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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン24 青い瞳は何を見る

 
前書き
割とあっさり気味なデュエルのカイバーマン回。本当にあっさりだよ。どっちかというとユーノ復活のための回。 

 
「ねーってばユーノ、こっち来てお風呂入ろうよー。あったかいよー」
『…………』
「どうなんだな、こっち来たのか?」
「ダメ。もう、一体どうしたんだろ」

 僕らが今いるのは、校舎のはずれの方にある温泉の建物。正直こんなレジャー施設並みの風呂場を作るぐらいならレッド寮のごはんにつく沢庵をもう一切れぐらい増やしてほしい。とはいえ、楽しいことに変わりはない。朝起きた時からなんかユーノの元気がないから何かあったのかと思って気分晴らしに連れてきたんだけどやっぱりふさぎ込んだままで、お湯に入ろうともせず岩の上に座り込んでぼーっと遠くを見ている。腰にタオル巻いた格好でそんなことして、寒くないんだろうか。正直、絵面がシュールすぎて反応に困るからやめてほしい。
 この場の空気を変えようとしてか、それとも単に天然なのか。十代がお湯に潜って翔のタオルをひっぺがし、それを翔がメガネに浮き輪というよくわからない装備でバシャバシャと追いかけるのをのんびり眺めていると、いつの間にか海パン姿の万丈目まで入ってきてもっとややこしいことになった。でも、ユーノはやっぱり無反応のままだ。なんかもやっとするなあ、よしこうしよう。

「ユーノっ!ちょっとこっち見て!」
『……おう、ってぶあっ!!?』

 呼びつけてこっちを向いた瞬間、狙い澄まして水鉄砲を食らわせる。ぶるぶると犬のように頭を振って水を払い、ようやくまともにこちらを向いてくれた。

『……何すんだいきなり』
「ほらほら、そんないつぞやの天田みたいな喋り方になってないでこっち来る。ほらサッカーにチャクチャルさんもなんか言ったげて」

 そう言って横を見ると、さっきまで横でぱちゃぱちゃ遊んでいたシャーク・サッカーがふらふらと湯の中のある一点を目指して泳いでいく後ろ姿が見えた。

「あ、あれ?何かあったの?」

 なんとなく気になったので追いかけてみる。するといきなり、底に足がつかなくなった。ちょ、ここってどこも水深1メートルぐらいだと思ったんだけど!?そしてものすごい勢いで落ちて行った先には、なんだかずいぶん広い洞窟のような空間になっていた。………どこここ。なんか服着てるし。デュエルディスク持ってるし。デッキもちゃんと入ってるし。

「安心しろ、オゾンより下だ」
「なんかもういろいろアバウトだよ!………ってあれ、ユーノいつの間に実体化できるようになったの」


 そんな馬鹿話をしているうちに、どさりどさりと十代、翔、隼人、万丈目、おジャマ・イエロー、隼人………じゃない、デス・コアラが落ちてきた。なぜかみんなも服を着た状態で。そして、そんな僕らに声をかけてきた人がいた。

「精霊に導かれしデュエリストとは、貴様達のことか」

 最近このパターン多いな、なんで背後ばっかり取られるんだろう、と思いながら慌てて振り返ると、そこにいたのは銀色を基調としたスーツを着て、仮面をかぶって素顔を隠した怪しい男。腕にデュエルディスクのような何かをつけているところからいって、この人もデュエリストみたいだ。えっと、どっかでこの人見たことあるような………。

「カイバーマン様!」

 ああそうだ正義の味方カイバーマンだ、ありがとうおジャマ・イエロー。って、そうじゃなくて。

「いったい俺らをこんな所に連れてきて、どういうつもり?待てよ、もしかしてセブンスターズの!」
「ごちゃごちゃ騒ぐな。デュエルをすればすべてわかる、貴様らは常々そうほざいているそうではないか」

 …………貴様らって、その極論言ってるのは十代だけなんだけどなぁ。僕はいまだにカミューラのこともサイコ・ショッカーのこともわからないしそんなもんわかりたくもないぞ。確かに、わかるようになった人も多いからあながち間違ってはいないんだけどさ。でもまあ、とりあえずデュエルを売られたのだけは理解できた。ならば、とディスクを起動させようとすると、カイバーマンはユーノの方を指差した。

