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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter17「写真」

 
前書き
今話はハーメルン投稿時と若干話が変わっています。

ハーメルン投稿時に読者様から寄せられた、感想を取り入れ、
TOX2キャラ達の紹介が詳しくなっています。 

 
夜の厨房の仕事が終わり目を瞑って肩を揉みながら、自室へ戻ろうとしていたルドガーだが……

「きゃ!」

「!!」

食堂の出口で誰かとぶつかってしまう。多分女性だ。

……その証拠に胸に2つの弾力のあるモノの感触が胸で感じていた。

「フェイト、ごめん」

ぶつかった相手はフェイトだった。
お互いぶつかった衝撃で床に尻餅をついていた。

「こっちこそごめん。私もボーっとしてた」

「大丈夫か?疲れてるみたいだが……」

ここ最近はガジェット関連の資料作成に加えライトニングの訓練も兼任していたのだ。才色兼備の彼女だって疲れの1つや2つは出ても無理はない。

「私は大丈夫だよ」

「あまり無理はするなよ?フェイトが倒れたら俺は勿論、なのはやはやて達だって心配するしさ」

「あ、ありがとう……」

床に尻餅をついた状態でルドガーに気遣いの言葉を言われ、恥ずかしそうな表情を浮かべるフェイト。面と向かって異性にそんな優しい言葉を言われれば赤くもなる。

「じゃあまた。ゆっくり休まなきゃダメだぞ」

「うん、ありがとうルドガー」

フェイトに手を貸して彼女が立ち上がった後ルドガーは1日の疲れと汚れを洗い落とす為シャワー室に向かう事にした。

「あれ?これ……」

フェイトは足元に落ちていた一枚の紙切れを拾って確認する。それは一枚の写真だった。

「ルドガーと……」

そこに写っていたのは中腰の体勢でいるルドガーと数人の男女が混じった写真だった。
年齢層はバラバラな上に、一番目を引くのは妖艶なオーラを持つ女性だ。背中から羽が生え宙に浮いているのだ。

彼女がルドガーの世界に人間とは別に存在する精霊なのだろうか?

「ルド……って行っちゃったか……」

既にルドガーの姿はなかったが、彼の落とし物なのは間違いない。
元の世界から一緒に飛ばされた数少ない持ち物なのだろうし、きっと彼の仲間との記念写真なのだろうし、彼の表情がそれを物語ったっている。

( 皆いい表情してるね )

特に隣にいるエリオとキャロより少し年下であろう女の子とルドガーは仲間以上の特別なモノを感じられてくる。

「フェイトちゃん?」

「どうしたん、そんな所で?」

食堂へなのはとはやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、リイン、シャーリー、フォワード達がぞろぞろと入ってくる。

「みんな……って何でこんな大勢なの?」

「偶然そこで会ったんよ。私はシグナムとシャマルとリインでご飯食べにきたんやけど……」

「私達もだよ。ちょっと今日は張り切りすぎて時間かかちゃって、さっきシャワー浴びたばかりなんだよ」

「ご飯♪ご飯♪」

「……アンタの腹の虫は少しは自重できないのかしら?」

いつも通りのスバルとティアナの掛け合いに笑いが起こる。

「そうだったんだ。私もこれからなんだ。よかったら皆一緒に食べない」

「勿論や」

「大勢で食べるご飯は美味しいものね」

「けど逆に大勢でシャマルの作った飯を食べると気持ちがギガ沈む上に下手すりゃ死んじまうけどな」

「ひ、酷い!ヴィータちゃん!シグナム!ヴィータちゃんがっ!」

「私もヴィータと同意見だ。少しはクルスニクを見習え」

「うわぁーん!はやてちゃん!」

救いの言葉を期待してシグナムに声を掛けるも、1人で何でも出来るもんなエージェントと比較されてしまった。もう自分の味方ははやてだけだ。シャマルは自身の主君に泣きながらすがる。
……はやてが最後の希望だ。

(どないしよう……迂濶に頑張れって言ってまた暴走されるんも困るし……)

