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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第44話 新たな試練は幕を開けるようです


Side 愁磨


「あぁあぁあぁあぁあぁ~~。ひぃぃ~~まぁ~~だぁぁぁ~~~よぉぉぉぉ………。」

「そ、そんな情けない声を上げないでください。」

「だぁぁってぇぇ……。」


のぺーっと机に伸びる。・・・・・仕方ない。そう、仕方ないのだ。

何故って、そりゃ――――――


――――――回想――――――――


―――昨日、夜、学園長室。


「急遽代理寄越せってどういう事だ!?」


ジジイから電話を受けた俺は光もかくやと言うスピードで学園長室に乗り込み、

本人に詰め寄る。


「フォォオオオ!?そ、それがの?

婿殿が愁磨殿を寄越さんでくれと言ってきたのじゃ。絶対に何か問題起こすからと。」

「……………………………………………………………………。

フッ。」


よし、今から行って殺して来よう。それで俺が長なれば問題ないだろう。

うん、そうに違いない。


「そうか、分かったよ。それなら仕方ないよな。じゃあ、おやすみ。」

「待つのじゃ!?いかんぞ!?絶対にいかんからな!?」

「チッ………まぁ、見当はつくさ。

あっちの過激派がなにかやらかそうとしてて、俺が行ったら間違いなく失敗すると。

で、木乃香をダシに詠春を脅したか、詠春の名前だけ使ったかだな。」



残念だけど、最悪「そうだ、京都へ行こう」的なノリで休みとって行けばいいんだしな。

困るのはジジイであって俺じゃないし!・・・・それよりも。


「随分な茶番を仕組むじゃないか。

ネギはお前と詠春の仲が悪いから、東西間が緊張していると思ってるぞ?」

「フォッフォッフォ。なに、体の良い御遣いじゃよ。

過激派は木乃香を狙っとる。それが敵の真っ只中に行くのじゃ。」

「………お前、俺よりスパルタかもな。」


要するに自分が鍛えた弟子がどこまで出来るか・・・・・それが見たいんだろう。

・・・・孫娘をダシにしてでも。


「フン、大した信頼だな。木乃香と刹那に1μでも傷をつけるような結果になってみろ。

麻帆良にいる全員が拷問にかけられる様を見せ、怨嗟の声を全てお前に押し込めてから殺してやる。」

「フォッフォッフォ。心がけておくぞい。」


タヌキが。・・・・もとい、ぬらりひょんが。

ノワールは保険医、アリア・エヴァ・真名は2年で間違いなく行かなければならないから、

この4人が守るって算段だろう。ああ、大正解だよ。

・・・・・もみじに戦闘面での期待はない。少なくとも、今は。


「じゃあな、おやすみ。精々地獄に落ちろ。」

「フォッフォッフォッフォ!!そうなったら主が来るまでま待っとるわい。」


――――――終了――――――――



と、言う訳で俺は刀子・アリカと共にお留守番。

ああ、あいつらは今頃何やってんだろうなぁ・・・・・・。


Side out


Side 刹那


「はい、アリア。あーん。」

「あー・・・・・・ん。もきゅもきゅ・・・。」

「はふぅ……。」


アリアさんにお弁当を食べさせ、恍惚とした表情をするノワールさん。

現在私達は、京都に向かう新幹線の中にいる。

教師が生徒と同じ席に座るという点で一悶着あったのですが、鶴・・・もとい、

悪魔の一言で決着がついた事は語る必要はありませんね。


「・・・・・・・・・・。ハァ・・・・・・。」

「あらあら、ご機嫌ななめね~。まぁ私だって非常にムカついてるのだけれど。」

「あ、あはは。仕方ないじゃないですか、ノワールさん、アリアさん。

長も難しい立場ですし、対赤子~対世界までこなす旧友を入れる訳にもいかなかったんでしょう。」


そう。クラスの副担任であるにも関わらず政治的(?)要因で愁磨さんが来られなくなってしまい、

アリアさんは普段に輪をかけて不機嫌に。

ノワールさんは分かり難くはありますが、こめかみに常に青筋が浮いている。


「理解はしているけれど、納得はしてないわ~。

詠春……あっちについたら…………ッフフ。ウフフフフフフフフ…………。」

「・・・・・クスッ。」


あ、アリアさんまで笑った!?長、今すぐお逃げくださいいいいいいい!!

過激派とか普通に無視してでも逃げないと!?


「キャーーーーー!!」「うわわわわあああああああ!?」

「ちょ、わぁぁああぁぁあぁっ!?」

「なぁに?騒がしいわねぇ。」


騒いでいるクラスメイトを見ると・・・・・・・・・。

か、かかかかかかかカエル!?


