人はそれを何とか抑えその光景を黙って見ていた。

「ハァ~、腹痛てぇ~。俺がそんなミス犯す訳ないだろうがバーカ! まぁ流石に何も言わないのは可哀想だからな、特別に1つだけ教えてやる。有り難く思え」

一通り笑い終えた女はそう言って2人にビシッと人差し指を向けてこう言った。

「“お前たちには俺たちの娯楽の道具になって貰う”」

その言葉に、遂に少年の1人がキレた。

少年は勢い良く駆けだし、右手を力いっぱい握りしめ、自分たちを指差している女に向かって行った。

向かい来る少年を見ながら、女は面倒臭そうに溜息を吐いた。

そして、女は向かってきた少年の胸を掌でポンと押した。

すると少年の身体は軽々と宙を舞い、元いた場所へと吹き飛んでしまった。

少年は突き飛ばされた衝撃に胸を押さえながら咳きこんだ。

その姿に呆気にとられていたもう1人の少年が駆け寄る。

「血の気の多い奴だな。でも、嫌いじゃないぜ。そういうの」

女は呆れたように咳きこむ少年を見下ろし、少年の行動に笑みを浮かべ面白がっていた。

そんな女を2人はキッと鋭い眼差しで睨みつけた。

「お前たちはこの世界に転生して、“ある奴ら”と戦ってもらう」

女は2人の視線を物ともせずに淡々と言葉を述べた。

そして女は自分の掌の上にサッカーボールほどの大きさの地球を2人に見せた。

睨む目付きのまま2人は女の掌に現れた地球に視線を移した。

しかし、2人の頭には先程女が言った“ある奴ら”という単語が気になってそれどころではなかった。

「お前たちのデッキとカードは俺が後で送ってやる。だから、安心して“逝って来い”」

パチン!

そう言って女は口を三日月に歪め指を鳴らした。

すると、突然2人の足元に大きく口を開けたような巨大な穴が現れた。

突然足場がなくなり、2人は真っ逆さまに落下して行った。

突然の事に驚愕して叫び声を上げる2人を面白がり女はまたも笑っていた。

そして、女は穴を覗き込み落下していく2人に向かって叫んだ。

「最後にいい事を教えてやる! 俺の名は観世音(かんぜおん)だ! よ~く覚えとけよ! ハハハ!!」

奈落の底に落下していく2人は、穴に響き渡ってくる女、基観世音の声に押さえられていた苛立ちが遂に爆発して、2人同時に観世音に向かって叫んだ。

怒り・恨み・焦燥の念を込めて声の限り叫んだ。

「「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

思いの丈を叫びながら落ちて行く2人の身体を深淵の闇を照らす閃光が包み込んだ。








記憶の海にダイブしていた少年は意識を現実へと戻し大きく溜息を吐いた。

「ハァ、俺たちが戦わなくちゃいけない奴って、一体誰なんだよ・・・・」

少年は項垂れ、誰に言うでもなくそう呟いた。

そんな時、再び会場にアナウンスが流れ始めた。

「受験番号2番の生徒の試験を始めます。受験番号2番の生徒は2番のデュエルフィールドに上がって来てください」

アナウンスで述べられた番号を聞き、少年は座っていた椅子から立ち上がった。

どうやら少年が受験番号2番の様だ。

「まぁ、いずれは分かる事だ。今はこの世界を満喫すればいいか」

立ち上がった少年は自分にそう言い聞かせ、ゆっくりとした足取りで2番のデュエルフィールドに向かって行った。

少年がフィールドに到着すると、フィールドには既に少年の試験の相手をする試験官が腕を組んで佇んでいた。

黒髪をリーゼントのように生やし、サングラスに顎髭を生やした、いかにも怪しそうな容姿をしている男性だと少年は思った。

「君が受験番号2番だね? 君の実力、見せてもらおうか!」

そう言って試験官の男性は左腕に着けているデュエルディスクを構えた。

見た目とは裏腹にとても明るく熱血気質な性格に少年はギャップを感じた。

試験官がデュエルディスうを構えたのに続き、少年も左腕に着けていたデュエルディスクに試験で使う予定だったデッキをセットし、構えた。

準備が整ったところで、少年は試験官に自己紹介をした。

「受験番号2番。相原 雪鷹(アイハラ ユキタカ)です。よろしくお願いします」

物静かな口調でそう言い、少年、雪鷹は頭を下げて挨拶をした。

その姿に試験官笑みを浮かべ、雪鷹の礼儀の良さを褒めた。

「うん! 礼儀が正しい! だが、デュエルの手を抜く気はないぞ!」

不敵な笑みを浮かべ試験官はそう言った。

それを見て雪鷹も上等と言いたげに笑みを浮かべた。

「行きます」

雪鷹がそう言うのと同時に2人はデュエルディスクを展開した。

ディスクのターンランプが紅く点灯し、起動音を鳴らしディスクは展開する。

両者のディスクが展開すると、2人は同時に叫ぶようにこう言った。

「「デュエル!!」」

side out



side 直哉

俺の名前は剣崎 直哉(ケンザキ ナオヤ)