……望みはシャマルが知らぬまま、断ち切られた。


……頑張らない程度に頑張ろうシャマル。

「あはは……とにかく皆、一度椅子に座ろうよ」

「はい、フェイトさん!」

元気よくエリオが返事をする。全員が自分の席についた時フェイトは写真をルドガーに届けない事を思い出す。この温かな空気の影響でいつの間にか忘れていた。だが、写真を持っていた手が滑り写真をテーブルの中心に落とす。

「フェイトちゃんこの写真に写ってるのって……」

「ルドガーさん?とあと……」

なのはが親切心でフェイトに写真を渡そうと取った際写真の中身を見てしまう。
ついでにシャーリーも。悪気はないとはいえ、人の写真を友達とはいえ他の人間に了承もなく勝手に見せてしまう事に罪悪感を覚えてしまう。だが既に時は遅そし。ルドガーが写っている写真という物を見たい好奇心で、椅子に座っていた者達が続々とフェイト達のテーブルに集まってくる。

「ほんまや。しかもえらい大所帯やな……」

「うわぁ!リインみたいに宙に浮いてる人がいるですぅ!」

「ていうかコイツ人間なのか?羽が生えてるみてーだけどよ」

「この紫色の物体は何なのかしらね?ゆるいような、キモいような……」

「もしやその羽の生えた女と紫の物体が、以前クルスニクが言っていた精霊という者なのか?」

八神家メンバーが写真の中で明らかに異質な、羽の生えた女と謎の紫の物体----ミュゼとティポを見て各々の印象を話す。
ミュゼはともかく、ティポ本人が今の会話を聞いたら『バホー!ぼくの心はとうふめんたるなんだぞー!』と目を潤ませてシャマル達に抗議するだろう。あとティポは精霊ではない。
あんな伸縮自在で何でも飲み込む生物?は精霊から見ても驚きの一言だ。

「ねぇティア。精霊って何?」

「アンタ、ルドガーさんの世界の話し忘れたの?」

「えへへへ……ごめん」

仕方なくティアナはルドガーの世界の知識を知るかぎりでスバルに教える事にした。最もルドガーは自分のいた世界についてそこまでは詳しくは話していない為、表面上の事しかティアナも教える事はできないはずだ。

「写真に写ってるルドガーさんと周りの人達みんな、優しそうな人達そうだね」

「キュクー!」

「ルドガーさんにとってこの人達はどんな存在なんだろう?やっぱり僕達フォワードチームみたいな感じなのかな?」

仲間……。ルドガーにとってこの写真に写っている人間はエリオの言う通り皆確かに仲間だ。
共に戦い、共に迷い、共に選択し、共に『審判』を超えた信じて信じ合った大切な仲間……。
彼等と出会わなければルドガーは何1つ真実をしる事もなく選択する事もきっとなかった。

「大切な人達なのは確かだろうね」

「この小さい女の子はルドガーさんの妹さんでしょうか?」

シャーリーの疑問はこの場にいる人間が皆持っていたモノだ。ルドガーの隣に立つ帽子の少女は写真に写る人物の中で一番彼と仲が良さそうに見え、例えるなら兄妹に見えなくもない。

「ルドガーに妹はおらんよ。お兄さんならおるらしいよ」

「ルドガー君ってお兄さんいるの!?」

「そんな驚く事でもないやろ……と言いたい所やけど、私もルドガーから直接聞かされた時はなのはちゃんみたいに驚いたしな……」

「管理局すら干渉できない完全な異世界の出身だからそれもそうなるんだろうけど、私達ってルドガーの事について殆ど何も知らないよね」

ルドガーと出会ってからもう1ヶ月は経つ。
彼は管理局の彼の出身世界を捜索する事を断り、六課で保護される形のまま今も六課に居続けている。だがフェイト達がルドガーの事について知っているのはほんの僅かだ。

最近知った事を付け加えれば、今はやてが言った兄の事やリニアレールで彼が変身し、圧倒的な力を見せ付けた骸殻というクルスニク一族だけが発現できるとんでも能力だ。
ルドガーの戦闘能力やそれ以外での能力は十分わかったが、彼の過去といった生い立ちは殆どフェイト達は知らない。

「確かにな……けど今はそれでいいんや」

「はやて?」

彼と出会って一番変化があったはやてから深入りしてままでルドガーの過去を知る必要はないと言った事にフェイト達が少し驚く。好意に近い感情を抱いている人間の口から聞けば驚くのも無理はない。

