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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epic16星光と雷光は天壌を照らす~The StaR~

 
前書き
The Star/星の正位置/どんなに苦しい時でも、希望が1つあれば大丈夫。その希望が汝を導く光となる。己の内に宿った希望、どこまでも信じて追い求めよ。

 

 
†††Sideはやて†††

「うあ~。暇や~退屈や~寂しい~わ~死にそうや~」

自室のベッドに寝転がって右にゴロゴロ、左にゴロゴロ。ここ最近ルシル君が一日中家を空けとるから、勉強も自習ばかりになって退屈や。お昼ご飯も独りやし。・・・独りきり。ちょっと前までこれが普通やったのにな。

(ルシル君との生活がホンマに楽しいから・・・)

ご飯食べて、買い物して、お喋りして、おはようもお休みの挨拶も、ルシル君と一緒やから楽しくて嬉しくて・・・ホンマに幸せや。けどこの寂しいのももうちょっとの辛抱や。アイテム集めももう終わりやってルシル君は言うてた。その後の予定ははぐらかされてしもうたけど、このまま一緒に居れたらええなぁ。わたしがお姉さんで、ルシル君が弟。ホンマの家族になれば絶対に毎日楽しいはずや。

「早く帰って来んかなぁ」

ゴロゴロすんのをやめて仰向けになって、「ルシル君と喋りたいなぁ」天井を見つめる。そろそろ夕飯を作らなアカンなって思うたところに、2階からドスンってすごい物音がした。上半身を起こして「え? なに・・? なんや今の・・!?」耳を澄ませる。

「ルシル君、か・・・?」

車椅子に移って階段下まで移動して、「ルシル君・・・?」呼びかけてみる。返ってくんのは無言。ルシル君やったらちゃんと玄関から帰って来るし、もしかして泥棒? もしそうやったらさっき声出してしもうたし。襲われたりでもしたらわたしやと抵抗も出来ひん。

「け、警察・・・!」

スカートのポケットに入っとる携帯電話を取ろうとした時、「うぅ」2階から呻き声が聞こえた。小さい声やったけど、「ルシル君!」の声で間違いなかった。もう一度名前を呼んでみる。そやけどルシル君からの返事は無い。ルシル君に何かあったんや、って直感が働いた。
車椅子から降りて、階段を腕の力だけでよじ上る。その間にも「ルシル君!」の名前を呼ぶ。時間を掛けて2階に上がって、這うようにしてルシル君の部屋へ向かって、そこで見たんは・・・

「ルシル・・・君・・・?」

フローリングの床に横たわっとるルシル君。でも様子が普通やなかった。床に広がる真っ赤な水。それはルシル君から広がってるもんや。思考が止まる。それはつまりただの水やなくて「血・・・?」それもルシル君が流しとる・・・。

「ルシル君・・・?」

綺麗な銀髪も白い肌も、そして服も赤く染まってて酷い見た目で、ルシル君は眠ってるように横たわってた。這ってルシル君の側へ。近くに来てハッキリと判る、鉄のような・・・血の臭い。頭の中が真っ白になる。震える手でルシル君の頬に触ると閉じてた目が開いて、「はや・・て・・?」焦点の合わん目でわたしを見た。

「っ! ル、ルシル君! きゅ、救急車呼ぶから!」

今度は救急車を呼ぶために携帯電話を取り出そうとするけど、ガクガク震えて上手くいかへん。急がなアカンのに。早く病院に連れて行かなルシル君が「や・・嫌や・・」死んでまう。やっと携帯電話を取り出して119をコールしようとしたら「呼ぶ・・な・・・」ルシル君は口から血を零しながらわたしに手を伸ばそうとした。ルシル君の肩から血が流れ出てるんが判る。そこだけやなくて両太ももやお腹、胸からも。吐き気よりも真っ先に涙がブワッと溢れて来た。

「呼んだらアカンて・・。呼ばな死んでまうやんか・・・。このままやとルシル君・・・わたしの前から・・居らんくなってしまうやんか・・・!」

声が震える。そのままわたしは泣き出してしまう。

――女神の祝福(コード・エイル)――

涙で滲む視界の中、「ふぇ?」ルシル君が蒼い光に包まれるんが判った。寒々しい色やのにどこか温かな光。涙と嗚咽がピタッて止まる。ルシル君は息も絶え絶えに「大丈夫だよ、はや・・て・・・私は・・居なくならない」ってニッて笑った。
それからちょっとの間、ルシル君は蒼い光に包まれてた。わたしはずっとそれを見守る。光が治まるとルシル君はゆっくり体を起こして、「死なないさ」ふら付きながらも立ち上った。

「ちょっ、ルシル君!? 起き上がって大丈夫なん!?」

顔色は幾分かマシになっとるけど、あんだけ血を流した所為かまだ悪い方や。床の血溜まりを見る。普通の人やったらこんだけ血を流してもうたら死んでまう。わたしの視線に気付いたルシル君は「ごめん、すぐ片付ける」って言うて、深呼吸を1回。そして左手を翳して、「氷結」と一言。すると血溜まりやルシル君に付いてた血が全部一瞬で凍りついて、雪のように散った。

「ふぅ・・。心配をかけた。・・私は・・もう大丈夫。一晩休めば・・・元通りだよ」

「ホンマに・・!?」

微妙にフラついとるからそう確認してみると「もちろんだとも」ルシル君は自分の頬を両手で張った後、「ひゃあ!?」わたしをお姫様抱っこした。いきなり過ぎて悲鳴が出てもうた。「ごめんごめん」ってルシル君は謝ってくれるんやけど、ちょお笑おてる。

