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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第18話 お見合い騒動

 
前書き
難産でした。書きたいことは決まってるのにこう書き出しが難しい。 

 
 2学期の期末試験が終わった。

 当初、「2-Aの1-A時から続く総合成績9期連続最下位を阻止する」とかいう原作通りの最終課題が学園長から提示された。

 ま、鼻で笑って課題を変えさせたが。

 なんで、担任でも副担任でもない一数学の教育実習生が、指導員の受け持つクラスでもないクラスの成績を見ないといけないのか、懇々と理由を問い(ただ)してやった。

 学園長は、「元々2-Aのタカミチ君が指導員だった」とかいう理由にもなっていない理由を告げてきたが、全て却下してやった。

 最終的には、「メルディアナの校長に連絡を取り、課題として適切かどうか判断してもらいましょう」と携帯電話を取り出したら、そこで折れた。

 で、結局、「担当クラスの数学科目のクラス別順位を下げないこと」という課題となった。

 これも学園長は、「全ての担当クラスの順位を上げる」という課題を提示してきたが、「教育実習生に本職の教師より上の結果を求めるの?」と指摘し、何故かいる高畑先生を交えて3人で話し合いを続けたが、結局、学園長達では話しにならんとあきらめ、学年主任の新田先生と指導教師の瀬流彦先生を連れてきて、話し合いに混ざってもらい、適切な課題として先の課題、「担当クラスの数学科目のクラス別順位を下げないこと」に落ち着いた。

 一応、高畑先生には、「教育実習生に出す程度の課題なんだから、本職の高畑先生はきっと2-Aの最下位脱出をやり遂げるんですよね」と学園長と新田先生の前で言ってやった。

「それは………」

 とかなんとか口ごもって誤魔化そうとしていたが、日頃説明不能な出張を繰り返す高畑先生に不満を持っている新田先生(このことは事前に職員会議とかで感じていた)も、この話し合いの中で余りに自分のことを棚に上げた高畑先生の発言が気に入らなかったのか、「がんばりなさい、高畑先生」とおっしゃられた。

 ちなみに内容的に、最下位の2-Aの順位は下がりようがないので、特に課題対策などを取らずとも、それまで通りの授業で、「2-Bと2-Dは順位を上げ、2-Aと2-Cは順位の変動せず」という結果となり、課題は合格となった。

 同時に2-Aは総合成績最下位を更新し、一般の先生の中で、高畑先生の指導力不足と2-Aの問題児クラスの深刻化が浮き彫りになった。

 ………ニヤリ、計画通り。

 これで、学園長がどう画策しても、新米教師(予定)を2-Aに関わらせるのは一般教師の皆さんが反対してくれるだろう。

 いっそ、数学の担当からも外して欲しい………。





  ☆  ★  ☆  





 で、今日は日曜日。久々に駅前に出て昼食を取り、買い物をして、ぷらぷらと散歩がてら歩いていると、

「サギ先生~」

 と着物を着た大和撫子に声をかけられた。

「………、だれ?」

 思わず、そんな疑問が声を出た。美人さんは、リニスや月村姉妹で見慣れてるが、初めて見るような純和風な美人さんだ。

「(見とれてないで、魔力を感じなさい)」

 念話と同時にペチペチと頭の上のリニスにはたかれる。

「(魔力?)」

「って、近衛さん?」

「そやで~」

 ネギよりも膨大な垂れ流しな魔力。綺麗な振袖に身を包み、2本のリボンで飾った長い黒髪でニコニコと微笑んでいるのは、近衛木乃香さん。
 まさにオレが麻帆良に来ることとなった原因の美少女だ。

「こんにちは、近衛さん。いつも授業ではお世話になってるね。(主に神楽坂と雪広の喧嘩の仲裁とかで)。それで、きれいな格好してるけど、どうしたの?」

「きれいだなんて照れるわぁ………。って、そうやなくて! サギ先生、ウチ逃げな!!」

「え?」

「木乃香さま~!?」
「どこですか~!」

 近衛さんの言葉に困惑してると、近衛さんを呼ぶ声と共に、いかにもな黒服の方々が走り回っている。

「ん………。アレは? あっ、アカン。はよ、逃げな!」

 近衛さんがオレの手を掴んで走り出す。

「えぇ?」

 とにかく引っ張られるまま、頭のリニスを落とさないように走って着いていく。
 年齢は違えど、鍛えているし、近衛さんが走りにくい着物を着ていることもあって、直ぐに並んで走ることになる。

 なので、とりあえず部外者の入りにくい校舎の中に誘導し、適当な空き部屋に入り、落ち着いた頃に事情を聞く。

「え? お見合い?」

「そうなんや。おじいちゃんの趣味でなぁ。いつも無理矢理すすめられるんよ。今日は、お見合い用に冬用の着物を着せられてなぁ。写真を撮らされる所やったんけど、途中で逃げてきてもーた。あ、あとウチは木乃香でええよ。おじいちゃんと一緒だと話しにくいやろうから」

 ………、あれー?