糞女によって強制的にこの世界に転生させられた元普通の高校3年男子だ。

元と言うのは、俺が現在高校1年になろうとしているからだ。

原因はあの糞女の説明不足にあった。

あの糞女は転生と言っていたが、実質は憑依だった。

この世界には俺と雪鷹と全く同姓同名で同じ容姿の人物が存在して、俺たちはその人物に憑依する形でこの世界に転生する事になった。

そんな事を考えながらフィールドに向かっていると、アナウンスから雪鷹の受験番号が聞こえてきた。

どうやらアイツの試験も始まる様だ。

アイツ、どんなデッキ使うんだろうと、俺はふと思った。

そんな事を考えていると、俺は1番のデュエルフィールドに到着した。

フィールドには既に俺の試験を担当する試験官らしき人物が立っていた。

「っ!?」

試験官の姿を見て、俺は目を見開いた。

俺の視線の先には、金髪のお河童頭に全く日に焼けていない白い肌、その中に一際目立つ紫色の唇。

そして他の試験官とは違い踝まである青いロングコートを着て、肩から変わった形をしたデュエルディスクを掛けている。

俺はその人物を知っていた。

「私~ガ、貴方の実技~ヲ担当する、実技最高責任者のクロノス・デ・メディチなの~ネ!」

俺の内心の驚愕も知らず、金髪のお河童頭の試験官、クロノスが俺に自己紹介をしてきた。

この人物は、この世界でも重要な立ち位置にいるキャラクターだ。

クロノスは、俺たちが入学しようとしているデュエリスト育成施設、デュエルアカデミアの教師をしていて当初は嫌な性格をしているが、後にとても優しい人物になるキャラクターだ。

クロノス教諭を前にして、その姿をこの目に収め、その声をこの耳で聞き、俺は改めて痛感させられた。

ここは俺が居た世界じゃないんだな。

痛感させられ俺は悲しい想いに包まれた。

しかし、それと同じくらいに、楽しくなってきてしまった。

今まで絵空事と思えてきたフィクションの人物とデュエルできると思うと、俺はとても楽しくなってきてしまう。

しかし、何故クロノスが俺の相手をするのだろうかと、俺は疑問に思った。

「受験番号1番、剣崎直哉です。宜しくお願いします」

疑問に思いながらも俺は兎に角クロノスに挨拶と思い、自己紹介をして頭を下げた。

すると、クロノスは満足げに首を縦に振りだした。

「う~ン! う~ン! 礼儀が良くて宜しいの~ネ!! しか~シ! 実技の手は抜いたりしないの~ネ!!」

どうやら俺の挨拶が丁寧であった事に感心してくれたようだ。

感心しながらも、クロノスは肩から提げていたデュエルディスク・エレキギター型を起動させる。

俺もそれに続き左腕に装着していたデュエルディスクにデッキをセットし、ディスクを起動させた。

俺たち2人のディスクが展開し終えると、俺とクロノスは同時に叫んだ。

「「デュエル!!」」





クロノス LP4000

手札 5枚

場 0枚





直哉 LP4000

手札 5枚

場 0枚





「私の先行! ドローニョ!」

先攻はクロノスに取られてしまった。

クロノスがデッキに手を翳すと、自動的にデッキからカードが飛び出し、吸い込まれるようにクロノスの手に掴まれた。

少し欲しいと思ったのはここだけの話だ。

「私は、《トロイホース》を攻撃表示で召喚~ン!!」

クロノスのフィールドに光が噴水の如く溢れだし、その光の中から木製の馬が蹄を鳴らしながら高らかに吠え、その姿を現した。

『ヒヒィィン!!』




トロイホース
効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻1600/守1200
地属性モンスターを生け贄召喚する場合、
このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。




「さらに魔法(マジック)カード、二重召喚(デュアルサモン)を発動! このカードの効果により、私はこのターンもう一度通常召喚をする事が出来るノ~ネ! さらに、トロイホースは地属性の最上級モンスターの生け贄召喚の際に使用される場合、一体で二体分の生け贄にする事が出来るノ~ネ!! トロイホースを生け贄に、出でよ!! 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)!!」

トロイホースは光の粒子となり消えて行った。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

すると、フィールドに轟音が鳴り響いた。

地を揺るがし、轟音を轟かせ、古に眠りし兵器が目を覚ました。

鋼鉄の腕を振り上げ、臓器の歯車が金属音を鳴らし廻る。

ギギギ、ギギギギギギ!!