「いきなり過ぎやルシル君」

「一言断るべきだったって思う」

「そうやよ。・・・でもま、お姫様抱っこ、憧れやったし・・・うん、許す」

「あはは。そうか」

ルシル君にお姫様抱っこしてもらって1階へ。それから2人で夕ご飯を食べて、そしてルシル君は次の日のお昼過ぎまで爆睡した。

†††Sideはやて⇒イリス†††

結局、ジュエルシードの大半をフェイト陣営に奪われてしまった。医務官のティファに、先の戦闘で負ったダメージを治してもらったわたし達は、ミーティングルームに集まった。集まったのには理由がある。それはミーティングテーブルの中央に浮かぶ球体上のモニターに表示されている1人の女性について。
映し出されているのは、「プレシア・テスタロッサ。ミッドチルダはアンクレス地方出身の、大魔導師」だ。次元航行エネルギーの開発を専攻していた、大層な肩書を持っていたエリート。

「テスタロッサって。まさかこの女の人・・・」

「フェイト・テスタロッサの親族――母親だ。彼女自身、母さん、と言っていたしな」

なのはにそう答えるクロノ。現場に居たわたし達は確かに聞いた。フェイトが、母さん、と呼んだことを。それに登録データと先のアースラへ行った攻撃の魔力パターンが局のデータベースと一致したため、プレシア女史本人と断定。そのプレシア女史に向かってそう呼んだんだから、フェイトとプレシア女史は親子関係になる。でも実際は違う。すでにわたしがカリム(コネ)を使って調べておいた情報からして親子関係にはならない。

『リンディ艦長、クロノ。フェイトとプレシア女史の関係のこと、なのは達に話した方が良いのかな・・?』

『今はまだ止した方がいいだろう。変に真実を知って、これからの戦いに迷ってほしくない』

『そうね。おそらくフェイトさん達はこちらのジュエルシードを奪いに来るはずだわ。その時の迎撃になのはさん達を起用することになるでしょう。迷いが有っては勝てないわ』

わたしと同じ意見で良かった。わたしですらショックだったんだもん。本当に優しいなのは達がフェイトの真実を知ったら、絶対にこれまで通りとはいかなくなる。知るにしてももっと後、せめてこの事件が終わってから。それまでは隠し通さないと。だから今はフェイトと母親は親子なんだってなのは達に伝えておくことにしたんだ。

「・・・今日はもうこれで解散としましょう。なのはさん達もご苦労様でした。フェイトさん達に動きがあるまでは待機となります。しっかりと休んでください」

先の雷撃魔法について不安がっていたなのは達に、その術者のことを知らせるためのミーティングでもあった。テスタメント部隊やレーゼフェア達じゃないことを知り、なのは達から緊張が消えた。その代わり別の問題が発生しちゃったけど。フェイトとアルフにすら攻撃を加えようとした母親、プレシア女史。アリサとセレネ、エオスはかなり不機嫌で、なのはとすずか、ユーノは悲しそう。いま伝えられることを全部伝えて、本日最後のミーティングはこれにて終了、解散となる。

「「「「「「はい」」」」」」

なのは達が退室した後、リンディ艦長やクロノと今後の方針を話し合って、フェイト達の捕縛を最優先ってことが決定。そして夕飯をなのは達と済ませて、「気持ち良かったぁ♪」入浴を済ませて髪を乾かしていると、『休んでる最中にすまないな。緊急だ』クロノから通信が入った。
その内容としては、この世界に転移してきた魔力反応をキャッチしたとのことだった。入浴途中のなのは達はすぐに出撃できず(当たり前だよね)、わたしにお鉢が回って来た。

「(せっかく綺麗にしたのに・・・むぅ)了解です。用意するから待ってて」

『すまないな。反応が1つなんだ。おそらく――』

「テスタメント、か。なのは達じゃキツイか。すぐに行くよ。魔力反応、逃がさないでね」

『ああ。判っている』

デスクの上に置いてある細い鎖を通した指環の首飾り――待機モードの“キルシュブリューテ”を手に取って、「行くよ」わたしはパジャマから騎士甲冑へと変身。部屋を出てエントランスのトランスポーターへ。その間にも『魔力反応はその場から動かない』って報告してくるクロノ。

「動かない? それって生物なの?」

『おそらく、としか言いようがない。とにかく急いでくれイリス』

「了解!」

そしてわたしはトランスポーターから魔力反応の在る現場へと直接転移する。海鳴市は陽が落ち始めていて、しかも現場は街灯の無い林の中だから急いで発見しないと。“キルシュブリューテ”を起動させ、いつでも戦闘行動に入れるように警戒。探し物は労することなく見つけることが出来た。狼の耳と尻尾を有した、スタイルの良い女の子――アルフが地面に横たわっていた。

「アルフ!?」

アルフに駆け寄ってみる。まず一番最初に目に入ったのはお腹に開いた穴。傷口からして魔法によるものだ。けど非殺傷設定の魔法じゃ付けられない傷。物理破壊設定で食らってる。完全な違法行為。魔法生命体である使い魔なら簡単には死なないけど、これを魔導師や一般人が受ければ致命傷だ。

