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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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コラボ集
  コラボ第一話   『平行世界にいっちゃった!?(前編)』【剣製の魔法少女戦記&F/mg】

 
前書き
今回は題名通りコラボ作となります。

発端は以前に感想でコラボが見たいという事がありました。
それで『Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-』を書いているセリカ様に相談を持ちかけてみまして快くOKサインをもらいまして、お互いに設定や話のすり合わせなどの修正などを繰り返しましてこうして話に漕ぎ着けることができました。

今回は前編になります。

私の方の時期は本編と深くリンクしておりまして、回想は出張任務の翌日となり、なのは達に語るのはまだ本編はそこまで終わっていませんがティアナの一件が終わった後となります。

そしてセリカ様の方はまだ闇の書事件編が終了していませんからネタバレなどは控えた翌年の二月となっております。

私の方が読み終わりましたらセリカ様の方も続けて読まれる事をオススメします。逆もまたしかりです。
言葉のやりとりは同じですがシホと士郎で思っているところとかが色々と違って楽しめますのでぜひ両方共一緒に読んで楽しんでください!

ではどうぞー。 

 





Side シホ・E・S・高町



ティアナの一件が無事に済んで数日のとある日に私はなのはとフェイトとフィアとはやて&リインの五人に声をかけられ引き止められた。
なんだろう、と思って理由を聞いてみるとこの間の海鳴への出張任務から帰ってきた翌日に起きた平行世界をまたいだ偶然の出会いの話を聞きたいという。

「でも、またどうして? 簡単に説明はしたでしょう?」
「いやな、そっちの世界の私達はどないやったのかなって五人で話していたら話が膨らんでいって急に詳しく聞きたくなったんよ」
「うんうん!」
「はいです!」
「私も聞きたいですぅ!」
「そうだね。それに、そっちではプレシア母さんも生きているっていう話なんでしょ、シホ?」
「ええ、元気だったわよ」
「なら、なおさら聞きたいよ。いいかな?」
「うーん…ま、なのは達には隠す必要もない事だし話してもいいかな」

それで私達は私の部屋に行き、お菓子やジュースなどもスタンバイして話し出す。
あの日の回想を…。



◆◇―――――――――◇◆



先日の海鳴への出張任務から帰ってきて、また訓練の日々が続いている。
だけど私の魔術の訓練…特に第二魔法の訓練も久しぶりに行おうと思う。
それで私は今夜は士郎、キャスターの共通工房で宝石剣の起動実験の準備をする。
そこにアルトリアとネロがやってきて、

「シホ、今夜は工房でなにをするのですか…?」
「奏者よ。なにか楽しそうな事をする気がしたのでアルトリアとともに来てやったぞ」
「二人共…ランとレンはどうしたの?」
「みっちりしごいてやりましたから今はもうぐっすりですよ」
「そう。それじゃ今日はランとレンの魔術修行は無しね。ちょうどいいわ」
「なにがちょうどいいのですか、シホ?」
「うん、これから久しぶりに宝石剣の起動実験をしようと思うの。
それでアルトリアとネロは起動実験に使う魔法陣が暴走した時にもしもの時に破壊するのに手伝ってもらいたいの」

するとアルトリアが少し顔を引きつらせていた。

「シホ、それはもう失敗前提の話をしているのですか…?
過去のリンのように失敗してメルヘンチックな事態にだけはしないでくださいよ」
「わかっているわ。そんなミスはしないわよ」
「信じていますからね…?」
「うん」

それで魔法陣や各自の使う道具の点検をしっかりとして私の魔力が一番高くなる午前零時を待つ。
そして時間になり、

「…―――接続開始(トレース・オン)

宝石剣に魔力を流して接続を確認して宝石剣は無色から七色の光に変わり部屋全体にまで光が広がっていく。
そして別の平行世界の観測を行おうと試みようとした時に、

「シホ! 様子がおかしいです! 魔法陣が何度も点滅を繰り返しています!」
「奏者よ! なにか失敗でもしたのか!?」
「そんなはずは…! あ! 一箇所だけ魔法陣のスペルが間違っている!?」

なんでこんな時にこんなリンのようなポカなミスを…!

「シホ! こんな時にリンのうっかりを発動させないでください!!」
「くっ!? この部屋の空間だけが歪み始めておるぞ! どうするのだ、奏者よ!」
「くっ…! 仕方がない。アルトリアはアンリミテッド・エアの中に入って! ネロは霊体化してついてきて!」
「わかりました!」
「うむ!」

それで二人はそれぞれアンリミテッド・エアに入ったり霊体化したりして世界が飛ぶのを待つ。
後はこの空間だけで被害を留めておくために、

「こんな事態に使うのも癪だけど…投影開始(トレース・オン)!」

私が投影したのは全て遠き理想郷(アヴァロン)
これで真名開放してこの空間だけを閉じ込める!
一か八かの賭けだけど成功して…!

