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チートだと思ったら・・・・・・

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十五話

明日菜とのデートから数日、ネギと明日菜が喧嘩したとか何とかがあったらしいが、俺はそんなことにかまうこと無く槍を振り続けていた。干将・莫耶に慣れてしまった体の感覚を矯正するためにだ。
今日も今日とて槍を振ろうと思っていた所、ネギから一通のメールがあった。曰く……

――一緒に南の島に行きませんか?

明日菜と仲直りとをしたと言う話も聞いていなかったが、俺に誘いをかける余裕があるということはそこまで根が深く無いのか? と思いながらも、俺は了承の意を伝えるメールを送った。さすがに、直ぐに出立するとは思わなかったが……





「「「海だーーーーっ!!」」」

一斉に駆け出し海へと飛び出す見た目麗しい女性達。おなじみ3-Aのメンバー達だ。人数から察するに、半数程が来ているようだ。その中に俺がいるのは、何とも違和感を感じるものだ。

「今日は招待してくれてありがとう。雪広さん」

「いえ、何でもネギ先生やアスナさんが修学旅行でお世話になったとか……クラス委員としてお礼言わせていただきますわ。それに、ネギ先生達のお話を聞いて、一度お会いしてみたいと思ってましたの」

とりあえず雪広さんにお礼を言ってみたのだが、邪険にされてるなんてことはないようだ。ネギ達がどんな話をしたのかは知らないが、好印象を持たれている節すらある。

「美砂あああああああ!! いーまいーくぞおおおおおおおおおお!!」

先のやり取りの後、世間話などをしている所に馬鹿が一匹。……何でも柿崎さんから誘われたらしい。奴の頭には遠慮の二文字がないのか!

「申し訳ない。あの馬鹿の友人として謝罪します」

「い、いえ、誘ったのは柿崎さんのようですし……宮内さんが謝られることはありませんわ」

若干頬がひきつっていたが、許してくれるらしい。心が広くて助かった。もし明日菜より先に雪広さんと会うことがあったら彼女に惚れていたかもしれない。わりとマジで。

「それでは、失礼しますわ。宮内さんも楽しんで下さい」

「ええ、楽しませてもらいます」

さて、と。いざとなるとさしてやることが見つからんな。3-Aメンバーは初対面が多いし。とりあえず、彼女の水着姿に暴走気味の奴を諌めに行こうか。





日が少しずつ沈み始めた頃、さすがのパワフルな3-Aメンバーも一休憩するものが増えてきた。ネギと明日菜で何かあったみたいだが、今回は自分の都合を優先させる。

「それじゃ、よろしく頼む」

「分かったアル!」

そんなわけで、俺は古菲とそれぞれ好みの長さの棍を携えて対峙していた。自分の都合とはこれ、古菲と手合わせすることだ。チャチャゼロは基本的にナイフとかの刃物が専門で、長物の類はあまり使わない。故に槍の扱い事態に関してアドバイスできることが少ないのだ。
それに、これはチャチャゼロも既に承知の上だが俺には技術的指導はほぼ必要無いと言っていいのだ。答えは簡単、俺の中には”歴史に名を残す英雄の技術”が数多存在しているのだから。エミヤの魔術を使えばそれを理解し、擬似的に英雄にすらなることができるのだ。よって、俺に必要なのは一に実戦二に実戦なのだ。
そういった意味では槍を扱える古菲と手合わせすることは大きな+となる。

「行くぞ!」

挑戦者は俺。それに、基本待ちのエミヤの剣とは違い俺が参考にしている槍はクー・フーリンのもの。およそ待ちなんて行動が似合わない男のものだ。相手が格上だろうと、躊躇いなく攻撃を仕掛ける!
俺が放つ突きの三連撃。それを古菲は左右に体を振って躱し、お返しとばかりに突きを放ってきた。だが、俺もそう簡単にはやられない。半身になることで突きを避け、そのまま回転し槍を薙ぐ!

「ム!」

回転による遠心力を加えた薙ぎを槍を引き戻したばかりの状態で受け止めるのは不味いと判断したのか、古菲は大きくバックステップをして躱す。そこで一端間が空いた。俺も古菲もまだ魔力や気による身体強化すらしていない様子見の状態だ。このまま様子見が続くのは俺の望むところではない。ならば、俺から踏み込んでいくまで!

――戦いの歌!

