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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第46話 争奪戦は思わぬ結果を招くようです


Side ―――

―7:20

「こんばっぱー。予約してた織原ですが。」

「はい、織原様ですね、いらっしゃいませ~。

長旅でお疲れでしょう~。お部屋に案内しますので、ついてきてください。」


京都に着いた愁磨・刀子・アリカ一行。

その時はまだ魔法陣が敷かれておらず、愁磨も本件に関してはすっかり忘れていた。


「ええですね~。今日は観光ですかえ?」

「ええ。妻がどうしてもと言うもので。」

「しゅ、愁磨が行きたいと駄々を捏ねるから仕方なく来たんじゃぞ?!

わ、私は別に……。」

「とまぁ、昨今流行りのツンデレでしてね。もう可愛くて可愛くて。」


顔を真っ赤にしてべしべし叩いてくるアリカを諌めつつ、従業員について行く。


「フフフ、仲がよろしゅうてなによりですわ~。

もうお食事用意できますけど、どうしますか?」

「そうですね、お願いします。何も食べてなくて、お腹減ってて。

三人分用意してもらっていいですか?」

「ええ、かまいまへんよ~。失礼ですけど、食べるようには見えへんわぁ。」


それもそうだろう。肉体が女性で無い分ふっくらしておらず、同様以上に細く、

力を入れたら折れそうな肢体だ。


「ええ、良く言われます。にしても、なんだか騒がしいですね?」

「今日・明日と修学旅行の子たちが来てはるんです。

大抵他のお客様に迷惑掛かるからもう、この時期は大変で。」


談笑しながら歩くと、部屋につく。

奇しくもその部屋は、ネギの斜め前の部屋だった。


「それでは、ごゆっくり~。」

「フゥ~。……で、いつまで拗ねてんだよ?冗談じゃないか。」

「別に、何でも無いのじゃ。」


愁磨は『なんでもなくないだろ』、と言いたそうな顔はしたが言わず、

代わりに後ろから抱き締めた。


「ごめんな?許せ。」

「……謝っているのか命令しておるのか、分からんではないか……。」

「アッハッハ、ごめんな。―――刀子、どうだった。」


不機嫌が一瞬で無くなったアリカを離すと、窓の方を見て言う愁磨。

すると、扉の()から刀子が出て来る。


「はい、少なくとも周囲50kmに敵勢力はいませんね。

ただ……。知ってて、ここを選んだのですか?」

「は?何を言ってるんだ?」

「ここに、麻帆良学園修学旅行組が来ていると分かっていて予約したのですか?」


刀子の質問は、愁磨のポカーンとした顔が答えとなった。


………
……



10:30

「準備はいいかい?ねえさん。」

「オッケー。カモっちこそ、抜かりはないね?」

「おうよ!この旅館にいる限りは、絶対成功するぜ!」


題して、『くちびる争奪!修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦!!』

名の通り、表向きは修学旅行イベントだが、その目的は金稼ぎ。

旅館を囲む仮契約陣が敷かれており、ネギと(それ以外でも魔力を持っていればいいのだが)

キスすると仮契約(パクティオー)が成され、一枚ごとに教会から五万オコジョ$(相場不明)が貰えるのだ。

さらに優勝者トトカルチョも開催されており、微々ながら朝倉にも利点がある。

無論朝倉は仮契約がどういうものか詳しくは知らなく、そこまで説明もされていない。

故に、少々はた迷惑なお小遣い稼ぎ程度にしか考えていない。いや、考えられない。


「(スマネエな、ねえさん。でも、兄貴にはこれが必要なんだ。)」


そして、朝倉に話した事すらも・・・・・4割方の真実でしかない。

カモの本当の目的は、戦力強化なのだ。


「(いくら修行したって、あの爺さんじゃ愁磨にゃ勝てねぇんだ。

アニキがあいつに勝つにゃあ、手を増やすしかねえ。)」


ネギの仲間は現在、明日菜(未契約)、カモのみ。

手助けとしては、学園の魔法先生・生徒もいるが。

対して愁磨はノワール、エヴァ、アリア、アリカ、真名、刹那、木乃香、茶々丸、もみじ、刀子。

万に一つどころか、億にも、兆にすら勝ち目が0なのだ。

愁磨がいないこの時こそ好機。その筈だった。


「それでは、ゲームスタートぉ!!と言う訳で選手紹介をしていきましょう!

まずは一班、鳴滝姉妹!さんぽ部がどう魅せるのか!?続いて二班は古菲&長瀬!

元バカレンジャー二人組だが、相変わらずの運動神経は侮れない!

続いて三班はネギ先生への偏愛と執着No1いいんちょ&長谷川!やる気の違いがネックだが一番人気!

四班、佐々木・椎名の運動部ペアは安定感がある!そして大穴、五班の宮崎&綾瀬ペア!!