全て遠き理想郷(アヴァロン)!」

果たして、結果は成功。
ドアの外は被害を受けていないみたいだ。
でも、もう私達は被害を回避するのは不可能。
他力本願だけど最終手段で大師父に助けてもらえることを祈ろう…。
そして部屋全体を光が包み込み私達は世界をおそらく飛ばされる。
それと同時に気も失ってしまった。
だけど、これがきっかけで私は、衛宮士郎の別の可能性を垣間見ることになるとは、この時は思っていなかった。



………………
……………
…………



「………ッ!」

私が再度目を覚ました時には、まだ朝方で肌寒いから時期的には冬かそこらくらいの気温体だろう、どこかの海の浜辺に転がっていた…。
どうやら平行世界の間で世界の修正を受ける被害は免れたみたいだ。
これも最後にアヴァロンを使用したおかげだろう。

「シホ! 無事ですか!?」
「奏者よ!」

そこにアルトリアとネロも実体化して現れる。

「二人とも無事だったのね」
「はい。ですがここは一体…」
「どこかの海辺の町の様だが…どうにも覚えがある浜辺だな」
「そうね…あの灯台の位置、形も見覚えがあるわ。あれは海鳴のものと同じね」
「と、いうことはここは海鳴市ということでしょうか?」
「おそらくね、アルトリア…しかも平行世界のというオマケ付きで、ね」

それから色々と捜索してみたけどやっぱりどこもかしこも海鳴と同じものだった。
でも解析してわかった。
ここは私達の世界より十年前のものだという事に。
それで少したそがれたい気持ちになったけどそうも言っていられない。

「とりあえず行動あるのみね。一応二人は待機していて」
「了解しました」
「わかった」

それで二人はそれぞれ姿を消す。

「さて、まずはどこにいきましょうか。時間は…分かる? エア?」
《いえ、時間は飛びましたのでわかりません。朝方だというのは確かでしょうが…》
「そっか。うーん…さて、どうしましょうか? 着の身着のままで来ちゃったから今着てる陸士部隊の制服しか持っていないし…。
とにかくまずはこの世界のなのはに接触してみようかしらね? 無用心だけど当たって砕けろの精神で行きましょうか」

それで高町家に向かう私。
時間もコンビニに寄って確認してみたけど休日の日曜日の八時過ぎだしちょうどいいだろう。
そして到着する高町家。
緊張するものである。
言葉遣いも気を付けないとね。
この世界では赤の他人なんだから。
それで呼吸を整えてまず呼び鈴を押す。

「はーい!」

すると中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
うん。なのはの声で間違いないようね。
しかもまだ子供時代の声だ。
そして扉が開かれてそこにはP・T事件と闇の書事件、聖杯大戦事件を乗り越えた当時の姿のなのはが立っていた。

「なのッ…!」

危ない! 普通になのはと呼び捨てするところだった。
当のなのはは不思議そうな表情をしながら、

「あの、どちら様ですか…?」

その言葉に、ああ、やっぱり…という少しの諦めと現実を認めろという天の声が聞こえてきた。
私が言葉に詰まっている間に、

「…? あの、どうしたんですか? そんな泣きそうな顔になってなにかあったんですか…?」

ああ、やっぱりなのははなのはね。その優しいところは変わらない。
だから私は、

「…あ、いや、なんでもないのよ。ちょっと道を聞こうとしたんだけどやっぱりいいわ。他を当たってみることにする」
「え、でも…」
「あ、気にしないで。私はちょっと人探しに来ただけだから…それじゃ―――…」

少し耐え切れなくなったので振り返りその場を足早に後にしようと思ったその時だった。

「唯一の男でなんだししっかりと付き合いなさいよ?」
「ああ、わかっているとも。だからそう耳元で叫ぶな、アリサ」
「アリサちゃん。士郎君も困っていることだし…」
「でも、みんなでお買い物は久しぶりだし楽しみだね」
「そやね」

背後、それはなのはの家の中で女の子の声が複数、おそらくフェイト達だろう、それと男の子の声が耳に入ってきた。
特にその男の子の声にはとても身近なものを感じた気がした。
それで私は思わず振り向くとそこにはなのは同様に当時のフェイト、アリサ、すずか、車椅子に乗っている姿のはやて…そしてもう一人。
その男の子は黒のシャツにズボン、上に赤いジャケットを着ていて、そして容姿は白銀の髪で肌は白くて目の色は血のように赤い色をしている。
けど、私の直感が言っていた。
それ以外は衛宮士郎の幼き頃の姿と同じだと。

「え、衛宮士郎……?」

それで思わず口が溢れてしまったのは、許して欲しい。

「な、なぜ俺の名前を?」

やっぱり…!?
でも、それじゃもしかしてこの世界って…?
色々と考え込んでも今は埒があかない。
士郎は警戒しているのでここは少し強引な手段を使うことにした。
魔術師という役を演じろ、私…!