「来るアルな」

俺の闘気を察したのか、古菲の体が魔力と似て非なる光に包まれる。これでいい……実戦により近い状況こそが今俺が望むもの。容赦はしないと言わんばかりに、俺は瞬動で一気に古菲へと迫り、突きを見舞った。





あれから実に30分間戦闘を行い、俺は意表を突いた蹴りをモロにくらって吹っ飛んだ。……すっかり槍のみで戦闘してる気分になってた。まだまだ未熟だな……そんでもって古菲から聞いた評価だが、悪くは無いが、足りないとのこと。足りないってのは技量のことではなく、ただ単に槍を振った時間のことだ。つい最近まで双剣を使ってたから当然なんだが……そのせいで、無意識の内の動きってのができてないそうな。戦いにおいてそういうのは非常に重要。よって、とにかく槍を振り続けるアル! とのお言葉を頂いた。
どうやら、ここ最近行ってきたひたすら槍を振るってのは間違ってなかったらしい。ただ、今は足りないだけ。一般人枠(もう知ったから一般人ではないが)で最強クラスの達人からお墨付き貰ったんだから、今後もこの方針でやればいい。
これからやるべきことも充分に把握したし、明日からも頑張りますか! 俺は元気よく立ちあがり、割り振られたコテージへと向かった。



「どうやら、今は南の島へ行ってるようだな……」

男は突然その場に現れた。結界が張ってあるはずの麻帆良の中に何物にも感知されずに、だ。そして、同じく誰にも知られずに3-Aの情報を入手していた。

「接触するのはヘルマン侵入に紛れて行うか……」

男はとりあえずの計画を立て、その場を後にする。

「待っていろよ、宮内健二……」

姿を消した男……”青い髪”に”紅い瞳”を携えた男は、健二の名を呟きその場から姿を消した。







「が……ぐっ……」

体の各所から血を流し、前のめりに地べたへと倒れこむ。手から槍は離れ、反撃をしようにも体が言うことを聞いてくれない。

「この程度だ。お前の力なんてな」

感情の籠もっていない眼で俺を見下ろしてくる男を、せめてもの抵抗とばかりに睨みつける。
それが不快だったのか、男はその整った顔を歪めた。

「鷹の眼か……お前如きがその顔をしていると、エミヤを侮辱されている様に感じるよ」

そんなものは知ったことか。確かにエミヤの容姿を望んだのは俺だが、結局のところ、俺は俺でしかない。

「……ち、誰か来るな。まぁ、いい。これは警告だ。お前は原作から遠ざかれ。学園祭までにそれをしなかった場合……」

全身に怖気が走る。……殺気。今まで感じたどのさっきよりも、鋭くこの身を貫いてくる。

――その心臓、貰い受ける!

遠ざかっていく男に何も出来ず、俺は意識を失った。





雨が降っていた。久しぶりの雨だ。連続で来るのは勘弁してほしいが、たまになら悪くは無い。

「今日の晩御飯はどうするかな……」

冷蔵庫の中身を思い出しながら献立を組み立てていく。……まて、確かこんにゃくの賞味期限がそろそろじゃなかったか? 確認しないとな。

「ん? あれは……」

杖に乗ったネギと、小太郎? 何でこんな雨の中を飛んでるんだ? ……まさか、ヘルマンか!? 確かヘルマン編の直前にネギの記憶を見せるイベントがあったはずだが、俺のいない間に消費されていたらしい。何と運の悪い。だが、確かヘルマン戦はエヴァンジェリンがネギの潜在能力を測るのに利用していたはずだ。俺も傍観すべきなのか……いや、今はとりあえず後を追おう。俺の介入を良しとしないならエヴァンジェリンの方から何か接触があるだろう。

「急がないと見失うな」

二人乗りとはいえ杖の速度はかなりのものだ。俺は赤原礼装を身に纏い、魔力消費を抑えた戦いの歌を使い、見失わないようにセンリガンを発動させた。だから、気付いた。俺の後ろにある水たまりから、あのフェイトが姿を現したことに。

――投影、開始!

ここ数日の鍛錬の影響か、俺が咄嗟に投影したのはゲイ・ボルクだった。槍の中ほどに片手を添え、もう片方の手を柄尻近くに置く。クー・フーリンに近い構えだ。

「何が、目的だ」

「…………」

フェイトは答えない。口が渇く。原作でも最強の領域に立つこの少年を前に、俺は既に圧倒されている。それも当然。修学旅行の時とは違い、俺はここに一人なのだから。
数十秒、沈黙が続くがようやくフェイトが口を開いた。

「やはり、君自身は脅威ではないようだ」

「!?」

原作でのヘルマンの目的は確かネギが脅威成り得るかだとかそんな感じだったはずだ。それを俺にも、フェイト自身が行いに来たのか!