「ううん。考えるのは後だ。こちらイリス。重傷のアルフを発見。ティファに連絡を」

『っ! 判った。すぐにティファレト医務官を向かわせる』

クロノはすぐに応じてくれた。ティファのことだからすぐには来ないかもって思っていたけど、ティファはすぐに来てくれた。肩に掛かるくらいの青髪。眠たそうに垂れ下がった黄金の瞳。局の制服に白衣を纏う、本局医務局トップの実力者。医療道具を入れたカバンをドサッと置くとすぐにアルフを診て、「これくらいならすぐ治せる」簡潔にそう告げて両膝立ち、横たわってるアルフのお腹に両手を翳した。

――べーテンハイル――

ティファの両手から溢れ出す黄緑色の魔力がアルフのお腹を中心に全身へ広がってく。見る見るうちに小さな傷は治っていって、お腹の穴も少しずつだけど小さくなってる。デバイス無しでこれだけの治癒魔法が使える。だから眠ってのサボり癖があってもクビにならない。ティファの魔力光が消える。アルフの顔色が良くなってるのが判る。ティファは小さく「ふぅ」息を吐いた。

「イリスお嬢。私が患者を運ぶ。だからカバンをお願い」

「勤務中はそう呼ばないでよティファ」

「お嬢はお嬢。それは昔から変わらない」

アルフを軽々と横抱きにしたティファ。わたしはカバンを手に、アースラに転送されるのを待つ。そしてアースラに転送されるとティファと一緒に医務室へ向かい、途中でクロノと合流。ティファの後について医務室に入ると、「彼女の容体は?」クロノがティファに尋ねる。

「容体安定です。実に素晴らしい使い魔。マスターの腕が良いんだと思いますよ。使い魔特有の再生力を少し強化しただけで、すぐに回復しました。そろそろ意識が――」

「・・ぅ・・ん?・・ここは・・・!?」

ティファがフェイトをベタ褒めしてると、アルフが目を覚ました。アルフと目が合う。と、「局の騎士!?」目を見開いて、臨戦のためかベッドから転げ落ちた。んで、ヨロヨロと立ち上った。わたしとクロノは戦う意思が無いことを示すために両手を上げる。

「ちょっと待つんだ」

「わたしとクロノに戦う意思はないから」

ティファはティファで「大人しくして」アルフの両脇に腕を通してひょいっと持ち上げてベッドに寝かせた。そのあまりの呆気なさにアルフは抵抗も出来ずにされるがまま。けどすぐに「フェイト!」って暴れ出した。

「暴れちゃダメ」

――鎮めの舞花――

力づくで横にしたアルフに馬乗りになったティファ。アルフの額に手を置いて魔法を発動。花弁のように舞う魔力が室内に満ちる。「どうなってんだい・・・?」アルフは困惑しながらも暴れるのをやめて静かになった。範囲内の生命すべてを鎮静させる。どれだけ相手が興奮していても、ティファのこの魔法の前じゃ一発で落ち着く。

「クロノ執務官。イリスお嬢。効果は5分ですので、事情聴取は短めで」

「すまない、ティファレト医務官」

ティファが席を外し、わたしとクロノはアルフと話すために残る。クロノに『ここは同性のわたしに任せて』と言って、『判った』任されたことでわたし1人がアルフの側へ。

「じゃあ、話を聴かせてもらってもいいかな? そっちにも何か事情があるようだしさ」

「・・・・何でも話すよ。その代わり条件が在るんだ」

「法に触れない限りなんでも」

「フェイトを助けておくれ。ただ、それだけさ」

アルフから語られた、テスタロッサ陣営の現状。内容は最悪なものだった。特にショックだったのは「テスタメントが・・・殺された・・・」ことだった。テスタメントはジュエルシードを全部プレシアに奪われ、グランフェリアと名乗る情報屋の物理破壊の魔法を受けて死んだ。

『アルフの話、どう思う? わたしは事実だと思う。フェイトがプレシア女史――プレシアを恐れた理由、アルフの話とその現状から見れば、ね』

『僕も同意見だ。仕置きとして鞭で叩かれ続ければ嫌でも怯える。アルフの怪我を見てもそうだろう』

クロノの声色には怒りが含まれている。そういうわたしもプレシアの所業にキレそう。いくらフェイトがプレシアにとってただの・・・ああもう、ムシャクシャする。

「グランフェリア・・・。エイミィ」

『はいは~い』

「グランフェリアという情報屋について情報を集めてくれ。大至急だ」

クロノの切迫した雰囲気に『りょ、了解!』エイミィは焦るように応じた。わたしとクロノは無言になる。あまりに想定外な事態に陥ってる。先に沈黙を破ったのは「・・・このこと、なのは達には話せないよね・・・」わたしだ。フェイトの真実でも相当なのに。テスタメントの死。これは結構キツイわ。でももう済んでしまったこと。過去は変えることは出来ない。ならいま思うことは・・・。

「お2人とも。時間です」

洗脳されている可能性の高いフェイトの迎撃、そして救出について思考を巡らせているところにティファが戻って来た。アルフはもう落ち着きを取り戻していると思うけど、ティファの医務官としての決定権にはわたし達は逆らえないから、医務室を後にすることに。

