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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第48話 二戦 あるいは三戦のようです


Side 刹那

『オラオラオラオラ、どうした嬢チャン!この程度じゃ月詠様に届かないゼェェェ!?』

「この……!!『斬光剣』!!」
ガキィン!
『おぉっと、アブねェアブねェ。』


針のように細い鬼に、修行中ではあるものの最も速い『斬光剣』を放つが、

長さが橋の幅程もある大剣を持った鬼に防がれてしまう。


「『十一鬼王』とか言ったな……。確か、真田幸村と十勇士が密かに封印した、

全力を持ってすれば『鬼神』も倒せると謳われた、鬼にただ一つしか存在しない戦闘集団。」

『ほぉぉぉウゥ、我らの事を知っておるとは。

そのような人間、久しく見たゾ!博識な嬢チャンだ。殺すにハ惜しいのう。』

『シカシて妙。我ラを描いた書、全テ葬られたハズナリ。』


それはそうだろう。

実際に焼いた人から聞いたのだから、これを知っている人が如何に稀有な存在か知っている・・・。

そして、こいつらの危険性も。


「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃぁぁーー!いらない事してると、燃えちゃうよぉぉーー!」

『ホホホホホ!この魔王なかなかどうしてヤリますワ!!』

『カカレカカレ。相手一人。余ラ9人。攻撃途切レシ時、勝利。』

『そないな事言われてモ。隙無イでこの嬢チャン!』


もみじさんが9人引き付けてくれているから、私は観客の方にも意識を飛ばせている。

・・・こいつ等は戦闘開始と同時に、私たちではなく観客に向かって行った。

止められたのは、こいつらを出している符が強すぎるらしく、月詠が動けなかったからだ。

―――クッ!あと一人いれば、月詠が持っている符を斬ってこいつらを消せるのに!!


『そい、そイ!!』

「クッ、またか貴様!!」
キンキキキキキン! キィン!
『ヒィィーーーーヤハハハハハハ!まだまだ投ゲル剣はあるゾ!踊レ踊レェェ!!』


妙にダボついた服を着て異常に髪の長い小さな鬼は一切私に攻撃して来ず、観客へ短剣を投げつけている。

私への攻撃は細鬼が、観客へは小鬼が。その二人を狙うと、大剣鬼が守る。

完全にもみじさんが倒れるまでの時間稼ぎだ。連携を見るに、こういう事に長けた連中なのだろう。


『ガラ空キだぜ、嬢ちゃああああああン!?』

「しまっ―――」


先ほどより多く投げられた短剣の処理に時間を取られ、細鬼の鉈が迫る。


―――確実に、避けられない。


そう思うと同時に、"夕凪"の柄にある仕込み刀を抜く。

せめて、一体くらい相討ちせめばもみじさんに申し訳が立たん!!


    ザシュゥ!!


「ウフフ、いけないわね刹那。シュウから教わってるでしょう?

どんな時でもあきらめちゃダメ。億分の1でも生きれる可能性があるなら、そっちを選びなさい。」

『グ、が、ゴブファァ!!?』

『古廐!!女ァァァァァ!!よくモ弟をぉぉオオオ――

ガルルルァ!! ゥオォオオオ―――ン!! 

な、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

「・・・それ、こっちのせりふ。せつなと、もみじ・・・いじめた。だから、しんじゃえ。」

『お、オイオイオイオイオイ!!ナンダナンダヨてめェらはぁ!?人が楽しんでるとk「(ザシュゥ!)」

「誰がそんな濁声で喋る事を許可したのかしら?」


死を覚悟した筈の一撃を止め、3秒足らずで二人の鬼を斬り払い、

一人を食わせたのは―――朝から行方の知れなかった、ノワールさんとアリアさんだった。


Side out

―――――――――――――――――――――――――――――

Side 月詠


なんやの?あの人達。折角私がセンパイと魔王はんと楽しんどったのに。

我慢して、我慢して、我慢して――――

もう少しで最っっっ高の状態になれたのに・・・・・・。

なんやの?なんやの??