「そこの貴様、何を悩んでいる。ひとつ教えてやろう、負け犬は自力で這い上がらん限り負け犬のままだ。俺は特に興味もないが、貴様らにも何が起きたのか見せてやろう。来い、ミラージュ!」

 カイバーマンの声に応えて、さっきまで後ろの方からこっそり僕らの方をうかがっていたモンスターの1体、鏡を抱えたでっかい鳥が器用に飛んできた。

 ミラージュ
通常モンスター
星4/光属性/鳥獣族/攻1100/守1400
手にする鏡から仲間を呼び出すことのできる鳥のけもの。

 ミラージュの鏡の中を覗き込むと、そこには夜が写っていた。夜の森で、ユーノと……誰だこれ。シルクハットにマントを着たなかなかの怪人がデュエルを始めていた。とりあえずシルクハットマンと呼ぶことにする。あ、これ音声も入るのね。

『『デュエル!!』』

 先攻を取ったのは、シルクハットマン。一体何が起きてるんだろう。

『私は魔法カード、闇の誘惑を発動。カードを2枚ドローし、ネクロフェイスを除外する。そしてネクロフェイスの効果で、お互いデッキトップのカードを5枚除外する』

 闇の誘惑
通常魔法(制限カード)
デッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体を選んでゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 ネクロフェイス
効果モンスター(制限カード)
星4/闇属性/アンデット族/攻1200/守1800
このカードが召喚に成功した時、
ゲームから除外されているカード全てをデッキに戻してシャッフルする。
このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻したカードの枚数×100ポイントアップする。
このカードがゲームから除外された時、
お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する。

『カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。さあ、何を恐れている?もっとも、これで私の勝ちは確定したがな』
『くっ…………そうだな、俺の予想通りなら確かにお前の勝ちだ』
『その予想は多分正しいよ。えっと、この世界ではユーノ君、だったかな?』
『俺がドローする前に、一つ聞かせろや。なんでお前が最初っからでてこなかった?富野いらねーだろ明らかに』
『彼については少々期待はずれだったよ。と言うより、彼の行動は私にとっても予想外だった。君はまだエクストラデッキを使うつもりはなかったはずだし、それならまだ放っておいても大丈夫だったんだが。今私が出てきたのは、警告のためだ。まずないとは思うが、君のそのカード達はこれからも使わないように。今回はデュエル終了時に君が消滅するようなことはないし、意識が回復したら寮に戻ってもらって構わない。もう一度繰り返すが、これは警告だからな』

 エクストラデッキ?警告?富野って誰?等々疑問点たっぷりの映像がさっきから続いてるけど、画面全体から漂ってくる異様な雰囲気に呑まれて何も言えなかった。ただ、苦渋の表情でカードをドローするユーノがやたらと印象的だった。

『………ドロー』
『スタンバイフェイスにトラップカードを発動。まずは異次元からの帰還だ。ライフを半分払い、封印されしエクゾディア、封印されし者の右腕、左腕、右足、左足を特殊召喚する』

 異次元からの帰還
通常罠(制限カード)
ライフポイントを半分払って発動できる。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。

 シルクハットマン(仮名) LP4000→2000
 封印されしエクゾディア 攻1000
 封印されし者の右腕 攻200
 封印されし者の左腕 攻200
 封印されし者の右足 攻200
 封印されし者の左足 攻200

『そして2枚目のカード、撤収命令を発動。怒りの業火、エクゾード・フレイム』

 そして画面が真っ白になって、そこで再生は終わった。

 撤収命令
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスターを全て持ち主の手札に戻す。










「うわあ………」

 とりあえずこれが第一感想。普通にワンキルするんじゃなくて相手にカードを一回引かせてから何もさせずに倒すってあたりがまたいやらしい。そりゃこんなもん食らったら誰だって落ち込むよ。そんなことを考えていると、カイバーマンが口を開いた。

「ふん、つまらん勝負だ。こんなつまらん負けをいつまでも引きずっているような男では、俺のこのブルーアイズもがっかりするぞ」

 そう言ってデュエルディスクのてっぺんのカードを抜いてこっちに見せつけてくる。あのカードは!