「失礼した」

「アルフ。明日、なのは達と会わせるから。大丈夫。あの子たちならきっとフェイトを助けてくれる。もちろんわたし達管理局も協力するから」

「っ・・・感謝、するよ・・・」

ふいっと顔を逸らすアルフ。素直になれるわけないか。ほんの少し前までジュエルシードを巡って敵対していたんだし。とりあえず明日、テスタメントの死とフェイトの真実を隠して、なのは達に事情を説明しないとね。

†††Sideイリス⇒なのは†††

「フェイトちゃん。必ず助けるから。だから来て。ジュエルシードが・・・欲しいんでしょ」

時刻は午後1時。私はただ1人、海鳴臨海公園に来ている。昨夜、私たちがお風呂に入っている頃、シャルちゃんがアルフさんを連れて来た。それを知ったのは今朝。食堂でみんなで朝ご飯を食べている時で、ご飯を食べた後、アルフさんの居る医務室へ向かった。
そこでアルフさんとお話しした。フェイトちゃんが今どういった状況なのか。それはとても悲しくて、辛くて、聴いているこっちが泣きそうになっちゃうくらいのお話。

――フェイトはグランフェリアって奴に洗脳されて、強化された状態であんた達のジュエルシードを奪いに来る――

だからこうして迎え撃つためにここに来たんだ。

――管理局が介入してきたあの日、フェイトの様子がおかしかったろ。あれもソイツの所為なんだ――

あれはショックだった。フェイトちゃんがまるでジュエルシードを集める為だけの人形のように思えて。

――こんなこと言えた義理じゃないけどさ。ホントのフェイトはすっごく優しくて良い子なんだよ。だから・・・お願い、フェイトを助けて――

助けるよ。だって私も、みんなもフェイトちゃんと仲良くなって、友達になりたいから。目を閉じて、シャルちゃんとの特訓で学び鍛えた魔法、そして技術を脳裏で反復していると、『転移反応を感知。魔力パターンは・・・フェイトだよ!』アースラで待機してるシャルちゃんから通信が来た。目を開けて空を仰ぐ。途切れ途切れに浮いてる白い雲を突き破って現れた黄金に輝く雷が、海面に落ちた。

『なのは。フェイトのこと頼むわよ』

『私たちはきっと足手まといになっちゃうから、なのはちゃんにお願いするしか出来なくてごめんね』

『ううん。ちゃんと一緒に戦うよ。みんなの想いと一緒に』

空を飛べないアリサちゃん、機動力の無いすずかちゃんとユーノ君、デバイスの無いセレネちゃんとエオスちゃんもアースラで待機。もちろんアルフさんも。フェイトちゃんと戦わせることなんて出来ないし。だから私独りで戦う。
決意を新たに“レイジングハート”の柄を握り直すと、水煙の中からフェイトちゃんが姿を現した。前髪で隠れて見えない表情。でも感じる。今のフェイトちゃんは絶対におかしいって。そんなフェイトちゃんが顔を上げてこっちを見た。

「フェイトちゃん・・・!?」

両頬と額に羽のような模様が浮かんでいて、紫色に光ってる。そして綺麗な赤い瞳も微かに光ってる。アルフさんの言う通りグランフェリアって言う人に操られているんだ。

「(酷いよ。洗脳するなんて・・・)フェイトちゃん。私のこと、判る?」

呼びかけてみると、「接敵確認(エンゲージ)。バルディッシュ」フェイトちゃんは応じてくれず、ただそう言って“バルディッシュ”を変形させた。槍のような形になって、柄頭から光の翼が生えた。“レイジングハート”で言うシーリングフォーム。今まで感じたこともない威圧感がフェイトちゃんから発せられて、全身から汗が噴き出る。

「ピアッシングランサー」

「っ・・・!」

そう一言呟いたかと思えば、フェイトちゃんがものすごい速さで突進してきた。迎撃は無理だと判断して、“バルディッシュ”の突き攻撃を横移動することで回避。私の側を通り過ぎて行ったフェイトちゃんの動きに合わせて振り返る。15mほど先で急停止したフェイトちゃんの周囲にはすでに放電する魔力スフィアが10基と展開されていた。

「フォトンランサー・マルチショット・・・ファイア」

一斉に放たれてきた高速の魔力弾。今度は上昇してそれらを回避する。私もまた魔力スフィアを6基展開して、「ディバインシューター・・・シューット!」私を見上げてるフェイトちゃんに向けて発射。

≪Blitz Action≫

フェイトちゃんの姿が掻き消えて、その見失う。シューターを操作して急停止。フェイトちゃんを捜す間もなく頭上からデバイスが変形する機械音が聞こえた。急いで後退。その直後、振り下ろされた“バルディッシュ”の魔力刃が目の前を通り過ぎた。
勢いを付けすぎたフェイトちゃんは前転して、私の顔の前にフェイトちゃんの横顔が来た。目だけを動かして私を見るフェイトちゃん。微かに光る瞳だけど感情が無い。胸が締め付けられるような悲しみを覚える。

「レイジングハート!」

≪Flash Move≫

さらに高速移動魔法で後退しながら「シューット!」シューターを再発射。足元から迫るシューターに気付いたフェイトちゃんは私への追撃をしないで急上昇。目でフェイトちゃんを追いながら、私は“レイジングハート”をフェイトちゃんに向ける。
けどフェイトちゃんは本当に速い。シューターがギリギリ追いつける程だから砲撃の照準が合せられない。結局、シューターは“バルディッシュ”の魔力刃で全弾真っ二つにされた。でも動きが僅かに鈍った。