そして、会場の光の照らされ、(あかがね)の鎧に包まれたその姿がフィールドに現れた。

主君に歯向かう怨敵である俺を、その鬼灯の様な紅い瞳で静かに見つめて、古代より蘇りし機械巨人が俺の前に立ち塞がった。




古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻3000/守3000
このカードは特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。




「「「「「おぉぉぉ!!」」」」」

会場にいた全ての受験生とアカデミア在校生が歓喜の声を上げた。

各言う俺も目の前に立ち塞がる古代の機械巨人を見上げ、内心の興奮を抑えきれていない。

確か原作で在校生の1人がクロノスのデッキを説明した事があった。

実技試験では試験官の教師全員が試験用のデッキを使用する事になっているらしい。

しかし、今俺の相手をしているクロノスが使用しているデッキは試験用のデッキではなく、クロノスのオリジナルデッキ。通称“暗黒の中世デッキ”。

原作では、時間ギリギリに到着した主人公を成敗する為に使ったが、俺はどんな理由で使われたんだ?

俺は疑問に思った事をクロノスに訊ねる事にした。

「あの、実技試験は試験官全員が試験用のデッキを使うって聞いたんですが?」

訊ねられたクロノスは一瞬目を見開いた。

すると、直ぐにクスリと笑みを浮かべた。

「確かに、アナタの言う通りなノ~ネ。実技試験官は全員試験用のデッキを使用します~ノ。しか~シ、アナタは筆記試験で他の受験生を圧倒する点数を叩きだしたノ~ネ。だか~ラ、アナタの実技~ハ、実技最高責任者であるワタ~シが! ワタ~シのオリジナ~ルデッキでお相手しますノ~ネ!」

そう言ってクロノスは威風堂々とした態度で俺の事をビシッと指差した。

その姿に俺は一瞬呆気にとられてしまった。

「えっと、雪鷹・・・いや、受験番号2番の生徒はどうだったんですか?」

我に返った俺は、依然指を指したまま動かないクロノスにさりげなく雪鷹の点数を訊ねた。

「彼も素晴らしい点数だったノ~ネ。しか~シ、彼はアナタ~ニ比べて文章を簡略して書いていた為、アナタ~ガ受験番号1番なったノ~ネ。まぁ彼の点数~モ、アナタ同様に素晴らしいものだったか~ラ、彼の実技試験の相手は実技副責任者である教員が受け持つ事になったノ~ネ」

「そう・・・ですか(確かにアイツ面倒臭がり屋だからな。恐らく長文書くのが面倒臭かったから必要な部分だけ書いて後は全部切ったんだろうな。それにしても、原作には副責任者なんていなかったよな・・・・。これも、俺たちイレギュラーが介入した所為だろうか)」

俺はクロノスの言葉聞き、内に抱いていた疑問は解消されたが、また新たに不安要素が生まれてしまった。

「続けるノ~ネ。私は、カードを1枚セットしてターンエンドなノ~ネ」





クロノス LP4000

手札 2枚

フィールド

モンスター 古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

魔法・罠(マジック・トラップ) セット1





1ターンで攻撃力3000のモンスターをいとも簡単に召喚した所、流石はデュエルアカデミアの教頭と言った所だろうか。

そう俺が心の中で呟いていると、観客席から「アイツ終わったな」や「可哀相に」等、俺が既に敗北しているかのような言葉を言っているのが聞こえてきた。

その言葉に俺は溜息を吐いた。

この世界じゃ、確かに攻撃力3000のモンスターは最強と言われている。

俺たちの世界でも攻撃力3000は最強とまではいかないが、強い分類に入るのは事実だ。

しかし、今俺の頭に流れているのは、元いた世界での雪鷹とのデュエルだった。

アイツはたった1ターンで攻撃力10000越えのモンスターをいとも簡単に召喚してきて、何度潰しても何度でも出てくる。

その所為で、今眼前に佇む機械巨人の攻撃力が可愛く見えてしまっている。

「俺のターン、ドロー!」

まぁ、今はそんな事置いておいて、俺は勢いよくカードをドローした。

そして引いたカードを確認し、そのカードを手札に加える。

引いたカードも含めて手札を見て、どう動くか俺は考えた。

「(ここは無難に行くか)俺は、《E・HERO(エレメンタルヒーロー)エアーマン》を攻撃表示で召喚!」

俺のフィールドに光が溢れ、その輝きの中から扇風機のプロペラが付いた鋼の翼を背負った仮面の戦士、エアーマンが勇ましく現れた。

『フン!』





E・HEROエアーマン
効果モンスター(制限カード)
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動できる。
●このカード以外の自分フィールド上の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上の魔法・罠カードを選んで破壊できる。
●デッキから「HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える。





「エアーマンの効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキからHEROと名のついたモンスター1体を手札に加える事が出来る! 俺は、E・HEROプリズマーを手札に加える。カードを2枚セットして、ターンエンド」





直哉 LP4000

手札 4枚

フィールド

モンスター《E・HEROエアーマン》

魔法・罠 セット2枚





「私のターン! ドローニョ。 古代の機械巨人でエアーマンを攻撃! アルティメット・パウンド!!」

ギギギギギギ!!