ナンヤノ、ナンヤノナンヤノナンヤノナンヤノナンヤノナンヤノナンヤノナンヤノ?


「許シマヘン。」


Side out

―――――――――――――――――――――――――――――

Side ノワール

朝。シュウから連絡が来て、お昼過ぎに詠春のところに来てって言われたから、

適当に散策してからデート中(仕込んだ)の刹那と木乃香を拾って行こうとしたら・・・。

映画村の方から、ちょっといけないレベルの妖気がして来てみたら。

何故か刹那ともみじが着物姿で鬼と戦ってて、ピンチだったわ。


「ええ、許せないわよねぇ?この子達の柔肌に触れていいのはシュウだけよ?

シュウとこの子達を苛めていいのは私だけよ?

これが許せましょうか?いいえ、許してはいけないわよねぇ~?」

「・・・・・・ママ、ズレてる。」


ああ、いけないわ。三人が着物なんか着ててつい美味しそうだったから・・・。

仕方無いわよね☆


「……コホン。とは言え刹那、もみじ。こんな雑魚以下のプラナリアに手間取る様じゃ、

シュウの傍には居られないわ。だから―――残りはあなた達が倒しなさい。」

「は、はい!!」

「フンッだ!!もう少しで倒せてたもんね!!」


私の横に倒れていた刹那が飛びだし、もみじの炎が更に吹きあがる。

残りの鬼達は闖入者(私とアリア)と仲間が瞬殺された事で、一瞬出遅れた―――

それで、今のこの子達には十分な隙よ。


「『魔炎(フォイエ・タウバー) 纏』!」

「神鳴流奥義――『百烈桜華斬』!」

「「愁磨(さん)直伝!!『魔桜炎烈斬(まおうえんれつざん)』!!!」」

『『『『『『『『『ギャァァァァァァ―――


シュウが勝手に作った技で、残りの鬼が蒸発する。

残りほぼ全ての気で守った"夕凪"に『魔炎(フォイエ・タウバー)』を乗せて、『百烈桜華斬』を放つこの技。

普通はただの剣線だけれど、そこに炎が走って散ることによって、炎の桜の様になってとても綺麗な技。

勿論、威力も折り紙付きだけれどね。


「フフ、やれば出来るじゃない。偉いわ二人とも。」

「あ、ありがとうございます……。」

「フフン、当然だよ!!」


まぁ、尊大な態度は許してあげましょうか。だって今は―――――

ギィィィィィン!!
「許シマヘン。」
ギンガンドン!ギィンギィン!!
「あらあら、スカートが破れてしまったわよ?いけないわ~。淑女たるもの、常に優雅に戦わないと。」