「士郎君、会いたかったわ……」
「え? な……?」
「「「「「なぁっ!?」」」」」

私は演技を混ぜながらも士郎(おそらく…)の手を握り、直接体に触れたことを確認すると魔術回路を起動して魔力をちょっぴり流した。
なのは達が叫んでいるがこの際無視だ。
そして思ったとおり士郎(確定)の表情は驚きに彩られる。
それで私は思わずニヤリと笑みを浮かべる。

「私のこと、忘れちゃったのかしら? あなたの親戚のシホよ」
「ッ! きさ、いや……………そ、そうだな、久しぶりだ。シホさん……」
「うん、よかったわ。覚えていてくれて。
そこの子達、ちょっと士郎君を借りていくわね?」
「なのは達は少し待っていてくれ。
なに、すぐに済む」

士郎は笑みを顔に貼り付けているけど真剣な目をしていた。
それでふとフェイトに視線を一瞬向ければどうやら睨まれているらしい。
警戒されたみたいだ。ちょっと心が痛むけどしょうがない…。
それとどうやらこの世界ではこの士郎が私みたいな役割を果たしているみたいね。
それで私は士郎の手を握りながら皆の視線が消える脇道の方へと引っ張っていく。
そして二人だけになったのを見計らって、士郎は私の手を払い殺気を吹き出してくる。
魔術回路も起動したわね? 魔力を感じたわ。

「………貴様、何者だ?
いつ、どうやってこの結界に感知されることなく町に入ってきた? 魔術師」
「質問攻めね……。ま、仕方がないか。
さて、それじゃ私の自己紹介と行きましょうか。
私は“シホ・エミヤ・シュバインオーグ・高町”。
高町性がバレるとまずいからこの世界ではシホ・E・シュバインオーグで構わないわ。
そして、平行世界のあなたとはおそらく違う道を辿った衛宮士郎の成れの果てよ」
「なっ!?」

それで士郎はその表情を驚愕に染める。

「ど、どこにそんな証拠があると―――」
「この宝石剣と、投影開始(トレース・オン)

私が投影したのは干将・莫耶。
これで確信は得られるだろう。

「この二つが証拠よ」
「なっ……ぐっ!」

士郎は顔を歪めて色々と葛藤しているようだ。
それはそうだろう。
私もやられている側に立ったらそう感じてしまうだろうから。

「それが本当ならこの世界に何しにきたんだ?」

警戒の目つきで聞いてくる。
だけど私としてはそんなに警戒はして欲しくない。
なので正直に、

「宝石剣の起動実験をうっかり失敗しちゃってこの世界に来てしまったのよ。
ちなみにだけど今って新暦何年?」
「新暦? ミッドチルダの事か? なら今は66年の年越しの冬だが……」
「ということは約十年前というわけね」
「……なに? お前は十年も先の未来の平行世界から来たというのか?」
「ええ。そうなるわね。
大師父の助けを待つのもありだけどできるだけ自力で元の世界に……私の世界のなのは達の下に帰りたいからね」
「なるほど。まだ完全に信用できないが理解した」
「ありがと、士郎」

よかったわ。話が通じる衛宮士郎で。
エミヤ寄りだったら即戦闘になったかもしれないから。

「それとだけど、ちょっとこの格好をどうにかしたいのよ。
この制服って管理局の陸士部隊のものだから、もしうっかりリンディさん達の前に出たらバレちゃうから」
「それならちょうどいい。これからなのは達と買い物に行く予定だからその時に一緒に買えばいいだろう」
「そうさせてもらうわね。あ、それと今のうちに自己紹介しておく人がいるわ。
 アルトリア、ネロ、出てきて」
「はい」
「うむ」

そこでアルトリアがアンリミテッド・エアの中から出てきて、ネロも実体化した。

「なっ!? セイバー! それもなんかもう一人似たような人がいるが、サーヴァントか?」
「うむ! セイバーのサーヴァントだ」
「うん。私の世界でも色々あってね。そこらへんのあれこれはまた後ほど話すわ」
「……わ、わかった」
「しかし、シロウでいいのですか? あなたは随分とナノハ達に慕われているのですね」
「うっ……セイバー、そのだな」

アルトリアが少しつり目になって士郎を見ている。
それで士郎も少し怯えているようだ。
アルトリアの表情は呆れかはたまた羨望か。

「まぁ、いいでしょう。それと今はまだ私達は姿を現すのは得策ではありません。
ネロ、まだ待機していましょうか」
「そうだな。奏者よ。なにかあったらすぐに実体化して守るからな!」
「ええ、お願いね。ネロ」

それで二人はまた戻っていった。

「……赤い方はともかくセイバーはサーヴァントなのか? なにかデバイスから出てきたように感じたが」
「ええ。アルトリアも少し込み入った事情があってユニゾンデバイスになっているのよ」
「なっ!」