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)!」
「すっげえ、本物は初めてだ!」

 僕らの反応を見てから、再びユーノの方にカイバーマンが向き直った。当然のごとくブルーアイズは掲げたままだけど、あんなポーズで腕は疲れないんだろうか。

「さあどうする?俺のブルーアイズをがっかりさせるなよ」
「………わかった。そのデュエル、買おうじゃないか」

 そうは言いながらも、まだちょっとためらい気味の態度が心に引っ掛かった。

「「デュエル!!」」

「先攻は俺だ、ドロー!俺は手札からスター・ブラストを発動、1500のライフを払って手札のシーラカンスのレベルを7から4に下げる!そしてレベル4のシーラカンスを通常召喚だ」

 スター・ブラスト
通常魔法
500の倍数のライフポイントを払って発動できる。
自分の手札または自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選び、
そのモンスターのレベルをエンドフェイズ時まで、
払ったライフポイント500ポイントにつき1つ下げる。

 ユーノ LP4000→2500
 超古深海王シーラカンス ☆7→4

 超古深海王シーラカンス
効果モンスター
星7/水属性/魚族/攻2800/守2200
1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。
デッキからレベル4以下の魚族モンスターを可能な限り特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃宣言できず、効果は無効化される。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが
カードの効果の対象になった時、
このカード以外の自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースする事で
その効果を無効にし破壊する。

「その効果発動、魚介王の咆哮。手札一枚捨てて、デッキからヒゲアンコウ、ハリマンボウ2体、オイスターマイスターを特殊召喚!」
「今日も飛ばしてるなぁ」
「ああ、ユーノって引きがいいよな」
「………初手か最初のドローあたりに融合が来ること前提でデッキ組んでるヒーローに言われたくないと思う」

 ヒゲアンコウ 守1500
 ハリマンボウ×2 守100
 オイスターマイスター 守200

「まだ終わらねえぜ、フィールド魔法発動!ウォーターワールドの特殊効果で、俺の場のモンスターは防御を捨てて攻撃力を上げる!」

 ウォーターワールド
フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、
守備力は400ポイントダウンする。

 超古深海王シーラカンス 攻2800→3300 守2200→1800
 ヒゲアンコウ 守1500→1100 攻1500→2000
 ハリマンボウ×2 守100→0 攻1500→2000
 オイスターマイスター 守200→0 攻1600→2100

 それにしても、今日のユーノは一体何が狙いなんだろう。確かに、今呼び出してたモンスターたちの守備力はヒゲアンコウ以外お世辞にも高くない。高くないけど、なにもウォーターワールドで0にすることはないんじゃなかろうか。

「ならば俺のターン!俺は手札の、正義の味方カイバーマンを通常召喚!」
「!?」

 意気揚々と自分が印刷されたカードをデュエルディスクに置き、カイバーマンを召喚するカイバーマン。いや、カイバーマンのカードをデッキに入れること自体は何もおかしくはないんだけど………なんかこう、分身の術を見てるような感じだ。あ、でも細かいところとかちょっと違うかも。

 正義の味方 カイバーマン 攻200

「そしてカイバーマンの効果発動、このカードをリリースすることであるモンスターを特殊召喚する」
「あるモンスターってまさか」
「ああ、海馬瀬戸の忠実なるしもべ!」
「見るがいい、そして慄くがいい。降臨せよ、青眼の白龍!」

 カイバーマン(カード)が光に包まれ、その光の中から巨大な一匹のドラゴンがその姿を見せる。あれがソリットビジョンで見る生のブルーアイズ……すっごい、初めて見た!

 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。

 ブルーアイズは守備力2500………あ、そうか。ユーノがウォーターワールドを張ったのは展開したモンスターをどうこうするためじゃなくて、シーラカンスの攻撃力を3000以上にしてブルーアイズを攻撃表示で出させないためだったのか。

「攻撃力3300のシーラカンスで攻撃を防ぐつもりか?甘いな、手札から魔法カード、滅びの爆裂疾風弾を発動!このターンブルーアイズの攻撃を放棄することで、貴様の場のモンスターを全て破壊する!」