この月詠とか言う子―――刹那に大壮惚れ込んでいるようだけど・・・・。

危険ね。今戦わせたら、間違いなく負ける。


ギギギギギギギギギギギギギギギギイギギギギギギギギギギギギン!!
「ウルサイウルサイウルサイウルサイイルサイウルサイィィィィーーーーーー!!!」

「困った子ねぇ~。ちょっと静かにしてもらうわよ?刹那、"夕凪"貸して。」

「あ、ハイ!!あ、でも、なんで……。」


明星の彗星(ルシファーズ・スピア)』を橋に突き立て、"夕凪"を抜き放つ。

そして―――


「『斬魔剣 二の太刀・千変万化』。」

キン
「あ、ふ……?」

「え……?」


トサッと倒れて来る月詠ちゃんを受け止め、仲間の子に声をかける。


「そこの子……。この子、受け取ってくれないかしら?」

「ッチ、なんやあんたらにバレバレやないか……。意味あらへんなぁ。」

「ウフフ、そんな事無いわ。気配消すの、とっても上手よ。刀子のとは比べるまでもないけれど。」


男の子は月詠ちゃんを受け取ると、『覚えとれよーー!』と中々な台詞を言って走って行った。

あの子とも、これから先長くなりそうね~。


「あ、あの、ノワールさん。さっきの技は一体……?」

「ええ、まだ教えて貰ってないわよね。

あれは主に非物理・無形の敵を斬る『斬魔剣 二の太刀』と、秘奥義の『千変万化』。

あの子の中にあった狂気を千回斬って殺したのよ。」


『千変万化』は"斬る物を選ばない"神鳴流の根源であり、最高の技。

修行中の人から達人までは斬る物を、技によって自在に選ぶことができるの。

でも、"頂"まで極めた人が使えるのが『千変万化』。

技に頼らず、自分の技量によって斬る物を決められる技―――日本語変よね、これ。


「つまり、相手に有効な技を最大の威力で叩きこめる訳よ。」

「なるほど……。しかも、それを一度に千回斬る事が出来て初めて完成する技なのですね!!

うぅ、未だに『百烈桜華斬』しか極めていない私には遠い話ですね……。」

「フフ。詠春の所に行ったら、シュウに言ってみなさい。

なんせ先生が三人もいるんだから、誰かが稽古つけてくれるかもしれないわよ。」


・・・本当は千回斬るんじゃなく、"気によって千以上に分裂させる技"だって知ったら、

どんな顔するかしら。意外と熱血根性出すかもしれないわね。


「さ、私達の愛しの主に会いに行きましょう。」

Side out


Side 明日菜

「何を知りたいって、言われても……。私、何も分からないもん!

でも、全部は教えてくれないんでしょ!!」

「アッハッハ!それが分かって来ただけでも進歩だ!

よし、1つだけのつもりだったが4つまで教えてやる。期限は設けないから、ゆっくり考えろ。

詠春、付き合えよ。」

「もう少しで夕飯なんだから、少し待て。」

「あいっかわらず堅いなぁ……。」


さっきまでの真面目は雰囲気はどこへやら、愁磨先生は一瞬でいつもの感じに戻った。

『考えろ』・・・。愁磨先生はその人が分からないことを、考えろっては言わない。

分からない大切な事にはヒントを、そうでなければ答えを言うかどうでもいいって流しちゃう。

つまり、バカな私でも、考えれば分かるって事・・・。


「……愁磨先生、一個いい?」

「ん、早速か。……まぁ、お前がそれでいいってなら聞こう。」


また、くだらないって言われるかもしれないけど・・・。どうしても、これだけは聞いておきたい。


「愁磨先生は、私達の敵なの?ネギの事………私達の事、嫌いなの?」

「……一つ目は、そうだな……。基本的には味方だよ。どうしても敵になる事はあるけどな。

二つ目は……いや、これは俺としての答えにしておこうか。

嫌いじゃないさ。むしろ好ましい存在だ。お前らも、ネギもな。」


そういうと、誕生日の時みたいにポンポンと頭を撫でてくる。

うん、いいよね?今はこれで。


「えへへ、愁磨先生ってお父さんみたい。って、こんな事言ったらアリアちゃんに怒られちゃう。

撤回撤回。」

「……ふん。褒めたって何も出んぞ。来い詠春、晩飯前に腹すかせとくぞ。」


いきなり、プイッと庭の方に歩いて行っちゃう。・・・なんか、顔赤い?


「ククク、どうした愁磨。顔が赤いぞ?」

「てっ、こんの……!!ぶっ飛ばすぞ!!」

「うはははは!今ならお前に勝てそうだよ!」

「言ったなコラァ!?≪禁忌ヲ犯シタ救世主(アーヴォ・ガジ・エッティアス・メシア)≫!!」

「っちょ、待て!?それはいくら何でも反則だろ!!」


ホント・・・この人って不思議。

Side out


Side ネギ

「「「「「「「いらっしゃいませ、ネギ・スプリングフィールド様。」」」」」」」

「「……………へ?」」


フェイトとの対話の後、参道を5分くらい歩いたら本山についた。

で、門を開けたら巫女さんがずらっとお出迎え・・・・・・どうなってるの?