≪Short≫

「バスタァァァーーーーッッ!!」

チャンスだと思って威力や射程をある程度犠牲にしてチャージ時間を短縮した高速砲撃、ショートバスターを撃ったんだけど、やっぱり瞬発力が圧倒的なフェイトちゃんもは避けられた。でもマントの裾は撃ち抜けた。ショートバスターの速度なら、距離が近ければ直撃できると確信。

「フォトンランサー。ファイア」

――フォトンランサー・マルチショット――

お返しとばかりにフェイトちゃんが魔力弾を10発と放って来た。私は逃げの一手。下手に防御して距離を詰められて、近接戦に持ち込まれたら危ないから。一応、シャルちゃんから鬼のような近接戦の特訓を受けてるから圧倒的不利になるとは思えないけど、念のために、ね。

(追いかけて来たね、フェイトちゃん)

10数m上空から私を追いかけて来るフェイトちゃん。高低差による不利な状況。案の定、「フォトンランサー・フルオートファイア」魔力弾を空から連射してきた。飛行の軌道を一直線じゃなくてジグザグにすることで命中されないようにする。魔力弾が海面に着弾することで水柱が次々と立ち上って、海水が雨のように私に降りかかってくる。

「レイジングハート。ディバインシューター、いくよ」

≪現状では彼女の姿をハッキリと捕捉できないため、命中率が著しく下がりますが≫

「ううん。フェイトちゃんに向かって撃つんじゃなくて・・・」

確かに空を見上げないとダメだ。でも違う。目線を数十m先の海面へ向ける。“レイジングハート”はそれだけで察してくれたようで、≪了解です、マスター≫って応じてくれた。フェイトちゃんの攻撃を避け続けながら5基のスフィアを展開。

「シューット!」

全弾を数m先へ一斉に放つ。シューターが着弾して大きな水柱が立ち上る。そのまま直進。水柱の中に突っ込んで急停止して、すぐに後退して水柱から出る。きっとフェイトちゃんは直進してるはず。だから「この辺りかな・・・」フェイトちゃんの飛行速度を考えて予想した軌道の先へ“レイジングハート”を向ける。水柱が崩れる前に、フェイトちゃんが私の狙いに気付く前に・・・

「ディバイン・・・バスタァァァーーーーッッ!!」

撃った。水柱を消し飛ばして、バスターは一直線に狙い通りの場所に居たフェイトちゃんへ突き進んでいく。考えた通りに上手くいってくれた。水柱と水煙を利用してフェイトちゃんの視界から失せて攻撃から逃げる、ついでに私の攻撃の出だしを隠す目晦ましにして、命中率を上げる。でも正直これで決まるとは思ってない。ついでの理由は元々あんまり期待してなかったし。

――ブリッツアクション――

だからバスターを高速移動魔法で避けられても何とも思わない。私がフェイトちゃんの攻撃から逃れることが出来ただけで十分な成果。私は高低差を埋めるために急上昇しながら「シュート!」シューター6発を降下して来るフェイトちゃんへ向けて発射。フェイトちゃんは“バルディッシュ”の魔力刃で斬り裂いたり回避したりと対処しながら、距離を詰めて来る。

「ショートバスターッ!」

高速砲で迎撃。フェイトちゃんは飛行速度を全く落とさないで紙一重で回避した。距離を詰めれば詰めるほど回避し難くなるのに、それでも突進して来る。でも距離が縮まる前に高低差で有利になった私はスフィア5基を展開して、足元から追いかけて来るフェイトちゃんに一斉発射。シューターに対処してる最中に、「ショートバスターッ!」もう一度高速砲を撃つ。

「っ・・・!」

――ラウンドシールド――

ついにフェイトちゃんが防御に入った。高速砲を防御したことで生まれたその隙を逃さない。さらに高速砲を撃って足止めして、「シューット!」すぐにシューターを6発発射。1発を正面、1発は右、1発は左、1発は上、1発は下、もう1発は背後からの包囲攻撃。
全弾じゃなくても半分くらいは当てられる。そう思った矢先、≪Photon Lancer Multishot≫って“バルディッシュ”が言ったのが聞こえた。直後、“レイジングハート”に≪マスター!≫切羽詰まった感で呼ばれた。直感と“レイジングハート”の意思が同時に働いた。振り向きざまにシールドを展開した瞬間、5発の魔力弾が着弾。

「きゃぁぁぁぁぁッ!?」

咄嗟だったからその衝撃に耐えられずに弾かれる。と、シューターの操作を一瞬でも怠ったことにハッと気づく。私はほとんど無意識にフェイトちゃんが居た方へ向けて“レイジングハート”を翳してシールドを展開。遅れて体の向きを直している途中で「はっ!」フェイトちゃんの声と一緒に≪Scythe Slash≫魔力刃がシールドに当たった。

「っつ・・・!」

シールド越しにフェイトちゃんと顔を合わせながら、さっき放ったシューターの確認をする。6発のうち1発(軌道が一番大回りだったやつだ)しか残っていないけど、それで十分。シューターをもう一度フェイトちゃんの背後へ。あとはフェイトちゃんがどう動くか。
もう少しで着弾というところで、フェイトちゃんがハッとして背後に振り返った。そして柄から左手を放してシューターへ翳して、「ラウンドシールド」シールドを張る。力が緩んだ今こそ離れるチャンス。シューター着弾に合わせて≪Flash Move≫で後退。