 強烈な光が弾けて、思わず目を閉じてしまう。光が収まって目を開けた時には、ユーノの場に残っているのは小さな牡蠣が一つだけだった。

「オイスターマイスターの効果によって、このカードが戦闘以外で場から墓地に行ったからオイスタートークンを特殊召喚するぜ。さらに2体のハリマンボウの効果で、ブルーアイズの攻撃力は合計1000ポイントダウンする」

 オイスタートークン 守0 攻0→500
 青眼の白龍 攻3000→2500→2000

「ふぅん、少しは考えているようだな。いいだろう、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 ユーノ LP2500 手札:2 モンスター:オイスタートークン(守) 魔法・罠:なし
 カイバーマン LP4000 手札:2 モンスター:青眼の白龍(守) 魔法・罠:1

「俺のターン、ドロー。オイスタートークンをリリースして、水属性のジョーズマンをアドバンス召喚だ」
「その召喚にトラップ発動、クローン複製!俺の場に貴様のジョーズマンの複製を呼び出してやる」

 クローン複製
通常罠
相手がモンスターの召喚・反転召喚に成功した時に発動する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するそのモンスターの
元々の種族・属性・レベル・攻撃力・守備力を持つ
「クローントークン」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
そのモンスターが破壊され墓地へ送られた時、このトークンを破壊する。

 ジョーズマン 攻2600→3100 守1600→1200
 クローントークン 攻2600→3100 守1600→1200

「マジか……でも、ジョーズマンでブルーアイズに攻撃する!」

 ジョーズマンが大きな右腕を叩きつけながらそこについている口でブルーアイズの体を噛みちぎった。そして相変わらずの謎爆発が起きたけど、もうツッコんだら負けな気がする。

 ジョーズマン 攻3100→青眼の白龍 守2500(破壊)

「ほう、俺のブルーアイズを倒したか」
「………カードを2枚伏せる」
「ならば俺のターン!手札のマンジュ・ゴッドを召喚!このカードは召喚時にデッキの儀式魔法または儀式モンスター1枚をサーチできる。俺はこの効果により、白竜降臨を手札に加えるぞ。そして儀式魔法、白龍降臨を発動!場のマンジュ・ゴッドをリリースし、白竜の聖騎士を儀式召喚して効果発動!このカードをリリースし、デッキから2体目のブルーアイズを特殊召喚する!」

 マンジュ・ゴッド 攻1400

 白竜の聖騎士(ナイト・オブ・ホワイトドラゴン)
儀式・効果モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻1900/守1200
「白竜降臨」により降臨。
フィールドか手札から、レベルが4以上になるよう
カードを生け贄に捧げなければならない。
このカードが裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。
また、このカードを生け贄に捧げる事で手札またはデッキから
「青眼の白龍」1体を特殊召喚する事ができる。
(そのターン「青眼の白龍」は攻撃できない。)

 青眼の白龍 攻3000

「何とか倒したってのにもう2体目か……わかってるとはいえ冗談キツイな」
「なんだその弱気な態度は!貴様もその辺に転がっていた、ポンコツデュエリストと同じなのか。ブルーアイズをがっかりさせるな!だがせめてもの情けだ、この勝負のとどめはブルーアイズの手でさしてやる。まずはクローントークンでジョーズマンに攻撃!」

 このままジョーズマン同士が相打ちになったら、がら空きになったところにブルーアイズの攻撃を受けてそのままユーノが負けてしまうだろう。残る可能性はあの伏せカードしかない。しかないんだけど、ユーノの顔を見た瞬間に思った。あ、これ駄目ですわ。もしかして、いつもユーノが見るに見かねて交代してくるときの自分もこんなみじめったらしい、負けムード出しまくりでやる気も何もあったもんじゃない顔だったんだろうか。そう思ったらなんか我慢できなくなって、自然と口が動いていた。