「ささ、こちらへどうぞ。ここは危険ですので……。」

「え、ま、待ってください!!危険ってどういう――」


「食らえ愁磨ァァァーーー!『雷帝剣』!!」

「食らうかよ詠春ーーーー!『炎帝剣』!!」

ズカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


「………何をしているんですか?あの人達は。」

「ええと……食前の運動だそうです。曰く、『腹を空かせた方が飯が美味い』との事です。

ですがあの通りの方達ですので、奥義の応酬でなければ運動にならないのです。」


なんでいるの愁磨さあああああああああああああああん!?いや、不思議な事でも無いけれど・・・。

木乃香さんのお家だし、と言う事は家の人とも知り合いだろうし。

あ、と言う事はあそこで戦ってる人が詠春さんかな。

でも無理だよねあの中に行くって死んじゃうよね?そうだよねうん。


「……どこで待てばいいでしょうか………。」

「こ、こちらへどうぞ……。」


はぁ・・・こういうのを茶番って言うのかなぁ?

………
……


「よ、よく来てくれたね。ネギ・スプリングフィールド君。使いの命、よく果たしてくれた。」

「あの醜態見せといて取り繕う必要がどこにあるんだよ。適当で良いじゃんか、適当で。」


それから一時間弱。庭を壊滅させて、お母さんに怒られて、愁磨さんが全部直して。

その間にノワールさん達も来て、親書を渡して一応東西の仲を約束した。

でも結局、関西の方でまとまらないと意味無いよね・・・。


「ささ、ちょうどいい時間ですし夕飯にしましょう。」

「あ、すいません。僕達は修学旅行中ですし、旅館に戻らないと。」

「それなら大丈夫よ?新田先生に今日はここに泊るって言っておいたから。

木乃香の里帰りに親と一緒に居させてあげてください!ってね。ウフフ……。」

「保護者同伴どころか関係無いのもいるがな……。新田も甘くなったものだ。」


と、ノワールさんとエヴァさんが話しているうちにどんどん料理が運ばれてくる。

・・・この人達、意外と人の事気にしないよね。

いや、京都料理って一回食べてみたかったからいいんだけどさ・・・・。


「「「「「いただきまーーーす!」」」」」」

「いただきまー・・・す。」

「い、いただきます。」


・・・うん、美味しい。

Side out

―――――――――――――――――――――――――――――
subSide フェイト


「で?なんのつもりや新入りはん。

ネギとか言う子始末しろ言われとったのに見逃して。親書渡ってしもたやないか!」

「………別に、気にする事じゃないよ。

結局はタカ派の人達と英雄が相容れなければ東との不和は続くんだ。

それに、ネギ君が計画の邪魔を出来ると思っているのかい?」

「……無理やろな。小太郎はんだけでも時間稼ぎは十分やし、ましてあんたもおるんや。」


そう。ネギ君は脅威足り得ない。少なくとも、今は。

問題は英雄がほぼ全盛期だと言う事と・・・愁磨一行だ。


「……………全く、困った人だよ。」

「ん?なにか言うたか?」

「なんでもないよ。食事中だから気も緩んでるだろうし、今のうちに始めてしまおう。」

「せやな。小太郎はん、頼みましたで。」

「まっかせとけ!あんなガキちょろいモンや!!」


・・・一応、侮らないようにと言ってはいるんだけれど・・・。どうにもこの子だけだと不安だね。

ぼくも準備をしておこうかな。


Side out
―――――――――――――――――――――――――――――

Side 愁磨


「詠春様。」

「どうした。」


夕飯も食べ終わり、酒飲みしか残っていない広間に巫女さんが駆け込んできて

詠春になにか耳打ちをしている。・・・聞こえるんだけどな、耳澄ませば。


「……またか。」

「はい……。どういたしますか?」

「どうするもこうするも、行くしかないでしょう。あれの相手は私でないと――」