「誰にだって触れられたくない事の1つや2つは必ずあるもんや」

「はやてはそれでいいの?」

信頼を寄せている人物が自分に隠している事がある。人によって受け取り方は様々であり、フェイトの場合は相手が自分に後ろめたい事があると考えるのではなくむしろ、それを打ち明けてくれないのは自分が頼りないから話してくれないのではと考えてしまう。

「何でも包み隠さず話さないと仲間やないっていう道理なんてない。もし話さないと絶交するって言われたら、私はそんな仲間いらへんよ」

「にゃはは……はやてちゃんらしいね」

人が心に抱えているモノはいいモノだけではない。その人物にとって忘れたくても忘れられない……傷を持っている事がある。それは大きさにもよるがその者の人生に一生付いて回る事もある。

「けど……やっぱ私もこの写真に写ってる人達について知りたいというのが本音や。ルドガーに聞いてみるんが一番やな」

「でも答えてくれるかな?もしルドガーにとってこの--」

「俺がどうしたって?」

背後から聞こえた声。その声の主は今の話しの中心になっていたルドガー本人だった。シャワーを浴びるつもりだったが、シャワー室に向かう途中で腹の虫が騒ぎ出したので行き先変更。
まずは腹ごしらえから済ませる事にしたようだ。

「トマト入りオムレツ・並にミネストローネ・並セットを……で、どうしたんだ皆?」

「これなんだけど……」

注文を済ませたルドガーにフェイトが写真を手渡した。ルドガーは驚いた顔を見せるがすぐ元に戻る。

「どうしてフェイトがこれを?」

「さっきぶつかった時に落としたんだよ。それを私が拾って……」

言葉に詰まる。理由はどうあれ、勝手に人の写真を見知った人間とはいえ数人に見せてしまった。謝らなくてはならない。

「ごめんルドガー!」

「何でフェイトが謝るんだ?」

「だって……写真を勝手に……」

ああ、とフェイトが言いたい事が分かり、笑って気にしないように諭す。

「元々俺がぶつかったのが悪いんだ。ていうか俺が礼を言わなきゃな」

「え?」

「写真を拾ってくれただろ?見てわかると思うけど、この写真は俺にとっては宝物みたいな物なんだ」

宝物という特別な表現を聞き、フェイト達はここに写る人物達がルドガーにとって大切な存在だったという確信を得る。

「その写真に写る者達はお前の仲間か?」

シグナムの問い掛けにルドガーは頷く。

「ああ……俺にとって皆は最高の仲間だよ」

「ルドガーの仲間かぁー。一度でもいいから会ってみたいもんやー」

「そうだな。皆良い奴ばっかりだから、はやて達とも仲良くなれるだろうな」

ジュード達とはやて達が話す姿……想像しただけで心踊る。彼らと彼女達の性格を考えれば仲良くならないはずがないのだから。

「でこの羽が生えてる女は何なんだよ?人間なわけねぇよな?」

「ああ、彼女は精霊ミュゼ。それも精霊の中では特に強い力を持つ大精霊だ。精霊については前に話したからわかるだろ?」

精霊はこの世界には存在しないものであるため、ある程度の解説は既に話していたが、写真とはいえ初めて見た精霊が口をモグモグさせながらお気楽そうに浮いている姿では、精霊は食い気の張った種族だと思われても仕方ない。

せめて写真に写る時ぐらいは普通にしてもらいたかった。

「はい!はーい!ルドガー君、私も質問!」

「 ? 」

「もの凄く気になってたんだけど、この紫色の物体はなんなの?ゆるいような、キモいような…よくわからない物体!」

「私も気になってました!これも精霊だったりするんですか?不気味ですよねー」

「…はは」

シャマルとシャーリーのティポのイメージを聞き、異世界でもティポはやはり、第一印象はそうなるんだなと知ると一緒にティポが本当に可哀想に思えてくる。

「そいつはティポっていうぬいぐるみなんだ」

「ぬ、ぬいぐるみ!?こんな不細工なのが?」

(あれ?何かもっと印象悪くなったか?)