「ユーノ!」

 いきなり僕が叫んだせいで、その場にいる全員がこっちを見てきた。ちょっと気まずいけど、言い出した以上後に引くわけにはいかんのだよ。

「カイバーマンの言うとおりだよ、なんでこんなつまんない負けかたいつまでも引っ張ってうじうじしてんのさ。負けることなんてしょっちゅうだって笑ってたのはユーノじゃない、次行くぞ次っていつも言ってるじゃない!なのになんで、なんでそのユーノが一回負けただけでこんなに落ち込んでるんだよ!僕にとってユーノは、他の誰よりも大きい一番の目標なんだ…………僕と同じデッキを使ってるのに、毎回僕じゃ思いつかなかった逆転の一手を言い当ててくれる、そんな僕よりはるかに上にいる、いつか僕が必ずたどり着いてみせる場所にいるデュエリストなんだ!だから、そんな弱気にならないでよ!一回や二回負けたぐらいでそんな顔されたら、僕は………僕はこれから、一体どうすればいいのさ!」

 最初は煮え切らないユーノに喝を入れるだけのつもりだったのに言いながらだんだん感傷的な気分になってきて、最後ではボロボロと涙をこぼしながら喋っていた。皆がポカンとしてるのが見えたけど、そんなことに構ってるだけの余裕がない。

「ねえユーノ、いい加減元に戻ってまたいつもみたいに楽しくデュエルしようよ。いつもの自信満々で凄く強いユーノになってさ。そしたら、僕が今度こそ勝って見せるから。昨日も一昨日も3日前もその前もまたその前も勝てなかったけど、今日こそ負けないからさ!」
「貴様の歩んできたデュエル道など、まだ入り口だ。世界には、まだ未知のデュエルがある。見えるはずだ、果てしなく続く戦いのロードが。なのに、貴様はここで立ち止まるのか!」
「そう、だな」

 僕とカイバーマンの激励を受けて、ゆっくりと口を開くユーノ。これでまだくだらないこと言うようなら、一発ぶん殴ってでも目を覚まさせてやる。そう思って密かに拳を固めたのを知ってか知らずか、苦笑して頭をかいた。

「悪い、なんかずいぶん心配かけたみたいだな。………だいぶマシな気分になったぜ、清明。カイバーマン、俺はまだ立ち止まんないぜ!トラップ発動、安全地帯!この効果でジョーズマンは破壊されなくなる!」

 安全地帯
永続罠
フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは相手の効果の対象にならず、
戦闘及び相手の効果では破壊されない。
また、選択したモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできない。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。

 クローントークン 攻3100(破壊)→ジョーズマン 攻3100

 そうだよ、僕が憧れて追いかけてるユーのはやっぱりこうじゃなくっちゃ。下見てるところなんてこっちが見たくない。

「ふぅん、やっとその気になったか。まあ30点、と言ったところだな」
「よくわからんがそのテストは30点満点なんだろ?なら満点だ、問題ないぜ」
「減らず口を、俺はターンエンドだ。さあ、恐れずにかかって来い!」

 ユーノ LP2500 手札:0 モンスター:ジョーズマン(攻・安) 魔法・罠:安全地帯 (ジョ)、1(伏せ)
 カイバーマン LP4000 手札:1 モンスター:青眼の白龍(攻) 魔法・罠:なし
 場:ウォーターワールド

「俺のターン、ドロー!ジョーズマンでブルーアイズに攻撃!」

 ジョーズマン 攻3100→青眼の白龍 攻3000(破壊)
 カイバーマン LP4000→3900

「やった、ついにカイバーマンのライフを削った!」

 やっぱりやればできるじゃないかユーノ。頑張れー!

「俺はこれで、ターンエンドだ!」
「ドロー!闇・道化師のペーテンを守備表示で召喚してターンエンドだ」

 闇・道化師のペーテン 守1200

ユーノ LP2500 手札:1 モンスター:ジョーズマン(攻・安) 魔法・罠:安全地帯(ジョ)、1(伏せ)
 カイバーマン LP3900 手札:1 モンスター:闇・道化師のペーテン(守) 魔法・罠:なし
 場:ウォーターワールド

「俺のターン、ドロー!んー………攻撃するうまみはない、か。カードをセットしてターンエンドだ」

 一瞬悩む様子を見せたが、なぜか攻撃をせずにターンを終了したユーノ。へんなの、僕ならとりあえず攻撃したのに。

「だからお前はそこ止まりのデュエリストなんだ」
「万丈目、それどーゆー意味?」
「闇・道化師のペーテンは墓地に送られた時、その手段を問わず自分を除外することでデッキまたは手札から同名モンスターを特殊召喚できる効果を持っている。リミッター・ブレイクがスピード・ウォリアーを特殊召喚するのと似たようなものだ。恐らく、後続を呼ばれてデッキが圧縮されることを嫌ったんだろう」