「ショート・・・バスタァァーーーッ!」

すかさず高速砲でフェイトちゃんを狙う。そんなに離れてない距離からの高速砲。この距離なら防御も回避もまず出来ない。フェイトちゃんも例に漏れないはずだと思った。だけど≪Arc Saber≫フェイトちゃんは片手で“バルディッシュ”を振るって魔力刃を飛ばした。魔力刃は砲撃を縦に真っ二つ斬り裂きながら、そのまま私へ向かって来た。

「うええっ!?」

まさかシャルちゃんと同じようなやり方で対処して来るなんて思いもしなかった。ディバインバスターに比べれば威力が低くて魔力密度も薄いショートバスター。それでも本気の砲撃だった。それを簡単に斬り裂くんだから、防御しても押し切られる可能性がある。そう判断して、横移動して回避。

「セイバーブラスト」

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

魔力刃とすれ違った瞬間、魔力刃がドンッ!と爆発を起こした。至近距離での爆発で生まれた衝撃波に煽られて、踏ん張りきれずに体勢を崩しちゃう。

「サンダースマッシャー・・・!」

そこに放たれたフェイトちゃんの砲撃が、目の前にまで迫って来た。体勢を整えれていないけど、「フラッシュムーブ!」無理やり高速移動。急速上昇することでギリギリ回避できたけど、すでにフェイトちゃんは追撃の為に私の目の前に移動して来ていて、

「はっ・・・!」

――サイズスラッシュ――

“バルディッシュ”を勢いよく振り上げてきた。フェイトちゃんの背後に回り込むように横移動で回避しつつ、“レイジングハート”を向ける。だけど切り返された“バルディッシュ”の薙ぎ払いで、「きゃあ!」“レイジングハート”を上に弾き逸らされた。フェイトちゃんの左手の平が、両腕を掲げてしまってがら空きな私のお腹に翳される。

≪Round Shield !≫

≪Photon Bullet≫

シールドが展開された瞬間、フェイトちゃんの左手の平から1発の魔力弾が放たれた。たったの1発。そう思ってたけど、その1発でシールドが破壊されちゃった。ピシって音がした瞬間に体を逸らしたおかげで直撃は免れたけど、フェイトちゃんの攻撃は続く。振るわれる“バルディッシュ”の一撃を“レイジングハート”の柄で受け止める。

「ぅぐ・・!(重い・・・!)」

連続で振るわれてくる一撃一撃を、柄で防御して応戦。距離を開けようにもそれを許してくれない。シャルちゃんとの近接戦の特訓を受けてなかったら危なかった。何度目かの鍔迫り合いの最中・・・

「せぇぇぇいッ!」

「ぐっ・・・!」

フェイトちゃんに頭突き。額に小さなシールドを張っていたおかげで私に痛みは無い。けどフェイトちゃんは頭突きが予想外だったのか直撃を受けて、少しふら付いた。今のうちに距離を開けよう。高低差を考えてもっと上に。そう思って上昇したら、「え・・!?」足首をフェイトちゃんに掴まれた。そしてジャイアントスイング?みたいにブンブン回されて、ポイッと放り投げられた。

「ぅく・・・!」

視界がグルグル回る。なんとか体勢を整えたんだけど、その時にはもう手遅れ。目の前に現れたフェイトちゃんに「ぐっ・・・!」裏拳で顎を殴られた。さっき以上に視界がグルグル、グニャグニャ。脳震盪を起こしたんだって揺らぐ思考の中で判った。

「これで終わりだ」

――サンダースマッシャー――

目の前に現れる黄金の魔法陣。何をすることも出来ずに砲撃を受けちゃった。唯一の救いは、“レイジングハート”が直前でバリアジャケットの防御力を上げて私を護ってくれたこと。だから私は何百mと吹き飛ばされて、森林の中に突っ込んで樹に叩き付けられても気を失わず、「痛っ・・・でも、まだ戦える・・・!」軽い全身打撲だけで済んだ。体のあちこちが痛いけど、手も動くし足も動く。

『なのは! 大丈夫なの!?』

『なのはちゃん!』

アリサちゃんとすずかちゃんから私を心配してくれる念話が。2人からだけじゃなく、ユーノ君たちからも『大丈夫!?』そういった念話が送られてきた。私は『大丈夫だよ。ちょっと体が痛いけど、まだ戦えるっ!』元気いっぱいに応えた。そうしたらみんなはホッと安心してくれた。ありがとう、私は大丈夫だよ。

「フェイトちゃん。やっぱり強いね」

≪はい。魔導師としてのレベルではまだ負けています。ですが――≫

「それでも勝たないとね。フェイトちゃんが可哀そうだもん」

森林のずっと奥、海上に居るはずのフェイトちゃんへ目を向ける。よし。とにかくフェイトちゃんに勝つ。洗脳を解くためにも、まずはそれからだ。“レイジングハート”を杖代わりに立ち上った。その時、「高町なのは」背後から私を呼ぶ声。
この声は「テスタメントちゃん!?」のものだ。周囲を見回してその姿を捜すけど、見つけられない。アルフさんとシャルちゃんに聴いた限りじゃテスタメントちゃんはジュエルシードを持って逃げたって話だったけど。

「シッ。静かにして、ステルスの魔法で姿を隠してるから、あなたには見えないんだ。とにかく今は私の話を聴いて。フェイト・テスタロッサを元に戻す協力をしたいんだ。オーケーなら1回頷いて。拒否するなら首を横に振って」