「―――お嬢様、申し訳ありませんが少々お手洗いに行ってまいります。」

「おー、分かったぇ……ってもういない。」


お嬢様の返事も聞かず、車両を離れる。

フゥ・・・。ああ言う、ヌメヌメして奇妙な形をした生物はどうしても苦手です・・・。

と言うか、何故カエルが・・・?お嬢様、もしくは親書を狙うにしては少々―――

いえ、かなり遠回りな方法だと思うのですが。


「――――てぇぇぇぇぇぇぇえーーーーーーー!!」

ガァッ


叫び声が聞こえたと思うと、扉が開いて何かが飛び込んで来る。

飛び込んできたのは―――式紙?で、咥えているのは親書ですか。

・・・・・ネギ先生・・・・・・・・・・・・・。


キンッ!


「しっかり持っておいてくださいよ……。」


すれ違いざまに一閃し、式紙だけを真っ二つにする。鳥型・・・それもかなり高度な。

なるほど、これなら騒ぎで慌てているネギ先生からなら、奪い取ることができるだろう。


「待てええええーーーー!!……って、桜咲さん?」

「……これ、落し物です。ネギ先生の……ですか?」

「はい~~!ありがとうございます!」

「そうですか、気をつけてください。あちらに着いてからは特に、ね……。」


拾い上げるとほぼ同時にネギ先生が入って来たので、渡してあげる。

『落し物』と言う意味で忠告も付け加えておく。

この調子だと財布すら落としかねないし、まず見つからないだろうから。


「は、ハイ。気をつけます……。」

「では。」


・・・・・いらない事を言ったかもしれない。勘違いしないと良いのですが。

Side out


Side ネギ


「おおー!ここが例の飛び降りる!!誰か飛び降りれ!!」

「では拙者が……。」

「おやめなさい!!下の方に迷惑ですわよ。」

「(飛び降りるのはいいのかよ……。)」


清水寺に来て皆さんはテンションが一気に上がってしまい(新幹線の時点で凄かったけど)

他のお客さんの迷惑にならないようにするので精一杯で、とても楽しめたモノではなかった。


「(ハァ…………。愁磨さん……助けてください…………。)」

「おぉ!?なんだネギ君溜息なんてついて!!折角なんだから楽しまないと!!」

「は、ハイ……。」


本当の意味で、この仕事大変なんだって気付いた気がする・・・・。

愁磨さん、ごめんなさい・・・。麻帆良に帰ったら今までの分を取り返せるように働きます。


「ネギせんせ~。そんな思いつめても良い事ないわよ?」

「あ、ノワールさ…先生。何飲んでいるんですか?」

「抹茶よ~。シュウが点ててくれたのも美味しかったけれど、これはこれで良いわね。

一緒に飲むかしら?」


ノワールさんの誘いに頷きそうになるけれど、周りを囲むのはアリアさんや桜咲さん、瀧宮さん。

要するに愁磨さんと行動してる面々・・・・ああ、どうでもいいや・・・・・。


「お言葉に甘えて……。」

「…………予想外の反応でちょっと困るわ。」

「本当に疲れているようだね。まぁ、アレを抑えるだけでも大したものだよ。

素直に評価できる。」

「ありがとうございます………。」


ずー・・・・・・。

「「「「はぁ~………。」」」」


抹茶を飲んで様々な溜息をつく。いいなぁ、なんか・・・・・・。

まったりっていうかゆっくりっていうか・・・。そう、余裕がある。


「いいなぁ………。」

「―――――フフッ。お年寄りみたいよ?」

「と、年寄り!?……でも、こんなにゆっくりできるんならそれも良いですね。」

「ね、ネガティブなんだかポジティブなんだか分からなくなってるよ?

大丈夫、ネギせんせ~?」


もみじさん、心配してくれるんだ・・・・・。

ついこの間倒そうと・・・いや、殺そうとした僕を。フフフフフ・・・・・。

ああ、僕って本当に心が狭くて愚鈍で愚昧で愚かで矮小で生きてる価値が無いなぁ・・・・。


「………はい、お団子。特別に奢ってあげるわ。」

「え?」


どんよりしていた僕に、ノワールさんがお団子をくれた。

ああ、ノワールさんすらこんなに優しくしてくれるなんて。相当酷いんだろう。


「誰も、あなたとシュウを比べたりなんかしないわ。違いすぎるしね?

でも、あなた担任なんだから。せめて1億分の1くらいは働いてくれないと。」

「は、はい。やってみます……。」

「ええ。『頑張る』よりはそっちの方が好きよ?じゃね。」

「ああ~!待ってよノワールぅー!ボクまだ食べ終わって無いーー!」


一人だけ騒がしく去って行く一行。

・・・・『頑張る』と『やってみる』って、どんな違いだろう?

あれは、えっと・・・・誰だっけ?


『『頑張る』ってのは嫌いなんだ。なんか、『とりあえず』とか『適当に』って

ニュアンスがあるじゃん?でも『やってみる』はなんか、こう……

ポジティブさがあるじゃんか。』

『ギャハハハハ!!説明になってねーぞ!お前はいっつもそうだな、―――――』


・・・・よく、思い出せないけど。

僕が無意識に反芻してるから、多分父さんか愁磨さんなんだろう。

そうだな・・・・とりあえず!!