図書館組の底力や如何に!?」


かくして始まった争奪戦。

ノワール達は中部屋にまとまって、防音・遮断・防御の結界を敷いて寝ていた。

その為、発動していない仮契約の陣に気付く事はなく眠っていた。


「さぁまずは―――――(ガッ!!)……へ?」

「楽しそうな事をしているじゃないか、朝倉、淫獣。俺もま・ぜ・て♪」

「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!」」


放送席が混乱している間にも、ゲームは進む。

Side out


Side カモ


まずいまずいまずいまずいまずい!!

なんでこいつがここに居るんだ!?学園で留守番の筈じゃねーのか!?


「あ、あわ、あわわわわ…………。」

「……ああ、そうだったな。このタイミングだと、朝倉には知られてるのか。

まぁいいや。……カモミール・アルベール。お前の目的は?」

「フン!てめぇに教える義理はねぇよ!!」


敵に情報を流すって事は、それだけ自分たちの死期を早めちまう。

少しでも時間を稼いで、打開策を


「考えるんだ!と、お前は考えるんだろうが。

いかんよ?気の短い奴だったら即、殺しちゃうから。状況判断を誤っちゃいかん。

さて、もう一度だけ聞こう。仏ほどじゃないが情けはあるんでな。

目的はなんだ?畜生以下の愛玩動物未満生物。」

「………仮契約カード作りゃ、協会から1枚につき5万オコジョ$が貰える。

単なる金稼ぎでい!」

「と、戦力強化と言った所か。ノワール達は結界張ってて、陣が発動しない限り気付かない。

そして俺が居ないこれほどは無い好機。ゴミながら天晴れだ。

淫獣程度に評価を上げてやろう。」


・・・ホントにこいつは何でも知ってる様じゃねぇか。手のひらで踊ってる気分だぜ。


「さて、俺は邪魔する気は毛頭ない。むしろ協力しようじゃないか。」

「「…………………………………………………………え?」」

「聞いてなかったのか?俺がゲームを盛り上げてやると言ったんだ。

ああ、契約陣も強化しておいたぞ?

手だろうが足だろうが頬だろうが、キスすりゃ仮契約成立だ。」


んな馬鹿な!?陣は妖精にしか敷けなくて、しかも改変はできねぇ筈だ!!

現に数百年、方式は一切変わってねェってのに・・・・・・。


「さぁ、上手く実況して盛り上げてくれよ?はい、説明文。」


紙を渡すと、部屋を出ていく愁磨。俺らはポカーンとしてたが、

画面から聞こえて来た叫び声で、意識を戻す。


『ハッハッハ、つーっかまーえたぁ~♪』

『ちょ、え、ハァァァ!?なんでどうして愁磨先生がいんのぉぉぉ!?』

「コホン!さぁ盛り上がってまいりました!なんと、偶然旅館に居合わせた愁磨先生!

彼に捕まっても新田に捕まっても同様!ロビーで正座です!!

ちなみに愁磨先生の移動は、普通の速度で歩くのみ!更にネギ先生の部屋には近づかない!」


普通に実況に戻るねえさん。すげぇな、この人も。メンタルどんだけつぇえんだ中学生。

って言うか、どういうつもりだ?敵の戦力を増やす手伝いなんて聞いた事ねぇぞ!


『ドーーデン……ドーーデン……♪』

『きゃあああああああああ!!ちょ、逃げるよ!!』

『コラぁぁぁああぁぁあ!!またか3-A!!』

『挟み撃ちいぃーーーーー!!?』


戸惑ってる間に、次々葬られて(正座させられて)行く生徒達。

そ、そうか!手伝うとか言いつつ全員捕まえる気だな!?


「おぉーっと!?混乱に乗じて一班と五班がネギ先生の部屋の前へ!