願ってもない提案だった。私は口を噤んで、コクリと頷いて見せた。アリサちゃん達やシャルちゃん達にも報せた方が良いと思ったけど、テスタメントちゃんの切羽詰まった様子にそれが出来なかった。

「今からあなたのデバイスに、グランフェリアの施した術式を破壊するアンチ術式を施す」

テスタメントちゃんの話はこうだ。今のフェイトちゃんは特別な術式のバリアで護られてる。それがある限り、フェイトちゃんは墜ちない。だからまずはそのバリアを破壊するための術式が付加された私の魔法で打ち破る。
そして洗脳術式も同じようなやり方で破る、って。話を聴いてる間、あちこちで爆発が起きた。きっとフェイトちゃんが私を捜してるんだ。見えない「テスタメントちゃん」に急かすようにお願いする。

「それじゃあレイジングハートを掲げて」

「うん」

言われる通りにする。

――破り開け(コード)汝の破紋(メファシエル)――

――呪われし者に(コード)汝の施しを(ラファエル)――

“レイジングハート”が薄らと銀色の光を帯びた。

「それで大丈夫。レイジングハートに付加した術式は2つ。だけどこれには問題がある。共に攻撃魔法にのみ、そして一度限りの効果しか発揮できない。1発目で障壁破壊。2発目で洗脳破壊になる。つまり――」

「チャンスは両方とも1回限り、ってことだよね」

「そういうこと。しかも両方、あなたの全力に近い攻撃じゃないと意味が無い」

それはかなり難しい。未だにフェイトちゃんに魔法を直撃させることが出来ていない。けど成功させないとフェイトちゃんを元に戻せない。だったらやるしかない。

「私に出来るのはここまで」

「ありがとうテスタメントちゃん。あ、でもあとで必ず会おうね。テスタメントちゃんのジュエルシードを回収しちゃいたいから」

去って行く気配がしたから、テスタメントちゃんに向けてそう言う。返事は無いかなって思っていたけど、「高町なのは」応じてくれた。

「・・・これからフェイト・テスタロッサは自分の真実を知って、心に大きな傷を受ける。あなた達もまたショックを受けると思う。けど、それでもフェイト・テスタロッサの友達になりたいって思い続けてほしい」

「え? どういうことテスタメントちゃん・・・?」

「あの子の心を支えてあげてほしい。友達として、仲間として。これからずっと」

それだけを言ったテスタメントちゃんはこの場から去ったようで、その気配が消えた。フェイトちゃんの真実? それで私たちもフェイトちゃんもショックを受ける。どう意味かはまだ解らないけど、今はとにかくフェイトちゃんを助けることに専念する。
爆発が近くなって来てる。飛行魔法――フライヤーフィンを発動し直して、木々の上に出ないように地面スレスレを飛んで海上を目指す。下手に出て狙い撃ちされるのも嫌だし。森林から飛び出て、海上に到着するより早く高度を上げる。

≪マスター。後方5時、距離120m、高度19mに魔導師です。高速射撃魔法をスタンバイしています≫

“レイジングハート”の報告に「ん」って応えた時、「ファイア」その号令の下、魔力弾が6発と飛来してきた。大きく弧を描くようにさらに上昇。天地が逆さまになる中、フェイトちゃんの姿を確認。どうにかして動きを止めないと。一応、手は考えてある。あとはそれを実行できるようにすればいい。

(フェイトちゃん・・・?)

ふと、フェイトちゃんが一切の戦闘行動をやめていることに気付く。両腕を垂らして、俯き加減。どうしてか判らないけど、これはチャンスかもしれない。そう思って“レイジングハート”を向けたその時、フェイトちゃんの姿が掻き消えた。次に現れたのは私と同じ高度。距離は大体110m前後。スッと顔を上げたフェイトちゃん。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル・・・」

そんな詠唱が聞こえた。フェイトちゃんの周囲に現れる30基以上のスフィア。

――ライトニングバインド――

「え・・・!?」

その圧倒さに驚いてしまっていた所為でバインドに気付くのが遅れた。しかもかなり堅い。破壊するには時間が掛かる。だけどフェイトちゃんがそんな猶予を与えてくれるとは思えない。

「撃ち砕け、フォトンランサー・ファランクスシフト・・・・ファイア」

スフィア1基1基から幾つもの魔力弾が飛来してきた。並の防御じゃ確実に墜とされる。でも「レイジングハート!」やユーノ君と一緒に考えて組んだ、あの魔法でならきっと。

≪Lightning Protection≫

対雷撃系魔法に特化したバリアが私の前面に展開される。直後、ものすごい勢いで魔力弾が殺到してきた。次々と着弾していく。それをバリアを挟んで見ることになってる私。これ、かなり怖い。破られない自信はある。でも「ひゃぅ」着弾音や衝撃は感じるから、すごく恐ろしい。というか、一体どれだけの数が撃ち込まれて来るんだろう。確実に1000発は超えてる。

(あ、フェイトちゃんのバインドが・・・)

攻撃が止むと、私を捕えていたバインドがすぅっと音も無く消えていった。ようやく自由になれた。よし。今度は私の番だよ、フェイトちゃん。手加減無用でやるからね、フェイトちゃんと同じように。煙幕の向こう側に居るフェイトちゃんへ“レイジングハート”を向け、チャージ開始。
フェイトちゃんの側にはまだかなりの魔力を感じる。きっと今ので決められなかった時のための保険。でもそれをも上回って見せる。「あ、テスタメントちゃんの魔力が」私の魔力に交じるのが判る。