古代の機械巨人は機械的なぎこちない動きで勢いよく右腕の拳を撃ち放った。

すると、放たれた拳の幻影が弾丸のようにエアーマンに向かって行った。

『グワァァァ!!』

幻影の拳に殴られたエアーマンは悲鳴を上げ爆発して行った。

「グッ!!」

爆風が俺を襲い、体中を大きな振動が走り抜けた。


直哉 LP4000→2800


「カードをセットしてターンエンドなノ~ネ」




クロノス LP4000

手札 2枚

フィールド

モンスター 《古代の機械巨人》

魔法・罠 セット2





「俺のターン、ドロー! 俺は、《E・HEROプリズマー》を攻撃表示で召喚!」

俺のフィールドに新たなHERO、クリスタルの様な輝きを放つ体にサファイアの様な翼を持つ戦士、プリズマーが姿を現した。

『ハァ!』




E・HEROプリズマー
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1700/守1100
1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、
そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を
デッキから墓地へ送って発動できる。
エンドフェイズ時まで、このカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。





「プリズマーの効果発動! 1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターの融合素材モンスター1体を墓地へ送って発動する! エンドフェイズ時までこのカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う」

「エクストラデッキ? それは何の事なノ~ネ?」

自分の知らない単語にクロノスは疑問符を浮かべ首を傾げて俺に訊ねてきた。

しまった、つい癖で融合デッキの事をエクストラデッキって言ってしまった。

この世界ではまだエクストラデッキは融合デッキ、リリースとアドバンス召喚は生贄と生贄召喚と言っている事をついつい忘れてしまう。

「すみません、自分なりの融合デッキの言い方なんです。昔ふざけて言っていたのが定着してしまって、そのまま使ってるんです」

慌てて考えた言い訳だったが、クロノスは「成程なノ~ネ」と納得してくれた。

俺はホッと胸を撫で下ろした。

おっと、いけないプレイに集中しなくてわ。

「俺は、エクストラデッキの《E・HEROワイルドジャギーマン》を見せてデッキから《E・HEROワイルドマン》を墓地へ送って、プリズマーをエンドフェイズ時までワイルドマンとして扱う。そしてリバースカードオープン! 《リビングデッドの呼び声》! 墓地のモンスター1体を特殊召喚する! 戻って来いエアーマン!」

俺のフィールドに不気味な声が流れだし、俺の墓地が光り輝くとフィールドに旋風が吹き荒み、エアーマンが再び俺のフィールドに現れた。

『ハァ!』

「特殊召喚されたエアーマンの効果発動!」

「今度は何を手札に加える気なノ~ネ」

エアーマンの再臨にクロノスは俺が何を手札に加えるのかを警戒していた。

その姿に、俺はニヤリと口元を歪めた。

「クロノス教諭。残念ながらエアーマンにはもう1つ効果がありましてね」

「なぬぅ!?」

俺の言葉にクロノスは驚愕し目を見開いた。

「エアーマンが召喚・特殊召喚に成功した時、2つある効果の内1つを選択し発動する。1つはデッキからHEROを手札に加える効果。そしてもう1つは、エアーマン以外にHEROが存在する時、その数だけフィールド上の魔法・罠を破壊します!」

「なんでス~ト!?」

「俺のフィールドにはワイルドマンとなっているプリズマーが1体。よって魔法・罠カードを1枚破壊できる! 俺が選択するのは、クロノス教諭の右のセットカードを破壊します!」

驚愕するクロノスを余所に俺はクロノスの手前にセットされている2つの伏せカードの内、右側のカードを選択すると、エアーマンは翼のプロペラを回転させ竜巻を作り選択したカード目掛けてその竜巻を放った。

ビュォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

竜巻に煽られて伏せられていたカードが絵柄を現した。

右のセットカードは攻撃の無力化だった。

表になった攻撃の無力化はガラスが砕けるようにバラバラになって消えていった。

「し、しか~シ! いくらセットカードを破壊して~モ、古代の機械巨人を破壊できなければ意味がないノ~ネ!」

クロノスは額に汗を滲ませながらそう言った。

確かに、セットカードを除去しても古代の機械巨人を除去しなければ意味がない。

しかし、俺のターンは“まだ”終わっていない。

「じゃ、除去させていただきます」

「へ?」

突然の言葉にクロノスは素っ頓狂な声を零した。

「手札から魔法カード発動! 《融合》!! フィールド上のプリズマーとエアーマンを融合!」

フィールド上に空間の歪みが現れ、俺のフィールドにいるプリズマーとエアーマンがその歪みの中に飲み込まれていった。

すると次の瞬間、歪みの中から閃光が飛び出し、俺のフィールドに舞い降りた。

「現れろ! 《E・HERO Great TORNADO(グレート トルネード)》!!」

ビュォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!