ぬいぐるみという事を聞けば少しはティポのイメージが明るくなると思ったが、ルドガーの意図とは逆にマイナスに繋がっていく。

「わ、私はかわいいと思うよ?」

「う、うん!特にこの角とかさぁ」

「あ、あとティポは喋るだぞ!それに伸縮自在で、大きくなったら人間も中に入れたりもできたりと、
ギガント万能ぬいぐるみなんだ」

そんなルドガーの気を何となく感じたフェイトとなのはがフォローを入れてくれて、更にティポの機能を説明する。
これで少しはティポの株が上がる。
ちなみにティポの角のような物は実は耳だったりするが、この際ツッコまない。

心の中でエリーゼとティポにやったよ俺!と誇らしい気持ちがあったが………


「な、なんやそれ!ぬいぐるみが喋るやて!?めっちゃ怖いわ!」

「しかも人を喰うとか完全に化け物じゃねーか」


結果はえらく曲解しまったようだった。


「ところでクルスニク。この黒いロングコートの男は何者なんだ?」

ティポについてのフォローを考えていたルドガーにシグナムが黒いロングコートの男---ガイアスについて尋ねてくる。何やら目が輝いているようにも見え少し引いてしまう。

「写真とはいえこの男がただ者じゃないのは私でもわかる」

「そうだな……ただの刀オタクの遊び人じゃ納得しないよな」

「は?」

シグナムの性格とこの洞察力では彼女も納得はまずしないはずた。ではどう説明するか?無闇にガイアスの正体を明かすのはやはり気が引ける。だがここは異世界。
ガイアスの事を詳しく話しても問題なはいと判断する。

「アースト。それがこの男の本名だけど、もう1つの名前、ガイアスの方が断然有名だな」

「もう1つの名だと?普段は偽名を名乗っているのか?」

「前にガイアス本人から聞いた理由だと、本名だと自分の事で嗅ぎ付けてきた善からぬ輩の手から、身内を守る為に名前を変えたとか言っていたな……」

あのガイアスの事だ。
それでもし妹のカーラが傷ついていたら本気で自分を責める事になる。
それはあの分史世界を見た事でわかりきった事だ。

「勿体ぶらずに話してくださいー!」

リインが勿体ぶるルドガーの態度に痺れを切らせ抗議しはじめた。それに続いてはやても同じような態度を取り始めていた。

「はいはい、わかったよ。ガイアスはな、簡単に言うとリーゼ・マクシアで一番えらーいお方……つまり王様だよ」

「……マジなんか?」

「うん、大マジだ」



ええぇぇぇぇぇぇ!?



一時の沈黙がガイアスの正体を肯定した瞬間、一部のメンバーから驚きの声が上がった。無理もない。仲間の1人が一国の国王様なのだ。逆にそんな状況を見慣れている方が珍しい。

「どうしてそんな偉い人がルドガー達と一緒にいるの?王様ってお城の謁見の間っていうのかな?そこで椅子に座ってるんじゃ……」

「いやいや、偏り過ぎでしょそれ」

まるで絵本に出てくるような王様その者のようなイメージで話すフェイトに思わずツッコミを入れてしまう。だが確かにガイアスの中身はそれに近いような気もしなくない。

「民想いの王様でね、ガイアスは。あとこのヒュンってなっているアホ毛の女は二代目精霊の主、ミラ=マクスウェルな」

「こ、この人、精霊の主さんなんですか!?」

「ああ。この精霊の主様は驚くほど燃費わるくてさ、飯食べて30分したら腹が減ったって訴えてくる食いしん坊精霊でもあるぞ」

ミラの正体を聞いて驚いているキャロに、ミラの食いしん坊っぷりを話すと、皆意外そうな顔をする。
どうやら精霊の主という称号は実物を見たことのない者からすると、かなり神々しい存在に想像してしまうようだ。

他にも、ローエンやジュード、アルヴィン、レイア、エリーゼ、仲間達の事ををはやて達に話す。
シグナムとティアナは指揮者(コンダクター)の異名を持つローエンに興味を持ち、同年代で源霊匣(オリジン)開発に従事するジュードにはスバルとシャーリーが非常に興味をしめしていた。