「だが、君の能力は話が別だ。あの時の剣……あれは危険だ」

ゆっくりと、こちらへとフェイトが歩み寄ってくる。自然と、槍を握る手に力が籠もる。雨が降っているというのに、体は熱く全身から汗をかいている。

「その槍も、何だか嫌な気配を感じる。だから……」

フェイトの姿が突然ブレる。瞬動……それもかなり完成度が高い!

「君には何もさせないよ」

背後へと槍を一閃! 真横に流れた槍はフェイトの屈強な魔法障壁に衝突し、弾かれる。

「お、おおおぉぉぉおおおお!!」

戦いの歌の出力を引き上げすぐさま槍を手元に引き寄せる。フェイトの手が暗い輝きを放っている。もしやこれは!

――石化の……

「っだあああぁあぁああ!」

槍をかなぐり捨てて後ろへ飛ぶ。それと同時に障壁も張って少しでも奴の魔法を防ぐ。

――邪眼!

石化の煙があたり一体に散布する。障壁と風の魔法を駆使して何とか逃げ道を確保する。だが、これはあちらの誘導!

「何もさせないと言ったはずだ」

逃げ道の先で待ちうけるフェイト。だが、お前がそこにいることはセンリガンで把握していた!

――投影、開始!

石化の煙から逃げながらも脳裏に描いた設計図、それを顕現させる。それは、ゲイ・ボルクとは異なる紅い槍。その名を……

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルク)!!」

あらゆる魔力の循環を遮断する事が可能で、対象に刃が触れた瞬間その魔術的効果をキャンセルする能力(ちから)を持つ槍はフェイトの障壁をなんなく貫きその身ヘ迫る。

「くっ!」

さすがにこれには驚いたのか、フェイトはすぐさま距離をとる。俺の突きの速度では、まだフェイトクラスの奴には届かない! 悔しがる暇はない。あの障壁を破る手立てはできたが、それでも彼我の実力差は圧倒的だ。

「こないのなら此方から行くぞ」

実力が圧倒的に劣るこの状況で、待ちに徹するなどそういうスタイルでもない限り愚かだ。ならば、相手に動きが無い今の内に打って出るしかない。槍の握りを確認し、瞬動で今まさに踏み込もうとしたその瞬間……

「悪いが、ちっと邪魔するぜ」

「!?」

「!?」

驚きは二つ、俺とフェイトのものだ。ということは、この声の主はフェイトの仲間ではないと言うことだ。増援がいる等と言う更なるイレギュラーがないことに内心ほっとしながらも、センリガンの透視能力を発動する。そして、俺の頭は真っ白になった。なぜ、ここに……と。

「…………」

第三者が現れたことを良しとしないのか、フェイトは水を使ったゲートで早々にその姿を消す。だが、今の俺にはそれすら気にすることが出来ない。何故、何故だ……何故!

「この世界にいる! ランサー! いや、クー・フーリン!」

俺の、センリガンに映る男。それは、青の皮鎧に身を包む青髪紅眼の長身の男。アイルランドの光の御子、クランの猛犬ことクー・フーリンその人だった。

「確かに声は発したが、遮蔽物で姿は見えないはずなんだがな……」

自分の事がバレているのがよっぽど意外だったのか、頭の中がこんがらがっている此方を余所に軽い口調を伴って俺の前に男は姿を現した。

「!?」

やはり何処をどうみても、Fate/stay nightで登場するランサーのサーヴァント、クー・フーリンだ。

「何故、お前がここにいる」

「さぁ、何でだろうな」

ケラケラと笑ってごまかすランサーに何か違和感を覚える。何か、変だ。

「お前、ランサー……クー・フーリンか?」

疑問は声と成って、何時の間にか口から発せられていた。それにランサーは、心底うれしそうに笑みを浮かべ……

「ああ、そうだよ。お前と違って、俺はクー・フーリンそのものだ」

「なん……まさか、お前!」

「ああ、そうだよ! お前と一緒だ!」

何ということだ。俺の他にも、この世界に来ていた者がいた!?