それで士郎は何度目かの驚愕の表情をする。
見ていて面白いかも。
でも、さて、

「それじゃ戻りましょうか。
なのは……いえ、彼女等にとっては私は初対面だからなのはちゃん達に挨拶をしないといけないからね」
「わかった」

それで私と士郎はなのは達の下に戻ると士郎は一気にみんなに囲まれていた。
会話的には、

「士郎君! なにか変なことされていない!?」となのは。
「士郎! あの女性は誰なの!?」とフェイト。
「いつからこんな綺麗な人とも交流があったの」と怖い表情で聞くすずか。
「士郎! どんな関係か白状してもらうわよ!」と怒りながら話すアリサ。
「すみにおけんなぁ、士郎君は」と面白いものを見つけたような笑みを浮かべているはやて。

………なんだろう。この世界の士郎ってもしかして全員から好意を持たれたりしているのかしら…?
ま、今は詮索もなんだし話を進めるとしよう。

「挨拶させてもらっていいかしら。
私の名前は“シホ・エミヤ・シュバインオーグ”。士郎君の親戚よ」
「えっ? エミヤ? それじゃもしかしてあなたは士郎と同じ魔じゅ―――…」
「……それ以上はここでは詮索はやめてね? 私も無闇矢鱈にみんなの記憶をいじりたくないから……」
「「「「「っ!?」」」」」

少し目を鋭くし魔力を通して威圧を放ち脅しをかけておく。
それは効果覿面で全員緊張した表情になる。
うん。まだまだ精神が甘いわね。私の世界のなのは達だったらすぐに復帰してくるだろう。

「……シホさん。子供相手になにやっているんですか?」

士郎に呆れられながらもそう咎められてしまった。

「ごめんね、士郎君。
でも私達にとって秘匿の話をこんな人がよく通るところで話そうとしたから口止めは必要でしょ?」

私はもとの顔に戻り、なのは達に舐められないように魔術師の大人像を演じる。

「それでだけど、士郎君のお誘いで私もショッピングに付き合わせさせてもらうわ。
普段着を購入したいしね。
あ、そうだわ。あなた達の名前をまだ聞いていなかったわね。よかったら教えてくれる?」
「え、えっと、高町なのはです」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」
「八神はやてです」
「月村すずかです」
「アリサ・バニングスです」
「そう、なのはちゃんにフェイトちゃんにはやてちゃんにすずかちゃん、アリサちゃんね。よろしくね」
「「「「「はい!」」」」」



◆◇―――――――――◇◆



それから私達は町にショッピングに出かけた。

「でも、シホさん」
「なに、なのはちゃん…?」
「どうして普段着を買うんですか? 持ってきていないんですか?」
「ちょっとワケありでね。今は着ている服しか持っていないのよ。
この制服も少しバレるとマズい格好なんで隠しておきたいの」
「やっぱり魔…とっとと、じゃなくて裏の関係ですか?」
「ま、そんなところね。それでなのはちゃん達は今日はなにを買いに来たの?」
「もう少しでバレンタインですからチョコの具材などをみんなで買いに来たんです!」
「そう…やっぱり本命は士郎君なの…?」
「にゃ!? そ、それはー…」

それでなのはは顔を赤くしてワタワタし出した。
うん、確定。このなのはは士郎に惚れているわね。
それで試しに他の四人にも聞いてみることにした。
そして帰ってきた言葉は、

「「「「その…士郎(君)に…」」」」

と、恥ずかしがりながらも教えてくれた。
な、なんだろう。この世界の士郎はハーレムを形成しているわ。
おそらく無自覚だろうから余計にタチが悪いわね。
それで士郎の方に少しジト目を向けてみるが、

「……シホさん。
 その……ケダモノを見るような眼差しはやめてくれないか?」
「どうしようかしらねー」
「シホさん! 今はまだいいんです!」
「そうです! 今は停戦協定を結んでいますから!」

すずかとアリサにそう言われたので、

「そう。ならもういいかしらね。
いい思いをしているわね、士郎君」
「……なんのことだ?」

…まだこの士郎は自分の気持ちに気づいていないのかしら?
というよりみんなの好意に気づいていないかも。
鈍感だわね。
私も人のことは言えないけどね。
それから色々と食材を購入した後、洋服店に入っていってせっかくだからみんなに選んでもらうことにした。

「シホさんは朱銀色の髪をしているから今の時期だと白いセーターとか似合いそうだね」
「うんうん。シホさんって綺麗だしなんでも似合うと思うよ!」
「シホさん、お金は持っていますか…?」
「ええ。平気よ」

よかったわぁ…。地球の、しかもこないだの出張任務の関係で日本のお金も持参していて。
それで色々と購入し、上は白いセーターに、下は動きやすいようにジーンズを購入した。
あと、おまけでリュックも購入して着替えて脱いだ制服などを入れておいた。
よし、これで大丈夫かな。

「さて、それじゃみんなもそろそろ帰る時間だろう?
よかったら送っていくぞ」

士郎がそう言うのでみんなも笑顔で「うん!」と頷いていた。
その表情は恋する乙女の如し、ってね。
それで各自送っていく私と士郎。
それで二人きりになり、

「シホはこれからどうするんだ?」
「すぐに戻れるかわからないから、寝床も確保したいところね。
生憎とこちらの世界では証明するものがないのだけど」
「なんならうちに来るか?
部屋は十分あるしな」
「それじゃお願いできる?」
「ああ、帰る手段が見つかるまでの間、ゆっくりとしていくといい。
同居人がいるが彼女なら問題ないだろう」
「ありがとね、士郎。
 ところで彼女って誰なの?」