「ちょっと俺の世界の成り立ちについても説明していいか?この際だしさ」

「もちろんええよ」

全員が頷く。
皆……特にはやてはルドガーの世界について一番しりたかった。
聞かないはずがない。

「ではまず……前に話したと思うが、リーゼ・マクシアとエレンピオスは2000年前に断界殻(シェル)と呼ばれる膨大なマナの壁で両国は隔絶され、互いに干渉できないでいた」

「あの~マナって何ですか?」

「いい質問だスバル。精霊術についてはわかるな?」

「えっと確か…」

「リーゼ・マクシア人だけが使える私達の魔法と似た力ですよね?」

スバルでは全て理解できているとは思えなかったのか、ティアナが簡潔に精霊術について話す。

「そうだ。だが正確にはリーゼ・マクシア人の脳には霊力野(ゲート)と呼ばれる器官があり、そこからマナを発して精霊に与える事で精霊術が発動する」

「ルドガーさんにはその霊力野っていう器官はないんですよね?」

「一応エレンピオス人の脳にも霊力野はある事はあるが、リーゼ・マクシア人の物より退化していて精霊術は使えないのさ」

骸殻(がいかく)は精霊術とは違うんですかー?」

リインの質問はもっともだ。何故エレンピオス人であるルドガー達クルスニク一族だけが精霊の力である骸殻を使用できるのか?必ず上がる矛盾だ。

「前に言ったろ?骸殻はクルスニク一族だけに受け継がれいる力だ。詳しく説明するのは面倒だから、突然変異だとでも思ってくれ」

実際骸殻はクルスニク一族でも力を持って生まれてくる者は稀だ。
突然変異というルドガーの言葉はあながち間違いではない。

「話しを戻すぞ。勿論断界殻は自然発生したモノじゃない。ある大精霊が行使した事で出来た物だ」

「ある大精霊だと?」

「元素を司る精霊の主マクスウェル……いや、初代マクスウェルが断界殻を創造したのはひとえに俺達人間に理由があった。俺達の世界には黒匣(ジン)と呼ばれる霊力野を介さずに精霊術を行使できる機器がある……だけどこれはマクスウェルを始めとする精霊達にとっては憎むべき物以外何でもない」

「つまりその黒匣とかいう機械は精霊側に何らかの負担をかける代物なん?」

「負担なんてものじゃない。黒匣の使用は精霊の死を意味する」

「精霊さんが死ぬってどういう事ですかっ!?」

黒匣の使用による事で精霊が死ぬという事を知り全員が驚いていた。リインは自分と親近感が湧くのか、特に動揺を見せている。

「黒匣によって栄える世界、それがエレンピオス。だが黒匣は使用するために精霊からマナを奪って発動する物であり、マナを奪われ続けると精霊は死ぬ。現にエレンピオスは黒匣多様により精霊減少によって自然の枯渇、深刻なエネルギー不足にまで陥っていたからな」

「どうしてエレンピオス人は黒匣をそうまでして使っていたの?」

なのは達からすれば自らの繁栄の為に他者の命を奪う事で生き残る事が理解できない。これが原因で源初の三霊達はオリジンの審判を始めたのだ。エレンピオス人でもあるルドガーにも理解できない。現にそれを知ったエレンピオス人の中にも黒匣の使用を躊躇う者も出ていた。だが逆にリーゼ・マクシア人からマナを採取する事でエネルギー不足を解消する異界炉計画なども水面下で動きだしていた事もあり、人が欲深い存在であるのを皮肉な事に立証していたのである。

「精霊の存在事態をエレンピオス人が認知していなかったのが大きな理由だ」

「そんな事って……」

「悲しいがそれが現実だった。精霊だけでだなくリーゼ・マクシアの存在事態がエレンピオスではおとぎ話であったんだ。だから自然枯渇もエネルギー不足も、エネルギー源が勝手になくなっているというのが多くのエレンピオス人の考えだった」

「ではマクスウェルが断界殻を作ったのは……」

「そう…幾度と警告を送ったマクスウェル…だがその警告は聞き入れてもらえず、業を煮やしたマクスウェルは霊力野が発達した人間を連れ、黒匣の無いリーゼ・マクシアを作ると共に、断界殻で両国を隔絶する……エレンピオスが黒匣の多用により滅亡する時を待つ為にな」