「とはいっても、この世界に来たのは数日前だけどな。だけど、ようやくだ。ようやく、お前に接触できた」

俺に、接触? それではまるで、アイツの目的が俺である様な……

「ずっと、ずっと見てきた。お前がこの世界に降り立ったその時から!」

「見ていた、だと?」

「そうだ、そうなんだよ! 中途半端に力を得たお前を! 中途半端に原作に関わるお前を! 原作をより良い方向へと導こうとしなかったお前を! ずっと見てきたんだ! 苛立ちの連続だったさ、俺ならああする。俺ならこうできたとな!」

応えることはできない。確かに俺は中途半端だ。だが、これだけは否定する。

「確かに、原作をよりよい道へ導こうと思ったことはある。だが、彼女達は自分の意思で道を選んでるんだ!」

「それが何だと言うんだ! たとえそれが自分の意志だとしても、許容すればいいのか!」

アイツの言うことも間違ってはいないのだろう。ただ、俺は……そうすることはできなかった。明日菜に、原作と同じ明日菜に俺はどうしようもなく惚れてしまった。原作を大きく変えるのは、惚れた彼女を変えてしまう気がして……

「お前がいた所で、原作(れきし)は変わらん。良くも悪くもな。これからは、俺が導く。この世界をより良き方向へ。だから、お前は去れ。もう、近づくな」

「そんなこと、できるか」

ネギと友になった、明日菜を好きになった、チャチャゼロの弟子になった。いまさら、去れるか!

「なら、去りたいと思わせるまでだ!」

「お前の思い通りに、行くと思うな!」

ゲイ・ジャルグを手に突っ込む。小細工は無用、全開の出力で、全開の速度で、目の前の男を打倒する!

「馬鹿が!」

ああ、そうだった。コイツは行ってたな。自分はクー・フーリンそのものだと。それは、エミヤの身体能力を得られなかった俺とは違うと言うことだ。
俺はセンリガンですら見切れぬ速度で放たれたまさしく”神速”の突きに体の各所を穿たれ、倒れ伏した。





あの後、俺はエヴァンジェリンによって治療された。どうやら、フェイトが脱出した時の転移魔法を察知したらしい。ゲイ・ボルクには怪我の治癒を阻害する力もあったはずだが、それはアイツが意図的に押さえたのかエヴァンジェリンが上手く治療してくれたのか、特に問題にはならなかったようだ。明日菜達がどうしたのかと問い詰めては来たが、魔族が襲ってきたと嘘をついておいた。

「…………」

「おい、アイツどうしたんだ?」

「心ここにあらず、だな」

あの日以降、何をしても上の空だ。全てアイツの事で埋め尽くされ、他のことを考える余裕が殆ど無いのだ。考えた所で、真に英雄の力を手に入れたアイツに敵う術などないのに。

「健二! どうしたんだよ暗い顔して!」

(ちょ! 空気嫁!)

(何故そこで話しかけられんだ!)

「ああ、別に何とも……って、どうしたんだその顔」

何気なく顔を向けると、包帯だらけの友人の顔が眼に映った。これには俺の脳も一端アイツの事を考えるのを放棄した。

「いや、美砂がチンピラに絡まれててさ。勿論速攻で助けに行ったぜ! 人数が多くてボコボコにされたけどな」

いやー、見てた人が助けを呼んでくれなかったらやばかったとのたまう友人に、俺は唖然とする。それに気付かずか、そいつは話を続ける。

「そんでさ、俺中国武術研究会に入ったんだ。部長が美砂のクラスメイトでさ、特別に直接指導してもらってんだぜ! 練習はきついけど、今度こそは守りたい。俺がそう思って、そう決めたから頑張れる」

自分がそう思って、そう決めた。俺はその言葉に心を打たれた。俺はどうしたい? そんなの決まってる、明日菜のそばにいたい。だが奴がいる。実力の差は言うまでも無い。諦めろ。諦めない! たった今、そう決めた!

「俺、早退する!」

「おう、行って来い」

俺は鞄も持たずに、教室を飛び出した。



「な、なんだったんだ?」

「さっぱり分からん」

「アイツも、大人びて見えてやっぱり俺達と同じ子供なんだよ。悩む時もあるって」

「へぇ、アイツがねぇ」

「っていうか、よく分かったな」

「当たり前だろ。これでも……」

――アイツの一番の友達だぜ?





「チャチャゼロ!」

教室を飛び出した後、そのままエヴァンジェリンの家に直行した。鍵は悪いが、魔術で開けさせてもらった。

「何ダ?」

「俺を別荘で、学園祭までに可能な限り鍛えてくれ!」

俺は諦めない、最後まで!
 
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