 木乃香さんのお見合いイベントって、ネギが来てからじゃなかったけ?

「ほら、相手の写真もこんなよーけ渡されてるんよ」

 そう、持っていた巾着から相手のお見合い写真なんかを取り出して、手近な机に広げる。

「まだウチら子供やのに………。旦那はん決めるなんて早すぎると思わへん?」

 そう、アンニュイな雰囲気を漂わせ、オレに告げる。
 優しい子だから、表だって麻帆良での唯一の家族である学園長に逆らえないんだろう。

「(コラ、(アキラ)。可哀想と思わないのですか。どうにかしなさい)」

 リニスは同じ女性として共感したのか、ペチペチとオレの頭を叩いた後、木乃香さんが座っている机に跳び降り、慰めるようにその手を舐める。

「ありがとな~。慰めてくれるんか」

 気落ちしてた顔をほころばして、リニスを抱えて頬摺りする。

「にゃーお」

 リニスも猫の振りをして、いやまぁ猫なんだけども、一鳴きして、木乃香さんの頬を舐める。

「くすぐったいわぁ。ええ仔やなぁ、サギ先生の猫か?」

「えぇ、まぁ。リニスと言います」

「そっかぁ、ありがとなぁ、リニス」

「にゃーご。(ほら、こんな良い子じゃないですか。早くどうにかしなさい)」

「(はいはい。わかりました)」
「木乃香さん。本当にお見合いは嫌ですか?」

「うん? そやよー。なんぼなんぼでも早すぎやわー」

「そうですか。一応、多分二度とお見合いが無くなるようにはできるかも知れません」

「ほんまか?」

「ええ。ちょっとその写真とか、借りても良いですか?」

「ええよー」

 木乃香さんに承諾を取った上で、1枚1枚相手のお見合い写真を携帯で取り、忍義姉さんにメールと共に送る。

 忍義姉さんから連絡が来る前に、木乃香さんからより詳しい情報を聞き取っておく。
 リニスをかまいながら木乃香さんも一つ一つしっかりと答えてくれる。

 大体事情を整理し終わる頃、携帯が鳴り、忍義姉さんから連絡が来る。少し離れて携帯を取る。

 で、たまたま木乃香さんと会い、関東魔法協会の理事の学園長が関西呪術協会の次期長候補に、恐らく関西呪術協会に無断で、望んでもいないお見合いを中学生に進級した頃から押しつけており、季節毎にお見合い写真も撮っているという事情を説明する。

 そうすれば、慣れたもので忍義姉さんはこちらの意図を読んで、中部魔術協会穏健派の理事を通して早急に詠春殿に伝えてくれる。

 その際に一つ疑問が出たのは、「護衛は何してるの?」ということだったが、事前に木乃香さんからは、それとなく詠春殿が派遣した護衛の桜咲さんとの壊滅的な仲を聞いていたので、「さぁ?」としか答えれなかった。



 さて、そんなことをしていると、

「いたぞ!」
「捕まえろー!」
「お嬢様ー!!」

 などとこれまたいかにもな台詞を吐いて、黒服のみなさんが教室に入ってくる。

 ………、てか、護衛のハズの桜咲さんも混じってて、こちらを睨んでるんだが。

 何のつもりなんだろう?

「………、申し訳ないが、その方を引き渡していただきたい」

「はぁ? 何言ってるんですか?」

 いや、あなた方も仕事でやっているのはわかるんだが。

 ちなみに木乃香さんはいつの間にかオレの背中に回り、「いやや! 絶対行かへんで!」とか言ってるし。

 てか、桜咲さんは殺意を込めるような視線で睨むのはやめて欲しい。大方、オレを頼りにしているのが妬ましいんだろうが。

「これは近衛家の事情です。関係ない方はお引き取り下さい」

 リーダー格であろう黒服Aが、慇懃無礼な態度で木乃香さんの身柄の引渡しを要求して来る。

「いや、普通に近衛さんは嫌がっているんですけど?」

「そうや! そうやー!!」

 背中から顔を出して木乃香さんも同意する。

「「「木乃香様(お嬢様)!?」」」

「大体、あなた方が本当に近衛家の人間なのかは、こちらで判断しようがないんですが」 

「な、なにを! 我々は本当に!!」

 黒服Bが慌てた様子で抗議をし、木乃香さんに対して自分達の潔白を説明するように目で訴えている。だが木乃香さんはニコニコと笑いながら、首を傾げて知らんぷりをしている。見かけによらず、けっこう黒いのか?