女性と同居ね。私の知っている人かしら…?
思わず勘ぐってしまう。

「変な勘繰りはしないでくれ。
同居人は“プレシア”なんだから」
「えっ……?」

プレ、シア…?
え、どうして? もしかしてこの世界ではプレシアを救うことができたの? 士郎は…。
私は救うことができなかったのに…。
そう、もっと最良の選択をしていれば私もプレシアの事を救うことができたのよね。
そして今頃はフェイトとアリシアとで三人で一緒に暮らせることができただろう。
そんな、“もしも”を夢想して、すぐにやめた。
やり直しはしてはいけないんだ。
だからもう決まってしまった未来なんだから私は私で頑張っていこう。

「大丈夫か、シホ。落ち込んだ表情をしているが」
「ええ。少し考え事をしていたのよ。事情については士郎の家に到着したら話すわ」
「……もしや、シホの世界のプレシアは……」
「……こういうことに関してはやっぱり鋭いのね。ええ、士郎の思っている通りよ」
「そうか」

それ以上は士郎はなにも聞いてこなかった。
私はその心遣いに感謝した。
そして街の外れにある洋館に到着すると、

「なんかリンの家に似ているわね」
「シホもそう思うか。我ながら色々と犯罪めいたことをしてこの家を購入したからな」
「なに……? 暗示でも使ったの?」
「まぁな」
「それに解析の目で見てわかった事だけど認知阻害の魔術がかけられている。
一般人はなかなか近寄れないものね」
「わかるのか……?」
「ええ。これでもアインツベルンの千年の魔術の知識を持っているからね」
「アインツベルンの知識……だと? やはりイリヤに似た姿をしているのは何か関係しているのか?」
「それも家の中で話すわ。
私、いろいろな偶然とめぐり合わせで自分で言うのもなんだけどちょっとしたチート体だから」
「ふむ、詳しく聞きたいところだ。寒いし中に入って話すとしよう」

そして士郎はドアを開けて中へと入っていき、リビングに到着するそこにはやはりというべきかプレシアの姿があった。
なにか仕事をしているらしくモニターを開いて操作しているみたい。
それで思わず私は立ち止まってしまう。
プレシアの最後のあの光景が過ぎってしかたがないのだ。

「ただいま、プレシア」
「あら、おかえりなさい。士郎」

二人はこれが我らの日常だという感じで普通に会話している。
あのプレシアがこんなに普通になるなんて、いいわね。

「後ろの方は?」
「シホ・エミヤ・シュバインオーグさんだ。
なのは達には親戚の人という事で説明してる」
「エミヤ?……それにしてはやけに雰囲気が似ているわね」

するどい…!
冷静な姿になるとこうも知的な人になるのね。プレシアは。

「一言で言えば俺と同じような……」
「ちょっと待ちなさい!?」

いきなりばらす事はないでしょう!という思いで私は士郎に耳打ちをする。

「何いきなり明かそうとしてるのよ?」
「俺の事はプレシアやなのは達、近しい人には俺の事は教えている。
 一緒に生活するなら教えておいた方が気にしなくていいだろう」
「それはそうだけど、私の世界の事を話すとややこしいのよ?
見たところ、アリシアはいないようだし…」

私がポロっとアリシアという名前を言った途端にプレシアは目つきが鋭くなり、少し怖い表情になる。

「……あなた、どうしてアリシアの事を知っているのかしら?」
「えっと……どう説明すればいいのか」

私が少し困っていると士郎が気を利かせてくれたのか間に入ってきて、

「プレシア、少し落ち着け。こんな殺伐とした雰囲気になるところではないだろう」
「……そうね。謝るわ」
「こちらも勝手にアリシアの名前を出してすみません」

プレシアとお互いに謝った後、

「まずは話をする前に、近しい人には俺の事は教えているって言っていたけど」
「なのは、フェイト、はやて、すずか、アリサ、プレシア、高町家と月村家のメンバーにもある程度は教えている。
 管理局だとリンディさん、クロノ、エイミィさん、レティさん、グレアムさんとその使い魔。
 それぐらいか」
「なるほど……。私よりは秘密にしているのね」
「なんだ? そっちではばれてしまっているのか?」
「えぇ、管理局にもばれちゃっているから結構ギリギリなところね」
「そちらは何があったか知らないが苦労していそうだな」
「まぁね」

私と士郎がお互いに分かっているように会話しているが、プレシアが少し困った表情で、

「……話が見えないのだけど」
「すまん。そうだな、まずは」

士郎が私に視線を向けてくる。その視線には説明よろしくという意味が込められていた。

「そうね。まずは私の正体を話したほうがいいわね」

それで私は静かに語り始める。
私の半生を。
そして世界の別れの時にイリヤの想いを知り、今度こそ後悔しないように自分の正義を変えて複製されたイリヤの体に宿って性転換して魔導の世界にやってきてなのはの家族になった事を。