「…………」

ルドガーの世界の歴史……それは六課の隊長陣と数えきれない時を転生しつづけたヴォルケンリッターの面々すら言葉を紡ぐ事ができないでいる。綺麗事だけで世界がが成り立たない事を思い知るには十分だった。

「そして2000年の時が経ち、世界は大きく動き出した」

ジュード・マティスとミラ=マクスウェル……2人の出会いから2000年の時を経て物語は動き出した。ルドガーが体験しなかった一年前にあった戦いについて、ジュードから聞いた限りを簡単になのは達に話す。

「ガイアスは最初こそエレンピオスと黒匣を殲滅する事を目指していたが、ジュード達と本気でぶつかった事で2つの国と精霊がわかりあえる可能性に気付けた……その道のりは険しいだろうが、俺は人と精霊が変われる事を信じている」


“何千年かかろうとも、辿り着いてみせる”

きっとガイアスやジュード、その子々孫々なら理想の世界へ辿り着ける。

「まぁガイアスは大分天然なとこがあってビックリするところが抜けてたりするが、民を思う気持ちは本物だからな」

「お前がそこまで信頼している仲間か……是非ともこのガイアス王やイルベルト殿とは一度手合わせ願いたいものだ」

「シグナムはまたそれかよー」

ガイアスとシグナムが長刀と剣をぶつけ合う姿……思った以上に想像するのが簡単だった。
ある意味相性バッチリだ。

「じゃあさルドガー」

「何だ?」

「このルドガーの隣にいる女の子は誰なの?ルドガーは確か妹さんはいなかったってはやてから聞いたけど…」

フェイトが指差す先には、写真に写るエルの姿だった。何度エルの笑顔を見る度に自分は守り抜いたのだと実感できる。

「この子はエル……俺にとっては大切な“相棒”なんだ」

「相棒?」

「一応言っておくが変な意味でとるなよ?」

「え?違ったん?」

「ち・が・う!」

ミネストローネを飲み、気を取り直して話を始める事にする。再三言うがルドガーにそういう趣味はない。むしろ男として正常だ。

「エルとはアイツが父親に言われて目指していた場所まで一緒に行く相棒として約束したんだ。強がりで、素直じゃないちょっとませた奴でさ、本当苦労したな」

「そのわりには楽しかったみたいやなぁ」

「まぁ、な?」

エルが居てくれたからこそあの選択を迷いなく選ぶ事ができた。それ以前も彼女がいたからこそルドガーは前に進む事ができたのだ。

「エルちゃんかー。何か私と凄く気が合いそうやわぁー」

「私もエルちゃんと合ってみたいです!」

「キュクー」

「僕もルドガーさんの相棒だっていうエルちゃんとあってみたいですよ!」

「はは!きっと皆ならエルと仲良くできるさ」

歳の近いエリオとキャロならエルともきっと友達になれるだろうしエリーゼとも問題ないはずだ。

「さて、こんなもんで俺の仲間紹介はオッケーかな?」

「正直まだルドガーのお兄さんについて聞きたいけど、もう今日はいいかな?」

遠慮がちに答えるフェイトの視線はルドガーの前にあるテーブルに向けられる。今までの話しは食事をしながらの会話だったので、正直なところマナー違反でもあり、フェイトとしてはこれ以上ルドガーの食事の時間の邪魔をしたくはない。

「にゃはは、すっかり伸び伸びだね……」

なのはの言うとおり折角のトマトソースパスタはソースを吸収したのか麺はすっかり伸びてあまり美味しそうには見えなくなっていた。

「だ、だな……」

ちょっぴり残念。トマト、トマトソースパスタが好きなユリウスなら間違いないく本気で落ち込むはずだろう。ルドガーの話しが終わると殆どのメンバーが食堂から去った。だがフェイトだけはルドガーの隣に座りルドガーと話しをしていた。

「1つ聞いていい?」

「何だ?」

「ルドガーは元の自分のいた世界には帰りたくないの?」

ルドガーは自分の世界に帰る事に消極的なのはフェイトも知っている。異世界渡航者の保護等も執務官の仕事の1つ。だが執務官として以前、ルドガーにフェイトは自分の世界に帰りたいかと尋ねたが、決まって帰る必要はないとの一点張りだ。何が彼をここまで元の世界への帰投を拒ませるかはフェイトにも、あのルドガーとも一番仲が良いはやてですらわからない。