光が振り払われ、竜巻が舞い上がり、旋風を纏いし風の戦士、Great TORNADOが疾風の如く現れた。





E・HERO Great TORNADO
融合・効果モンスター
星8/風属性/戦士族/攻2800/守2200
「E・HERO」と名のついたモンスター+風属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する
全てのモンスターの攻撃力・守備力を半分にする。





「し、しか~シ! そのモンスターでは、私の古代の機械巨人は倒せないノ~ネ!」

TORNADOの登場にクロノスは一瞬焦りを見せたものの、TORNADOの攻撃力では古代の機械巨人を倒せないと主張した。

クロノスがそう言った時、俺はニヤリとひっそり笑みを浮かべた。

「TORNADOの効果発動! このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの攻守を半分にする! タウン・バースト!!」 

TORNADOは両手を天に翳し、フィールドに旋風を巻き起こした。

旋風は次第に大きくなり、いつの間にか巨大な竜巻となっていた。

TORNADOは生まれたその竜巻を古代の機械巨人目掛けて投げ放った。

ビュォォォォォォォォォォ!!

竜巻に呑まれた古代の機械巨人の銅の鎧を烈風が切り裂いて行く。

ギギギギギギギギギギ!

遂には風圧に圧され機械巨人は地に片膝をついてしまった。

「アンビリ~バブ~!? わ、私~ノ古代の機械巨人が!?」

古代の機械巨人が片膝をついた事にクロノスは驚愕し顔を蒼白に染めた。



古代の機械巨人 攻撃力3000→1500



「行きますよ! TORNADOで古代の機械巨人を攻撃! スーパーセル!!」

TORNADOは旋風を呼び、竜巻を生み、フィールドに風の咆哮が轟く。

ビュワァァァァァァァァァァ!!

まるで風の龍が唸っているように聞こえる。

生まれた竜巻は唸る龍の如く空を舞い、崩れかけている機械巨人の喉笛にその風牙を突き立てた。

一瞬にして機械巨人は旋風に包まれ、無数に襲い来る風の刃に切り裂かれ、スクラップになってしまった。

「ゲバァ!!」

風刃の余波がクロノスにも襲い掛かり、襲われたクロノスは可笑しな悲鳴を上げた。


クロノス LP4000→2700


「ターンエンドです」





直哉 LP2800

手札 3枚

フィールド 

モンスター 《E・HERO Great TORNADO》

魔法・罠 《リビングデッドの呼び声》 セット1



  

「クロノス教諭のエースモンスターを・・・倒した・・・・?」

「馬鹿な・・・・」

「すげぇ・・・!」

実技最高責任者のオリジナルデッキに互角に戦っている事に周りで観戦していた者たちが口々にそう零しているのが聞こえる。

古代の機械巨人が倒された事をまぐれだと自身に言い聞かせる者。

機械巨人が破壊されて固まってしまっている者。

機械巨人を倒した俺の事を凄いと感心する者。

三者三様の感想を抱き、在校生たちと受験生たちは俺とクロノスのデュエルに釘付けになっていた。

「グヌヌヌヌ! 私のターン! ドロー!」

古代の機械巨人が破壊されクロノスは歯軋りを鳴らして俺を睨みつけた。

その姿には最初の大人の風格は一切感じられなくなっていた。

すると、引いたカードを見てクロノスは、不気味な笑みを浮かべてニヤついた。

「私は魔法カード《強欲な壺》を発動! デッキからカードを2枚ドローするノ~ネ!」

笑みを正体は強欲な壺だったようだ。

手札が一気に4枚に回復した。

さらに、引いた2枚のカードを見てクロノスは先程より大きくニヤリと笑みを浮かべた。

何か来る。

俺の決闘者(デュリスト)としての感がそう叫んだ。

「私はフィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》を発動するノ~ネ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

地響きを轟かせながら大地より上る様に多くのビルなどの建物が密集する街が姿を現した。

よく見ると現れた街は全てが歯車で出来ていて、歯車特有の律動的な動きと音がフィールドに鳴り響いてきた。

「さらに、カードをセットして、私は魔法カード発動! 《大嵐》!」

フィールドに嵐が吹き荒み、吹き荒む嵐が俺のセットカードをも破壊しようとする。

このままでは、俺は確実に負ける。

俺の決闘者としての感が再びそう叫んだ。

ならば!