 うーん、なるほどねえ。やみくもに突っ込んでくだけじゃダメダメだってことか。

「俺のターン、ドロー!何もせずこれでターンエンドだ」

 ………怪しいなあ。まあ、僕が心配してもしょうがないんだけど。

 ユーノ LP2500 手札:1 モンスター:ジョーズマン(攻・安) 魔法・罠:安全地帯(ジョ)、1(伏せ)
 カイバーマン LP3900 手札:2 モンスター:闇・道化師のペーテン(守) 魔法・罠:なし
 場:ウォーターワールド

「俺のターン!そろそろサイクロンが怖くなってきたから、ジョーズマンにゃ悪いがここで選手交代だ。マジックカード、浮上を発動!このカードは、俺の墓地からレベル3以下の水・魚・海竜族モンスター1体を表側守備表示で復活させる!俺が呼ぶのはオイスターマイスター!」

 オイスターマイスター 守200→0 攻1600→2100

「ふぅん、そんな壁にもならん雑魚モンスターを呼んだところでどうする気だ?」
「慌てなさんなって。俺はジョーズマンとオイスターマイスターをリリースして、このカードをアドバンス召喚だ!来い、俺のブルーアイス……青氷の白夜龍!それとオイスタートークン!」

 青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン) 攻3000→3500 守2500→2100
 オイスタートークン 守0 攻0→500

「ほう、ブルーアイズの偽物か。いいだろう、俺の本物のブルーアイズの力で葬り去ってくれる」
「偽物?そりゃ心外だな、大事な切り札の一つに対して。とはいえ攻撃はしたくないな、カードを伏せてターンエンドにする」
「ドロー!貪欲で無欲な壺を発動、墓地のドラゴン族、白竜の聖騎士に天使族のマンジュ・ゴッド、戦士族であるこの俺自身、正義の味方 カイバーマンをデッキに戻して2枚ドローをする!」

 貪欲で無欲な壺
通常魔法
メインフェイズ1の開始時に自分の墓地から
異なる種族のモンスター3体を選択して発動できる。
選択したモンスター3体をデッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキからカードを2枚ドローする。
このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

「まだ終わらんぞ!手札からマジックカード、黙する死者を発動!俺の墓地のブルーアイズを特殊召喚する!」

 黙する死者
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは
フィールド上に表側表示で存在する限り攻撃する事ができない。

 青眼の白龍 守2500

「さらにもう一枚!墓地に眠るブルーアイズを特殊召喚!」

 青眼の白龍 守2500

「魔法カード、融合を発動!3体のブルーアイズを融合することで、青眼の究極竜を召喚する!」

 青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)
融合モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻4500/守3800
「青眼の白龍」+「青眼の白龍」+「青眼の白龍」

「貪欲で無欲な壺のデメリットにより、俺はバトルフェイズを行うことができない………カードをセットしてターンエンドだ」

 ユーノ LP2500 手札:1 モンスター:青氷の白夜龍(攻)、オイスタートークン(守) 魔法・罠:2(伏せ)
 カイバーマン LP3900 手札:0 モンスター:青眼の究極竜(攻)、闇・道化師のペーテン(守) 魔法・罠:1(伏せ)
 場:ウォーターワールド

 ユーノの状況はかなりマズイ。白夜龍は僕らのデッキで最高打点のモンスターだけど、それでも攻撃力はウォーターワールド込みで3500………4500のブルーアイズの前にはひとたまりもない。このターンで何かしないと、ジリ貧になるのは目に見えてる。

「俺のターン、ドロー!カードをセットしてターンエンドだ!」
「ならば俺のターン!」
「この瞬間、たった今伏せた俺のカードを発動!フィッシャーチャージの効果でオイスタートークンをリリースして、ブルーアイズを破壊!」

 フィッシャーチャージ
通常罠
自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースし、
フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

「甘いぞ!リバースカードオープン、神の宣告!ライフポイントを半分払うことで、そのカードの発動を無効にする!」
「!?融合解除じゃない、だと?」

 ごろんと転がっていた牡蠣が弾丸のような勢いでブルーアイズに向かって突進していったが、その固い殻がドラゴンに命中する前にどこからともなくやって来た白髪のおじいさんのチョップを受けて爆ぜた。神様すげえ。