「なるほど……聖杯戦争中に第二魔法を会得した。
そしてサーヴァントは全員消えて数年たった後にイリヤも死んでしまったのか」
「えぇ」

世界を越える前までの話を終える。

「でもこれからが驚く話になるわね」

双子の兄妹のユーノとフィアットの出会い。
それから始まるジュエルシード事件。
色々なことが起こり最後にはフェイトはプレシアと悲しいお別れをしたことを。
そして、魔術回路に宿っていたイリヤの意志の覚醒。

「これはプレシアの前で話すつもりはなかったのだけど、話の関係で話さざるえなかったんです。
すみません、プレシア…」
「いえ、いいわ。でもやっぱり平行世界は違うのね。
この世界でももしかしたら私は死んでいた可能性があったかもしれないという事ね」
「もしもの話しはしないほうがいい。
今生きている。
ここにいて平穏に暮らしていけている。
それでいいじゃないか」
「そうね、士郎」

それで二人は納得したようだ。

「……それでイリヤが宿っていると言っていたが」
《そうだよ、シロウ》
「っ! イリヤ、普通に念話で会話できるのか!?」

士郎の言葉に重なるようにイリヤが目を覚まして私の中から話しだしてきた。

《えぇ、そうよ》
「イリヤもタイミングいい時に出てくるものよね」
《当たり前でしょ、シホ。こんな機会は滅多にないんだから楽しまなきゃ損よ。帰る宛もあるしゆっくりしていきましょう》
「そうね」
「……イリヤの件に関しては承知した。
ところでさっきから思っていた素朴な疑問なんだが」
「ん? なに…?」
「フィアットとは誰だ? ユーノに双子の妹がいるなど聞いたことがないんだが」
「えっ、フィアがいないの!?」
「あぁ」

それで私は考え込むがそこで黙って聞いていたプレシアが話し掛けてきて、

「それはきっと平行世界の別の可能性なのでしょうね」
「別の可能性?」
「シホさんの世界はフィアットという子が一緒に生まれてくる可能性の世界だった。
そして私達の世界はその可能性がなかった世界だということよ」
「なるほど……平行世界の神秘に当てはめれば納得がいくわね。
平行世界は無限に分岐していくからフィアが生まれないという選択肢をした世界もあるという事ね。
第二魔法の担い手としてすぐにそれに思い当たらなかったのは恥ずかしいわね」

それで私は少し俯くのだった。

「シホ、気にしないほうがいいぞ。気休めかもしれないが」
「ありがとう、士郎」

さて、それじゃそろそろ闇の書事件の話に移るとしましょうか。
それから話を進める。
だけどその前に、

「はやてに会ったけど念のため聞くけど、この世界は闇の書事件はもう解決しているの?」
「あぁ。ちゃんと解決したよ」
「そうね。それじゃ……リインフォースは、どうなった?」
「何とか救えたよ。今日、明日は本局で留守にしているが元気にしている」
「なら、よかったわ」

それで話を再開して、

「まずはやての話から始めた方がいいかしら。
私がなのは達の世界に来たと同時に私と訳あって分裂した士郎が記憶喪失で使い魔状態ではやてのもとにやってきたのよ」
「分裂!?」

そこですぐに反応する士郎。ま、当然といえば当然よね。

「まぁ、理由としては私の体には私とイリヤ、そしてアインツベルンの始まりの祖であるシルビア・アインツベルンの魂が宿っていたのよ。
だけど、さすがに三つの魂が一つの体に納まらなかったから私の魂を分裂することでなんとか納まりを得たのよ」
「なるほど……なんとなくだが理解した」
「私も理解したわ」
「ならよかったわ。
それじゃ少し話を飛ばしていくとヴォルケンリッターとの戦闘が起こり、なのははリンカーコアをシャマルさんに抜き取られた。
そして私は仮面の男に扮したリーゼ姉妹の手によって死ぬギリギリの重傷を受けることになった」
「やはり、あの猫共か……」
「もう過ぎた事とはいえ許せないわね」

二人もどうやら色々あったらしく怒りを顕にしている。

「まぁ、進めるわよ?
それで本来なら即入院の傷だったんだけどこのアンリミテッド・エアが起動。
そして、過去にシルビアの手によって創造物質化の魔法でサーヴァントからユニゾンデバイスに物質化してもらったアルトリアが現界して、アヴァロンを介して私の傷を治療したというわけ」
「待ってくれ。
そのシルビアという人はアインツベルンの始祖なのだろう?
どうやってセイバーは会ったんだ?
それと、創造物質化とはなんだ?」
「まぁ気になるのはわかるわ。
まずシルビアは実は古代ベルカの人で聖なる錬金術師と呼ばれていたらしいの。
でもその力が災いを呼ぶと予言されてある方の力によって異世界、つまり私達の世界の千年前に飛ばされたのよ。
次にアルトリアは現界ギリギリの状態で大師父に連れられて世界を飛ばされる前のシルビアと出会い、私の話を聞いてユニゾンデバイスになる決意をしたのよ」