「俺は大嵐にチェーンして《和睦の使者》を発動! このターン俺が受ける全てのダメージを0にする!」




和睦の使者
通常罠
このターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になり、
自分のモンスターは戦闘では破壊されない。





俺のフィールドに慈しみの頬笑みを浮かべる3人の聖女が姿を現し、全てに攻撃から俺を守る様に佇み、天へと祈りを奉げていた。

フィールドを巨大な嵐が吹き荒み、現れたばかりの歯車の街を蹂躙して行った。

クロノスのフィールドにセットされていた2枚のカードも表向きになって破壊されていった。

表になったカードは、俺の決闘者の感が叫んだ通り、黄金の銅像のイラストが描かれていた。

「うまいです~ネ。ですが、私~ノ動きは止められないノ~ネ! 破壊された歯車街の効果発動! このカードが破壊された時、手札・デッキ・墓地から古代の機械(アンティーク・ギア)と名のついたモンスターを特殊召喚する事が出来るノ~ネ! 私~ハ、デッキから古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)を特殊召喚するノ~ネ! 出でよ! 古代の機械巨竜!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

大地が鳴動する。

フィールドを轟音が轟き、砂煙を舞い上げながら、大地から古に眠りし機械竜が歯車の双翼を羽撃かせ、光の下にその青銅の鎧に身を包んだ歯車仕掛けの巨竜が満月の様な黄色い瞳で俺を睨みつけ、フィールドに咆哮を轟かせた。

『ギシャァァァァァァァァァァァァァァ!!』





古代の機械巨竜
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻3000/守2000
このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
このカードの召喚のためにリリースしたモンスターによって以下の効果を得る。
●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
●レッド・ガジェット:このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
相手ライフに400ポイントダメージを与える。
●イエロー・ガジェット:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、
相手ライフに600ポイントダメージを与える。





「まだ終わらないノ~ネ! 破壊された《黄金の邪神像》の効果発動! セットされていたこのカードが破壊された時、私の場に邪神トークンを召喚するノ~ネ! 破壊された邪神像は2枚。よって2体の邪神トークンを召喚するノ~ネ!」

クロノスのフィールドに黒い霧が漂い、その霧の中から2体の黄金の体をした邪神を模した像が現れた。

『シャァァァ!!』

紅く鋭い瞳で俺を睨みつけ、蛇のように喉を鳴らし威嚇してくる。

この展開、やっぱり・・・・・・。

「2体の邪神トークンを生贄に、出でよ! 古代の機械巨人!」

光に包まれ2体の邪神トークンが消えると、再び大地が轟いた。

そして、轟音と共に大地を突き破り、フィールドに再び古代の機械巨人が姿を現した。

その鬼灯の瞳が、再び俺を射抜く。

「通常な~ラ、ここでバトルフェイズに移行するのです~ガ、和睦の使者の効果によりアナタのモンスターは破壊されず戦闘ダメージも0になるので、私はこれでターンエンドなノ~ネ」




クロノス LP2700

手札 1枚

フィールド

モンスター 《古代の機械巨竜》《古代の機械巨人》

魔法・罠 なし





「アイツ、今度こそ終わったな」

「クロノス教諭を本気にさせた所は凄かったけど、これは打破できないだろうな」

クロノスのフィールドに存在する巨人と巨竜を見て、周りの生徒たちは今度こそ俺が敗北すると言葉を零していた。

確かに、本当の所俺は少し嘗めていた。

アニメで見るクロノスや原作キャラたちは、現実に比べてプレイングが甘すぎる。

そしてデッキの構築が穴だらけだ。

そう思っていたから、俺たちが戦うべきイレギュラー以外は、楽勝だと高を括っていた。

しかし、今の現実は違う。

目の前にいるクロノスは実技最高責任の肩書に相応しい実力を持っている。

そしてそれを今俺に見せつけてくれた。

ならば、俺もそれに応えなくては決闘者ではない!

「行きます! 俺のターン! ドロー!!」

「ん?(声に覇気が感じられるノ~ネ。この絶望的な状況でまだ勝てる見込みがあると言うノ~ネ?)」

クロノスが何やら首を傾げている。

恐らく俺が今の現状で諦めていないのが不思議なのだと思う。

そんな事を想いながら引いたカードを確認すると、俺は目を見開いた。

そして思った。

案外俺もチートドローだな、と。

「俺は魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動!」

俺のフィールドの真上に再び空間の歪みが現れる。

「このカードは、自分フィールド上また墓地の存在する融合モンスターによって決められたモンスターをゲームから除外して、E・HEROと名のついたモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する! 俺は、墓地のワイルドマンとプリズマーをゲームから除外して、現れる! 《E・HEROガイア》!!」

俺の墓地から2つの光が飛び出し、歪みの中へと飛び込んで行った。

歪みの奥から輝きが放たれ、俺のフィールドに閃光が舞い降りた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

舞い降りた閃光は弾け、大地を大きく鳴動させる。

鳴動する大地を突き破り、星の核より力を授かった大地の戦士、ガイアが轟臨した。

『ハァァァ!!』


E・HEROガイア
融合・効果モンスター
星6/地属性/戦士族/攻2200/守2600
「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
このカードの攻撃力はその数値分アップする。