「西の長さんに親書渡して、父さんの手掛かりを見つけよう!!

そのために来たようなものなんだから!!」


あと、愁磨さんの分も・・・・・とは言えないけど。

1億分の1・・・いや、千分の1くらいは働いて見せる!!

………
……


「ネギくーーーん!こっちこっち!」

「はいーー!これが有名な音羽の滝ですかー。」


何かに効くって話だったけど・・・同じ所から出てるのに違う効能ってありなのかな?


「ゆえゆえー!どれがなんだっけ?!」

「右から健康・学業・縁結びです。」

「「「「「「「左左ぃーーー!!」」」」」」」

「ん!?う、うまい!!いやでも不味い気もする!?」

「みなさん落ち着きなさい!!全く……。こ、これは確かに。

霊験あらたかな味な気も……。」


ああ、普通に真ん中選んで欲しかった自分がいるよ・・・。

多少は教師っぽくなったのかな・・・?



「あ、アニキ!あれヤバくねーか!?」

「ん?………ん!?」

「みんな酔い潰れてしまったみたいですが……。」


酔い潰れ・・・ってなんで!?

・・・・・・・あぁ!滝の上にお酒の樽が!?誰がこんな悪戯を!


「ん?なんだかお酒臭くないですか新田先生?」

「言われてみれば………。」

「あーー!その、えっと!?(―――って、焦る必要はないのか。)

その、滝の上にお酒の樽が仕掛けてあって。みなさんが飲んでしまったんです。」

「えぇ!?ああー、本当ですね……。全く、誰がこんな悪質な悪戯を。

――ネギ先生。申し訳ありませんが、全員をバスに乗せて旅館に行ってくれますかな?」

「はい、分かりました。」


酔い潰れていないみんなと協力して、いいんちょさん達をバスに乗せ旅館に向かう。

吐く必要のない嘘とか、誤魔化すなんていらないんだよね。

・・・正義じゃなくて、正しい事をすればいいんだ。・・・ですよね。


「ったく、困ったモンね。ん?なんか言った、ネギ?」

「いや、アハハハ。何でもないです。」

「むぅぅ~……。アンタ、出発前からなにか隠してない?『アッチ』関係で。

と言うか、そっちしかないけど。」


・・・明日菜さん、勘に関しては愁磨さんと同じくらい凄いんじゃないかって思うんだけど。

今更だし、いっか・・・。


「実は、学園長先生から頼まれて関西呪術教会――麻帆良学園と仲が悪い所がありまして、

そこに仲良くしましょうって手紙を持って行く事になってるんです。」

「へー、面倒な事になってるのね。……で、今日の変な出来事全部そこの仕業な訳ね?」

「………明日菜さん、あなたって本当に凄いですね。

と、そう言う訳です。すいません………。」

「いいわよ、気にしないで。今更ってもんでしょ。

で、またなんか手伝えばいいんでしょ?気が向いたら手伝ったげるわよ。」


そう言って、不敵にも見える顔で微笑む明日菜さん。

僕の周りって、カッコイイ人が多い気がするなぁ。


「でですね、姐さん、アニキ。俺っチはあの桜咲ってのが一番怪しいと思――」

「「いや、それは無い。」」

「それって、愁磨さんが刹那さんがスパイだって知ってるって事だよ?

あの人、約束は守るから……麻帆良に不利益起こす人だったら排除してるか懐柔してるよ。」

「……ネギ、あんた毒されて来たんじゃない?」

「うぐ……。と、とにかく。スパイとかの心配は無いよ。」


そりゃ、全く無いって思うのもダメだけど。


「あ、いたいた。ネギ先生~。教員は早めにお風呂済ませてくださいね。」

「あ、はーい。」


キリがいい(?)所でお風呂上がりのしずな先生が来た。

これ以上話もできないから、仕方ないか。


「(それじゃ、私達ももうすぐお風呂だから。また夜の自由時間ね。)」


明日菜さんとも別れお風呂に向かい、カモ君(熱燗持ち込んで)と一緒に入る。

ふぅ・・・・・・。


「今日は………疲れたよ……。一日目でこれって、死ねるんじゃないかなぁ……。」

「そういう時は……!飲みますかい?!アニキ。」

「いいけど、お酒はダメだよ!」

「えー!良いじゃねぇッスかーー!」


ガラガラガラ!


「わー!露天風呂ーーーー!!」

「ええ感じやね~♪……って、ネギ君!?」

「明日菜さん、木乃香さん!?」

「ちょっと!なんであんたここに居んのよぉーーーー!!」


Side out



Side ???


かくして、騒がしいままネギの第一日が終わった。

そして、麻帆良では――――


「よし、決定!!明日の夜までには準備終わらせとけよ二人とも!!」

「愁磨と旅行か。二人っきりならなおよかったのじゃが……。贅沢は言えんの。」

「(こ、これはある意味チャンス!?で、ですがしかし……。)」


留守番組が、動きだすのだった。


Side out
 
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