そこにアルトリアが外に出てきて、

「はい。私はシホの力になりたいためにその決断をしました」
「……そうか」

士郎はどこか羨望の眼差しを私に向けてきたけどおそらくもとの世界に残してきたセイバーを思い出しているんだろうね。

「そして最後に創造物質化の魔法。
これは魂の物質化のもとになった魔法で、どんなものでも任意に物質化できたりできた。
たとえばさっきの例でサーヴァントをユニゾンデバイスにしたり、ただの人工AIを人間にしたり、体を作り出すこともできた。
魂の物質化もこの魔法の一つだったのよ」
「確かにチートだな」
「そうね」

士郎とプレシアはひたすら感心して頷いていた。

「それから話は再開するけど、私は魔導師として動いていけるようになって、シグナム達とも密会をしたり、士郎の記憶を戻したりしてはやてを裏から助ける計画を立てていった。
グレアム提督達ともなんとか説得して協力してもらい計画を立てて、闇の書に捕われたはやての意識を起こすために使い魔状態の士郎を憑依させて闇の書を完成させた」
「シグナム達は納得したのか?」
「えぇ。なんとか協力してもらったわ。
そして後ははやての意識を呼び戻すだけだったんだけど、ポカミスして闇の書の中の夢の世界にフェイトと一緒に捕われてしまったのよ」

すると士郎の表情が少し呆れた感じになっている。
分かっているわよ。
どうせリンのうっかりの呪いが感染しているんじゃないかとか思っているんでしょうね。
で、でも初見での出来事だったんだから仕方がないじゃない!
それで少し呼吸を落ち着かせて、

「それからどうなったんだ?」
「えぇ、夢の世界で私は衛宮の武家屋敷でもとの姿で目を覚ました。
そこにはかつての眩しいみんなとの暮らしが広がっていた。
でも所詮これは夢の世界だとして私はアルトリアとイリヤの誘惑の言葉を断り出る決意をした。
でも脱出した後もまた夢は続いていたの。
そこではシルビアのかつての記憶が再現されていた。
そしてある想いを私に託して私と魂を融合して一つの人間となり、そして根源に触れるイメージが沸いて私は第三魔法。
劣化して一度きりの創造物質化の魔法。
シルビアの記憶。
アインツベルンの千年の知識を会得した」
「……なんというか、聞いていて思ったがかなりシホはチートな力を会得したんだな。
第二と第三の魔法を両方使えるとは……」
「私もそれは思うけど、もう今となっては今更って感じだしね」
「そ、そうか。ここは呆れるところか驚くところなのか……」
「どちらでも構わないわ。
それで後は闇の書の闇を倒した後、消えようとしていたリインフォースを士郎と一緒に説得して創造物質化の魔法でリインフォースの意志に魂と人間の体を。
使い魔状態の士郎にも新たに体を与えて全員助かって闇の書事件は終決した」
「そちらはそんな終わり方をしたのだな」

それで一段落し、士郎が煎れてくれた紅茶を一口飲む。
うん、一言で言おう。
負けた…。
なに? 冷めているのにこんなにおいしいなんて…。



◆◇―――――――――◇◆



それから少し休んだ後、話を再開する。

「そして次の事件は多分この世界では起こらないと思うから話させてもらうわ」
「なんだ? また海鳴で事件が起きたのか」
「えぇ。きっかけはとある平行世界で言峰綺礼が世界を聖杯の泥で滅ぼした事が発端だった」
「なんだと!?」

それで士郎は立ち上がる。

「落ち着いて士郎。もう終わったことだから…」
「あ、あぁ…わかった」

それで士郎はまた着席する。

「それがきっかけでその世界の死んでいった魔術師の因子がすべて私達の世界に移ってきて、次々と私達の次元世界に魔術師が誕生していった。
そしてなのは、フェイト、はやて、すずか、アリサも魔術回路が宿り、同時に令呪まで宿ってしまった」
「令呪までが……」
「言峰綺礼が私達の世界に小聖杯を宿したホムンクルス、大聖杯を宝物庫にいれて改造したギルガメッシュ、黒化したセイバー三人を連れてやってきた。
そして、自分を含めた七人のマスターを集めて聖杯大戦を起こした。
私達は言峰綺礼の野望を阻止するためにサーヴァントを召喚して対抗して七対七の対抗戦を起こしたのよ。
そして私が召喚したのがセイバー……ネロ・クラウディウスよ」
「うむ」

そこにネロが実体化して私の後ろに現れた。

「そして聖杯大戦の最中、盗まれていたアリシアの体に無理やり魂を呼び戻してサーヴァントの魔力タンクに使っていた魔術師がいたのよ」
「なんですって!?」

それで今度はプレシアが怒りの表情をして立ち上がった。
人一人殺せそうな魔力が吹き出しているし。
まぁ予想していたから驚きはないけどもっとオブラートに包んで言えばよかったわね。反省…。