「(1発目で防御破壊、2発目で・・・洗脳を解く!)行くよ、レイジングハート!」

≪はい、マスター!≫

「ディバイン・・・」≪Divine≫

煙幕が晴れ始める前に、

「バスタァァァァーーーーーーッッ!」≪Busuter !!≫

砲撃を放つ。ディバインバスターをまるでコーティングするかのような銀色の魔力が薄ら見える。バスターは煙幕を完全に吹き飛ばして、私が無事だったことに目を見開いて驚いてるフェイトちゃんへ一直線。けど気を取り直したフェイトちゃんは周囲に浮かぶスフィア20基ほどを集めて、とても長い雷撃の槍にした。

「スパーク・・・エンド・・・!」

投擲された槍はバスターと真正面から衝突。フェイトちゃんの槍もすごい魔力を有してた。けど、私のバスターの方が上だった。拮抗は僅か数秒。バスターは槍を呑み込んで、フェイトちゃんへ。今の槍によほど自信が有ったようで、槍がバスターに呑まれちゃってフェイトちゃんは呆然と佇んだまま。そしてバスターの直撃を・・・「あっ・・・!」ギリギリでシールドで防いだのが見えた。

「(でも負けない。このまま押し切って見せる!)いっっっけぇぇぇぇぇぇぇッ!」

魔力を絞り出して、バスターの放射に回す。それでも槍以上に拮抗しちゃう。でもようやくガシャンとガラスが割れたかのような音が耳に届いて、バスターがフェイトちゃんを呑み込んで大爆発を起こした。今のできっとバリアが解けてるはず。なら次は、洗脳を解くための全力全開の魔法だ。最後の一撃の準備を始めるために高度をグッと上げて、眼下の煙幕を見詰める。煙幕の中からフラフラと飛び出してきたボロボロなフェイトちゃんを視界に収める。

≪Restrict Lock≫

そんなフェイトちゃんにバインドを掛ける。ここまで来て最後にこの一撃を外したくない。

「レイジングハート・・・アレ、行けるね・・・?」

≪もちろんです≫

「よし。じゃあ始めよう・・・!」

知恵と戦術、とっておきにして最後の切り札。“レイジングハート”と一緒に頑張って組んだ、砲撃魔法の最高位。大気に満ちる使え切れなかった私とフェイトちゃんの魔力を私の元に集めて、自身の魔力も一緒に合わせて放つ、集束砲撃。私の前方に生まれる桜色の巨大な魔力。それにまたテスタメントちゃんの銀色の魔力がコーティングされる。

「フェイトちゃん! 今、助けるから!!」

“レイジングハート”を掲げ、

「スターライトぉぉ・・・!」

前方の魔力へと振り下ろす。

「ブレイカァァァァァーーーーーーーーーッッ!!」

≪Starlight Breaker !!≫

魔力は一瞬収縮して、前面に展開されていた魔法陣を砲門として発射された。

「う、うわあああああああああああああああッッ!!」

――マルチディフェンサー――

絶叫したフェイトちゃんが五重のシールドを張ったのが僅かに見えた。けど、ブレイカーはなんの抵抗も受けずにフェイトちゃんを呑み込んで海面に着弾、大爆発を起こした。

「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・!」

正真正銘、私の全力全開の魔法。もう戦えるだけの魔力も体力も残ってない。大きく肩で息をしながら眼下を見下ろす。と、煙幕の下からフェイトちゃんが力なく落下して、海に落ちた。

「フェイトちゃん!」

急いで救出に向かう。海面に飛び込んで、沈んで行くフェイトちゃんと“バルディッシュ”を抱えて海上へ。

「フェイトちゃん・・・」

両頬や額に浮かんでた羽の模様はもうどこにも無い。あとは気が付いたフェイトちゃんが正気かどうかを確かめるだけだ。横抱きにしたフェイトちゃんの顔を伺っていると「ぅ・・ん・・うう・・・あ・・・!?」少し唸った後、フェイトちゃんがゆっくり目を開けた。

「フェイトちゃん!」

「っ・・・君は・・・。私・・・そうか、負けたんだ・・・」

フェイトちゃんの瞳に宿る感情。妙な光も灯ってない。良かった、洗脳はちゃんと解けてくれたんだ。安堵でいっぱいになる。

「えっと、今までのこと、憶えて・・・?」

「うっすらとだけど・・・」

フェイトちゃんの瞳が悲しみ色に染まる。グランフェリアっていう人に操られてから今までのことを憶えてるんだ。アルフさんも言っていた。フェイトちゃんのお母さんの命令で、フェイトちゃんは洗脳されたんだって。それを思い出してるんだと思う。

『なのは。雲行きが怪しい。すぐにフェイトを連れて帰艦して』

「う、うん。判った」

シャルちゃんにそう応じたその時、真っ黒な雷雲が立ちこみ始めた。


 
 

 
後書き
サバアーアルカイルヤ。アッサラーム・アライクム。マサーアルカイルヤ。
なのはVSフェイトも終わり、次回はなのは達にとってのラスボス戦となります。
話中のいくつかのフェイトの魔法ですが、劇場版のものを使わせていただきました。

 
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