「まぁ待てって、詠春。古株は黙って見てようぜ。」

「……何を言っているのか、イマイチ理解できないんだが……?」

「な、何言ってんだてめぇ!アニキがどうなっても良いってのか!」

「ちょっとは黙ってろ、畜生以下の淫獣が。」


使い魔を祭壇と道中へ飛ばし、スクリーンで映像を出す。そこには既に―――


「ネ、ネギ君!?刹那君まで!」

「あと、真名とアリアを後陣として追わせてる。保護者は刀子とエヴァでな。」

「……お前、まさか……?」

「そうよ、そのまさかよ~。」


これでもしもあいつが復活しても、兆に一つも勝ち目は無い。

さらにエヴァには新装備も持たせた。過剰戦力もいいところだろう。


「ああ、楽しみだなぁ。むしろ復活してくれないかなぁ。」

「そう言えば、明日菜君の姿が見えないようだが?いつもこういう事に行く時はネギ君と一緒の筈だろう?」

「ん……?ホントだ、いねぇ。」


改めて映像を見ると、確かに明日菜の姿が見えなかった。

珍しい・・・?いや、そういう事ではない。あいつは絶対に(・・・)ついて行く筈だ。


「愁磨、祭壇じゃ。これは……少々危ないのではないか?」

「フェイト……?何やってやがる、あいつ。」


アリカに指され祭壇を見ると、フェイトと着物着崩した姉ちゃんが。

さらに、祭壇に横たわった明日菜が居た。―――事と次第によっちゃ、出ることになりそうだな。

Side out



――20分前、浴場



Side 刹那

「っぷはぁーー!今日は変な汗かいたから生き返るわーー。

にしても広いお風呂よねー。お屋敷も広くてびっくりしたけどさ。」

「(ああ、愁磨さんを尾行していたのでしたね……。)

一応ここは観光名所にもなっていますから。厳重な調査をして合格しないと入れませんが。」


過去、二回それをしないで入って来た人がいましたが。

・・・私とこのちゃんの誕生日をこっそり祝いに来た、愁磨さんとナギさんを筆頭にした人達ですが。


「ふーん、そんな所にタダで入れるなんて。愁磨先生と一緒に来て得だったわねー♪

……そういえばさ。どうなの?木乃香と桜咲さん……いや、刹那さんって。

幼馴染で好きな人も一緒でさ。その……こう、なんてゆーか。ドロドロなったりしないの?」

「ふぇえ!?あ、いや、その!~~~~///

相手がしゅ、愁磨さんですから。そういう事にはなっていません。」


・・・そう言えば、家に居てドロドロな雰囲気になっている所を見たことが無い。


「やっぱり、そうですね。みんな愁磨さんの事もみんなの事も好きですから。

そういう事にはならないですし、したくないんです。」

「………うん、見てるだけで分かるもん。

でも、ナンパなのはダメよねー!やっぱり男の人は硬派っぽくて渋くなくちゃ!」


あ、相変わらずおじさんが好きなんですね。と言うか、この手の話題は苦手なのですが。


「の、のぼせてしまいそうなのでお先に失礼しますね。」

「あーーい。私はもうちょっと入ってるわ~。」


ひらひらと手を振る明日菜さんを残し、脱衣所に出る。

・・・そう。みんながみんなの事を本当に好きなんだ。だから分かってしまうのだ。

愁磨さんの"そういう"好きの一番が、誰なのか。

それでも、あの人は余す事を許さない。自分で拾える最大限を拾おうと頑張る。


「ずるいですよ、全く……。」


そこまで考えて、頭を振って考えを飛ばす。今更、仕方が無いないこt――――


『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!?』

「!?明日菜さん!!」


浴場から明日菜さんの悲鳴が聞こえ、扉を開けると―――

白髪の男の子と、かなり強い前鬼。それに抱えられて気絶している明日菜さんが。


「貴様、何者だ!!」

「名乗るほどの者でも無いよ。ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト『石の息吹(プノエー・ペトラス)』。」