「ほら、ね」

「「「な!?」」」

 とまぁ、バカらしいやり取りを交わすして、時間を稼ぐ。

「もういい。お前らは下がっていろ」

 いい加減しびれを切らしたのか、護衛のハズの桜咲さんが竹刀袋から野太刀を取りだし、こちらに向かって来る。

「サギ先生。そろそろ遊びの時間はお終いです。木乃香お嬢様をお返し下さい」

「せっちゃん………」

 見たこともない桜咲さんの真剣な態度に驚いたのか、お見合いをさせようとしている一派に与しているのに驚いたのか、木乃香さんは哀しそうに桜咲さんの名前を呼ぶ。

 と、タイミング良く俺の携帯が鳴り始める。
 着信音から登録されていない人からの電話だというのがわかる。

「ちょっと、失礼」

 桜咲さんに対し右手を挙げて抑え、返事も聞かずに電話に出る。

 予想通り、詠春殿からだ。

「もしもし。どーも毎度お世話になっております。はい、おかげさまで楽しい日々を過ごしてますよ(社交辞令)。いえいえ、そんな、滅相もない」

 適当に社交辞令を多分に含めた挨拶を交わす。元々詠春殿がしっかりしていれば、オレがここにいることもなかったと思うとまともに対応するのもバカらしくなってくる。

「そうそう、そうなんですよ。今ワタシの横に木乃香さんがいらっしゃります。ええ、そうです。それでですね、実は少し前に、振袖をお召しになった木乃香さんが、黒服、サングラスといういかにもという男達数名に追いかけられているのに、偶然出会いまして。はい、そうです。それで、木乃香さんが仰るに「学園長に無理矢理お見合いをさせられていて困っている」そうなんです。え、そうですか。では変わりますね」

 忍義姉さんから穏健派理事経由で説明されているはずのことを黒服達(桜咲さん含む)に聞こえるように話し、木乃香さんと電話を替わる。

「そう。そうなんよー」

 などと詠春殿と木乃香さんが話しているのを横で聞きながら黒服達を見ると苦虫を噛み潰したような表情でこっちを見ている。

 コッチミンナ。

 と言ってやりたい。

 一通り話して鬱憤を晴らしたのか、満足そうな顔で木乃香さんが携帯をこちらに渡す。まだつながっているようだ。

「はい、変わりました。暁です」

 人前で名前を告げたくなかったので、小声で名乗りながら電話を替わる。

 少しの確認事項を詠春殿と確認して、黒服の人と替わって欲しいそうなので、木乃香さんに聞こえないように小声で「関西呪術協会長の近衛詠春殿が話しがあるそうです」と告げて、黒服Aの人に携帯電話を渡す。

 いかにも謝罪してます、という感じで、ペコペコしながら黒服Aが携帯電話で話す。

 時折、詠春殿が携帯電話から漏れているのは、大声で怒鳴っているからだろうか?

 結局、「ご迷惑をおかけしました」と謝罪しながら、黒服Aが携帯を返しに来る。

 返って来た携帯で「一件落着ですね」と詠春殿に話すと乾いた笑いしか返ってこない。
 この件が及ぼす今後の影響を考えると頭が痛いんだろう。

「そうそう桜咲さんもいるんですが、替わりますか?」

 ついでに追い打ちをかける。

「刹那君が?」

「えぇ。黒服と交じって、木乃香さんを庇うワタシに剣を向けてきました」

 嘘は言ってないよ、嘘は。

「それは………。きっとお義父さんに言いくるめられたんでしょう。すみませんでした。キツくお義父さんには言っておきます」

 そう言って、桜咲さんとは話さず、電話を切る。

 まぁ、桜咲さんは電話している間に黒服達と共に出て行ったので、どっちにしろ替わることはできなかったんだが。

「なぁなぁ、サギ先生。お父さまと知り合いだっんか?」

「えぇ、まぁ。お世話になっている家が近衛さんの家の下請けみたいなもので、その縁でいろいろ(迷惑かけられてます)」

「そうなんかー。そや、ありがとなー。嫌ならもうお見合いなんかさせんって、お父さまが言ってくれたわー」

「そうですか。良かったですね。まぁ、電話をかけただけ何で大したこともしてませんよ」

「それでもや。ほんとにありがとなー」

「いえいえ。そうだ。せっかくそんなにきれいなんだから、写真を取って詠春殿に送ったらどうですか? どうも何も聞いていなかったと言うことは、以前のお見合い写真なんかも詠春殿に届いてないんじゃないですか?」

 これから関東関西両方面でこの件について対応しなければならない詠春殿に同情して、愛娘の可愛い姿を送ってやろうと仏心を出す。

「そやなー。当分こんな格好する機会もないしなー。ほな、サギ先生頼んでもええかな?」

「いいですよー。と言っても携帯で撮るぐらいしかできませんが」

「あははー。ええよ、ええよ。充分や」

 てな感じで、携帯でぱしゃぱしゃ撮影し、木乃香さんのアドレスに送っておく。
 詠春殿のメールに添付して木乃香さんが写真を送ることになった。

 なお、その際、木乃香さんがリニスを抱えての2人と1匹での集合写真のつもりだったものが、詠春殿から流れ、後で苦労するのは別の話し………。 
 

 
後書き
爺馬鹿な学園長なら、季節毎にお見合い写真を撮っていてもおかしくないんじゃないかとイベントを先だし。
春のお見合いイベントはつぶれました。 
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