 カイバーマン LP3900→1950

「どうした、これで終わりか?魔法カード、カップ・オブ・エースを発動!コイントスを一度行い表が出れば俺が、裏が出れば貴様がカードを2枚ドローする。………表!さらに俺は手札から装備魔法、巨大化を発動!俺のライフポイントが貴様を下回っていることで、ブルーアイズの攻撃力は倍となる!攻撃だ、アルティメット・バースト!」

 青眼の究極竜 攻4500→9000

「融合解除は絶対手札にあると思ってたんだけどな。つーか強欲な壺の代用品2枚目か。ええい、ポセイドン・ウェーブ発動、その攻撃を無効にする!俺のブルーアイスはドラゴン族だからダメージは通らないが、それでも攻撃を防ぐことはできるぜ!」

 ただでさえ大きいのにさらに体のサイズが倍になった三つ首の竜がそれぞれの口から一斉に放った三本のブレスが一つに混ざり合って青氷の白夜龍を飲み込もうとする寸前巨大な波が巻き起こり、分厚い水の壁が白夜龍を守ってくれた。なんとか首の皮一枚で繋がった、ってトコかな?なにしろ攻撃力9000なんだ、一撃でも喰らったらオーバーキル間違いなしだ。

「なかなか粘るな。俺はターンエンドだ」

 ユーノ LP2500 手札:1 モンスター:青氷の白夜龍(攻) 魔法・罠:1(伏せ)
 カイバーマン LP1950 手札:1 モンスター:青眼の究極竜(攻・巨)、闇・道化師のペーテン(守) 魔法・罠:巨大化(青)
 場:ウォーターワールド

「さあて、そろそろジリ貧が近づいてきましたかね、っと………ドロー!伏せてあったサルベージを発動、攻撃力1500以下の水属性2体を墓地から手札に加える!さらに強欲なウツボを発動、手札の水属性2体をデッキに戻してカードを3枚ドロー!俺が戻すのは当然、さっき回収したハリマンボウとヒゲアンコウだ!」

 サルベージからの強欲なウツボ………僕のデッキにある、一番カードを引ける枚数が多いドローコンボだ。サルベージで回収したモンスターを使ってウツボを発動すれば、コスト1枚で3枚のカードが引ける計算になる。いいぞ、3枚も引けばまだ何かできるかもしれない!

「カードを2枚セット。ターンエンドだ……!」

 あれ?

「俺のターン、ドロー!ブルーアイズで攻撃、アルティメット・バースト!」
「待ちな、メインフェイズにトラップ発動!リビングデッドの呼び声で、墓地の超古深海王シーラカンスを特殊召喚!そして俺の場にモンスターが特殊召喚されたことで、ディメンション・スライドは発動できる!」

 超古深海王シーラカンス 攻2800

 ディメンション・スライド
通常罠
自分フィールド上にモンスターが特殊召喚された時に発動できる。
相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体を選択してゲームから除外する。
その特殊召喚がエクシーズ召喚だった場合、
このカードはセットしたターンに発動できる。

 一時はどうなるかと思ったけど流石はユーノだ、ちゃんとあの大型モンスターを攻略する方法を考えていたなんて。これでカイバーマンの場にはテーペン一体がいるだけ………ってあれれ?なんか増えてませんかドラゴンさん。

 青眼の白龍×3 攻3000

「手札から速攻魔法、融合解除を発動した!これにより対象を失ったディメンジョン・スライドは空振りとなり、俺の場には3体のブルーアイズが残される!」
「融合解除、たった今引いたのか………!でも、それなら俺のブルーアイスの方が攻撃力は上だぜ!」
「わめくな!魔法カードサイコロンを発動、サイコロを一回振り………出た目は5、よってリビングデッドとウォーターワールドを破壊する!ブルーアイズの偽物は、本物の手で葬ってくれるわ!」


 サイコロン
速攻魔法
サイコロを1回振る。
2~4の目が出た場合、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。
5の目が出た場合、フィールド上の魔法・罠カード2枚を破壊する。
1または6の目が出た場合、自分は1000ポイントダメージを受ける。

