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銀色の魔法少女

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第十二話 覚悟

 
前書き

最近PCの調子が悪いです、やややです!
暑いからかもしれませんが、皆さんも熱中症には気をつけてくださいね

では第十二話、始まります 

 
side なのは

「少し油断したかな」

 その子はそう言って両手を眺める。

 その手は遠くからでもわかる程に酷い怪我をしていたの。

「大丈夫ですか!?」

 私は急いで近づく。

「これ、小娘が見るものではないぞ」

 そう言ってその子は両手を隠す。

 内心、同い年くらいじゃないの? と思ったことは秘密なの。

「ご、ごめんなさい……、でも、大丈夫なんですか?」

「そうじゃのぉ、まあ、一、二週間は手が使えなくなるが、その程度で済んだのじゃから運が良い方じゃろうな」

 私はそれを聞いて気がつく。

 一歩間違えたらこれ以上の怪我を私が負っていたのかもしれないことに。

 彼は元々こうなることを覚悟してのことだったのだろう。

 だから実際に怪我をしても、あんなに落ち着いていられる。

 じゃあ、私は?

 元々はユーノ君のお手伝いで、今は自分の意思で。

 それは私にしかできないこと。

 でも、そこに覚悟はあったの?

 今なら、彼の言ったことが少しわかる。

 一歩間違ったら死んじゃうかもしれないくらい危険な、ジュエルシード集め。

 実際、ユーノ君は酷い怪我をして道に倒れていた。

 彼はそんな危険なことに私を巻き込みたくなかった。

 ユーノ君も、できることなら自分ひとりでジュエルシードを集めたかったに違いない。

 たぶん、あの子もそう。

 綺麗な髪の、寂しい目をしたあの子。

 あの子も必死にジュエルシードを集めてた。

 なら、きっとそれなりの理由がある。

 危険をおかしてでもジュエルシードを必要とする理由。

 私はそれを知らない。



 ぶつかり合うことはしょうがないのかもしれないけど、何も知らないまま戦うのは嫌だ。



 そこで、私は疑問に思う。

 だったら彼はどうしてジュエルシードを集めているのだろう。

 危険だと言うのなら、それこそ管理局にまかせた方が身のためなのに。

 私はそれを彼に聞いてみる。

「ふむ、確かにそうじゃが、それでは間に合わないのじゃよ」

「間に合わない?」

「そう、日常というものはふとしたきっかけで容易に崩れ去る、何かが起こってからでは遅いのじゃよ」

 私は思う。

 この人の過去に一体何があったのだろう。

 私と年は変わらないはずなのに、私よりも大人びてる。

「あの、それより手当したほうが」

「おお、忘れておった」

 ユーノ君が彼に言う。

 ……私も忘れかけていたのは内緒なの。

「まあ、しかし今は手持ちの薬もないし、……凍らせておくか」

 彼が手を自分の目の前まで持っていくと、冷気が集まって、その手をカチンコチンに凍らせたの!

「ちょっと! それじゃあ、凍傷になっちゃいますよ!」

「ははは、まあ家に帰るまでの応急手当じゃ、着いたらすぐに溶かすから大丈夫」

 彼はそう言うが、全く大丈夫そうに見えないの。

「じゃあの、夜道は危ないから気をつけるのじゃぞ」

 そう言って彼は立ち去ろうとする。

「あ、あの!」

 私は慌てて彼を引き止める。

「私、なのは、高町 なのは!」

「……、ああ、自己紹介がまだじゃったな」

 彼はこちらに振り返ってこう言った。

「我のことは……そうじゃのぅ、理由あって本名は言えぬが、今はシグルドと呼ぶがいい」

「シグルド、さん」

「さんはいらぬじゃろうが、まあ、主の好きにするがいい」

 そう言って今度こそ帰ろうとして、

「いかんいかん、忘れるところじゃった」

 もう一回振り返ったの。

「主は何か悩んでいるように見えるが、その答えというものは案外簡単に見つかるものじゃ、一度一人になってゆっくり考えるのも手かもしれぬぞ」



side 遼

「……疲れた」

 本当に疲れた。やっぱり慣れない口調はするものじゃない。

「それにしても、何であんなこと言っちゃったのだろう?」

 最後のなのはに言ったあのセリフ。

 何か唐突に言わなきゃいけないと思ったから言ってしまったが、実際私にもよくわからない。

 けど、なのはが何か思い悩んでいるように思えたのは事実だった。

 彼女が何を思っているのか理解できるほど、私はエスパーじゃない。

 それはなのはだけにしかわからない。

 だからこそ、それはなのは自身が解決しなければならない。

 私はそう強く思った。



side クリム

 帰ってきた遼が持ってきたものは、私を驚かせるには十分だった。

「はははははははは、遼!? 一体どうしたのですかこの手は!?」

 いつもの大理石よりも綺麗な遼の手のひらが、それはもう無残な状態になっていた。

『クリム、うるさい、みんなが起きちゃうから念話で話して』

『了解しました、けど、これはあんまりです! 一体誰がこんなことを』

『あー、ちょっとジュエルシードの封印に失敗しちゃって、回復お願いできる?』

『任せてください! 朝までには完璧に治してみせます!』

『いや、そこまで急いだらなのはたちにバレちゃうでしょ! 傷が目立たない程度でいいから慎重にやってね』

 残念、怒られてしまいました。

『仕方ありません、では魔法を付加しした包帯を作りますので、しばらく隠れておきますね』

『じゃあ、グリムゲルデの偽装を発動させておくから、これでなのはたちには察知されないと思う』

『感謝します、遼』

 私はグリムゲルデをまとい、廊下に出る。

 死体兵士の機能の一つ、『同調(トレース)』。

 これは死体兵士の持っている能力を自身に付加させる機能。

 本来、グリムゲルデの機能はもっと強力なのだが、ユニゾンしていないため、この程度しかできない。

 ……まあ、隠れるには十分だけれども。

 私はこっそり誰もいないカウンターに出て、包帯を広げる。

「私を取り巻く風よ、流れゆく水よ、癒しの力を分け与えたまえ」

 水色の光が、包帯に吸い込まれていく。

 これで準備は万端なはずだ。

 後はこれを遼に処置すれば、朝には目立たない程度には回復しているはず。

 もっとも、帰ったら本格的に治療しないといけないけれど。

「さてと」

 私は、遼にこれを渡すため、急いで廊下を走り出した。 
 

 
後書き
ジュエルシード 残り九つ 
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