「し、しか~シ、そのモンスターの攻撃力では、私のモンスターたちは倒せません~ノ!」

ガイアの登場にクロノスがTORNADOの時と同じ事を口走っている。

「ガイアの効果発動! このカードが召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで半分にする! 機械巨人の攻撃力を半分に!」

「なんでス~ト!?」

ガイアが掌を機械巨人に翳すと、機械巨人からエネルギーが抜け出して行き、機械巨人はまたしても片膝をついて崩れ落ちた。

そして、抜け出たエネルギーは吸い込まれるようにガイアの掌中に入って行き、ガイアの攻撃力がグンと跳ね上がった。


E・HEROガイア 攻撃力2200→3700


「な、なんでアナタのモンスターの攻撃力が上がってるノ~ネ!?」

ガイアの攻撃力が上がった事にクロノスは慌てながら叫んだ。

「ガイアのもう1つの効果ですよ。ガイアは、半分になったモンスターの攻撃力の数値分攻撃力をアップさせるんです!」

「マ、マンマミ~ヤ!?」

クロノスは頬を両手で包み、ムンクの叫びのように叫んだ。

「バトル! ガイアで機械巨竜に攻撃! コンチネンタルハンマー!!」

ガイアはその場から勢いよく飛び上がり、機械巨竜の頭部目掛けて力強く握り締めた拳を思いっきり振り下ろした。

『ハァァァァァ!!』

ズガァァァァァァァァァン!!

『ギャァァァァァァァァァ!!』

振り下ろされた拳は機械巨竜の頭頂部を粉砕し、機械巨竜は悲鳴を轟かせながら爆発して逝った。

「ヌゥゥゥゥゥ!?」

爆風がクロノスに襲い掛かった。


クロノス LP2700→2000


「TORNADOで機械巨人に攻撃! スーパーセル!!」

フィールドに再び風龍が現れ、その風牙と風刃で片膝をついている機械巨人に襲い掛かった。

『ハァッ!!』

ドゴォォォォォォォォォォォン!!

爆音を轟かせながら機械巨人は機械巨竜同様に爆発して逝った。

「アバラバラバラ!?」

クロノスを再び爆風に襲われ、可笑しな悲鳴を上げた。


クロノス LP2000→700


「俺はカードを1枚セットしてターンエンドです」





直哉 LP2800

手札 2枚

フィールド

モンスター 《E・HERO Great TORNADO》《E・HEROガイア》

魔法・罠 セット1 





「馬鹿な・・・・またしてもあの状況を一転させた・・・・?」

「なんなんだ、あの受験生・・・・」

「やっぱりすげぇ!!」

観戦している生徒たちが状況の逆転に唖然とした言葉が聞こえてくる。

その中に混じって一進一退の攻防に胸をときめかせて嬉々とした感想を言ってくれる人もいるようだ。

俺は俺のデュエルで胸を躍らせてくれる人たちに心の中で感謝した。

さて、ここからクロノスはどう出る?

「グヌヌヌヌ! 私のターン、ドロー! ッ!」

クロノスはドローカードを見て又も目を見開いた。

そして、次の瞬間悪そうな笑みを浮かべて俺をの方を見た。

「私はモンスターをセットして、カードを1枚セットしてターンエンドなノ~ネ!」

クロノス LP700





手札 0枚

フィールド

モンスター セット1体

魔法・罠 セット1





表情とは打って変わって、守りの姿勢を取ったクロノスに俺は目が点になった。

あの表情だからまた何か来るのかと思ったが、違ったようだ。

「俺のターン、ドロー! バトル! ガイアでセットモンスターに攻撃! センチネンタルハンマー!!」

ガイアは再び腕を振り上げ、クロノスの場に伏せられているモンスター目掛けて勢いよく拳を振り下ろした。

その瞬間、クロノスの口角がニヤリと釣り上がった。

「かかったノ~ネ! 罠カード発動! 《聖なるバリア-ミラーフォース-》!! アナタの攻撃表示モンスターを全て破壊なノ~ネ!!」

「やった! これで奴のモンスターは全滅だ!」

「流石クロノス教諭だぜ!!」

「ザマァ見ろ!!」

ミラーフォースの発動に観戦している生徒たちが歓喜の声を上げる。

成程、さっき引いたのはミラフォか。

通りで悪そうな顔だったはずだ。

まぁ、一発逆転のカードを引けたら嬉しいよな。

俺もそうだし。

でも、そうは問屋が卸さない!

「ミラーフォースにチェーンして発動! 《神の宣告》!! ライフを半分払ってミラーフォースの発動を無効にする!」

「「「「へ?」」」」


直哉 LP2800→1400


クロノスのフィールドを包み込んでいた七色の障壁を、俺のフィールドに現れた神が一括すると、セットモンスターを覆っていた障壁がガラスのように砕け散った。

バリィィィン!!