 多分さっきのカップ・オブ・エースの時に引き当てたのであろうサイコロンが、周りの荒波を吹き飛ばしてフィールドをがらんとさせる。リビングデッドも破壊されたことでシーラカンスも再び倒れてしまい、場に残っているのは3対1で向かい合うドラゴンとしぶとく生き残っているペーテン一人になった。ペーテンの浮きっぷりがハンパないけど、さすが道化師というべきなんだろうか。

 青氷の白夜龍 攻3500→3000 守2100→2500 

「許せ、ブルーアイズ。だが、本物の力を見せてやれ!ブルーアイズで攻撃、滅びのバーストストリーム!」
「攻撃時に速攻魔法、収縮を発動。対象はもちろんブルーアイズだ!迎え撃ってやれ、孤高の冬色氷輪弾(ウィンターストリーム)!!」

 収縮
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。

 青眼の白龍 攻3000→1500(破壊)→青氷の白夜龍 攻3000
 カイバーマン LP1950→450

 2体のドラゴンが真っ向からブレスを打ち合って、例のごとく爆発が巻き起こる。その砂煙の中から無傷で姿を見せた白夜龍に対し舌打ちをして、カイバーマンは連撃を仕掛ける。これで伏せカードも何も打ち止めなのに、ユーノはなんだか楽しそうだった。

「許せとは言わん。恨むなら俺を恨め、ブルーアイズ。もう一度攻撃だ、滅びのバーストストリーム!」

 2体のドラゴンが弧を描くようにぐるぐると回りながら上昇していき、同時に放ったブレス攻撃が互いの体をとらえて両方とも灰になった。これでユーノの場はすっからかん、だけどカイバーマンの場にはまだ攻撃宣言をしていないブルーアイズ………と、ペーテン。まあペーテン守備表示だけど。

 青眼の白龍 攻3000(破壊)→青氷の白夜龍 攻3000(破壊)

「どーやら、これまでみたいだな。なあカイバーマンさんよ、またいつか、一手指南してもらえるか?」
「ふっ、考えておいてやろう。ブルーアイズでダイレクトアタック、滅びのバーストストリーム!」

 青眼の白龍 攻3000→ユーノ(直接攻撃)
 ユーノ LP2500→0





「じゃあカイバーマンさん、うちの馬鹿に喝を入れるのを手伝ってもらってありがとうございました」
「礼には及ばん。俺のブルーアイズを一度のデュエルであれほど破壊したデュエリストは初めてだ」

 あはは。ユーノ、ジョーズマン2回白夜龍2回の計4回も破壊してたからなぁ。

「なあカイバーマン、今度は俺ともデュエルしてくれよ!」

 十代がすっごいキラキラした目で頼み込んでたけど、さっきユーノが言われたのと同じく『考えてやろう』の一言で終わりになった。

「ところで、僕らはどうやって帰れば?」
「この世界はお前たちの世界とつながっている。目を閉じて強く念じてみろ」

 言われた通りに皆で目を閉じる。えーと、帰りたい帰りたい帰りたい………っと。ふわっと体が宙に浮き、上に向かって引っ張られるような感覚を感じる。最後に一言だけ、カイバーマンの声が聞こえた。

「いいか貴様ら、己がデュエルを、己がデッキを信じて進め!そこに記したロード、それがお前の未来となるのだ!」





「もごもごもご………ぷはーっ!あ、危なっ!今溺れるとこだったよ絶対!」
『気をつけろアホ。そんなしょーもない理由で死にやがったらわざわざ生き返らせてくれたチャクチャルアに申し訳がたたんだろうが』
『全く、少しは自分の身もことも心配してほしい』
「あれ、チャクチャルさんいたの?」
『…………そう言われるだろうとは思っていたが、私は最初からいた。体が大きいから出てこれなかっただけだ』

 いつの間にかすり寄ってきてたシャーク・サッカーの頭をなでながらまだやいのやいのと言ってるチャクチャルさんとユーノの声を聞き流していると、訳もなく笑えてきた。ふふ、十代達も復活したみたいだしそろそろ帰ろうか。ユーノも元気になったみたいだし、今日の目的は十分果たせた。 
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