「その魔術師の名前を教えなさい。今から殺しに行くわ!」
「落ち着いてプレシア。
大丈夫、もうその魔術師は自害してアリシアも第三魔法で救って今はフェイトと楽しくやっているわ」

それを聞いてプレシアの怒りの表情は元に戻っていき、

「そうなの。シホさん、アリシアを救ってくれてありがとう」
「いえ、当然のことをしたまでです。
話を再開しますけど敵のサーヴァントをほとんど倒したのはいいんだけど言峰綺礼が小聖杯のホムンクルスの心臓を抜き取り自分に移植して私達に最後の戦いを挑んできた。
そしてなんとかギルガメッシュともども倒すことができて後に聖杯大戦事件と呼ばれた事件は終決したのよ」
「なかなかに破天荒な世界になったんだな」
「えぇ、これ以上は未来の話になってくるから禁則事項で言えないけど退屈しない毎日を送っているわ」

それでやっとこさ話は終了した。

「それじゃ今度は士郎の話を聞きたいところだけど、プレシアがいる以外はほとんど変わらないみたいだし別にいいかしらね。
でも一つ最初から気になっていたんだけど……士郎、あなたってもしかして死徒だったりする?」
「よくわかったな。
 さすが魔法使いといったところか」
「まぁね。それなりに気配は読めるからね。士郎からは人の気配があまりしなかったのも理由の一つかしらね」

それで士郎は私がすぐに死徒だと看破して驚いているようである。

「それにしても隠しているみたいだけどかなりの魔力を秘めているみたいね。
二十七祖ともいい勝負なんじゃない?」

私が冗談半分でそう聞いてみると、

「……………嬉しくない事だが、聖堂教会からは第十位を与えられてはいた」

は…?
聞き間違いでなければ目の前の士郎は二十七祖の仲間入りしていたって事…!?
それで確認のために、

「十位って二十七祖の第十位?」
「ああ」
「あのネロ・カオスの後継者ってどうやったらそんな事になるのよ。
……まさか死徒の親も二十七祖とか言わないわよね?」

すると士郎は当てられたという表情になる。

「その顔、当たりみたいね。
誰なの?」
「アルトルージュ・ブリュンスタッド」

内心で私は思わず大声をあげていた。
それで冷静を装いながらも、

「………黒の姫君。
こっちの世界に来て私も大概だと思ったけど、貴方は元の世界で一体何をしてるのよ」

聞かずにはいられなかった。
私の経験と全然違うと思っていたがどうやったらアルクェイドの姉であるアルトルージュに気に入られて死徒にまで上り詰めたのか…。
もっとこちらの士郎の事も聞きたくなったけど、ふと時計を見るといい時間だったので、

「まぁ、その話は今度にしましょうか。
時間も遅いし、私がなにか料理を作るわ?」
「いいのか?」
「えぇ。せっかくお世話になるんだからこれくらいさせて」
「わかった」
「……ところで死徒なんだから料理の味って感じられるの?」
「ああ。普通の死徒はどうかは知らないが、俺や周り皆もわかるぞ」
「そう、なら安心ね」

それで厨房を借りようと思った矢先に士郎に、

「お前は、今……幸せか?」
「………!」

真顔でそんな事を聞かれた。
そして私はすぐに今までのなのは達との素晴らしい思い出達が鮮明に脳裏に蘇ってきて、

「……ええ。私は今、幸せよ」

満面の笑みを浮かべて士郎にそう返した。

「そうか。
……俺も掴めるだろうか?」

士郎が独り言のように小声でそう呟く。

「つかめるわよ。きっとね」

そこにプレシアがそう言葉をかけて、

「士郎、私は貴方に救われたわ。だからあなたの幸せのためならいくらでも協力させてもらうわ」
「プレシア…」

どうやらそれで士郎は感動しているみたいであった。
それで聞いていたアルトリア達も、

「シロウ、やり直しはできませんが再出発はできます。
ですから頑張ってください」
「奏者と同じ存在なのだからうまくいくだろう!」
《シロウ、頑張ってね》
「ああ」

みんなに応援されて士郎はいい笑みを浮かべているのだった。
私もそれで同じように嬉しくなったので、それから私は簡単に作れる料理を作って振舞ったのだった。
料理のウケは良かったのでひとまず安心した。


 
 

 
後書き
今回のシホのうっかりの魔法陣スペルミスはこの出会いを実現させるために起こる必然事項だったのです。

フィアの件は平行世界の可能性ということでセリカさんと話をすり合わせました。

そしてこう、シホと士郎を比べてみますと、
私の描くシホは第二と第三の魔法を会得して技術面で強くなりました。
そしてセリカ様の士郎は死徒化して戦闘面で強くなったイメージがありますよね。

後半もセリカ様と合わせた時間に投稿する予定ですのでお楽しみください。 
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