ミラフォの不発に、歓喜していたクロノスと生徒たちが素っ頓狂な声を上げて呆然と固まった。

障壁が消えた事で、ガイアの拳は寸分違わずセットモンスターを粉砕した。

破壊されたのは古代の機械騎士だったようだ。

「Great TORNADOで止め!! スーパーセル!!」

『ヌウォォォォォ! ハァァァァァァ!!』

舞い上がる風の龍の風牙が、風刃と共にクロノスに襲い掛かった。

「ギョエェェェェェェェ!?」


クロノス LP700→0


ブーーーーーーーー!!

「勝者、受験番号1番!」

クロノスのライフが0になったのと同時に俺たちのフィールドにブザーが鳴り響き、ソリッドビジョンが消えていった。

そして、俺たちのフィールドの傍でデュエルを観戦していた教員が俺の勝利を告げてくれた。

「「「「「ウォォォォォォォォォォォ!!」」」」」

それを聞いた受験生たちと在校生たちから盛大な歓声が上がった。

「まさか・・・・あり得ない・・・・」

「あのクロノス教諭が・・・・負けた・・・・?」

「そんな・・・馬鹿な・・・」

轟く歓声に混じって、俺がクロノスを倒した事に驚愕し茫然としている者たちの壊れた人形の様な言葉が聞こえてくる。

その中には、俺の勝利に落胆したり、苛立ちをぶちまける者もいた。

まぁ、何はともあれ、俺の試験はこれで終了だな。

そう思いクロノスの方に視線を戻すと、フィールドに倒れたまま固まってしまっている。

「ありがとうございました」

俺はそんなクロノスに頭を下げ、クロノスの状態を無視してフィールドを後にした。

side out




side 雪鷹

「おかえり」

俺が戻ってすぐ、直哉も試験を終わらせて帰って来た。

戻って来た直哉に俺は労いの言葉をかけた。

「おう、お前の方はどうだった?」

「勿論勝ったよ」

俺は笑顔でそう返した。

「如何する? これから」

直哉が困ったように訊ねてきた。

「如何するって、十代のデュエル見るんじゃないのか?」

俺たちはあの女に強制的にこの世界に送り込まれたが、あの女はこの世界で好きな事をして時間を潰せと言っていた。

あの女の言葉に従うようで癪だが、来たからには楽しませてもらうとする。

直哉も同じ意見の様だしな。

「いや、其れはそうなんだけど、十代まで結構時間あるぜ?」

直哉にそう言われて改めて思い出した。

この世界は原作とは少し変わっていて、実技試験は筆記試験の成績で順番が振り分けられ、1番から110番まで順に実技試験を6つのフィールドで同時に行っている。

番号が原作通りなら、十代は110番のはず。

今は6番までの受験生が終わり、まだ100までは相当時間がある。

「そっか、ならどうする?」

俺は携帯のディスプレイに視線を落とし時間を確認して直哉に訊ね返した。

試験開始は10時。

そして現在は10時40分となっていた。

「いや、俺が聞いてるんだけど」

訊ね返された直哉は呆れた表情でそう言った。

それもそうだな。

さてどうしたものか。

時間をどうやって潰そうかと悩んでいると、俺たちの耳に歓声たちの驚愕したような声が飛び込んできた。

「なんだ?」

不図気になった俺は、その声の主たちが見つめるフィールドに視線を向けた。

すると、俺の視界と耳に驚愕の光景が飛び込んできた。

「レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!! 集いし星が新たなる力を呼び起こす 光さす道となれ!! シンクロ召喚! いでよ、ジャンク・ウォリアー!!」

光に包まれ、宙を舞う5つの星が並び、フィールドを輝きが包み込み、光を振り払いそのフィールドに青紫色の装甲を纏った紅眼の戦士が勇ましく登場した。

「「!?」」

シンクロの叫びに直哉も慌てて俺が見つめるフィールドに視線を向けた。

視線の先には、1人の女の子が試験官とデュエルしているのが目に飛び込んできた。

背中まで伸びた桃色の髪。

それだけが俺の脳裏に焼きついた。

俺たち意外にシンクロを知っていて、なおかつそれを使用する人が居る。

「雪鷹・・・・」

隣で直哉が俺の名を呟いた。

それだけで俺は直哉の言いたい事が理解できた。

「嗚呼、わかってる」

彼女とは、一度コンタクトをとったほうがいいな。

これから先、学園に居れば否が応でも対面するはず。

その時に・・・・。

そう俺たちは心の中で決め、その女の子の姿を目に焼き付け、会場を後にした。

to be continued 
 

 
後書き
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誤字脱字、アドバイスなどがございましたら、ご遠慮なくご指摘ください。

それでは、次回を楽しみにしていてくださいね。 
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