「帰る気はないよ。前にも言ったろ?」

「……この世界を見てみたい…それが理由だったかな?」

元の世界に帰る事を拒む理由を以前聞いたところ、ルドガーはフェイトにこう応えた。

だがフェイトにはこの言葉は彼の本当の気持ちだと思えなかった。
あの仲間とルドガーが写っていた写真を見た今では更に。


「縛られ続けた俺の人生……少しは自由気ままに世界や人をゆっくり見てみたいんだ。それが異世界だとしてもな」

「ちょっとオジサン臭いよその台詞……」

「うえっ!?」

「けどもし気持ちが変わったらいつでも声をかけてね。私はルドガーの力になりたいんだ」

執務官としての立場もあるが、フェイトは彼を1人の仲間として本気で心配している。能力の高さ、骸殻という強大な力を持ちながらも決してその事を誇らないルドガーは誰から見ても立派な人格者。
だが時々、その彼の瞳と彼の戦う時の動きから寂しさをフェイトは感じたような気がしていた。

「気持ちだけ受け取っておくよ。けど俺は大丈夫だ。むしろ俺はフェイトやはやて達の方がよっぽど心配だぞ」

「わ、私が?」

「よく言われないか?お前達って自分の事より他人の事を第一に考え過ぎて、自分の事に余裕を持てなくなってるんじゃないか?」

それは確かに言われた。彼女の義母リンディ・ハラオウンや義兄であるクロノ・ハラオウンに全く同じ事を言われたのだ。

「どうしてそう思ったの?」

「俺も同じだからな。何となくわかるんだよ、同類にはな」

「そ、それだけ?」

「ああ」

あまりの呆気ない内容に唖然としてしまう。歳が1つ違うだけでこうも人間性のレベルは違うのかとつい考えてしまう。

「あまり他人に心配掛けさせないようにしろよ?お前は1人じゃないんだから、色々と失うモノもあるんだ。まぁ俺と同類ならこの言葉にどれだけの抑止力があるかは…期待薄かな?」

使った皿を片付けルドガーは食堂から姿を消す。少し馬鹿にされたような気もするが、あれは心から自分達を心配しているからこそ出てくる言葉であり、はっきり伝わってきた。

「失うモノ……か」

フェイトもこれまでの人生で大切な存在を失った事がある。実の母であるプレシア、姉のような存在であったリニス、そしてもう1人の自分でもあるアリシア……別れは出会いと同じで突然訪れるモノ。

特にフェイトはどちらも多く経験し、得るモノもあれば失ったモノも少なくはない。


ではルドガーは一体どれだけの出会いと別れを経験したのか?



目覚めた先が自分が生まれた世界じゃない事を知ってあんな風に何故飄々としていられるのだろう?



(もしかして彼は……)



全てを失ったからあそこまで執着がないのではないのか?


だとしたら彼の心は修復ができないくらいに壊れている?



(違うな…きっと。もしそうだとしたらあんな風に笑えるはずないよ)

絶望を知っているからこそフェイトはルドガーが絶望していない事がわかる。
それどころかあの瞳には、絶望なんて物ともしない不屈の炎が灯っている。

ルドガー・ウィル・クルスニク………フェイト達に近い存在であり最も遠い存在……彼にできる選択が彼女達にはできないが、逆に彼にできない選択を彼女達は選ぶ事ができる。



常に選択と運命は表裏一体。未来を作るも捨てるも全て自分次第だ………。



 
 

 
後書き
黒匣(ジン)
霊力野からマナを使わずに、精霊術を行使できる機器。
霊力野のないエレンピオス人には必要不可欠な物だが、黒匣使用には精霊の死という欠点がある。
なお、黒匣は生活空間、医療にも使用されている。

源霊匣(オリジン)
精霊の化石が実体化した物。
増霊極(ブースター)というマナ増幅装置で、化石にマナを注ぎ込むことで完成する。
黒匣とは違い、精霊を殺さずに精霊をを使えるという利点がある。
長らく制御が不安定だったが、制御ではなく協力を要請する事をジュードが解明し、
実用化に向け奮闘中。

 
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