ボゥン!!と霧のような魔法が放たれる。石化魔法と即座に気付き、扉を閉め距離を離す。


『それじゃ、お姫様はいただいて行くよ。』

「ま―――!!」


中に充満した石化霧のせいで入る事もままならず、相手の気配が消える。

すぐさま着替えると、霧の晴れた浴場に入り魔力の痕跡を見つける。

失態だ・・・!私が傍に居ながら簡単に明日菜さんを―――


「ふぅぅ……。驕るな。私はまだまだ弱い……。弱い、弱い……。よし!!」


私は、"弱い"と自分に言い聞かせることでいつでも全力が出せるようになる。

愁磨さんには怒られたけれど・・・こればかりは仕方ない。


ガラッ!
「明日菜さん!今の悲鳴は―――あ。」

「……ネギ先生、心配なのは分かりますが女子が入っているであろう風呂に飛び込んでくるのは

如何なものかと思います。」


Side out


………
……



Side ネギ

「は、速い!!」

「ですが、見失わない程度の速さです!瞬間移動(テレポート)を使う魔力が残っていないのか……。

それとも誘っているかのどちらかです。」


お風呂場から出た僕達は、廊下で会った瀧宮さんに状況を話すと、二人で明日菜さんと攫った犯人を追った。

これで少なくとも、長さんが救援を寄越してくれる筈だ!


「うぉぉぉおおぉぉぉおぉぉぉぉおりゃあああーーーーーーーーーーー!!!」
ドゴォォオオ!!
「うわぁ!?」

「ネギ先生!!――奥義!『百烈桜華斬』!!」


走っていると、空から誰かが凄いスピードで落ちてきて地面を殴った。

僕は吹き飛ばされちゃうけど、桜咲さんが敵を斬りに行く。


「へっ!『疾空黒狼牙』!!っと、『狗音噛鹿尖 乱撃(みだれうち)』ぃ!!」
ドガガガッガガガガガガガガッガガ!
「く……!?」


でも黒い狗が出てきて、百を超える斬撃が全て相殺されてしまう。

その衝撃で土埃が飛び、そこから学ランを着た男の子が出てきた。


「やるやないか、姉ちゃん!でも……お前はからっきしやな、西洋魔術師!

やっぱり後ろに隠れてチマチマ魔法撃たんとあかんのか、お前らは!!」


・・・・・・そう。そういう事ならいいよ。

ここぞと言う(愁磨さんと戦う)時の為に隠しておきたかったけど、いいよ。見せてあげる。


「桜咲さん、みなさん(・・・・)!!ここは僕に任せて明日菜さんを!!」

「……分かりました!お願いします!!」


追って来ていた瀧宮さんとアリアさんと、もう一人にも言う。


「ふん、生意気な……。刀子は居てやって、負けたら嘲笑ってやれ。」

「……バレているとは思わなかったよ。頑張ってくれ、先生。」

「・・・・・・・・・・・・・。」


影から三人が飛びだし、冷ややかな目とちょっと優しい目と絶対零度の睨みを残して飛んでいく。

もう一人、エヴァさんだったんだ・・・。エヴァさんより気配読めない刀子先生って一体・・・。


「まぁいいや。行くよ、えーっと……。」

「っと、名乗っとらんかったな!ワイは小太郎、犬上小太郎や!」

「じゃあ、小太郎君。悪いけど時間が無いしちょっと怒ってるんだ。5秒で終わらせてもらうよ。」


小太郎君は僕の台詞で額に青筋が入って、睨んでくる。でも―――無駄だよ。


「『戦いの歌(カントゥス・ベラークス)』、『修羅の息吹(アルゴドーズ・セプトゥス)』!同纏・混装!!」

「うぉぉお!?」


シュゥゥゥゥゥ・・・・・・
「『戦闘の為の協奏曲(バルトフェルド・コンチェルティア)』。行くから、構えておいてね?

―――構えても構えなくても、変わらないけど。」


Side out
 
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