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後宮からの逃走

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第二幕その三


第二幕その三

「行くがいい」
「申し訳ありません」
「そなたの心が変わるまで待とう」
 セリムは満月を見上げて述べた。ムハンマドの月を。
「その時までな」
 こう言って彼は姿を消した。続いてコンスタンツェも。ついつい彼女を見失ってしまったブロンデは少し慌てて噴水のところに出て彼女を探すがどうしても見つからなかった。
「参ったわ。コンスタンツェ様は何処に」
「あれっ、ブロンデ」
 今度はペドリロが庭に出て来て彼女に声をかけてきた。
「ここで何をしているんだい?」
「コンスタンツェ様がここにおられたんだけれど」
「おや、それは都合がいい」
 コンスタンツェの名を聞いて顔を綻ばせるペドリロだった。
「いいニュースがあるんだけれどな。コンスタンツェ様にとって」
「コンスタンツェ様にとって?」
「そうさ。ベルモンテ様がここに来られた」
 このことを彼女にも言うのであった。
「ここにな」
「それ本当!?」
「嘘なもんか」
 満面の笑顔でブロンデに話した。
「本当さ。もう船を港の近くに置かれてな」
「船まで持って来られたの」
「今夜のうちに皆で逃げ出そうってことでな」
「それも本当なのね!?」
「全部本当だよ」
 瞬く間に満面の笑顔になったブロンデに対してまた述べたペドリロだった。
「僕が君に嘘を言ったことがあるかい?」
「それはないわ」
 それはというのがあれではあった。
「じゃあすぐにコンスタンツェ様にお知らせして」
「そう。まずはそれだ」
 彼もそれを言うのであった。
「それだけれどね」
「ええ」
「今夜ベルモンテ様がコンスタンツェ様のところに来られてだな」
「もうここにおられるの?」
「ああ、そうだ」
 また満面の笑みでブロンデに答える。
「わしが手引きして入れてもらった」
「やるわね、相変わらず」
「やれることをやるのさ」
 今度は誇らしげな顔になるペドリロだった。
「だからだ。イタリア人の建築家ということでな」
「ベルモンテ様を入れてもらったのね」
「そういうことさ」
「それでどうなったの?」
「コンスタンツェ様の部屋の窓に梯子をかけ」
 こう述べるのだった。
「そしてブロンデは僕が連れてね」
「皆でここから逃げるのね」
「その通り」
 そういうことであった。
「だから早く用意を」
「何て幸せ、何て嬉しさ」
 ブロンデはペドリロからそこまで聞いて早速うきうきとした顔になっていた。
「どれだけ嬉しいかわかる?」
「わかるよ。小躍りしてるじゃないか」
「だって。本当に嬉しいから」
 実際に喜びで小躍りさえしているブロンデだった。小柄な身体でのそれがよく似合う。
「ぐずぐずしてはいられないわ」
「そう、コンスタンツェ様にもね」
「ええ、そうね」
 こうペドリロに返す。
 
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