そして宮崎が部屋に入ったぁーー!!」

Side out


Side 愁磨

「やー、新田先生。お疲れ様です~。」

「愁磨先生、お疲れ様です。学園の方はどうしたのですか?」

「有休です。3年が居ませんので受け持つ授業も無かったですし、

そろそろご機嫌をとらないと、アリカが拗ねてしまいますので。」

「そうですか。大変ですなぁ、奥さんが二人もいると言うのは。」


緑茶を傾けつつ新田先生と雑談する。

横に恨めしそうな顔の生徒が数名正座してるから、若干シュールだ。


『――なーんと!ネギ先生は全員偽物だったぁー!トトカルチョは親の総取りかぁーー!?』

『ふざけんな朝倉ぁーー!食券返せーー!』


と、インカムから絶叫が聞こえてきた。どうやらゲームも終盤らしい。

さて、行くか。


「では、私はこれで。あまり一人にしておくと、またあいつ拗ねてしまうので。

あと、ロビーは他の方の邪魔になるから、場所を移すなりした方がいいんじゃないですか?」

「ええ、そうですな。罰で夜更かしさせては元も子もありませんからな。

それじゃ、旅行楽しんでください。」


部屋に帰ると、ポケットから5枚のカードを取り出す。

順に、鳴滝姉妹・佐々木・椎名・雪広・宮崎。

カモの魔法陣を上書きして創ったので、当然、俺のものとなったのだ。

最も、宮崎の以外はスペアを貸して金はくれてやるけどさ。


「しかし、やり過ぎたな。まさか式紙相手でも本体と仮契約(パクティオー)できるとは。」

「ええ、そうですね。些か軽率だったのでは?」

「何、問題ないさ。どうせこいつ等も巻き込まれる。

その時の手間を省いただけさ。……文句あるんだったら、やっちゃうよ?」

「な、何をでしょうか……?」


影に沈もうとした刀子を捕まえ、グッと顔を近づける。

最近密偵ばかりやらせているせいか、500m離れると気配が辿れなくなるので、若干寂しいのだ。


「仮・契・約♪……ふむ、そう言えば刀子が初めてだな。」

「わ、私がですか!?いえ、それはとても光栄なのですが、私も初めてでして。

些か以上に緊張すると言いますか、ええと……。」


俺の陣は仮契約なんてしなくても、俺が『創造』した武装を渡してしまうから、

今までした事が無かったのだ。


「……嫌だったら、いいんだぞ?」

「い、嫌だなんて!!私は、あの……~~~!!///」


不満顔をしたと思ったら、力一杯目を瞑ってプルプル震える刀子。

か、可愛いんだが・・・もしかして・・・・ファースtいや、名誉の為にやめておこう。


「んっ。」

「んっ!………~~~!!///」(バタバタ


刀子は、数秒も我慢せず暴れて唇を離す。う~~ん、初々しいのう。

と、俺の前にカードが現れる。

絵に描かれていた刀子は、その、なんと言うか・・・・・・・・。


「…………魔女っ娘?」

「え、どういう事ですか!!私は刀を使うんですよ?」

「いや。ポニテにでっかいリボンつけて、マントつけて、ニーソだぞ?

あ、でもホットパンツか。……近接系って意味じゃ、某魔王の弟子と同じか……。

武器は――――うん、なるべく使うな。」

「え、どうしてですか?そっちが仮契約の目的と言っても過言ではないのに。」

「だって……『村正』って。明らかに妖刀やん。」


Side out


Side のどか

「おぉーー!それが昨日の優勝賞品!?かわいいー!」

「あーん、欲しかったぁーー!!」


朝ご飯のあとに、朝倉さんが優勝賞品のカードをくれました。

本に囲まれた私と、数字とか文字が書いてあって、凄く素敵です。

ゆ、夕映のお陰だけど・・・ネギせんせーとの記念ですー。


「僕はもう、分からないよ………パト○ッシュ………。」

「あ、アニキーーー!あっしだって分からねェんですから!!

なんであの嬢ちゃんのカードだけマスターカードを寄越したんだ……?」

「ゆ、優勝賞品だから……じゃない?

流石の愁磨先生でも、本屋ちゃんの記念品を持っておくのは忍びなかった……とか?」


あれ・・・ネギせんせーと神楽坂さんと朝倉さん・・・・・・と、オコジョさん?

マスターカードとか言ってるけど、何の話だろー?


「くぅー……戦力にならねぇモン貰っても仕方ねェ。

こうなったら、姐さんが仮契約(パクティオー)してくれやせんか!?」

「えぇー!?い、嫌よ!だって、ネギとき、キスしなきゃいけないんでしょ!?

わ、私だって女の子だし、初めては好きな人としたいって言うか……。

って、何言わせんのよエロガモ!!」

「仕方ねぇなぁ……。じゃあアニキ、使い方教えやすぜ?

つっても、出す時は『来たれ(アデアット)』。しまう時は『去れ(アベアット)』。これだけだ。」

「ふ~ん……『来たれ(アデアット)』。」


ネギせんせーの持ってたカードが光って、何かの角が現れました。

て、手品?って言うよりは、なんて言うか―――魔法みたいです?


「"|太陽神猪(ヴリスラグナ)の牙"……?聞いた事無いんだけど、カモ君知ってる?」

「さぁ?俺っチは魔法にゃ多少詳しいが、武器とか魔術品に関しちゃさっぱりだ。

名前からして、スゲー猪の牙見てーだけど……。」


ヴリスラグナ・・・・・確か、イランの勝利の神の名前。

インドラって言う神様と同じ存在で、すっごく凶暴だったはずですー。


「にしても、参ったぜ……。確かにこりゃ、従者増やすよりゃ即戦力になるぜ。

まさか、主従がランダム(・・・・・・・)に決まる(・・・・)なんてな。」


Side out
 
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